モラルなんぞドブに捨てろ!報道パパラッチを描く異色スリラー『ナイトクローラー』

映画が好きなただのBar主人

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ジェイク・ギレンホール(ジレンホールとも表記されますがここではギレンホールで)は若手俳優の中で筆者が一番お気に入りの俳優です。

特に近年は『プリズナーズ』『複製された男』『ミッション:8ミニッツ』『エンド・オブ・ウォッチ』とスリラー作品を中心にどれも質の高い作品に出演し続けており、彼はとても“信頼できるヤツ”なのです(上から目線)。

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そんな彼がまたまたこの最新作『ナイトクローラー』で我々に強烈なアッパーカットをお見舞いしてくれました。私としては今年度日本公開作でも最高峰の一本ともいえる内容。ジェイク・ギレンホールさんよ、またやってくれたではありませんか!

人間性・倫理観など介入する余地なし! “イイ人”なんて1人もいない!!

本作はあまり映画という媒体で取り上げられることがない「映像パパラッチ」を題材にした作品。とあるきっかけからこの「パパラッチ」の仕事に興味を持ち、成り上がっていく1人の男と報道の裏側、そしてその狂気を描いています。

凄惨な事故現場に誰よりも早く駆け付け、人が瀕死でも手助けもせず、ひたすらに“良い画”を撮り続ける主人公ルイス。そしてその画を喜んで採用しニュースで使うテレビ局… 報道の裏側の現実を観る者は叩きつけられます。

人の死や不幸を「商品」として扱う“仁義なき”ならぬ“倫理なき”業界事情に「えげつない! 」と思っていても徐々に観ている者の道徳観をも麻痺させていくストーリーと演出は圧巻の一言。“イイ人”ではとてもやっていけない常軌を逸した世界に閉口してしまうでしょう。

ルイスはある意味映画史に残る不気味な主人公?

ルイスは冒頭からいきなり盗みを働いたり警備員をいきなり殴り倒して金品を強奪したり自転車を盗んだりとクソヤロー全開!学歴もコネもないのに自意識過剰で向上心は人一倍強く「自分は勤勉だ」と主張する、いわゆる「勘違いなうざい奴」 なのです。

それでも持ち前の図々しさと自尊心でのし上がっていくんだからある意味痛快。徐々に狂気に陥るわけではなくそもそも彼は“初めからキレて”おり、たまたま天職にありつけただけというサクセスストーリー。こんな主人公なかなか見当たりません!

ジェイク・ギレンホールは勿論、レネ・ルッソの名演も本作の見所

不気味なMAD野郎である主人公ルイスをジェイク・ギレンホールが名演を通り越して怪演しており、そのインパクトは圧倒的。頬がこけ、目がギョろつき、うざく図々しい不気味なキャラを実に自然体で演じており、本作の魅力は彼の演技あってこそ。

近年のギレンホールの役ではサイコ野郎を追っかける側が多かった気もしますが今回は本人がサイコ野郎。ルイスにとってかなり年上のレネ・ルッソ演じる女性ディレクターに関係を迫ったりするんですがやっぱり少しおかしい。単なる年上好き?いやいや年上過ぎ!

またある意味ジェイク・ギレンホールよりもインパクトを残したがレネ・ルッソ。90年代を中心に『リーサル・ウェポン』シリーズや『トーマス・クラウン・アフェアー』等で活躍した彼女がまたスクリーンに戻ってきて嬉しい限り。ルイスの持ってきた悲惨な映像を観て、瞳を輝かせて「素晴らしい…」と呟くシーンは喝采モノ!

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出典:https://filmarks.com/pc/detail/22463

長年のブランクを経て「マイティ・ソー」で復活しましたが本作でも野心を燃やすテレビ局の女性ディレクターを存在感たっぷりに演じきっています。そしてレネ・ルッソがもう60歳を超えているのに驚き!若い頃とはまた違う味のある演技を見せており今後も目が離せません。

ダン・ギルロイ、初監督作とは思えない脅威の完成度

監督は『トゥーフォーザマネー』『落下の王国』等で脚本を手がけたダン・ギルロイ(レネ・ルッソの夫)。なんと本作は彼の初監督作品。しかし初監督とは思えないぐらい演出は冴え渡っており既に貫禄さえ感じます。

アカデミー賞脚本賞にノミネートされた本作の脚本は折り紙つきなのは勿論、夜の街を映し出す、薄暗さを基調としたダークな映像も雰囲気・緊張感共に抜群。カーチェイスシーンの迫力も超一級品!

“都会の裏側の狂気”、“バイオレンスにひた走る孤独な男”、“やたら車に乗る”という点で名作『タクシードライバー』、近年ではニコラス・ウィンディング・レフン監督の『ドライブ』が雰囲気的に近く、この辺りの作品が好きな方なら間違いなくお勧め。違う点は主人公がどうしようもないクソヤローであるという点でしょう。

しかし「他人に慈悲もない図々しい酷い人間こそ商売でのし上がっていく」という現実を我々は見せ付けられます。現代におけるひとつのサクセス・ストーリーとも言えますが、いつの時代でも“人の不幸は蜜の味”なんでしょう。

公開から1ヶ月近く経っておりますが、その出来の良さからリピーターも続出している本作。連休突入ということで話題作が目白押しな中、刺激が欲しい方には文句無しにお勧めの極上の一本! ロングランヒット中ですのでまだ未見の方は是非劇場でご鑑賞あれ。きっとあなたもルイスの会社に就職したくなる……はず。

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  • 徳永悠
    3.6
    人の残虐なシーンを目の当たりにし 強烈なニュースと引き換えに ビジネスと倫理・道徳の境界線を越えていく ビジネスで女性キャスターをも、、、 ビジネスとお金の力を感じる 必死に食らいつく 信念 プロとはある意味そういうものなのだろうか
  • さやか
    4.8
    面白かった!仕事って大変なんだなって思った 主人公怖すぎ、生い立ちとかが全然分からないのがまた怖い、、
  • しょご
    3.7
    サイコ感ある主人公の行動になぜか惹かれる不思議な映画。 やってることはクズの極みなのに不快感がない。 道徳的なことは置いておいて、信念と行動力がある人間は強いなと。
  • 4.5
    めっちゃおもしれー カリスマとは名ばかりの独善的な人間が資本経済の上位層に蔓延っている現状に警鐘を鳴らしているように思えた。 ずっと「はよ痛い目みろ!」と念じていたけど、心のどこかでほんの少しだけ応援してる自分もいた。 ルイスはクソ野郎だけど自分の職務を決して妥協しない。 まっすぐ頑張っている人間はどうしてもついつい応援したくなってしまうものなのかもしれない。
  • 映画は最高の娯楽
    4.1
    視聴率の為ならどんな暴力的な映像でも買い叩くメディアと、手段を選ばない成り上がりカメラマンが出会った時... 撮れ高の為なら犯罪をも辞さないカメラマンの狂気。 全く好きになれないキャラだが、その圧倒的な存在感に飲み込まれる。 ジェイク・ギレンホールの睨み付けが怖すぎる!目力!特に根拠はなくとも、それっぽい内容を早口で言って相手を圧倒し捲し立てる。倫理観ゼロ、行動力だけはピカイチ、饒舌で嫌な奴を最初から最後まで演じ切った怪演。 ここまで外道だと逆に潔くて面白い。
ナイトクローラー
のレビュー(43779件)