【解説】なぜ 『13の理由』が2017年世界で最もツイートされたドラマになったのか?

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13の理由』は、公開から1ヶ月でなんと1,100万ツイートされるという記録を達成。2017年、最も多くツイートされ、SNS世代を中心に世界中でも話題となった。第5回にわたって、本作の魅力を伝える連載企画。3回目となる今回は、なぜ2017年、世界で最も話題のドラマになったのか、その“理由”を5つに分けて解説する。

1. 《イッキ見続出!》中毒性のある “ソーシャルチェーン・ミステリー”という手法

物語の語り手である、ヒロインが最初から死んでいるという設定は極めて珍しい。ヒロインであるハンナがなぜ自殺したのか? その事件が起きるまでの過程を、自殺した本人が1話ごとにテープの中で明らかにする。彼女が死を選んだ「13の理由」はそれぞれ彼女の周りの人々に関係するもので、カセットテープを聞き終えたものは、自分の次の番号の人にそれを渡して行く。

“ソーシャルチェーン・ミステリー”という、全く新しい手法で展開されるストーリーが、多くの人たちを惹きつける要因だろう。しかも、彼女がカセットテープに録音した言及が全て正しいとも限らず、彼女が命を絶つまでに起きた過程一つ一つがいかにしてチェーンのように連鎖していったのか、テンポよく進むストーリーも相まって、明かされる秘密を早く知りたいと夜も眠れなくなる中毒性のあるドラマだ。

2.《誰かと話したくなる!》現代のSNS社会における人間関係のリアルな描写

本作は、ジェイ・アッシャーの同名ベストセラー小説「13 Reasons Why」を映像化した、若者のいじめ、レイプ、自殺を題材にしたティーンドラマだが、悩み多き10代若者の等身大のリアルな描写が称賛されている。自殺したハンナの視点だけでなく、そこまで追い込んでしまった登場人物一人一人にフォーカスを当てていることが素晴らしい点。

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決して極端な展開が起きるわけでなく、登場するキャラクターの家族構成や抱える問題を誠実に、彼、彼女らが感じる心の痛みを、私たち観客側が共感できるように映し出される。SNS時代のいじめ、ストーカーや性的暴行、自傷行為、うつ病、LGBTや古い女性観に基づく非難や偏見といった要素から目をそらすことなく、今を生きる複雑な若者の悩みに寄り添ったストーリーこそが、もう一つの魅力なのだ。

10代の若い人たちは、成長段階で、経験が少ないこともあり、物事を正しく理解することができないことが多い。「人の気持ちを考える」ことがこんなにも難しいということ、私たちの言動全てが、周りの人に大きな影響を与えるということを、このドラマは教えてくれる。大人は、軽く考えがちだが、若者は大人と違って今の苦痛が永遠に続くと思ってしまうものだ。されたことに対する苦しみや悩みを恐怖のあまり、人に打ち明けることさえも困難な人はたくさんいる。

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だからこそ、孤独を感じている人や今悩み苦しんでいる人に見て欲しいし、自分の周りにいる、大切な人が取り返しのつかない結果を生む前に、本作を見るべきだと強く訴えたい。「あなたは決して一人ではない」という一貫したメッセージ性を持ち、事実このドラマによって助けられたという感想が世界中の若者より送られている。

「最近どう?」と声をかける、そんなほんの小さな行動を起こすことによって、救える命があることを理解できるドラマなのだ。

3.《リアルな演技》きっと誰かに共感する。繊細で誠実なドラマ

とにかく、キャラクターの描写が自然だ。登場人物の誰かに感情移入できるし、きっと自分の周りにいる人と重ねて見てしまうだろう。製作総指揮を務めたセレーナ・ゴメスは、キャラクターの背景を描くにあたり、説教臭かったり、必要以上に美化したものにせず、真実を伝えることを重視したという。「誰もがキャラクターの誰かに共感できる」点が本作の魅力の一つ。

ハンナを演じるオーストラリア出身のキャサリン・ラングフォードをはじめ、主要キャストはほとんど無名の若手であるからこそ、先入観を持たずに、観ることができる。結果、キャサリン・ラングフォードは、その年のゴールデン・グローブ賞女優賞にノミネートされた。

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【イラスト図解】ドラマ『13の理由』キャラクター紹介!あなたは誰に共感する?

