バイオレンス映画と言えばハリウッドが真っ先に思い浮かぶ方も多いと思いますが、今、日本のバイオレンスが非常に熱いです。近年では園子温監督、三池崇史監督、瀧本智行監督、熊切和嘉監督などを筆頭に、暴力描写の巧い監督が続々と表立って活躍しています。
ということで、強烈なバイオレンス描写が持ち味の日本映画を8本紹介したいと思います。
北野武と5人の男が大暴れ!『GONIN』(1995)
それぞれに複雑な事情を抱えた5人組が暴力団の大金を強奪し、報復に来たヒットマンと対決するバイオレンス・アクション映画の金字塔です。
本作の魅力は激しい暴力描写にとどまらない、石井監督らしい耽美的で重厚な演出にあります。社会のはみ出し者として生きるしかない不器用な男たちの最後の大暴れには男泣き必至。北野武と木村一八のスナイパーコンビも色んな意味で強烈なため目が離せません。
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】緒形拳と5人の女が大暴れ!『GONIN2』(1996)
「えっ、『GONIN』って続編があったの?」そうなんです。
本作は『GONIN』の翌年に同じく石井隆監督によって公開されました。けれども1作目との繋がりはほとんどなく、本作だけで1つの独立した作品になっているので前作を観ていなくても楽しめます。
暴力団を敵に回した5人の人間が追っ手をかわしつつ逃走するという筋書きは前作と同じですが、本作はメインキャストの5人組が女性である点、また暴力団に妻を強姦され自殺に追いやられた緒形拳の復讐がストーリーに絡んでくるなど少しひねった作風になっています。
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】またまた北野武が大暴れ!『その男、凶暴につき』(1989)
今では世界のキタノと呼ばれるまでになった北野武の監督デビュー作です。自身も孤高の暴力刑事・我妻役として主演を果たしました。
冒頭から、浮浪者を襲撃した少年に対して北野武が暴行を加え自白を強要するなど、衝撃的な暴力描写が目白押しです。本作の後も『3-4X10月』『ソナチネ』『HANA-BI』などバイオレンス映画を連発していますが、彼の映画は常に「暴力」と「虚無」が背中合わせであることを物語っています。決して暴力を肯定しているわけではありません。
個人的に、本作で武と死闘を繰り広げた白竜が『アウトレイジビヨンド』では味方として出所した武を迎えに来るシーンに、彼の死生観を垣間見たような気がして感慨深くなりました。
北大路欣也が大暴れ!『狼と豚と人間』(1964)
『仁義なき戦い』シリーズよりも10年前に深作欣二監督が撮ったバイオレンス・アクション。
何と言っても注目すべきは暴力団幹部の三國連太郎、一匹狼の高倉健、チンピラの北大路欣也の三兄弟!こんなにも濃くて暑苦しい三兄弟が三千世界のどこにいるのでしょう。この兄弟たちのドラマを軸に、壮絶な現金強奪事件の顛末が描かれます。二人の兄貴を完全に食ってしまっている北大路欣也の演技に目が離せません。
荒削りではあるものの、海外のフィルム・ノワールを彷彿とさせる描写もちらほらと見られ、深作監督の嗅覚の鋭さを感じる一本です。
渡瀬恒彦が大暴れ!『狂った野獣』(1976)
先述の深作監督と並んで東映実録路線の騎手を担った中島貞夫監督の怪作。
宝石強盗、駆け出しの女優、不倫中の教員、チンドン屋の一行など一癖も二癖もある乗客の乗ったバスがバスジャックされ、警察との激しい攻防戦が繰り広げられます。更にバスの運転手が心筋梗塞を患っているというのだからさあ大変。
中島監督お得意のバイオレンス描写もさることながら、乗客たちのコミカルな掛け合いも楽しめる一作です。
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】白都真理が大暴れ!『人魚伝説』(1984)
復讐映画と言えば韓国のサスペンスを連想しますが、日本にも想像を絶する復讐映画があります。
2時間ドラマなどの常連でもある白都真理が、原子力発電にまつわる陰謀に関わり殺害された夫の復讐をするバイオレンス作品です。原発竣工パーティーにおいて権力者たちを次々となぎ倒していくさまはスプラッター映画顔負け!「人魚」の名を冠しているように水中の描写が非常に美しく、また血の海の描写も鮮烈です。
2014年にHDデジタルリマスター版が発売され鑑賞しやすくなりました。
ビデオマーケットで観る【初月無料】加藤雅也が大暴れ!『荒ぶる魂たち』(2002)
今ではすっかり暴力映画の名手として名を馳せている三池崇史監督の個人的な最高傑作です。
バイオレンス群像劇の名作『仁義なき戦い代理戦争』を彷彿とさせるアウトローたちの駆け引きが見事で、更に芸術性を加えた仕上がりになっています。また、松方弘樹や曽根晴美などの東映実録映画組、白竜や遠藤憲一などのVシネマ組という新旧やくざ映画俳優の総出演も大きな見所の一つですね。
現在まで日本ではDVDが販売されておらず、鑑賞するには海外版DVDかVHSという方法しかないようです。
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】もうなんか全員で大暴れ! 『地獄でなぜ悪い』(2013)
2015年には5本の新作映画を撮りあげるなど、今もっとも波に乗っている園子温監督。
本作はやくざの親分が通りすがりの青年や映画マニアを使って愛娘主演の映画を作ろうとする作品です。任侠映画、カンフー映画、アメリカン・ニューシネマなどあらゆる映画にオマージュを捧げた荒唐無稽でエモーショナルなどんちゃん騒ぎと言えば分かりやすいでしょうか。
もうとにかくクレイジーです。これだけの血の海なのにR指定がなぜかPG12なところもクレイジーです。その中身はぜひご自身の目でお確かめください。
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】おわりに
「バイオレンス映画はハリウッド!」と思っていた皆さん、一度日本のバイオレンス映画を手に取ってみてはどうでしょう。現実世界での暴力はよろしくありませんが、映画の中では思う存分に暴れてほしいものです。特に現役で頑張る監督さんたちには、日本の骨太なエンタテイメントを盛り上げていってほしいですね!
※2020年10月27日時点のVOD配信情報です。