峯田和伸は「背中で答えを語ってくれる」、古舘佑太郎は「何かになろうとしてる」ーー音楽と映画で紡ぐ縁【ロングインタビュー】

映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

峯田和伸がフロントマンを務める「銀杏BOYZ」の楽曲からイメージして書き上げた映画『いちごの唄』。『ひよっこ』で峯田と共演した古舘佑太郎が、瑞々しい演技で主演を務め、峯田は書き下ろし主題歌も手がけ、出演もしている。

いちごの唄

不器用だが心優しいコウタ(古舘)には、たったひとりの親友・伸二がいた。だが、伸二は、ふたりが「天の川の女神」と崇めていた中学のクラスメイト・千日(石橋静河)を交通事故から守って亡くなってしまった。10年後、伸二の命日である七夕にコウタと千日は偶然再会。たわいもないおしゃべりにはしゃいだコウタは、毎年七夕に千日と会うことを約束し、想いを募らせていくのだが……。

FILMAGAでは、全国公開に先駆け上映会が行われた「島ぜんぶでおーきな祭 第11回沖縄国際映画祭」に駆けつけた古舘&峯田に、現地でインタビューを実施。俳優としても、アーティストとしても先輩である峯田を「背中で答えを語ってくれる」と羨望の眼差しで見つめる古舘、応える峯田は古舘を「完成されていなくて、でも何かになろうとしてる」と愛情たっぷりの言葉で返していた。

いちごの唄

――岡田さんと峯田さんが手がけた小説『いちごの唄』の映画化です。元々、原作も読まれていましたか?

古舘 そうですね。台本よりも先に小説を読んでいたので、銀杏BOYZの曲からできていることもあって、「音楽みたいな物語だなあ」と最初は思っていました。繰り返し読んでいたんですが、台本に移行して、自分が演じることを想定した途端に、「この主人公をどうやって演じたらいいんだろう……」と感じたんです。居そうで居ないというか、超変人ではないですけど、現実世界にコウタのような人がいっぱいいるかといったら、あまり見たことがなかったので難しいと思ったんです。

――コウタの人物像をご自身に落とし込むまで、かなり悩んでいらしたんですね。

古舘 「コウタって何者なんだろう」と、演じるにあたってずっと考えていました。物語の青春部分というか、甘酸っぱさみたいなところや、出てくるキャラクターたちはすごく愛せたので、だからこそ、自分がやるコウタはどうなっていくんだろう、というのは感じていました。

いちごの唄

峯田:僕は、普段から(古舘の)感じとかを知っていますけど、何も知らない人が映画を観たら、「地に近いんじゃない」って思うんじゃないですかね。普段からああいう笑い方をしたり、声が大きい感じなんじゃない、と思いますよね。だから、今みたいに悩んでいたということを聞くと、ちょっと、「ああ、そうなんだ」って驚きます。自分のままでいけたんじゃないかって思っちゃいますよね。

古舘 マジっすか? 僕としては、それ、ちょっとうれしいです。

――峯田さんのおっしゃること、わかります。もし古舘さんのことを知らない方が観た場合、素直で不器用で真っすぐなコウタをそのまま古舘さん像と信じそうです。

峯田 うん。普段から、ああいう感じなんじゃないか、って思うんじゃないかな。

古舘 でも、たぶん真逆です。

峯田 真逆でもないよ。

古舘 本当ですか?

峯田 うん。だって、そういう側面はあると思うよ。まるっきりああいう感じじゃないけど、確かにああいう部分は、あると思う。

いちごの唄

――普段の古舘さんをご存じの峯田さんから見て、リンクするようなところはどこだったんでしょうか?

峯田 台本を読んで、岡田さんがやっぱり古舘くんを想定して書いていると感じたんです。古舘くんにこういうふうにチャレンジしてほしい、というところも、もちろんあると思うんですけど、古舘くんを見ていた岡田さんが、古舘くんが動きやすいような動線を作って書いたのは、あると思います。あまり無理しない、岡田さんが思う古舘くんとか、そういう色はちゃんと見ていると思うけどね。

いちごの唄

――岡田さんとは、『ひよっこ』からのお付き合いなんですか?

