TOKYO MXの人気バラエティ番組「バラいろダンディ」で、玉袋筋太郎(以下:玉さん)&RHYMESTER 宇多丸(以下:宇多さん)の映画好きコンビが月に一度とっておきの映画を解説するコーナー「水曜バラいろショー」。
2月のテーマは「宣伝が印象的だった映画」。今夜は、田舎ホラー映画の古典と称される作品を紹介してくれました!
田舎ホラー映画の名作!?
玉:さあ、本日のテーマはこちら!「宣伝が印象的だった映画」。
宇多:キャッチコピーといえば「日本よ、これが映画だ」とかね、いろいろありますけれど。
玉:「全米が泣いた」とか「全米で上映禁止」とかいろいろあるね。
宇多:今回、2月9日に発売されるこちらの作品を紹介いたします、どうぞ!
玉:よし、こい!
田舎ホラー映画の古典『サランドラ』
宇多:『サランドラ』という、これは邦題ですけれど、『THE HILLS HAVE EYES』 という原題でございまして。1977年のアメリカ映画ですが、日本では1984年に公開された作品でございます。
玉:そうだよね。
宇多:ある幸せな家族がキャンピングカーで旅行しているときに、事故で砂漠のど真ん中で立ち往生してしまった。そうしたら、この砂漠が核実験場だったんですね。核実験場の跡地で暮らしている、人食いで暮らしている家族がいてですね。その家族に襲われてしまうと。どうやって生き残るのかという、そういう話です。『THE HILLS HAVE EYES』 、丘が見ているぞというタイトルですからね。最近になってもアレクサンドル・アジャ監督がリメイクされてますね。
『サランドラ』衝撃のキャッチコピー!
宇多:ということで、キャッチコピーが「全米38州で上映禁止!」から始まって。
玉:上映禁止!
宇多:そして「いま、恐怖の頂点を極めて戦慄のジョギリ・ショック!!」。〈ジョギリ・ショック〉って何だろうと思いますよね。
玉:上映禁止って言ったら、つまらなかったから打ち切られただけじゃねぇかって話ですよ。
宇多:いやいや、問題はそこでございまして。『サランドラ』はアメリカでは1977年に公開、日本では1984年に公開。7年も間が空いているんですよ。なんでかっていうと…。
玉:塩漬けになった!
宇多:そう。東宝東和という配給会社がこの『サランドラ』を買っていて、なんか地味な内容だから売り方が難しくて2年間塩漬けになっていた。そこにホラーブームがやってきて、じゃあ公開しよう!ということで1984年に公開された。
宇多:こんなですね、「ご注意ください!あなたの眼が破れます」ってキャッチコピーで、前売券の特典にアイプロテクターを用意っていう。眼が破れちゃったら映画を見れねぇじゃねぇかっていう話なんですけどね(笑)。
玉:ねっ、本当だよ。
宇多:「全米38州で上映禁止!」ってなってるんですけど、これは単に上映館が少なかっただけ(笑)。そして衝撃のキャッチコピー「いま、恐怖の頂点を極めて、戦慄のジョギリ・ショックがやってくる!!」。
玉:ジョギリって何だ!?っていう。
宇多:恐怖の武器「ジョギリ」とか。そんなものはね、出てきません!
玉:後付けだもん、これ。
宇多:ちょっと大きめのナイフが出てくるだけでございまして。
玉:そう。それを「ジョギリ」にしちゃったんだよ。
宇多:なので、これを見た観客が、日本で映画を観て、映画館を出て「ジョギリなんか出てこねぇじゃねぇか、バカヤロー!『サランドラ』って(タイトルは)何なんだ!」って言って、バーンと看板を蹴飛ばしたりとか、そういう事件が起こった作品なんです。とはいえ、この作品ちゃんと見どころはちゃんとございます。実はこれはけっこう重要な作品でございまして。こういうことです。
宇多:「とは言え、ホラー映画の巨匠ウェス・クレイヴン監督の2作目。田舎ホラーの古典」。後に『エルム街の悪夢』とか『スクリーム』とかを撮る、ホラー映画の巨匠・ウェス・クレイヴン監督の監督2作目です。いわゆる「田舎ホラー」というジャンルがあって、アメリカではめちゃめちゃ古典化してて。だからリメイクもされるというような作品なんですね。ということで、この映画の中で一番盛り上がるシーンを。
コミカルから一気に大惨事へ!
