実写映画『バービー』グレタ・ガーウィグ監督「バービーの物語を通して“人間とは何なのか”を模索したかった」【来日インタビュー】

映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

話題沸騰中の映画『バービー』グレタ・ガーウィグ監督が来日!撮影秘話や作品の見どころをインタビュー。

現在、全米で3週連続No.1をマークし世界興収が1,000億円を突破した話題作『バービー』。世界中で愛され続けるファッションドール“バービー”を擬人化した映画では、世界観を示すピンク色を身にまとい鑑賞するスタイルもまた、トレンドになっている。

物語の舞台は、さまざまなバービーやケンたちが暮らすバービーランド。あるひとりのバービー(マーゴット・ロビー)がボーイフレンド(?)のケン(ライアン・ゴズリング)とともに人間の世界へと旅に出て、内なる自分の声に気づいていくというストーリーだ。

レディ・バード』や『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』で知られるグレタ・ガーウィグが監督を務めた本作は、きらびやかな世界の中に、定番というレッテルから脱却しオリジナリティを認め生きていく、という力強いメッセージが込められている。FILMAGAでは来日したグレタ監督に、製作の上でのこだわりや、テーマについてなどインタビューした。

『バービー』は『ストーリー・オブ・マイライフ』でも描いていた「誰かのための人生ではなく、私のための人生」という自己のオリジナリティに視点を向けた物語です。きらびやかなバービーランドの世界に内包された意外なメッセージに、観る人は感銘を受けるのではと思いました。

グレタ監督:そう感じてもらえて、すごくうれしいです。この映画自体は楽しいし、笑えるし、美しい部分もすごく多いんですけど、同時にシリアスでなければいけないとも思っていました。「バービー」と言うと、一見、深さや奥行きがあるとは人はあまり思わないですよね。だからこそ、逆にそこに深さがあったら面白いんじゃないかと思い製作しました。プラスチックの人形であるバービーの物語を通して「人間とは何なのか」を模索することは、すごくやりがいのあることでしたね。

「人間とは何なのか」を模索する内容にしたのは、なぜでしょうか?

グレタ監督:そもそも人がより自分らしくなる、人間らしくなることに、私はとても興味があるんです。人間は生きている中で、「これは自分のアイデンティティに欠かせない!」と信じていたことを、何度も自分で取り除いていく生き物だと思っています。10代、20代~80代と、人生のいろいろなタイミングでずっと起きることじゃないでしょうか。

私は、そうした自分が築いたアイデンティティと自分自身がぶつかってしまう瞬間に強いものがあるような気がして、とても興味があるんです。その瞬間、自分の人生の底が抜けたような感じがするわけです。そのとき人はどうするのか、ということに興味があります。

バービーとケンの置かれている状況は何度か反転し、お互いの状況や気持ちを察し理解していきますよね。こうしたことを始め、グレタ監督が私生活で感じたことをストーリーに反映しているんですか?

グレタ監督:はい、もちろん反映されています。今回の物語のベースは、私が子供のときにおもちゃや人形で遊んだ記憶から始まっているんです。子供たちが遊ぶときって、すごく真剣じゃないですか? 子供が遊ぶという感覚がどのくらい私たちにとって重要かを何らかの形で織り込みたいと思っていたので、そこは子供たちの遊ぶ姿からインスピレーションを受けた感じです。大人としてその経験を思い出したとき「どういうことだったんだろう?」と考えるわけで、その部分ももちろん全部入っています。

本作には肌の色も体型も異なる、いろいろなバービーが出てきます。多彩なキャラクターを通して、作品のメッセージを届ける部分で監督がこだわったところや、俳優部に伝えたことはありますか?

グレタ監督:バービーが今こういう風に変わったこと、私が若かったときと違っていろいろなボディタイプの変化したバービーがいることは、本当に素晴らしいことだと思っています。いろいろな女性がバービーとして存在しているから、世界中の方がこの世界の中で自分自身を見出すことができることこそ、自分が映画を作る上で重要でした。

今回のキャスティングでは、マーゴットとライアンだけでなく、皆さん本当にすごくユーモアと才能があって、素晴らしい人たちばかりでした。特にコメディ部分は全部真心からきているようにしたかったので、もともとそういう気持ちを持っている方をキャスティングしました。面白おかしいけど、すごくハートフルな方々をキャスティングできたと思います。

POPさを引き立たせるように、ダンサーがたくさん出演しているのもポイントですよね。

グレタ監督:そうなんです、今回はダンサーをたくさん配しているんです。彼らはたとえ踊っていなくても独特な存在感があり、身体的なあり方があると思ったからそうしました。ビーチで太陽のもと、彼らは彼らでコレオグラフィされていて、その通りに動いている。そのことにより、誇張された世界観がより出たんじゃないかなと思っています。全体的に希望を持てるようなキャスティングができたと感じていますね。

あとは……バービーにばかりフォーカスが当たりがちで、ケンは忘れられた存在になってしまうんですよね。なので、ライアン(・ゴズリング)とふたりで「彼の物語は語られるべきだよね」と言い合いケンの物語は考えました。

ありがとうございました。観客を元気にしてくれたり、奮い立たせるような映画を作っているグレタ監督自身の心の支え、元気の源は何でしょうか? 最後にぜひ教えてください。

それはもう、子供たちです! 13歳、4歳、5か月、それぞれ3人の息子がいるんです。特に一番小さい赤ちゃんを抱きしめるのは、素敵なことです。仕事が終わって戻ったとき、小さな頭をなでるとすごくリチャージされます。自分の映画は深い形で子供時代について掘り下げているような気がしているんです。自分自身が子供を持つことで、よりそのテーマにつながりを感じている今ですね。

(取材、文:赤山恭子、写真:提供)

映画『バービー』は、2023年8月11日(金)より全国ロードショー。

出演:マーゴット・ロビー、ライアン・ゴズリング、アメリカ・フェレーラほか。
監督:グレタ・ガーウィグ
脚本:ノア・バームバック、グレタ・ガーウィグ
プロデューサー:デイビッド・ヘイマン
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/barbie/

(c)2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

※2023年8月8日時点の情報です。

記事をシェア

公式アカウントをフォロー

  • RSS