多十郎殉愛記』のワールドプレミア上映が行われ、その舞台挨拶に主演の高良健吾、共演の木村了、中島貞夫監督が登壇した。
中島監督にとって、実に20年ぶりの長編映画となる本作。舞台に現れた瞬間から目にうっすら涙を浮かべていた高良と木村。監督にとってはもちろん、ふたりにとっても特別な一作となったようだ。
開口一番、「いかがでしたか……?」と遠慮がちに観客に問いかけた高良。その言葉に答えるように、会場から大きな拍手が起こると、「監督の思いに注ぐ現場、スタッフ・キャストの思いが詰まった作品を、この京都でまず最初にお披露目できて本当に嬉しいですし、今日監督にお会いしたとき、監督が本っ当に嬉しそうにこの映画の思いを話してくださいました。本当にありがとうございます」と、座長としての感謝を述べた。
次いで、高良演じる多十郎の弟・数馬に扮した木村も「僕たちの手にあったものが、お客さんのもとに今日から羽ばたいていくその瞬間に立ち会えて、とても素敵な時間を過ごさせていただいていますし、この作品がどんどんどんどん大きくなっていけばいいなと今は思っています」と感無量の思いを語った。
今回の京都国際映画祭2018での上映がワールドプレミアとなり、また同映画祭を締めくくるクロージング作品でもあった本作。中島監督は「京都というのは日本映画を作り続けてきた街です。日本映画のふるさとです。5年がかりでやっと発信できて、これがなにより『やったぁ』という気持ちです」と嬉しそうにコメントする。
高良は、「中島貞夫監督の現場を踏めることが幸せなことだと思っています。踏もうと思って踏める現場ではない。監督のオリジナル脚本でしかも時代劇。これはもう……運がいいとしか言いようがないと思いましたね」とその思いに応えた。
映画人生59年のキャリアを持つ中島監督の作品に出演するにあたり、プレッシャーや怖さは?との質問には、「命がけで数馬という役を体現・表現していかなくてはいけないと、毎日緊張して撮影に挑んていたことを覚えています」と木村。
一方の高良は、「もちろんありましたが、京都にいた1ヶ月半は幸せでしかたなくって、クランクアップしたときは“多十郎ロス”がすごかった。京都って住みやすいのかなとか、不動産屋さんの前で止まっちゃったりして……」と振り返る。木村も「さすがに住もうとまでは思わなかったですけど(笑)、クランクアップしてくれるな、と心から思っていましたね」と役者人生を変える経験だったことを明かした。
また、本作で中島監督は、京都市より「京都映画大賞」を授与され、舞台挨拶にて同授与式も執り行われた。
映画『多十郎殉愛記』は2019年公開。