2017年も残すところあとわずか。今年もたくさんの映画が公開されました。
2017年に日本国内で公開された映画はおよそ1,200本! みなさんはそのうちの何作品をご覧になったでしょうか。
FILMAGAでは、各界の著名人や有識者に「2017年私のNo.1映画」を伺いました!
あのひとやこのひとの心に残った作品は? 本日から年末にかけて、ゆっくりじっくり紹介していきます。
第12回は「劇団EXILE編」。今回は特別バージョン! この企画に参戦をお願いしたところ、快諾してくれたのが劇団EXILEの町田啓太さん。今夏のFILMAGAインタビューにて、かなりのシネフィルという素顔が明かされた町田さんは、実のところ、過密なスケジュールの中でも足しげくシアターに通うほどの映画好き。そんな町田さんが苦渋の末選んだ「ベストムービー」、せっかくなのでTOP3を挙げてもらい(……唸るラインナップ!)、心ゆくまで語っていただきました!
町田啓太さん
(俳優)
■プロフィール
劇団EXILEのメンバー。群馬県吾妻郡東吾妻町出身。LDH JAPAN所属。
ずっとドキドキさせてくれる作品を作ってくれる
第3位:哭声/コクソン
――本企画へのご参加、ありがとうございます。町田さんが映画好きなことについて、非常に反響がありまして。
いえいえ、ありがとうございます! 嬉しいです。2017年は、好きな作品がたくさんあるんですよ。
――TOP3と僅差で迷った作品があるそうですね?
もう、すごく悩みました……。第3位と僅差で『新感染 ファイナル・エクスプレス』を挙げたいんです。……というか、ほぼ同時の第3位ですけど、順位をつけないといけないので、一応第4位で。『MASTER マスター』もよかったですし、いい作品がすごくいっぱいあるんですよね。
――悩んだ末に第3位は『哭声/コクソン』ですか? 第3位に、この作品がくるあたり町田さん、すごいですよね。
ホントですか? だって、『哭声/コクソン』は、すごくないですか!? ナ・ホンジン監督が数年かけて、台本を練っていらっしゃったんですよね。ほかの作品も何年もかけるそうなんですけど。だからか、いろいろな要素がすごく詰まっていて、観ごたえがありました。聖書に出てくる言葉もいっぱいありましたし、祈祷師やら悪魔やらも出てきて。とにかく様々な要素を組み合わせて作っているんだなというのが、単純にすごくて。
……今日、ネタバレしてもいいんですか?
――そういう趣旨ですので、はりきってどうぞ。
オチのところで、主人公(警察官ジョング)を救おうとしていた祈祷師の撮っていたカメラが、犯人(悪魔)と同じもので、結局、祈祷師も悪魔の手先だったことが判明する場面があるじゃないですか。
――ああ、あれは気持ち悪かったですね。
「うっわ! マジかよ!? よくできてるわ~!」って興奮しました(笑)。この作品を観ると、「救いってどこにあるんだろう」とか、人の分かれ道はいろいろなところであるから、それを選択するか、しないか、信じるか、信じないか、どうするか、ということまで、すごくいろいろと考えますよね。観ている間、ずっと「どうなんだろう? どうなんだろう!」と本当にワクワクしっぱなしでした。こんなにワクワクさせられた映画はあまりないですし、確実に2017年のTOP3に入ります。何回でも観たくなっちゃいませんか?
――かなり体力がいりますが、はい。ちなみに、劇場に観に行かれたんですか?
劇場に行きましたし、レンタルが始まってからは借りても観ました! 観る人によって、いろいろな意見があるのも、この作品のいいところだなと思います。
――昔からナ・ホンジン監督のことはお好きというか、注目されていたんですか?
そうですね。『哀しき獣』、『チェイサー』の2本を観ています。日本公開は『哭声/コクソン』が3本目なんです。前の作品も何年がかりかで、台本やキャスティングなど、いろいろ準備されると聞いたことがありました。それだけ練られているから、こんなに深く考えさせられるし、ずっとドキドキさせてくれる作品を作ってくれるんだな、と思っています。
――『哭声/コクソン』には國村隼さんもご出演されていますよね。
ホントですよね~! 國村さん、素晴らしく素敵ですよね~。鬼というか(笑)、なんか……。
――ふんどし姿で。
そう! それで山の中とかも駆けずり回ったりとかして。ベテランの俳優さんですが、やりきっていらっしゃっているところも、すごく尊敬します。
――ちなみに、町田さんはああいった役がきたら……。
やりたいです(即答)。役というか、日韓合作でも何でも、何らかの形で、ちょっとでも韓国映画に関わらせていただけたらと。すごく興味があります。
男が見ても美しくカッコイイ
第2位:ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣
――第2位は『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』。
最っ高!! 素晴らしかったです! 都内で公開していたので、絶対、映画館で観たいなと思って観に行きました。
――もともとセルゲイ・ポルーニンは、ご存知だったんですか?
