太陽が沈まないって本当?日本にはない神秘の白夜を体験できる映画12本

映画マニアと呼ばないで

夏りょうこ

今年の夏至は6月21日。

夏至とは二十四節気(にじゅうしせっき)の一つで、太陽暦では6月22日頃。
太陽が最北に寄るため、北極では太陽が沈まず、南極では太陽が昇らない時期となる。夏至またはその頃に行われる「夏至祭」は夏の到来を告げる祭りとして有名で、各国でさまざまな形態があって面白い。

日本では1年で昼の時間が最も長い日として認識されてはいるものの、梅雨の季節と重なるうえ、夜中でも太陽が出ている「白夜」のような現象もないため、あまりピンとこないのでは?

そこで今回は、白夜や夏至祭が登場する作品を12本ご紹介しよう。

アナとオットー』(1998)

何度もすれ違う愛

アナとオットー

子供の頃に出会ったアナとオットーは、愛し合いながらも運命のいたずらですれ違い続けてしまう。

お互いに恋心を抱いていた2人が義理の兄妹になるという思わぬ展開と、離れ離れになってもずっと想いあっている情熱がスペインらしい。信じられないような偶然が何度も起きるのに、微妙にすれ違ってしまうシーンには、やきもきさせられっぱなしだ。

いつかまた必ず会える。そう信じて偶然をひたすら待つアナが、白夜のフィンランドで太陽を見つめている。あら? 太陽が真横に移動? なるほど。太陽が沈まないとはこういうことか。衝撃のラストをどう解釈するかは、あなた次第。

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フィンランド式残酷ショッピング・ツアー』(2012)

夏至祭は人肉祭

フィンランド式

フィンランドの買い物ツアーに参加したロシア人親子に、フィンランド人が次々と襲いかかってくる。

この映画が少年のスマホカメラで撮影されたものであるという設定に、緊張感&臨場感あり。BGMも大げさな演出もなし。まるでドキュメンタリーのようだ。そういった不思議なリアルさで恐怖がじわじわと迫ってくる。

フィンランドでは夏至祭で外国人を食べる習慣があるんだって? フィンランド人にとって夏至は、そこまで特別な日なのかとカルチャーショック(笑)。ほんとうにもう、ロシアとフィンランドの合作だからこそ許されるシャレ。知られざるホラーの傑作かも。

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太陽の誘い』 (1998)

太陽がまぶしすぎて

太陽の誘い

スウェーデンの田舎町で暮らす無骨な男と、美しく都会的な家政婦との愛を官能的に描く。

長い冬を経た夏至の季節は、さぞかし太陽と緑がまぶしいのだろう。閉ざされていた心も気持ちよく解放されそうだ。そんな美しい白夜の時期に、無教養で女性経験のない男と、洗練されたモテ女といういかにも対照的な2人が出会い、惹かれあう。

しかし、これが単なるロマンティックな官能ラブストーリーではないところが、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたゆえん。実は彼女には秘密があり、それが2人の関係にどんな影響を及ぼしていくのかがみどころだ。しっとりしつつもハラハラ。大人の映画である。

劇場版ムーミン パペットアニメーション 〜ムーミン谷の夏まつり〜』(2008)

いつもと違うムーミン

ムーミン

もうすぐ夏至祭というムーミン谷に噴火が起こり、洪水から逃れた住民たちは劇場にたどりつく。

劇場という空間を知らなかった彼らが、避難中にも関わらず嬉々として芝居作りに励むというノリがムーミンの世界。深刻な状況でも落ち込んだりせず、目の前の出来事をマイペースに楽しむ呑気さにホッとする。

離れ離れになってしまう主要キャラクターたちが、それぞれの場所でトラブルに巻き込まれるなどの冒険をする。なかでも、スナフキンがニョロニョロを使って自分の嫌いなヘムルを公園から追い出したあと、子供たちに懐かれて困っている姿が新鮮。パペットの微妙にカクカクした動きとザラッとした質感が印象的で、アニメでは得られない少々ダークな雰囲気が楽しめる。

白夜』(1957)

はかなすぎる恋

白夜

白夜のある晩、友人のいない孤独な青年が、橋の上でたたずんでいる女性に出会う。

ドストエフスキーの短篇小説を映画化。主人公が孤独なだけでなく夢見がちな青年であるため、橋の上で泣いている女性につい声をかけてしまい、その理由を聞いたことで、ますます恋心が募ってきて必死で口説くあたりが、切ないやら痛々しいやら。

「あえなく散る」という表現がこれほどピッタリとくる話はないだろう。束の間だったからこそのロマンチシズム。ああ、白夜にふさわしい恋。彼(イタリアを代表する美男俳優)VS恋人(フランスを代表する美男俳優)が国の威信を賭けた美男対決みたいになっていて、ちょっと面白い。

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南極料理人』(2009)

ストレスには美味しい料理を

南極料理人

南極の観測拠点に派遣された主人公が、隊員たちのため限られた食材での料理作りに奮闘する。

外はどこまでも雪。男だけの共同生活。娯楽もない狭い職場。そんな場所に長い期間閉じこもっていなければならないのだから、楽しみといえば、もはや食べることだけなのである。といっても南極は沸点が低いわ、材料は冷凍と乾物しかないわの厳しい調理環境。そこを智恵と工夫で乗り切る話だ。

役作りのためにちょっと太ったという堺雅人が、日々の食事だけでなく、隊員の誕生日にはローストビーフ、夏至祭にはフランス料理を作るなど、みんなを飽きさせないように苦心する。でも彼らの一番の好物がラーメンだとは、やっぱり男だねえ。

