【ネタバレ解説】映画『シャイニング』主人公ジャックの正体、ラストシーンの意味を徹底考察

ヒットガールに蹴られたい

竹島ルイ

映画『シャイニング』をネタバレ解説。完璧主義者=スタンリー・キューブリック監督の演出方法、ラストシーンの意味、鏡が象徴するもの、原作との違いなどを徹底考察。

モダンホラーの傑作として名高い、1980年公開作品『シャイニング』。

ジャック・ニコルソンの狂気に満ちた演技は観る者すべてを震撼させ、スタンリー・キューブリック監督による理知的な演出は観る者すべてを恐怖に陥れる。この映画を観ずしてホラーは語れない!

かつてロンドンの数学者が「ショックの度合い」「サスペンス」「ゴア描写」などさまざまな項目から『シャイニング』を統計学的にデータを分析したところ、そのバランスが適切だったことから「完璧な恐怖映画」と結論づけたという逸話もあるくらいだ。

というわけで今回は、ホラー映画の金字塔『シャイニング』についてネタバレ解説していきましょう。

シャイニング

映画『シャイニング』あらすじ

豪雪のため、冬の期間だけ閉鎖されるオーバールック・ホテル。かつてここでは、精神に異常をきたした管理人が一家を惨殺した挙句に自殺するという、痛ましい事件が起きていた。

そんないわくつきのホテルに、小説家志望のジャック(ジャック・ニコルソン)、その妻のウェンディー(シェリー・デュヴァル)、息子のダニー(ダニー・ロイド)が新しい管理人一家としてやってくる。外界と完全に隔離された世界で、最初は穏やかに生活を営んでいたジャックたちだったが、超能力を持つダニーはこのホテルにただならぬ“邪悪さ”を感じていた。

やがてこの一家に、かつてない恐怖が襲いかかる…。

シャイニング出典元:YouTube(Movieclips)

※以下、映画『シャイニング』のネタバレを含みます

原作者スティーヴン・キングと確執を生んだ理由とは?

『2001年宇宙の旅』では「人類と地球外生命体の遭遇、そして進化」という哲学的なテーマを、『時計じかけのオレンジ』では「人間が本来有している暴力衝動と性衝動、それを管理する全体主義」という社会的なテーマを扱ってきた鬼才スタンリー・キューブリック。

コムズカシイ作品ばかり撮ってきた彼が、スティーヴン・キングのベストセラー娯楽小説『シャイニング』を映画化することはやや意外でもあったが、それには理由があった。

前作『バリー・リンドン』が興行的に完全に失敗に終わり、それを挽回するために確実に“売れる”映画をつくる必要があったのだ。

バリー・リンドン

秘書の談話によれば、キューブリックは次回作のネタ探しのために片っ端から小説を読みまくり、少しでも気に入らないとオフィスの壁に本を投げつけるという悪癖があったが、「シャイニング」を読み終わった時は本を投げつけなかったため、「次回作はこの小説になるんだな」と直感的に分かったそうな(すごい話だ)。

だが、出来上がった映画は原作を大きく改変した独自のストーリー展開に。スティーヴン・キングは今に至るまでキューブリックに対して批判を繰り返している。

この映画は、大きくて美しいけれど、モーターのないキャデラックのようなものです。座ることができるし、革張りの匂いを楽しむこともできるけど、そもそも走ることができない。

問題なのは、ホラーというジャンル特性をはっきりと理解していないまま、ホラー映画を作ろうとしていたことにあるのです。

(1986年のインタビューより抜粋)

かなり辛辣なコメントだが、それもむべなるかな。

原作では、ホテルの“邪悪な何か”がジャックを狂気に陥れる要因としてはっきりと描かれている。しかし、映画ではその理由がよく分からない。

さらに、息子ダニーの超能力シャイニングが発揮されることもあまりなく、コックのハロラン(スキャットマン・クローザース)に至ってはホテルに戻ってきた早々にジャックに殺されてしまい、活躍する機会が全く与えられない。原作の重要なエッセンスがゴッソリと抜け落ちているのだ!

結果的にキューブリック版『シャイニング』は超常現象の因果関係が判然とせず、単に狂ったジャックの妄想話のようにも見えてしまう。本作が“難解映画”として語られる理由は、ここにあるのではないか?

シャイニング出典元:YouTube(Movieclips)

一切の妥協を許さないキューブリックの演出スタイル

スタンリー・キューブリックは独自のビジュアル・センスを持つ、一切の妥協を許さない完璧主義者として知られている。『シャイニング』における、その演出方法の一端を3つご紹介しよう。

1. 左右対称のシンメトリーな構図

シャイニング_双子01出典元:YouTube(Movieclips)

キューブリックの全フィルモグラフィーに共通する特徴として、まず「左右対称のシンメトリーな構図」が挙げられる。

ハロランが自宅で寝そべっているシーンは、中央にテレビ、真上に黒人女性の写真、左右にランプという構図だし、オーバールック・ホテルの内部も、左右対称の幾何学模様が施されたカーペットを中央にして、左右に部屋のドアが配置された構図だ。

あまりに人工的で整然とした世界は、厳格なまでに左右対称すぎるがゆえに、かえって冷え冷えとした非現実感を醸成する。その際たるものが、あの有名な双子の少女だろう。

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