全然知りませんでした。この映画をやると知って、すごく気になったんです。というのも、若くして世界一になった方だし、僕と年齢もあまり変わらない。「そういう人って、どういうことを考えているんだろう?」と、気になって観に行ったら、彼は本当に無邪気で、ただただピュアで、すごく才能もあって……。でも、そこから抜け出したいとか、やりたいことをやりたいのにとか、いろいろあって。あまり……言っちゃいけないようなこともあったりして。「セルゲイはこんなことを考えてるんだ」と、ずっと前のめりで、こうやって(身を乗り出して)観ちゃいました。あっという間に終わったので「えー!」みたいな気持ちでした(笑)。
――かなり集中されてご覧になったんですね。
はい。最初と最後に、セルゲイが引退するからということで作った映像が出てくるんです。セルゲイが「一番信頼している友達だから」と言って、同じバレエダンス学校に通っていた友人が振り付けをして。撮る前に、セルゲイが「僕はもうバレエをやりつくした」というようなことを言っていたんですけど、僕と同じような年齢でやりつくしたって……。そこまで言えてしまうぐらいやれているというのは、すごすぎて想像がつかなかったです。ただただ圧倒された、本当に刺激的なドキュメンタリー映画でした。
――大きな括りで言えば、町田さんとは表舞台に立つ者&年齢の近い者同士で、共通する思考や目線もありますか?
うーん……次元が違いすぎるから、とても同じ目線では語れないですけど……。僕が考えていることは「とても小っさいな」とは、やっぱり思いました。セルゲイは、悩んでいるところがそこのレベルじゃないというか。彼は楽しんでやっていたりしているし、でもその中で死ぬほど辛いこともやっているし、努力している。だから「もっとやんなきゃいけない」というふうには思わされました。
僕、劇団EXILEに入ったきっかけはダンスですけれど……といっても全然踊れないんですけど(笑)。そんなど素人の僕が見ても、セルゲイはひとりだけ次元が「もう違う」となります。明らかに「これはスターだな」と思えるので、これが才能なのかなと感じました。しかも、セルゲイは男が見ても美しいしカッコイイので、まだ観ていない方には本当にお勧めです。
この微妙な空気感。でも、そういうのって、たぶんあるよな。
第1位:ラ・ラ・ランド
――そんなセルゲイを超えた第1位は『ラ・ラ・ランド』でしたか…!
『ラ・ラ・ランド』は、もう、はい。日本で公開される前から、ずーーっと気になっていて。初めてWEBで劇場チケットを取ったんです。絶対そんなこと、今までしたことなかったのに!
――楽しみすぎて(笑)?
そうです、楽しみすぎて!
――では、期待値はだいぶ高まっている中でご覧になった?
だいぶ上がっていたのに、観たら……さらに! これはもう、エンターテインメントですよね。音楽も素晴らしいし、映像も素敵だし、話も面白いですし、衣装もすごくいいですよね。ミア(エマ・ストーン)は、ポスターでは黄色いドレスじゃないですか。最初のほうではブルーのドレスを着ていたりして、あまりパッとしなかったんですよね。それで徐々に自分に合うもの(黄色いドレス)を身に着けて、最後、年を取ってお母さんになったら、黒の服をピッと着ていたりして、そんな細部まで素敵でした。
――すごくよく覚えていますね。
本当にカッコ良かったですもん。ライアン・ゴズリングがピアノを弾いて、2人で歌って、とかも全部生なんですよね。ちゃんと弾いて、ちゃんと生声でやっていて。デイミアン・チャゼル監督の前作(『セッション』)もとても好きだったんです。『ラ・ラ・ランド』を観て「うわ、監督はジャズ大好きなんだな」と思って、観た後、しばらくは僕もジャズを聞いちゃいました(笑)。
――特に好きなシーンは、どこになりますか?
