「恥部を見られているような」青春群像劇に26歳の太賀がスパイスを加える【インタビュー】

世界のディズニーを翔る元映画サイト編集長

鴇田崇

本作の監督、玉田真也が主宰する劇団「玉田企画」による同名舞台原作を完全映画化した『あの日々の話』は、いわゆる“大学デビュー”を果たした若者たちの、滑稽で無様でみっともないけれどいじらしい模様を描く青春群像劇。二次会のカラオケボックスという閉鎖的な空間を舞台で展開する物語に、その店員役として傍観者のように参加した俳優・太賀は、「初めて観る人は本当にびっくりすると思います」と若い才能にエールを贈った。

あの日々の話

ーー本作は、劇団「玉田企画」主宰の玉田真也監督による2016年初演の同名舞台作品の映画化になるわけですが、まずは参加しての感想は?

太賀:僕は舞台再演の「あの日々の話」を観に行っていて、そこで初めて玉田監督ともお話をしたのですが、その時の舞台がとにかく面白かったんです。後日、打ち上げに参加する機会があり、玉田監督と出合い頭に今回のオファーをいただいて(笑)。うれしかった反面、不安にもなりました。

ーーどうして不安に?

あの舞台のクオリティーがあまりにも高かったことと、その出来上がった空気感の中に僕がポンと入る不安もあったんですね。でも、いざ入ってみたら、いいスパイスになればいいかなと思いながら演じていました。

あの日々の話

ーー物語は日常のひとコマではあるのですが、強烈なインパクトもありましたね。

自分自身、他人事とは思えなかったですね。あの10人の中に自分もいただだろうなって思うし、こういう恥ずかしい青春、いじらしい感じはよくわかる。玉田さんの書く台詞がどれも絶妙にリアルで生々しくて、物語自体に大きな仕掛けがあるわけじゃないけれど、それぞれのキャラクターの個性がちゃんと炙り出されるように描かれていて、それが痛いくらいに伝わってくるし、その生々しさが他人事に思えなかったというか。

ーー本当にリアルですよね。まるで見られていたかのような気分にも。

これだけの数のキャラクターがいますが、特殊な人はいないし、何が起こるわけでもない。でも面白い。それはキャラクターの描かれ方が緻密で、会話の成り立ちなどもシニカルに描かれていて、初めて観る人は本当にびっくりすると思います。

あの日々の話

ーー恥ずかしい気分にもなりますよね。

恥部を見られているような。イタい感じの部分ですよね。

ーーところでFILMAGAは映画ファンが集まるサイトですが、太賀さんの好きな映画ジャンルは何でしょうか?

SFなどよりは、こういう人間ドラマをよく観ているほうだと思います。普段、特にジャンルを決めて観ることはしないですかね。最近はレバノンの映画ですが、『判決ふたつの希望』という作品が面白かったですね。

ーーどういう映画でしょうか?

中東の話で、宗教が異なる地域同士がちょっとしたことで小競り合いになり、そのけんかが広がり、国と国との宗教戦争みたいな大問題に発展する。本当にどうでもいい小さなことが発端なのに、国籍の違いや信じているものが違うことで、周囲にもたくさんの迷惑をかけていく。最終的に争いが終息するのも、個人と個人の話だったという。

ーーその国の事情が如実に出ていますね。

隣国同士の違い、信じているものの違いは、日本映画ではなかなか描かれないし、大陸同士がつながっている国だからこその映画ですよね。それは観ていて刺激的で、すごく感動しました。違う文化を描いている作品は魅力的だと思うし、日本は移民が多い国家ではないけれど、世界を見ればアメリカなどそういう国はたくさんあって、日本のドラマ性の選択肢の少なさも感じました。

ーーなるほど。たしかに原作ものなどは少なくないですからね。

作られるものも自ずと縮こまってしまうだろうし、海外の作品のそういうところにすごく影響を受けます。日本は世界的な潮流からガラパゴスな部分があると思うので、そこは重要視して観ているところはありますね。

あの日々の話

ーーさて俳優デビュー10年ほどを経て、いまのモチベーションは何でしょうか?

この仕事をしていて何が一番楽しいかは考えたりしますが、普段会えない人と会えたりすることが一番刺激になります。行く現場にいろいろな人がいて、3か月後にはまた違う人たちと仕事をして、何百人というものすごい数の人たちと会う。この仕事でなければ会うことはなかった方たちであるし、そこで何かを作ることの悦びも大きくて、それがモチベーションですね。<誰かと何かをやりたい>ということのほうが強いですね。

ーーそれは重要ですよね。<何が>ではなく<誰と>ですよね。

ただ、自分だけの選択で会うわけではないというか、俳優はあくまでも受け手側。オファーをいただいて初めて仕事が成り立つので、自分のジャッジだけではないですよね。だから出会いがあった時の悦びが大きいと言うか、昔一緒にやった人との再会もうれしい。それは楽しいことですよね。

あの日々の話

ーー今日はありがとうございました。映画ファンの読者にメッセージをください。

映画を数多く観てきた方でも玉田監督の新しい才能には驚くと思います。群像劇が好きと言われていましたが、ものすごく濃密に描ける監督は、それほど多くないと思う。この映画を観た時に他人事だと思えなかったし、そこには昔の自分がいたような気もするし、あまりのリアルさと痛さに目も当てられないような過去が浮き彫りになってきたり。またひとり切れ味鋭い監督が出てきたといますので、ぜひ確かめみてみてほしいですね。(取材・文・写真=鴇田崇)

映画『あの日々の話』は2019年4月27日(土)より、ユーロスペースほか全国順次公開。

あの日々の話

監督:玉田真也
公式サイト:https://anohibi.com/
(C)2018「あの日々の話」製作委員会

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  • マンゴーラッシーちゃん
    2.8
    オール明けの朝日は眩しいけど、オールしなくても朝日は眩しい。エンディング以降にやっとわくわくした気持ちになれた。飲み会の解散後の顔を見たい。長井短ちゃん好き
  • hanakuso
    3.8
    ラスト20分くらいのあの気まずい感じ最高だったな。 大学ってこんなんなんかあって思った 純恋歌は名曲
  • Sho3
    1
    とあるサークルのカラオケでの一晩。 あまりのつまらなさに仰天!うまくイタい大学生を切り取りました感出してるけど、こんな奴らいねー…。この監督は本当にサークルなど入っていたのだろうか、中年が想像で描いたような否リアルな大学生像。友近のコントを1時間半見せられたような、何を見せられたの感。
  • かりんとう
    -
    記録
  • tiger
    2.2
    悪意のための悪意。所々笑えるけど、映画でやる意味はまったく感じられない。 空気が盛り上がる→盛り下がる→また盛り上がるを繰り返すんだけど、ためにする展開ばかり。これを上手いと言っていいのか。 ほとんど誰も大学生に見えない。舞台なら許されるリアリティなのかもしれんが。 役者さんの顔はもれなく醜く映っている。特に男性陣の汚さは酷い。 長井短さんだけ良かったかな。人の恋路を見てニヤニヤしている奴らは感客含めてろくな死に方しねーよ。
あの日々の話
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