加藤雅也、イラン人監督に「あなたにはきつく当たる」と言われ…最新主演映画『二階堂家物語』【インタビュー】

映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

加藤雅也は2018年、デビュー30周年を迎えた。振り返れば、「いろいろあった」と整った顔をくしゃっとさせ微笑む。日本のみならず海外の作品に何本も出演し、キャリアを重ねた今もなお、アグレッシブに新しいことにチャレンジし続ける。その姿勢が、加藤をさらに多くの現場に呼び寄せているのだろう。

節目となった2018年に製作された主演映画『二階堂家物語』は、名家の跡継ぎを巡る家族同士の問題を、彼らの親しい人物たちも巻き込んで描いた人間ドラマ。加藤は、跡継ぎに悩み葛藤する二階堂家の長男・辰也となった。

二階堂家物語

そして本作は、世界で活躍する期待の若手監督が、奈良を舞台に映画を製作するプロジェクト「NARAtive」として誕生した。監督はイラン出身のアイダ・パナハンデが務め、河瀨直美がエグゼクティブプロデューサーとして参加するなど、一風変わった枠組みでもある。「好奇心旺盛に」をモットーにしている加藤の心を射止めた作品について、故郷である心地よい奈良弁まじりで語ってもらった。

――昨年、2018年にデビュー30周年を迎えられたとのことで、おめでとうございます。

そうなんですよ。ありがとうございます。

――節目の年に、ご出身地の奈良で主演作の撮影となりました。感慨はひとしおでしょうか?

デビューして30年、自分が主演となって奈良で撮れたのは初めての経験だし、30年をもってそういうことができたという感覚もありますね。実は僕自身、学ぶことがすごく多かった現場でね。

――学ぶとは、具体的にどのようなことを?

アイダ(・パナハンデ監督)との取り組みですね。僕、外国人の女性監督と組むのは2回目なんですよ。アイダは大学の教授みたいに学術的で、感性も非常に鋭く、普通なら言わないようなことまで言ってしまう人なんです。それが逆に面白いことを気づかせてくれることにもなりました。

――例えば、どんなことをおっしゃっていたんですか?

僕というよりも日本人の俳優について、「ほとんどの演技が大袈裟。何であんな大袈裟なんだ?」って(笑)。「あなたたちは普段しゃべっているときのリズムと、台詞を言うときのリズムをなぜ変えるの? 俳優としては致命的な問題」と言われたりしました。こっちはずっとこれでやってきているから、「ええ? 何が?」となるわけだけど……実は日本語って、書き言葉と話し言葉がかけ離れているわけじゃないですか。

――そうですね。

脚本では文章として成立しているけど、それはすごく口語的ではないということをアイダは言っていて。英語では文語と口語の構成がほぼ一緒だから、英語で「My name is Masaya.」は普通でも、日本語だと「私の名前は雅也です」になる。だけど、「私の」「名前は」とか言わないですよね。アイダは日本語がわからないながらも、そうした違いを「なんか変だ」と感じ取ったみたいなんです。「すごく鋭い人だな」と感じましたね。

二階堂家物語

――実際、そうしたやり取りを経て変わった場面も多かったんですか?

現実的に違和感のないようにするために、説明台詞を脚本から全部削ぐ作業を結構しました。削いでやってみて、「これでいい?」と監督に聞いたら、「うん。今のは普通に聞こえる。さっきのは変だった」と。そういう発見は、いっぱいありました。

――すごく柔軟性を求められる現場だったんですね。

そうですね。そういうことは、僕には苦ではなかったですけど。監督には「あなたがこけたら、この映画はこけるんだから、私はあなたにはきつく当たる」って言われましたしね(笑)。「でもしょうがない。それが主役の役目だから。どんなにつらくても、私は言う」と言われたから、「そりゃそうだな」と思って「言ってね」って言いました。

二階堂家物語

――加藤さんは「当たられる」ことを受け入れたんですね。

当然ですね。それが主役の責任だからね。脇(役)のときは責任がないから。

――ないですか?

ない、ない(笑)。主演というのは、全部を背負うから主役なんですよ。脇のときは、何をやったって監督がOKであればいいの。主役は絶対に監督と同じイメージを持って進んで、同じカラーにしないと、映画が違ってきちゃうよね。俳優は、みんな「主役をやりたい」と言うけど、そんな簡単なことじゃないですよ。すべてを背負って、こけたら責任がかかるわけだからね。

二階堂家物語

――アイダ監督とは、まさに二人三脚のような意識でやっていかれたんですね。

正直、腹の立つこともあったけど、「なるほど。この人、いいこと言うなあ。聞いていて得したな」と思うことが多かったです。基本的に監督というのは、自分の映画をよくしたいという考えしか持っていないものだから、よくするために僕らに言うわけなので、いろいろなクエスチョンに対してもよく聞くようにしたら、僕の中でメソッドみたいなものがわかったので、よかったなと。この映画の後から、僕の演技は大きく変わったんです。ほかの人から見たら同じかもしれないけれども、自分では全然違う感覚になりました。

……あと、アイダはイランから日本の奈良にわざわざ来て撮影しているわけですよね。彼女の旦那さんは『二階堂家物語』の脚本家でありプロデューサーなんだけど、ほかは当然日本人ばかりだし、そこに入って女性ひとりでやるって本当に大変ですよ。彼女が先頭に立ってみんなを動かすわけで。自分も海外の経験があるから、わかることなんですけど。

二階堂家物語

――海外では、加藤さんもしんどい思いをしましたか?

