遂に公開!ハリウッドきっての問題児を描いた話題作『サム・ペキンパー 情熱と美学』

ヒットガールに蹴られたい

竹島ルイ

“血まみれのサム”の異名を持ち、“バイオレンスのピカソ”とも称された、映画監督サム・ペキンパー。その59年の生涯を、貴重な映像や関係者たちの証言を交えて描くドキュメンタリー映画『サム・ペキンパー 情熱と美学』が、今月26日より全国で順次公開されます。

映画史にその名を刻む伝説の映画監督でありながら、ハリウッドきってのトラブルメーカーでもあり、孤高のアーティストとして生を全うした奇才サム・ペキンパーとは、いったい何者だったのでしょうか?

本稿ではペキンパーの生涯を駆け足でご紹介していきましょう。

撮影3日目で解雇!ハリウッド屈指の“トラブルメーカー”

サム・ペキンパーは、1925年カリフォルニア州生まれ。第二次世界大戦では海兵隊として従軍した後、南カリフォルニア大学に入学して演劇を専攻。やがて『ダーティハリー』で知られるドン・シーゲル監督のアシスタントとして映画界入りし、『荒野のガンマン』(1961年)で劇場用映画デビューを飾りました。

続く二作目の『昼下がりの決斗』(1962年)がヒットを飛ばし、将来有望な映画作家として一躍注目される存在となったペキンパーは、チャールトン・ヘストン主演の超大作『ダンディー少佐』に招聘されます。ここまでは順風満帆の映画監督人生だったといえるでしょう。

ダンディー少佐

ところが、450万ドルの予算が費やされるはずだった『昼下がりの決斗』は300万ドルにまで縮小。10人以上をクビにするなどスタッフとの関係は最悪で、しまいには、彼に断りもなく30分以上もカットしたプロデューサーのジェリー・ブレスラーともケンカになる始末。製作時のゴタゴタが災いして、興行的にも失敗してしまいます。

続いて、スティーヴ・マックイーン主演『シンシナティ・キッド』の製作にとりかかったものの、MGMプロデューサーのマーティン・ランソホフと衝突してわずか撮影3日目にして解雇される憂き目に(監督は、後に『夜の大捜査線』や『華麗なる賭け』を手がけるノーマン・ジュイソンに交替)。

プロデューサーにやたら噛み付く“トラブルメーカー”としての悪名がたってしまい、以降ハリウッドで完全に干されてしまいます。

バイオレンスの巨匠として華麗に復活!血まみれのフィルモグラフィー

映画界から総スカンを食らったペキンパーは、テレビでの仕事に活路を見いだします。やがてテレビドラマ『昼酒』(1966年)の優れた演出が認められたことをきっかけに、干されてから4年後の1969年、『ワイルドバンチ』で華麗に映画シーンに復活!

以降、『わらの犬』(1971年)、『ジュニア・ボナー/華麗なる挑戦』(1972年)、『ゲッタウェイ』(1972年)、『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』(1973年)、『ガルシアの首』(1974年)と、血なまぐさいバイオレンス映画の巨匠として、次々と傑作を発表しました。

“血まみれのサム”、“バイオレンスのピカソ”と呼ばれるようになったのは、この頃からのことです。

しかし、彼の身体は次第にアルコールや薬物に蝕まれていきます。妻にDVをふるう、プロデューサーには食ってかかる、気に入らないスタッフは首にする、予算や期日は守らない…。

そんな破滅型作家に、天寿を全うすることなどあり得ないのでしょう。1984年12月28日、ペキンパーは心不全でこの世を去ります。享年59歳。

残された“血まみれの”フィルモグラフィーは、14本。映画界に干された期間が長く、若くしてこの世を去ったこともあり、その数は決して多くはありません。しかしその鮮烈な暴力の美学は、現在でも色あせることなく輝きを放ち続けています。

では、彼のフィルモグラフィーの中から、特にオススメのペキンパー映画を3本ご紹介いたしましょう。

暴力描写の革命!『ワイルドバンチ

ワイルドバンチ

ハリウッドで干されていたサム・ペキンパーが、4年ぶりに監督復帰を果たした作品。1913年のメキシコを舞台に、時代に取り残された5人のアウトローたちが、100人を超える軍隊を相手に死闘を繰り広げるバイオレンス巨編です。

6台のマルチカメラを使って11日間ぶっ通しで撮影したという、ラストの大銃撃戦は圧巻の一言!スローモーションを多用したダイナミックなアクションは、 “死のバレエ”と称されて後世に大きな影響を与えています。

ちなみにこの撮影の様子は、ワーナー・ブラザースの倉庫で発見された記録フィルムを元に、『ワイルド バンチ アルバム・イン・モンタージュ』(1996年)というドキュメンタリー映画として発表されているので、興味のある方はチェックしてみてください。

内気でひ弱な青年が殺人者に変貌!『わらの犬』

わらの犬

ダスティン・ホフマン演じる内気でひ弱な数学者が、執拗な村の若者の嫌がらせにプッツンし、やがて大殺戮をおこすという凄まじい映画。凡庸な一市民が次第に狂気を帯びていく描写がヴィヴィッドで恐ろしい!

