【〇〇と映画】vol.1 JUNERAY(ジューンレイ)

編集部が今気になる人に、インスパイアされた映画やベストムービーを語ってもらう新企画【〇〇と映画】がスタート。JUNERAYさんのベストムービーは、“近未来SFアニメーションの金字塔”のあの作品。

編集部が今気になる人に“映画”を語ってもらう新企画、【〇〇と映画】。記念すべき第1回目は、お酒と花を愛するライター・JUNERAYさんに、インスパイアされた映画とベストムービーに加えて、映画のお供をご紹介していただきました。

JUNERAY (ジューンレイ)

オモコロやデイリーポータルZなど、幅広いメディアで活動中のライター、フリーバーテンダー、フラワーデザイナー。2018年より一般社団法人日本ソムリエ協会最高技術顧問の剣持春夫に師事し、同協会認定ワインエキスパート、及びクラフトビアアソシエーション認定ビアテイスターの資格を持つ。ライター業の傍ら、酒造で蔵人としても活動。前職がフローリストとバーテンダーであり、酒と花についての記事を多く執筆。飲食店やメーカーと共にドリンク開発も行なっている。

飽き性で多趣味。多彩なキャリアのきっかけ

――ライター、フリーバーテンダー、フラワーデザイナー、さらにはイラストなど、様々な分野でクリエイティブなお仕事をされているJUNERAYさん。こういったキャリアの積み方をされている方は珍しいと思うのですが、どういう経緯で現在のスタイルになったのですか?

JUNERAY まずざっくりベースの話をすると、すごく飽き性なんです(笑)。“毎朝同じ時間、同じ仕事、同じ場所”を続けることが苦手で。今のメインの仕事はライター業なので、家でもできるし、必要であれば色んな場所で働くことができるので、天職だなと思います。

その傍ら、フリーでお酒関連の仕事やフローリストをやっている経緯については、本当に偶然の積み重ねなんです。

――「会社勤めは向いてなかった」と思ってから、現在のようなお仕事を始められたのですか?

JUNERAY 大学を卒業したての頃、何がしたいのか分からなくなって海外に行ったんですね。あみだくじで行き先を決めて。

フィリピンで半月ほど島を転々としていたのですが、海外に行く前にお話しをしていた外資系の会社からお声がけをいただき帰国しました。でも実際に働き始めると、忙しくて身体を壊してしまいまして。そんな中、会社の最寄駅にあった大きめの花屋の前を通った時に「このまま会社にいかずに、花屋になろう」と突然思いたったんですよね。それがきっかけだったと思います。

会社を辞めて花屋で働き始めたのと同時期に、ワインショップでもアルバイトを始めました。お酒もお花も元々好きだったのですが、ワインって普段からどう選んでいいのか分からなかったので、どうせなら勉強したいと思って。

そこからワインにどっぷりとハマってソムリエ協会の資格もとったのですが、もっとお酒のことを勉強したくてバーテンダーをはじめて、そうやって二足の草鞋を履きながらライターの仕事も始めたりと、だんだんと今のスタイルに落ち着いていきました。

――「花屋になろう」のきっかけが衝撃的です。それを機に興味の幅がどんどん広がって、現在のようなスタイルに落ち着いたのですね。興味のあることに“広く深く”潜っていけるのは、一種の才能だと感じます。

JUNERAY 恐縮です、ありがとうございます。オタク気質なのもあるのですが、飽き性で多趣味なので、興味があることはとりあえずやってみることが多くて。でもこういった経験を仕事に活かせているので、本当にありがたいです。

インスパイアされた映画

――インスパイアされた映画に『バレンタインデー』(2010)を挙げてくださっていますが、こちらはお花屋さんの青年を中心にバレンタインデーの1日を切り取った恋愛群像劇ですね。

JUNERAY 実家が少し変わっていまして、いつもテレビでWOWOWが流れていたんですね。それで高校生の時に偶然観たのが『バレンタインデー』で、アメリカでは「一年で一番お花屋さんが忙しい日」だというのを何故かすごく覚えていて。

猛烈に忙しくて事故まで起こしているのに、映画自体はすごくハッピーな雰囲気で温かい気持ちになれる作品として心に残っていたのですが、実際に自分が花屋で働き始めると、繁忙期にあんなにハッピーでいれることは凄いことだと思いました(笑)。

劇中で、花屋の青年が「昔、売れ残った花でアレンジの練習をしていて、“誰かが君を愛してる”って書いたメモと一緒にそのへんの家の玄関に置いたんだ。」というセリフがあるんですね。

花屋に来る人は基本的にハッピーな気持ちでいらっしゃることが多くて、花屋の本分って“誰かの幸せを祈る”ことだなと、『バレンタインデー』を見るたびに再確認します。子供にお花あげちゃう気持ちわかるな〜とか、幸せな人をみてこちらもハッピーになれるのが、花屋のいいところですね。

――なるほど。『バレンタインデー』を通して、花を扱う喜びだったり楽しさを再確認できる、まさにインスパイアを受けた1作ですね。他にも、何か影響を受けた作品はありますか?

