10月22日から31日の10日間で行われる日本最大級の映画祭、第28回東京国際映画祭の開催が刻々と近付いてきました。
毎年行くという方もたくさんいらっしゃると思いますが、中には一般人が気軽に参加できることをご存知ない方がいらっしゃるのではないでしょうか?
あるいは“国際映画祭”という響きに足がすくみ、行くことを躊躇している方もいらっしゃるかも知れません。
ぼくも参加できると初めて知って「行くぞ!」と決意した時、かなりビビっていました。ファーマルな服装で、革靴を履いて、体臭なんかさせたら追い出されるんじゃないかと。
実際に初日はフォーマルな服装に革靴を履いて参加しましたが、会場に着いてカジュアルで良かったことを悟りました。東京国際映画祭は一切の敷居の高さのない、映画に興味があれば誰でも参加できるフランクな映画祭だったのです。
今回は、まだ東京国際映画祭へ行ったことがない方へ向けて、東京国際映画祭のチケットの買い方や側面的な楽しさや魅力を紹介したいと思います。
チケットは争奪戦!準備が重要!
何年か通う内に会場で映画を観るだけでなく、何を観るか決めてスケジュールを組むのも楽しさの一つになってきました。音楽のフェスでタイムスケジュールを組む感覚と、とても似ている気がします。
さて、他の映画祭で賞を獲ったような注目作ともなると、チケット発売開始から僅か数分で売切れになることはザラです。一旦売切れになってしまうと、キャンセルの有無は当日までわかりません。
当日券狙いをし過ぎると、折角時間があるのに他の優れた作品を見逃す可能性が出てます。そんなことにならないよう、発売開始前に準備が欠かせません。
チケットはチケットボードでラクチン購入
チケットの購入方法には直接電話や劇場窓口で購入という選択肢もありますが、近代文明を活用した方がラクチンです。
チケットボードに登録し、携帯電話、スマートフォン、パソコンから購入できます。
登録さえ済ましておけば、販売開始当日(今年は10月10日の12:00より)に観たい作品の日時、座席、支払い方法を選択し、支払いを済ませれば購入完了です。
その後、チケットボードよりメールが届きますので手順に従って操作すれば、上の画像のようなQRコードを画像として入手できます。
ちなみに、20作品以上のチケットを購入するとQRコードが印字された紙を用意してくれます。有り難い限りです。
もし連れの方がいらっしゃる場合は、その方もチケットボードに登録して頂かなければなりません。登録は簡単なので必ずやってもらいましょう。
また、チケット発売当日、もとい、試合当日の開始直後は、アクセスが超絶混雑するので、焦らず根気良く繋がるまで粘りましょう。
観たい作品は第二候補までチョイス!
激戦必至なのは、土日の全ての上映回と、平日18:00以降の上映回の作品です。それらに該当する観たい作品の購入を後回しにすると、気付いた時には売り切れていることもありますので、油断は禁物です!
また、たとえ売り切れたとしても「売切れたー!」と落ち込んでいる暇はありません。刻一刻とチケットは無くなっていきます。
例えば下の画像のように(昨年度のスケジュールです)、同じ時間帯にはいくつも優れた作品が上映されているので、売り切れた時用に第二候補まで事前に決めておきましょう。

※本年度の作品及び、スケジュールはこちらより確認できますので、ぜひチェックしてみてください!
観たい映画は何か?自分の心にダイブ!
たとえ他の映画祭で既に何らかの賞を受賞していたとしても、必ずしもそれが自分の舌に合うとは限りません。
情報が限りなく少ない状態で上映されますので、最も信用できるのは自分の感性や嗅覚です。
この監督は信用できる!この女優は絶対に観たい!この国の映画は観ないわけにはいかない!なんだこのあらすじ、絶対にヤバい!という具合に自分の経験値をフルに活かして選ぶのがベストではないでしょうか。
ぼくの経験談でいえば、過去に他人の賞賛や推しに同調して作品を選び、悔いが残ったこともあります。なのでここ数年は、自分の感覚を信じて作品を選び、最高に楽しんでいます。
自分はどんな映画が好きか?自分自身の好みを見つめ直すと選ぶのに苦労しませんし、後悔をせずに済みます!
スタンスに合わせて部門から選ぶのもあり!
