
Prime Videoで好評独占配信中の『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』が、7月7日(金)より全国の劇場での上映が決定した。視力を失う病に侵された人気漫画家・泉本真治(山下智久)と、彼の作品のファンである聴覚障がいのある相田響(新木優子)による、切なく温かい恋模様が描かれる本作。イ・ジェハン監督ならではの、うっとりする映像美が大きなスクリーンで観られるのはこの機会だけとあって、劇場公開前から注目が集まっている。
配信および劇場公開を記念して、FILMAGAでは主人公・真治を演じた山下、そしてプロモーションのために来日したジェハン監督にロングインタビューを実施。ふたりに共通したことといえば高いもの作りへの意識であり、その概念について語り合ってもらった。さらにキャリアを重ねグローバルに活躍する両者が、仕事において変わったこと・変わらないこと、好んで観る映画についてなども聞いた。

撮影に入る前、ジェハン監督は山下さんの俳優としての魅力をどんなところに感じていましたか?
ジェハン監督:まずはとてもハンサムであるな、と。
山下:えっ(笑)。
ジェハン監督:冗談です(笑)。山下さんは俳優であり歌手でもいらっしゃるので、ステージマナーが素晴らしいですし、持っていらっしゃるエネルギーにとても強いものがあるな、と思いました。そのエネルギーをぜひ自分も感じてみたいと思っていたんです。
実際に撮影して、山下さんのエネルギーや演技はいかがでしたか?
ジェハン監督:とても繊細な演技に感動しました。また、お目にかかる前から感じていたのは「とてもいい声だな」と。私は声が素敵な俳優がとても好きなんです。あるときは演技の台詞ではなく、その台詞を発している声に惚れ込むこともあります。極端なことを言えば、声さえよければ演技の半分はそれでOKなんです。山下さんは、さらに心も、耳も開けている方。当たり前のように思えるかもしれませんが、それができていない俳優もたくさんいるんです。
耳も開けているというのは、具体的にどのようなことでしょうか?
ジェハン監督:相手が台詞を言っているときに、ちゃんと聞かず自分が次に発する台詞ばかりを練習して待ち受けている俳優もいます。ある意味、その俳優の演技の習慣だと思うのですが……。ちゃんと相手の発することを聞いて、それを受けて演技をすることこそが、とてもいい習慣だと思います。
だから、山下さんには「相手の言っている台詞をちゃんと聞いてください」と言う必要が一切なかったので、とてもディレクションしやすかったです。私のことを受け入れてくれるのであれば、これからも引き続きご一緒したい俳優さんです。
山下:光栄です!

「相手の台詞を受けて話す」ことについて、山下さんは普段から意識されていることでしたか?
山下:はい。今回は目が見えなくなる役なので、もちろん相手の表情は見えないんですけれど、なるべくその相手の演技に反応できるような気持ちを常に持ってやっていました。
ただ、それは昔とは変わったところだと思います。若いときはそういうこともわからなかったので、「最初に自分の台詞を言わなきゃ」みたいなことも多かったと思うんです。いろいろ経験を積んで、演技のレッスンをしていく過程で変わってきたところです。
声のお話もありましたが、本作は台詞のないサイレントシーンも多いですよね。儚さが増すようで非常に魅力的です。それらのシーンについて、ジェハン監督はどのようなリクエストを山下さんにしましたか?
ジェハン監督:おっしゃる通り、この映画の素材が素材だけに無言で意思疎通をする場面が本当にたくさん出てきます。山下さんには「台詞はもちろん大切ですが、台詞と台詞の間にあるものがさらに大切です」という話をしました。言ってみれば、ああいった台詞のないシークエンスというのは無声映画を撮っているように、行動でそれらを知らせていかなくてはいけないわけです。「だから、そうした演技をお願いします」と言いました。山下さんの繊細な演技というものが、まさにこういった無言の演技の部分で光を放っていました。
……そういえば、編集をしているとき、無言の演技があまりにもよくて次の台詞がある部分もあえて台詞を省いたんですよ。