普通、映画を観ても時間が経つと思い返すのは1シーンや2シーンくらいなんですけど、この作品においては、印象的なシーンがたくさんありました。こんなに印象づけられる映画、すごいなと。音楽も聴こえてきますし。やっぱりグリフィスの丘の上での2人は素晴らしかったです。あそこに出ている完璧すぎないグルーヴ感が、何とも言えなくて。たぶん、何回も合わせて、合わせて、とかではないでしょうし、ワンカットでちょっとした雑味も出しながらなんだろうなあと、観ていて思いました。
あと、一番「うわっ、すごい!」と思ったところが、2人が別れ話をするシーンです。本当は好きだけれど別れる、みたいな感じが「何とも言えないな、この微妙な空気感。でも、そういうのって、たぶんあるよな」と共感できて。本当に好きな2人同士が語っている感じが、印象的で。うーん。本当に『ラ・ラ・ランド』は、挙げ出すとキリがないかもしれません(笑)。
――TOP3のラインナップはザ・ハリウッドものから、イギリスとアメリカの共同制作ドキュメンタリー、韓国映画と、国もジャンルもまたいでいますよね。
ははは(笑)。いつも気になったものを、かたっぱしから観るんです。大体、劇場に足を運ぶパターンが多いですね。こんなに映画の話ばかりをしたのが久しぶりで、楽しかったです(笑)。
――ところで、年明け(2018年)すぐ1月26日(金)より公開になる、町田さん主演のCINEMA FIGHTERS『終着の場所』に関しても、少し教えていただけますか?
作詞家の小竹正人さんが書いたEXILE TRIBEの楽曲からインスパイアされて、ショートフィルムとして作品化したものが「CINEMA FIGHTERS」です。全部で6作品あり、僕が出演しているのが、そのうちの『終着の場所』。俊介(町田)が、少し年上の加奈子さん(玄理)を好きになり、付き合うんです。けど実は加奈子さんには秘密があって、俊介が知ってしまったときに「じゃあどうするのか?」といった内容です。自分のお付き合いしている人に隠し事があったり、逆に自分が秘密を抱えていて言わないといけない、という状況は、割とどんな人にでも当てはまることかもしれないと思いました。だから、自分ごとに置き換えて「そういうことがあったら、どうする?」と、人との寄り添い方を考えていただける作品かもしれません。
――観終わった後、男女で受け止め方も違うのかなとちょっと思いました。
そうですよね。よかったら、好きな人だったりカップルで観に行って、お相手の反応を確かめてみたらいいと思います(笑)。それに、ショートショートの中のひとつの作品なので、1本映画を観る時間で6作品も観られる特典もあります。全然趣向が違う6作品ですし、いろいろな監督を楽しめますから、ぜひ気軽に観に来ていただけたらうれしいです。(インタビュー・文:赤山恭子、写真:You Ishii)
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(C)2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION、(C)Sixteen Tyne Limited, Why Not Productions, Wild Bunch, Les Films du Fleuve,British Broadcasting Corporation, France 2 Cinéma and The British Film Institute 2016、(C)2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
※2022年2月26日時点のVOD配信情報です。
2017年私のNo.1映画
- 第1回:2017年私のNo.1映画 年末連載スタート!
- 第2回:映画監督編〜頭を殴られたようでした〜
- 第3回:Filmarks編〜映画を感じる悦びを与えてくれた〜
- 第4回:映像クリエイター編〜人物たちの想いが共振し、反転し、成長するという映画的高揚感〜
- 第5回:映画メディア編〜「映画愛だ」「いや偽物だ」〜
- 第6回:メディア編〜何があっても人生は奥深く美しい〜
- 第7回:動画配信編〜わたしたちの青春時代が完結したような気がした〜
- 第8回:映画人編〜こんな人生を演じてみたい〜
- 第9回:TSUTAYA編〜「恋」は人を変える〜
- 第10回:芸能編〜小5ぐらいから道徳の時間に観たらええと思う〜
- 第11回:俳優編〜観ていて心がギュッとなる〜
- 第12回:劇団EXILE 町田啓太編〜この微妙な空気感。でも、そういうのって、たぶんあるよな〜
- 第13回:経営者編〜「忖度」が流行語にもなるご時勢にアンチテーゼを想起する〜
- 第14回:AI編〜Google Homeの2017年マイベストムービーは果たして!?〜