昨年度は部門・特集が12に分かれ、9日間で計156作品が上映されました。
昨年度ぼくは9日間足を運び、タイムスケジュールをビッチリと組みましたが観れたのは結局33作品でした。つまりどう足掻いたって殆どの作品が観れないのです。
自分自身にダイブした上で、さらに取捨選択が必要になります。爆睡覚悟のチャレンジ精神を上位にするか、はたまた一般公開が決まっている一定水準が確約された作品を選ぶか、決めるのは個人の映画へ向かう姿勢次第です。
チャレンジ精神豊富なコンペティション部門
昨年度コンペティション部門で上映された「草原の実験」や「ナバット」は、ほぼ台詞がありませんでした。そんな作品を大画面で観れのは最高の映画鑑賞ですし、映画祭の醍醐味です。
また世界中の作家性が爆発した作品が集うのもこの部門の魅力で、二度とお目にかかれない作品が多くラインナップされます。
コンペティション部門のプログラミングディレクターを務める矢田部吉彦さんが率いるチームは、昨年度、92の国から集まった1,373作品から15作品を厳選したそうです。
矢田部さんの映画を観る視点はとても豊かで誠実さがあり、そして何より映画に対する熱のこもった愛情で溢れています。
世界中の映画祭に足を運び、多くの映画をご覧になっている矢田部さんは、いわば映画を観て、読解し、提供するプロです。そんな矢田部さんが厳選した作品には必ず何かしらの「興味深い」面白さがあります。
何かを必ず持って帰れるのがコンペティション部門で、観客賞の投票に参加できるのもこの部門の面白さであり、魅力の一つです。
輝かしい作品が並ぶワールドフォーカス
ワールドプレミアの作品も多々ありますが、中には既に他の映画祭で賞を得ている作品もあります。そういった輝かしい作品が並ぶのがワールドフォーカス部門です。
現在公開中の「さらば人類」や話題になった「フレンチアルプスで起きたこと」、12月に上映が決まっているピーター・ボグダノビッチ監督の新作「She’s Funny That Way」もワールドフォーカス部門で上映されました。
世界的に注目されている作品が並ぶのがワールドフォーカス部門の特徴と言えます。
「時間的に一本しか見れない…でも面白い作品が観たい!」そんな方は、ワールドフォーカス部門から選ぶと良いかもしれません。
といいつつも、自分の嗅覚を信じるのがベストなので部門・特集問わず、気になった作品を御覧になって下さい。
映画祭ならではの魅力の数々
映画祭の目玉であるコンペディション部門やその他いくつかの部門の作品が、1300円で観れるのも魅力の一つです。その後一般公開が決まっている作品でさえもこの値段。素晴らしい!しかも高校生以下は当日500円!学生が羨ましい!
さらに多くの作品の上映後にQ&A(質疑応答)があるのも映画祭ならではの魅力です。凄すぎるカメラワークの撮り方やオマージュした作品を聞き、作品の理解を深めることができます。
中には直接、表現の意図をズバッと聞いてしまう方もいらっしゃいますが、答えてくれるかは別として、そういったことを聞けるのも映画祭ならではです。
邦画以外は観客がQ&Aの様子を写真や動画で撮ってもOKですし、上映終了後に会場外で即席のサイン&記念写真会があるのも魅力です。
また、たとえ映画をご覧にならなくても著名人が登壇する初日のレッドカーペットの様子や、特設された食事会場は誰でも参加できるので立ち寄ってみるだけでも楽しめると思います。
東京国際映画祭の最大の魅力
最後に極めて私的な話になってしまいますが、昨年度の東京国際映画祭でぼくは唯一、イラン映画「ボーダレス / ゼロ地帯の子どもたち」だけ二度鑑賞しました。
最初の上映回はワールドプレミアであると同時に、アミールフセイン・アシュガリ監督にとってデビュー作を観客に観せる最初の上映でもありました。
ぼくは上映途中からずっと号泣しており、上映終了後のQ&Aで質問した後、感想を伝えようと監督に駆け寄りました。英語もろくに喋れないくせに、です。それでも監督に何かを伝えたいという思いを止めれませんでした。
結局は何も言えずただただ号泣していましたが、監督は笑顔でハグして下さいました。会話も儘ならない状況下でその後、場所を喫煙所に移し、さらに30分間一緒にいました。そして最終的には通訳さんを介して想いを伝えることもできました。
言葉が例え通じなくても、映画を通じて間違いなく何かを共有できたと思います。もはや映画鑑賞を越えた映画体験です。
映画を観終わって直接思いを届けられるのは、東京国際映画祭の最大の魅力なのではないでしょうか。そんなこと普段できません。
監督やスタッフ、キャストのみなさんは、どんな些細なことでも喜んでくれますし、逆に何かを言ってもらえることもあります。
映画鑑賞を越えた一生モノの出会いの可能性を提供してくれる東京国際映画祭は、楽しみたい気持ちがあれば無限大に楽しめる最高のお祭りなのです。
興味はあるけどまだ行ったことなく迷っている方は、必ず足を運んでみて下さい!そして一緒に楽しみましょう!
※2022年2月26日時点のVOD配信情報です。