4. 《サントラも魅力!》80年代と現代が入り混じった演出

先に書いたように本作は、現代を描いたドラマだが、至るところに、80年代の空気を感じさせる演出がされていることが特筆すべき点だ。

監督のトム・マッカーシーは、本作の主人公たちと同世代となる若い視聴者について、「デジタル世代の若者たちがカセットテープというアナログな手法でメッセージを伝えていくアイディアは、彼らの心を掴むポイントとなった」とコメントしている。今は手に入りづらい、カセットプレーヤー“ウォークマン”を探す苦労をして、一本一本片面ずつ聞いていくという面倒な手法が、デジタル時代の便利さに慣れ親しんでいるからこそ、一層事を重く受け止めることに成功している。

さらに、ドラマを盛り立てる音楽にも印象的な80年代の楽曲が多数使用されている。まず、セレーナ・ゴメスは作品のプロデュースだけでなく、1982年イギリスで発表されたヤズーの名曲「 Only You」をカバーし楽曲にも参加。最終話、クレイがポーター先生と話した後、廊下に出るシーンで使用される。

また、第5話、ハンナとクレイが高校のダンスシーンで流れる曲、ロード・ヒューロン による「The Night We Met」もロマンティクでシーンにマッチしている。

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同じく、ハンナとクレイの第11話の大事なシーンで流れるハミルトン・リーサウザー+ロスタムの「A 1000 Times」も印象的だ。

そして、第1話、クレイがトニーに家まで車で送ってもらうシーンで車のステレオで流されたジョイ・ディヴィジョン「Love Will Tear Us Apart」。1980年にバンドのヴォーカルであるイアン・カーティスが自殺してしまったことと、「愛が僕たちを引き裂く」という歌詞が、ハンナとクレイとの関係性を強くイメージさせるものになっている。ウルトラヴォックス「Vienna」は、13話、決意するハンナのバックに流れる。

他にも、ニール・ヤングの「Hey Hey My My」のカバー、クロマティックスによる「into The Black」 は第3話、アレックスがプールに落ちるシーンで、第12話、ハンナがある忘れない出来事があったパーティーから帰宅した際にかかる音楽は、エコー&ザ・バニーメンの「The Killing Moon」のカバー曲が、どちらも効果的に使用されている。

ここでは紹介しきれないが、その他どの曲もドラマのそれぞれのシーンとリンクして私たちの心を掴む。

5.イッキ見してしまうNetflixならではの視聴環境

13の理由』が世界で話題になった最後の理由として、Netflxが全13話を一挙に配信したことにもある。ビンジウォッチング(イッキ見)する人が続出し、しかも世界同時配信することにより、SNSなど中心にネット上でドラマの内容について世界中で様々な議論が生まれた。

さらに、Netflixの新作の人気傾向として、配信2日後に人気のピークを迎え、2週間かけて徐々に下降するのが一般的だが、本作は配信から1カ月経っても、ピーク時に匹敵する人気を維持したとのこと。人気が持続し、口コミによって注目を集め続けた他に類のない作品になった。

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最後に、本作の脚本を務めたブライアン・ヨーキーは来日の取材にて、シーズン2に対して以下のように語った。

「皆さんは、ハンナの事についてもっと知る事になります。そして僕の事を嫌うかもしれません。でも、許してくれるはず。何故なら、人間というものは複雑であるという事を理解してくれるからです。」

衝撃のラストを迎えたシーズン1だったが、より一層緊張感の高まる事が考えられるシーズン2の配信が待ちきれない。まずはシーズン1を未視聴の方は、ぜひこのゴールデンウィークの大型連休の機会に、シーズン1を視聴することをおススメしたい。きっと、何か語りたくなるパワーを持ったドラマであることに気づくだろう。

◆ Netflix オリジナルシリーズ『13の理由』information

13の理由

あらすじ:ある女子高生が謎の自殺を遂げた後、1人の同級生の元に、彼女が生前に録音した7本のカセットテープが届く。そこには、彼女が死を選んだ「13の理由」が語られていた。

Netflix について
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Netflixオリジナルドラマ『13の理由』連載

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