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インソムニア』(2002)

いろいろあって眠れない

インソムニア

白夜のアラスカで少女が殺される事件が起こり、捜査の応援としてロス市警から刑事がやってくる。

インソムニアとは不眠症のこと。白夜が初体験の刑事は、太陽が沈まない明るい夜にとまどいながら事件を追う。その犯人を意外なことに人気コメディアン俳優ロビン・ウィリアムズが演じ、静かなたたずまいが不気味な狂気を漂わせている。

やがて刑事は不眠症に悩まされるようになるが、それは白夜のせいだけではなかった。刑事としての良心と人間としての弱さ。その狭間でどうにもならない状況に陥ってしまう。やや定番の落としどころだが、やり切れない思いが残る結末である。

やかまし村の子どもたち』(1986)

夏が嬉しすぎる

やかまし村の

スウェーデンの美しい自然のなかで育った子供たちが、楽しい夏休みを過ごす。

原作者リンドグレーンが脚本も手掛けた映画。子供が6人しかいないという小さな村を舞台に、彼らが繰り広げるユーモラスでかわいらしいエピソードがちりばめられている。

夏休みは夏至の日からスタートするのか、夏休みと夏至祭が一緒にやってきたことで大はしゃぎする子供たち。みんなオシャレして屋外で飲み食いをしたり、輪になって踊ったり。それはそれは本当に嬉しそうで、夏の到来をそこまで喜ぶなんて日本と違うよなあと思う。でもどこか懐かしさを感じるのは、絵本を読んでいるような気分になるからだろうか。

白夜のタンゴ』(2013)

タンゴはどこから?

百夜のタンゴ

フィンランドの監督アキ・カウリスマキが、冒頭で「タンゴの発祥地はアルゼンチンではなく、フィンランドだ」と語り始める音楽ドキュメンタリー映画。

その説を確かめるべく、ブエノスアイレスを拠点に活動するタンゴ音楽家3人が、フィンランドを旅する。彼らがアルゼンチンタンゴとは微妙に違うフィンランドのタンゴを聴き、演奏家たちの話に耳を傾けているうちに理解と友情を深めていく。その様子はちょっとスリリングで感動的だ。

動物に扮した彼らが、子供たちの前で「物事はうまくいかない」と歌うシーンがある。格好は子供向けに演出しているのに、歌詞の内容が大人向け。すごいな。彼らの旅はこれからも続くのだろうか。

北極のムーシカ ミーシカ』(1979)

役割を受け継ぐ

北極に住む双子の子グマが冒険や試練を乗り越え、親の元を離れて成長していく。

ノスタルジックな絵柄とオーソドックスなストーリーが懐かしく、自然の移り変わりとともに世界を知っていく様子がほほえましい。でも、北極にリスが? 父さんグマが飛行機に襲われてケガをするというバイオレンス的な展開もあり、なかなかあなどれない。

動けなくなった父さんの代わりに、兄グマが北極中に夏の到来を知らせて回る。そしていよいよ夏至祭。しかし、集まった動物たちで盛り上がっているところへまた飛行機が……このしつこい悪魔を追い払う武器が、父さんから受け継いだ「平和の笛」だった。北極の夏至は実際にどんなのだろう。今度は実写で見てみたい。

夏至』(2000)

アジアの夏は湿度高め

夏至

それぞれに秘密を抱える3姉妹が亡き母の初恋を知り、動揺しながらも母の生き方を受け止めようとする。

ベトナム映画のイメージを根底から覆したトラン・アン・ユン監督の前作『青いパパイヤの香り』(93)の流れを汲む作品で、瑞々しい映像と淡々とした語り口が特徴。姉妹の隠された秘密が徐々に明かされていく様も自然な流れであり、ゆったりした音楽に身を任せて踊っているうちに話が終わる。

それまでの混沌とした泥臭いベトナム映画はどこへやら。心地よいカフェでオシャレな雑誌をパラパラとめくっているようだ。その「日本に似ているが実は外国」というほどよい距離感が、若い世代に受け入れられたのだろう。映画というよりアートぽい作品である。

真夏の夜の夢』(1999)

誰が誰を好きなんだっけ?

真夏の夜の夢

森で妖精が惚れ薬をバラまいたおかげで、駆け落ちカップルや役者などを巻き込んだ恋の大騒動が起きる。

ウィリアム・シェイクスピア原作「夏の夜の夢」を映画化。簡単に言うと「魔法の目薬のせいで相手構わず恋に落ちてしまい、人間関係がえらいことになる」という話である。妖精がフワフワした美しい存在ではなく、かなり人間臭くてイタズラ好きという点にご注意。

原題は『WILLIAM SHAKESPEARE’S A MIDSUMMER NIGHT’S DREAM』の「midsummer night」は「夏至前夜」という意味で、妖精が出現しやすい時期なのだそうだ。しかし、日本では「夏至」がイメージしにくいので「夏の夜」になったとか。ゴチャゴチャしたゴタゴタが続いて大団円というお決まりのシェイクスピア喜劇だが、初心者には文章よりも映像の方がわかりやすい。まずはこの映画からどうぞ。

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いかがでしたか?

日本人にとっては映像の中でしか観ることができない白夜。つまり、映画があるからこそ私たちは白夜やそこでの暮らしを観ることができるわけで。

そんな風に外国にいる気分になれるというのも、映画の魅力の1つ。夏至の日には映画を!

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