やっぱりつらいですよ! パーティに行っても、英語がわからないときは誰も話しかけてくれなかったですし。だから、アイダも日本語でみんながワーッとやっている中で、本人だけが伝えたいけど言ってもわからない、通訳を呼ばないといけないというのが、大変だったろうと思います。

二階堂家物語

――ご一緒された石橋静河さん、町田啓太さんの印象はいかがでしたか?

彼らは本当に、いい俳優だろ? ??と思いました。この監督にガンガン言われて……よく耐えているなあと(笑)。思うのですが、耳の痛いことを言われているときほど、いいことを言われていることが多いんですよね。自分にいいことを言う人は、そんなにプラスにならないというかね、よいしょされているだけなんだろうな……って。

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――「よいしょ」される経験もあるというか、わかるんですね?

あります、日本の現場で(笑)。「よかった! 最高です!!」と監督に言われても、やった自分がよくないと思っているときは、「……ほんまか? 何でもOKやないか……!」と思うから(笑)。そういう人は、あまり信用しない(笑)。でも作品のノリによっては、そういうのも大事なんだけどね。アイダは、俺がダメだと思ったら「もう1回」とわかっていたから、そういう意味ではすごく信頼が置けましたね。

――貴重なお話ありがとうございました。最後に、30年間変わらず素敵な加藤さんの格好よさを保つ秘訣があれば教えてください。

急に、ええっ(笑)。そんなのわからないけど……格好よくって……錯覚なんじゃないんですか? 例えば、髪の毛を植えたりとかして、必死に見た目を若くしても不自然なことだから、いいとは思わないでしょう? 何かがあるとしたら、好奇心じゃないですか。どうせ枯れていくんだから、ずっと好奇心と子供心を持ち続けているとか、かな。(インタビュー・文=赤山恭子、撮影=林孝典)

二階堂家物語

映画『二階堂家物語』は、2019年01月25日(金)より公開。

二階堂家物語

監督:アイダ・パナハンデ(イラン)
エグゼクティブ・プロデューサー:河瀨直美
脚本:アイダ・パナハンデ、アーサラン・アミリ
配給:HIGH BROW CINEMA
(C)2018 “二階堂家物語” LDH JAPAN, Emperor Film Production Company Limited, Nara International Film Festival

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  • もう少し
    4.2
    奇跡的に観客がわたしだけだった 多分一生の思い出。最高の一幕だった。
  • さちやそ
    -
    記録
  • ワンコ
    4.3
    切ないけど…滑稽 程度の差こそあれ、こうした家柄とか、古い因習に縛られている家は沢山あるような気がする。 そして、男の子が生まれないとか、婿が来ないとか、その「先祖代々」は、ある日突然問題に直面する。 現代社会になっても、半ば権力と一体化した年寄りは、お妾さんだとか、二号さんだとか社会通念とはかけ離れたことを言い始める。 本人は少しでも自由になりたいと思っていても、結局半分は、理想や綺麗事で、実は自分もその因習に、既に、捕縛されていて、「先祖代々」や「女性への抑圧」はまた繰り返される。 ただ、これは日本に限ったことではないのではないだろうか。 だから、パナハンデ監督は女性や外国人の視点も交えながらも、愛情も皮肉もたっぷりに、ちょっと滑稽に撮ったのではないか。 こんなことは、実は世界中に転がっているのだ。 そして、人なんて、どこにいても、おんなじレベルなのだ。 自由を語るパトリックが、さも異文化を理解してると言わんばかりに、一族相伝の典型のような雅楽を学んでいるのも、ある意味で滑稽だ。 先祖代々を不自由の象徴のように語りながら、パトリックだって、離れて暮らす両親のことが心配で、結婚して戻るプランを考えていたじゃないか。 みんな、そんな大差ないのだ。 そう、こうして「先祖代々」は続き、そしてほころび、徐々に形を変化させても、人々は我が家の伝統とか言って、ずっと変わらないと信じ込みながら、何も気づかずに過ごすのだ。 この映画の英語のタイトルは、 THE NIKAIDOS’ FALL だったじゃないか。 その場その場に居合わせて、葛藤する人はきっと切ないに違いない。 ちょっと気の毒でもある。 でも、やっぱり滑稽で…。 魅入ってしまう不思議な映画だった。
  • AnnaUtsumi
    3.5
    彼氏がきたりおばあちゃんが亡くなったりするとこで物語が動く。動きはするね...生々しくなりすぎずに美しい範囲に収まってるのがいい。
  • こやまです
    5
    2019/02/10 新宿ピカデリー Sc.7 超超超超大傑作!! 男の子を亡くし跡取り息子がてきず離婚した父と長女の物語 全員が全員素晴らしい演技 その中でも加藤雅也と石橋静河が特に凄い 父とある男性の対話シーンと火葬シーンが特にどストライクすぎて感情の大嵐 火葬場の石橋静河の泣きの演技は口元の動きにドカンとストレート入れられた
二階堂家物語
のレビュー(116件)