法で裁けない悪に対して、一般市民が復讐を果たす物語を一般的に「ビジランテもの」と言いますが、この『わらの犬』はその最高峰とでも言うべき作品です。

ちなみにこの作品、2011年にロッド・ルーリー監督、ジェームス・マースデン主演でリメイクされています。

ゲッタウェイ

ゲッタウェイ

『ジュニア・ボナー/華麗なる挑戦』に続いて、スティーヴ・マックイーンと組んだクライム・アクション。恋愛要素は控えめに、とにかく銃撃戦に比重を置いた演出がペキンパー流。とにかくマックイーンがひたすらカッコ良く、そのダンディズムはハンパなし!

この作品も、1994年にロジャー・ドナルドソン監督、アレック・ボールドウィン&キム・ベイシンガー主演でリメイクされています。キム・ベイシンガーのエロさが辛抱たまりません。

その破天荒な生き様をスクリーンで目撃せよ!

サム・ペキンパー 情熱と美学

いかがだったでしょうか。映画が破天荒なら、作る監督も破天荒!であることがお分かり頂けたかと思います。

ちなみに、今回『サム・ペキンパー 情熱と美学』の監督を務めているのは、ペキンパーの伝記『PASSION & POETRY SAM PECKINPAH IN PICTURES』(日本未出版)を執筆したマイク・シーゲルという映画史家ですが、製作資金を捻出するために、オークションサイトのeBayで自身の貴重なコレクションを売却したという熱の入れよう!

インタビューに登場するのも、俳優のアーネスト・ボーグナイン、ジェームズ・コバーンなど、ペキンパー映画を支えたアツくてコワモテな面々ばかり。映画という狂気に取り憑かれた男の生き様を、ぜひスクリーンでチェックしてみてください!

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  • ぽんさん
    -
    サムペキンパー監督のアンソロジー 基本的に時系列で話が進むだけの無骨な仕上がり 好きな作品が多い監督なだけに観てて楽しかった しかし本当に絵に描いたような想像通りの監督だったんだなぁと観ると思うはずです 大好きなアーネストボーグナインが本当想像通りの喋りっぷりでシビレました笑
  • rollpain
    4
    映画会社との確執が、まるで「フォードv sフェラーリ」みたいだったなぁ。
  • アマンダ
    3
    マッチョイズム~
  • ベンジャミンサムナー
    4
     「私自身や人生の全てをスクリーンにぶつけた」と冒頭でペキンパー監督本人が語るが、彼の人生を俯瞰して見てみるとまさに彼が撮った映画の主人公を地で行く生き様だったことが分かる。  周りにどう言われても自分のやり方を曲げない。その先に破滅が待っていると分かってても進んで行く他ない。  芯が強いとも言えるし、不器用だとも言える。(「俺が女優を苛めてたら止めてくれ」と言ってるそばから女優を罵倒してたエピソードは笑っちゃう)  彼の映画では、激しいバイオレンスか炸裂するまでが結構ゆったりしているが、これは監督自身が製作陣と揉めて干されていた時期を反映させているからだと思っている。    『ワイルドバンチ』や『わらの犬』、『ガルシアの首』に『戦争のはらわた』。  それぞれ一本の映画が自身の人生になっている映画監督なんて他にいるだろうか?  スタッフや俳優にも容赦はなかったが、監督の事を述懐する関係者たちの口ぶりは実に楽しそうである。(特にアーネスト・ボーグナイン)  多くの敵を作ったが、慕われていた事がうかがえる。  ペキンパー監督が『ダンディー少佐』を降板させられそうになった時、チャールトン・へストンが「俺はノーギャラでいいからペキンパー監督を降ろすな」と言い放ったエピソードは熱い!  彼の作品がより味わい深く感じられる。
  • ピロ子
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    マックイーンのインタビュー(声)や、撮影風景は、もう嬉しくて涙が出ました。最初は、ちょっと、いわ、かなりビックリでした。 珍しく涙が枯れるのが、砂漠に水を撒き散らすように早かったッス。 故人を知る人や近くにいた人「らしき人たち」や、そういう人たちに話を聞いて本にした人が、あーだこーだと、亡くなってから作るドキュメンタリーは、今の私は、嫌いなんだと知りました。 何かの事件を起こした犯人のご近所や同級生、事故を見た人のインタビューを見ている気分でした。 コバーンとか、アーネットさん出てて嬉しかったけども、ペキンパーという人となりが、孤独な変人の天才では片付けられないから楽しみにしていたのになぁ、と。アリー・マッグロウ?も出ますけども。 いろいろな作品の裏側を見れたのは、本当に目汁鼻汁で嬉しかったけど、淋しいドキュメンタリーでした。
サム・ペキンパー 情熱と美学
のレビュー(236件)