JUNERAY そうですね。またベクトルが変わるのですが、憧れからか“THE・天才”が出てくる映画も好きで、その点でいうと『キングスマン』(2014)にも影響を受けています。ドラマですが『クイーンズ・ギャンビット』(2020)もそうです。

『キングスマン』は、天才が順調に道を駆け登る爽快さと、華麗に試練を突破する強さが魅力的で、最初から最後までカッコいいんですよね。少し悩んでいた時期に観た作品で、「私も何かを頑張りたい」だとか「やりたいことをやろう」と動き出すきっかけになりました。『クイーンズ・ギャンビット』も、チェスの才能が開花した孤児の少女が、心に傷を抱えながらも男性優位の世界でのしあがっていく物語で、こちらは共感もあったりとエンパワメントされる部分が多くて、迷っている時に背中を押してくれる作品です。

ベストムービーは、“近未来SFアニメーションの金字塔”のあの作品

――アニメーション映画が好きだと語るJUNERAYさん。今回挙げていただいたのは、『イノセンス』(2004)、『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』(1995)、『アキラ AKIRA』(1988)の3本。どれも近未来SFアニメーション作品として名高い作品ばかりですが、ベストに入る理由を教えてくだい。

JUNERAY そうですね。実写映画も好きなのですが、私は少し人間の顔に対して緊張してしまう所がありまして。時々、自分が俳優さんを観ているのかストーリーを観ているのかわからなくなり、一瞬冷めてしまうことがあります。その点、アニメーション作品では人の顔を認知するのに必要なパーツだけが表情豊かに描かれているので、純粋に心から楽しみやすいのかもしれません。

先ほどあげた『キングスマン』でも言えることですが、私は過剰な演出がある派手めな作品が好きな傾向にあるので、アニメーションならではのスケールの大きさだったり、隅から隅まで“必要な情報しか描かれていない”ことへの感動があって。

この3本は、アニメーション技術が今のように発達していない時代の作品なのに、世界観の作り込み具合が信じられないほど緻密で、セリフなんかも現代人が絶対に言わないような哲学的な言い回しだったり、その動きは物理的にありえないでしょう! みたいな所をきっちりとやってくれるところが、正当な創作としてロマンを楽しめる点だと思います。制作の方々の力と努力を想像すると、本当に感動です。

――確かに、現代のアニメーション作品とはまた違ったスケールの大きさであったり、作り手の技術に感動しますよね。挙げていただいた中では『イノセンス』が一番新しい作品ですが、これはいつ頃に観られたのですか?

JUNERAY 『イノセンス』を初めて観たのは小学生の頃で、「この人たちが何をいってるのか全くわからない」といった衝撃的な体験として良く覚えています。それでも、作品の雰囲気に惹かれて何度も見返して、意味がわかった時の気持ちよさや、考えさせられる作品の魅力を知ったきっかけの作品だったと思います。

――小学生の頃に観ても“何これ、カッコいい”とニュアンスで受け入れられる程の絵やセリフの引き、たしかに…! その後の好みに大きく影響を与えた作品と呼べますね。

JUNERAY 他の2作品に関してもやはり同じことが言えて、緻密な絵の美しさだったり、過剰な演出に難解なストーリー展開、セリフで多くを説明しない大人っぽさみたいな物にどうしても惹かれてしまって。今思えば、普段からセリフが印象的な作品を好んで観ているのも、この時期に観た少し大人なアニメーション作品に影響を受けているんだと思います。

あと、3作品とも日常的にサウンドトラックを聞いてしまうほど音楽が良い点も、ベストの理由の一つです。AKIRAの劇伴は、2020年に山城祥二さんが文化庁メディア芸術祭で功労賞を受賞されていたりと、人気の根強さに頷けます。近未来SF作品なのに、BGMは民族音楽と機械音をミックスしたようなプリミティブな音楽といった二極性って、アニメーション作品だからこそ世界観が成立するというか、絶妙な相性なんだなと思います。

――近未来SFアニメーションの金字塔的作品が持つ、絶妙なバランス感。難解だからこそ何度も見返したくなる魅力が詰まった作品を、ちょっと背伸びしながら反復して大人の階段を登る感じ、わかります。

JUNERAY 根がオタク気質なので、丁寧に説明される作品よりも自分なりの解釈ができるような、想像の余地がある作品の方が好みなんですね。好きだと直感したものを掘り下げてアウトプットする癖はきっとここから来ているんだなと思います。

With Movie -映画のお供-

――JUNERAYさんが映画のお供に紹介してくれたのは、【スロージン オンザロック with オレンジピール&ローズマリー】。魅惑的な赤いリキュールに、添えられたローズマリーとオレンジピールの爽やかな香りも楽しめそうな一品です。こちらはどういったカクテルなのですか?

JUNERAY スロージンとは、蒸留酒のジンにスローベリーというスモモの一種を加えてつくられるリキュールです。ジンよりも度数が低く、梅のような甘酸っぱさがあり、ジンが苦手な方にもおすすめ。適当な大きさのタッパーに水を張って凍らせれば、自宅で大きなロックアイスをつくっておくことができます。

グラスに大きなロックアイスを1つ落としたら、スロージンを45ccと、お好きな柑橘やハーブを飾って完成。大きな氷は溶けづらく、映画を観ながら飲んでも水っぽくなりません。香り高いスロージンを片手に、ゆっくりとした時間を楽しんでいただければと思います。

――なるほど、まさに映画のお供にピッタリですね。作り方のコツなどはありますか?

JUNERAY 氷をタッパーで作る場合は、まな板の下にタオルを引いて包丁で割ると簡単です。ちなみに、ハーブは意外となんでも合うので、ローズマリーがなければバジルなんかでもOKです。柑橘はミカンでもレモンでも美味しいですよ。ぜひ、気軽にトライしていただけると嬉しいです。

――代用がきくのも嬉しいです。是非、FILMAGA読者の皆様も参考にしてみてくださいね。JUNERAYさん、ここまで楽しいお話を聞かせていただき、ありがとうございました!

-JUNERAY(ジューンレイ)-
※2022年9月28日時点での情報です。

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