(『サランドラ』の映像を観ながら)
宇多:(人間を食べる男が)家族のキャンピングカーに入ってきちゃって、赤ちゃんをね。
玉:これはヤバかったよね。
宇多:「赤ちゃんの肉は柔らかくておいしいから」とか言うんですよ。
玉:そう!
宇多:あっという間にいろんなことが起こります。
玉:うわー!
宇多:どんどん、あっという間に大惨劇が…。
玉:田舎ホラー!
宇多:ずっと、割とのんびりしたタッチできている中で、1時間くらいで突然これが起こるので、めちゃめちゃびっくりするという展開でございます。ということで、先ほどのジョギリ・ショック。ジョギリは、大きいナイフが出てきたのを、東宝東和という宣伝の人が、なんか地味だからこういう感じのホラーに見せちゃおうっていうことで、ジョギリって勝手に名付けただけ!
玉:名付けだけ!
宇多:『サランドラ』というタイトルなんて、なんの意味もないから。
玉:本当だよ!
キャッチコピーも映画の楽しみ
宇多:ということで、この東宝東和さん、当時いろんな宣伝展開をしておりまして。
玉:宣伝文句あったね。
宇多:こちらの本でございます。斎藤守彦さんという方が洋泉社から出している。
玉:面白いよ、これ。
宇多:『映画宣伝ミラクルワールド』。1980年代当時とかの独立系、東宝東和とか日本ヘラルドとか、そういうところがいろいろ知恵をこらして宣伝の数々をしていたということを詳しく書いてある本がありまして。
玉:ほうほう。
宇多:例えばこんなものがございます。『カサンドラ・クロス』(1976年)。
宇多:当時『キングコング』が公開されて大ヒットしているその横で、わりと地味めの政治サスペンスみたいなんだけれど、なんかものすごい大げさな感じで売っていて。白い防疫服に機関銃のカサンドラ軍団が、有楽座前のキングコングガールズを乱射して倒す、みたいな。そういう宣伝をやったりして。
玉:キングコングガールズっていうのもいたんだよ。
宇多:翌日のスポーツ紙には、「コング落ちる」の見出し。
玉:アドバルーンですよ。
宇多:『キングコング』とは作品の規模が全然違う。ちなみに、『キングコング』そのものも割と張りボテ大作なので、どっちもわりと張りボテだったっていう(笑)、そういうのございますけれどね。あるいは『サンゲリア』。
玉:出た!『サンゲリア』。
宇多:ホラー映画の『サンゲリア』。マスコミにおすぎの血をインクに混ぜた「死写状」を配布。
玉:なんでおすぎさんなんだろう。
宇多:おすぎさんなんだ。
玉:ピーコじゃ駄目だったのかなって話だよ。
宇多:「上映中のショック死に備え、来場者全員に1000万円のショック保険を用意」。こういうので話題づくりをする。
玉:そうそう。
宇多:さらに、この映画を観て死んじゃった場合、ハワイ・オアフ島に墓地を用意してます。
玉:本当かよ、おい。
宇多:なんで墓地、なんでハワイに行かなきゃいけないのってね。
玉:こういうのにダマされてたんだよな、俺たちな。
宇多:でも、そういうところが面白かったんですね。観に行って、「全然こういうの出てこねぇじゃねぇか!」と。こういうのも込みでの映画の楽しみでございました。こちらの本『映画宣伝ミラクルワールド』も詳しいので、ぜひご覧ください。そして、田舎ホラーの古典『サランドラ』は2月9日にBlu-ray、DVD出ますので、ぜひ興味があったらご覧くださいませ。
芸能界の驚きのキャッチコピー
「芸能界にもね、さまざまなキャッチコピーを付けられるんです」と、今夜は玉さんが芸能人のさまざまなキャッチコピーをピックアップ。「和製シリーズ」「年齢シリーズ」「ちょっとシリーズ」と数々の迷キャッチコピーを紹介しました。
宇多:ということで、来月もオススメ映画を紹介していきます。
宇多・玉:以上、水曜バラいろショーでしたー!
■オトナの夜のワイドショー!「バラいろダンディ」番組公式サイト
(月〜金曜日 21:00〜21:55放送)
※記事向けに一部のトーク内容を補足・割愛しています。
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