どこの場面ですか? ぜひ教えてください。
ジェハン監督:出版社で真治が編集長と会うシーンがあります。何回か出てきますが、3回目、編集長と話をして真治が立ち上がって出ていこうとするとき、本来ならもっと台詞があったんです。台詞が10あったとすると、それを3くらいに減らしました。あまりにも山下さんの声のトーン、まなざし、眼の光が良かったので、あえてそこの部分は減らしたんです。
言ってみれば目の見えない状況にある、でも敵軍と相対している。そのときの表情や声というのが素晴らしかったので、あえて言葉というものを減らしました。
山下:そうだったんですね……! 眼の演技については、本当に監督がいてくれたので、すごく安心感を持って演じることができました。技術的なところを意識するというよりは、彼が思っている内面みたいなものをすごくよく感じながら演技をしていたと思います。
また、僕が今回意識していたのはレイヤーをいくつ持てるか、ということでした。監督にもレイヤーについてはすごくご指導していただき、意識して挑んでいけたんです。
ジェハン監督:レイヤーというものは、例えば、ひとつめの層としては「真治は目が見えない」、ふたつめとしては「だけれどもさらに絵を描こうとする」、でも「すごく身体の痛みもともなっている」。とてもシンプルだけれども、そういったものが幾重にも重なっているということで、重なった演技というものを期待していました。たくさんの言葉よりも、そうした演技というものをちゃんと捉えたいと思っていました。

お話を伺っていると、緻密な表現の積み重ね、思いで作品が出来上がっていることをまざまざと感じます。
山下:毎日、現場に行くと台本にないところを監督が作り出してくれるんです。それが本当に楽しみでした。「今日はどんな出会いがあるのかな」と思っていましたし、毎日新しい発見がありました。自分の中で台本を読んでなんとなくイメージして行くときがあるんですけれど、それ以上に毎日、新しい世界、視野を広げてもらえるような感覚がありました。
監督が一番寝ていないですし、本当に映画を作ることだけに全力を注いでいたので、その情熱に僕らは引っ張っていただいた感じです。
ジェハン監督:私はいわゆる演技指導ですとか、キャラクターの方向性を提示するとき、できるだけ俳優さんには言葉をたくさん使わないように、あまり説明しすぎないようにしています。常々言いたいことがたくさんあっても、全部話すのではなく、いかに集約したキーワードで伝えるか、いかに簡潔に表現するか、というところに気を遣っているんです。
もうひとつ、今回のすごく重要な要素があるならば、山下さんは英語がとても堪能でいらっしゃるんです。少なくとも私と山下さんの間では通訳を介することなく、意思の疎通がちゃんとはかれたことが大きかったかなと思います。

本作はラブストーリーでありながら、真治の台詞にある「見えなくなってからよく見えることができた」のように、ハッとさせられる気づきも与えてくれる作品でした。作品を通して受け取ったものや思いと言うと、どんなものになりますか?
山下:この作品で僕が重要だと思ったのは、ひとつは、題材になっている「愛とは何なんだろう」ということをどう紐解いていくか、でした。あと「魂」という言葉が脚本に出てくるんですけど、日本に住んでいるとなかなか魂というワードを聞く機会がないですよね。でも、一番大事なのは心の中にある強い魂だと、僕も思っていた部分があったので、この作品を通して改めて魂が強いことが大きな愛にもつながるのかなと思ったんです。見えないし聞こえないけど、魂がここにある、という最もコアな部分の熱を感じられるような作品だったのかなと思いました。
一見、プロモーションムービー的に感じるかもしれないけど、コアのコアの魂で訴えかけている作品に感じます。その魂というワードが、久々に僕の魂にも響いたなと思っています。

ジェハン監督:山下さんが今とてもいいことを言ってくれました。私はこの映画において魂について語りたいと思ったけれども、言葉としてあまりたくさんは言ってこなかったつもりなんです。実際に、私が台本を書いているときも、撮影現場で映画を撮っているときも、常に心の中で願っていたことは「魂が熱望しているものを表現したい、作り出したい」ということでした。山下さんが今言葉にしてくださったので、すごく嬉しかったです。
もうひとつ加えますと、本作で真治というキャラクターを通してまさに「気づき」というものを表現できたらな、と思っていました。真治は目が見えなくなってしまったんだけれども、実際にはちゃんと真実というものが見えるようになった。それを表現できればいいなと思っていたんです。「僕は見えないけれど見えるんです、見えているんです」という言葉はそういうところから出てきています。

