Netflixシリーズ「THE DAYS」は我々に何を問うのか。実話に基づく福島第一原発事故の数日間。注目すべきポイントは?

原発事故の対応をめぐる緊迫した数日間を迫真のリアリティで描いたドラマ「THE DAYS」の注目ポイントを解説。

2011年3月11日、東日本大震災の発生により起きた福島第一原子力発電所の事故は、日本の転換点だったと言っても過言ではないでしょう。

そんな原発事故の対応をめぐる緊迫した数日間を迫真のリアリティで描いたドラマ「THE DAYS」が、6月1日(木)からNetflixで世界独占配信中。日本中を激震させた未曾有の大事故を、徹底してリアルにこだわり再現した意欲作です。

異なる3つの立場から未曾有の事故の真実に迫る

2011年3月11日午後2時46分。東北地方を襲った地震により福島第一原発の原子炉1号機から3号機が自動停止、さらには津波によって非常用ディーゼル発電機も故障し、全ての電力を失ってしまいます。所長以下原発職員たちはあらゆる手段を講じて原発の暴走を食い止めようとしますが、敷地内は瓦礫だらけ、さらには高濃度の放射能によって原子炉に近づくことも難しい状況に陥ります。

一方、原子力緊急事態宣言を発令する総理大臣は、曖昧な説明を繰り返す電力会社や原子力安全保安院への不信感を募らせていました。想定外の事態で混乱しながらの作業となった現場、電力会社の東京本店、首相官邸それぞれが事態の収拾に努めようとしても歯車のかみ合わない状況が続く中、命がけでメルトダウンを回避しようとする現場職員たちの奮闘が続いていきます。

本作は入念なリサーチに基づき、3つの立場の異なる視点から原発事故を描いています。福島第一原発、政府と現場の板挟みとなる電力会社本店、そして政府が、混沌極める状況をわかりやすく整理して描き、誰が何を決断し、行動したのかを明らかにします。

物語を英雄譚として組み立てず、事実に忠実かつ大袈裟な表現を排除したドキュメンタリー映像のような緊迫に満ちた本作。そんな迫真の脚本を書きあげたのは、大ヒット作『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』から『白い巨塔』といった骨太な社会派ドラマまで手がける増本淳。監督は、増本とともに「コード・ブルー」を手掛けた西浦正記とJホラーの金字塔『リング』の中田秀夫が共同で担当。日本のドラマ史でも特筆すべき強靭なリアリズムが息づくドラマを生み出しました。

一流の役者が表現する緊迫の人間ドラマ

本作に登場するほとんどの人物には実在のモデルが存在します。日本の未来を突如背負わされることになった当事者を演じるのは、日本が誇る一流の役者たち。文字通り命がけだった彼らを、魂を込めて真摯に演じています。

原発所内

福島第一原発 所長(役所広司


福島第一原発を預かる所長であり、事故対応の現場責任者。常に最善手を考え、部下の苦労をねぎらう人格者である彼は、人一倍の責任感を持って事故を収束させようと奮闘、福島原発の精神的支柱と言える存在です。

1,2号機 当直長(竹野内豊


電源喪失によって真っ暗闇となった現場の最前線、中央制御室を預かる当直長。原発をモニタする方法を失いながらも、現場を鼓舞し、極限状態でも部下を気遣うことを忘れず冷静に対処し続ける姿が印象的です。

5号機副長(音尾琢真


福島出身の5号機副長は、所長の右腕的なポジション。的確な進言で所長を幾度も助け、時に命をかけて前線へ赴く決断もできる人物。

1,2号機 ベテラン運転員(小林薫


事故当日は非番で家族とともに避難していたにもかかわらず、原発の危機を聞きつけ駆け付けた頼もしいベテラン。未来ある若手よりも自分のようなベテランが矢面に立つべきと危険な建屋に行く役割を自ら引き受けます。

日本政府

内閣総理大臣(小日向文世


原発事故当時の総理大臣。情報を正確に報告できない電力会社や保安院職員に対し終始苛立ちを隠せない様子。一国を背負う重圧からか現場を混乱させてしまう面も。

電力会社本店

東央電力 副社長(光石研


政府と現場の板挟みになりながら、粘り強く指示を出し続ける苦労人だが、政府への忖度も多い。

福島第一原発運転員の家族

若手運転員の父(遠藤憲一


事故で行方不明となった息子の身を案じ、原発の中に入れてほしいと東電に嘆願。

若手運転員の母(石田ゆり子


地震直後に息子と電話で会話をするも、その後行方不明となった息子の無事を信じる。

「誰が、何が間違っていたのか」


福島第一原発事故を題材にした映画やドラマはこれまでも制作されていますが、本作が既存の作品と一線を画すのは、複層的な視点で事故を見つめて現実の複雑さを浮かび上がらせた点にあります。政府、大会社の立場、現場職員たちとに乖離が生まれ、全体が上手く機能しない状態がなぜ生まれたのか、「個」と「組織」のあり方といった普遍的な問題などを浮き彫りにしています。

この事故について、メディアやSNSでは政府や電力会社などに責任を問う声が飛び交いましたが、対応を間違えたのは誰なのか、そもそも人知を超えた災害に見舞われた時に人はどこまで対応できるのかなど簡単には結論が出せない複雑な現実を見つめているのです。

事故発生から12年経った今も原発の廃炉作業は終わっていません。今から50年前、明るい未来を作り出すとして作られたものが、いまやその存在の是非をも問われています。このドラマを観て「これが、日本の明るい未来なのか」と問いかけられたら、あなたはどう答えるでしょうか。

​​ひとつの危機が去ってもさらなる危機が次々と襲い掛かる極限状態のスリルと緊迫感が続き、最後まであきらめずに対処にあたる現場職員の人間ドラマに、目が釘付けになるでしょう。しかも、この事故は現実のものであり、今なお続いているのです。その事実を忘れないためにも必見のドラマです。

◆Netflixシリーズ「THE DAYS」information


Netflixシリーズ「THE DAYS」Netflixにて世界独占配信中
Netflix公式:https://www.netflix.com/title/81233755

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