おふたりともキャリアを重ねていらっしゃいますが、これまでやられてきて変わったこと、変わっていないことを教えてほしいです。
山下:変わったところでいうと、日本だけではなく違う国の違うカルチャーで育った人たちと仕事をしたことで、見え方とか視野、仕事の仕方、取り組み方が変わりました。いい影響を受けたなと思います。役作りのアプローチも含めて、いろいろな角度から役を作っていく手法、テクニック的なところで学べたところが変わったところです。
変わらないところは……やっぱり好奇心かな。好奇心を感じさせてくれる作品をやっていきたい気持ちは、若いときから変わっていません。新しい役に出会うとワクワクするし、逆に言うと、若いときは量をとにかくこなしていたけれど、今は量より質、自分がワクワクできるプロジェクトに時間を使いたいな、と思っています。
ジェハン監督:(少し考えて)変わったこと。まずは、おいしいものをたくさん食べられるようになりました(笑)。
山下:(笑)!
ジェハン監督:冗談です(笑)。あと、とてもハンサムな俳優に会える機会がたくさん増えました。

冗談第二弾ですね(笑)。
ジェハン監督:はい(笑)。……では、真面目に答えますと、映画界に入って監督という職業になってからは、「次はどんな作品を作ったらいいんだろう」という考えにいつも捉われていますし、それを持たずにはいられません。それは変わっていないところですね。
変わった点で言うと、山下さんが言ってくださったことと似ていますが、やはり世界的にいろいろな才能を持ち合わせた人、賢い人、クリエイティブな人たちと会える機会が増えたところです。日本、韓国のみならず、中国やアメリカ、いろいろな国の人たちと仕事ができるようになりました。中には、詐欺まがいの人もいるんですけどね(苦笑)。

詐欺、ですか?
ジェハン監督:金銭的なことだけではなくて、例えば能力がないのに「私はこんなことができます」と言ったり、全然知らないのに「知っています」と言ったりする人もいます。そういう人たちをちゃんと見分けることのできる目を持ちたいんですけれど、それはなかなかたやすいことではないですよね。
山下:それはすごくわかる気がします……!
最後にFILMAGAは映画好きが集うメディアなのですが、おふたりが最近観た中でレコメンドしたい作品は何でしょうか?
山下:僕はジェハン監督の昔からのファンだったんですけど、この作品をやるにあたってもう1回『私の頭の中の消しゴム』を観たんです。初めて観たのは僕が高校生ぐらいのときで、当時ももちろん感動して涙したんですけど、そこから何十年もたってもう1回観たら、当時見えなかった繊細さや奥行きを感じました。また別の感動の涙を流したんです。
時を超えて普遍的なものを感じさせてもらったという意味で、何回観ても違う見え方ができることこそ、映画の素晴らしさだなと思いました。なので、ぜひリコメンドさせていただきたいです。
もう1本、全然違うテイストなんですけど、最近観た中だと『トップガン マーヴェリック』はすごくワクワクしました……!ブロックバスター映画の迫力があって、本当に興奮しました。

『トップガン マーヴェリック』のような作品だと、山下さんはどんな視点でご覧になるんですか?純粋にエンターテインメントとして楽しむのか、役者の動きや準備などもふまえて感動するのか。
山下:そうですね。外枠のお話、飛行機のライセンスをとって役者の皆さんが操縦したりとかも気になったりしますけど、それよりも内容ですかね。トム・クルーズさんの熱量もそうだし、若い隊員たちのアツさみたいなものにグッときます。一番心にくるのはコアな部分なんですよね。人の想いが交差する瞬間がありますよね。それを体感できるのは映画の良さなのかなと思っています。
ジェハン監督:私も『トップガン マーヴェリック』を観ました、よかったですよね! あと挙げたいのは、Netflixの『MANK/マンク』、デヴィッド・フィンチャー監督の作品です。『市民ケーン』が作られる過程を描いたモノクロ映画で、1940年代のハリウッドの雰囲気を感じられます。私が大好きな監督の作品ということもあって時間を割いて観ました。とても面白かったので、観てみてくださいね。
(取材、文:赤山恭子、写真:関 竜太)
映画『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』は、2023年7月7日(金)より、全国劇場にてディレクターズカット版公開。Prime Videoで独占配信中!
出演:山下智久、新木優子、高杉真宙、山本舞香、深水元基、山口紗弥加、夏木マリほか。
監督・脚本:イ・ジェハン
公式サイト:https://see-hear-love.com/
(c)2023「SHL」partners
※2023年6月30日時点の情報です。