古舘 僕は、『ひよっこ』からです。

峯田 僕は、もうちょっと前からで、『ひよっこ』の前に『奇跡の人』というドラマがあって、そこからです。

――資料を拝見すると、峯田さんと岡田さん、すごく息が合うという感じだったそうなのですが。

峯田 峯田:岡田さんが、めっちゃくちゃ音楽好きなんですよ。もちろんドラマとか映画の話もするんですけど、レコードの話とか、音楽の話でいつも盛り上がる。だから、ご飯会とかがあると、僕はいつもレコードをプレゼント用で買っていくんです。向こうも買ってきて、みたいな。

――交換したり?

峯田 そうそうそう。「ありがとうございます」みたいな。脚本家さんで音楽が好きな方とかもいらっしゃるんですけど、岡田さんはやっぱり、もともと音楽ライターみたいなことをやっていらしたし、やっぱりお好きなんでしょうね。だから、音楽をやっているうちらみたいな奴と、ちょっとウマが合う気はするんですよね。

いちごの唄

――劇中には、峯田さんのバンド「銀杏BOYZ」の楽曲もふんだんに使われていますし、書き下ろしの楽曲もあります。こうして形になることについては、どんなお気持ちなんでしょうか?

峯田 もう、バンド冥利に尽きますよね。曲を作っている渦中っていうのは、まさか将来ね、自分の作った曲が全く違う物語になって、予期していない人たちに届くなんて考えてもいないので。本当に、彼女にフラれたとか、どうしようもないときにしか曲は作れなくて、そのときに作った曲が、何年か経ってからこういう形になるのは不思議な感じです。

――『いちごの唄』に関しては、どういうふうに作曲を進められたんですか? 物語に合うイメージで書かれたんですか?

峯田 ふたつあって、ひとつは、映画の中の古舘くんの顔、たたずまい、疾走感とかから膨らませて、この映画に合うようなっていうのと。あと、もうひとつは、自分の今の音楽家としてのモード。そのふたつ、どっちもあると思う。こういう曲を作りたいっていうのと、どっちもあるから、それがいい感じになっているんじゃないですかね。

いちごの唄

――古舘さんは、楽曲をお聴きになってどんな感想をお持ちでしたか?

古舘 聴く前からの話になるんですけど、うちのバンド(「2」)のギターが、銀杏BOYZでギターを弾いているんですね。だから、峯田さんが主題歌を書き上げたときに、彼から「すんごい良いのができた! しかも、佑太郎くんのことをテーマにしてるっぽいよ!」と言われたんです。めっちゃうれしい反面、一瞬ちょっと怖くなってきて。「どんな歌になってんだろう……」みたいな(笑)。これまで自分のこととかを、僕は峯田さんに相談してきたので、それが歌になるってどんな感じなんだろうと思って、ちょっとドキドキしていたんです。

いちごの唄

古舘 けど、聴いたときはちょっともう……この映画どうこう以前に、普通にひとりの音楽の後輩として、「ああ、かっけえ。すげえ……!」と思っちゃいました。詞を読んでも、僕のことを書いてくれたからとかじゃなくて、普通に、「こんな詞が書けるんだ」みたいな感じで、ひとりで興奮したんです。

いちごの唄

――劇中で流れたときの印象は、さらに違いましたか?

古舘 初号(試写)で、完成した作品として観たときには、もう本当に……自分が関わっていたのは撮影前の準備期間を含めて3カ月間くらいなんですけど、その期間がこの1曲に詰まっていて。いろいろ思い出したこともあったし、報われた部分もあったし、峯田さんからのエールだったりとか、厳しい言葉みたいなのも全部、映画に詰まっていて、かなりグッときちゃいました。結構危なかったというか……もう、涙腺がギリギリな状態になっていました。

いちごの唄

峯田 普段、音楽を聴くときって、何かしらの映像や風景とかも含まれていると思うんですね。自分の好きな曲とか何でもいいんですけど、自分の好きな光景とか、あの人の顔とか、そういうのが含まれると思うんですけど、それがリアルに映像として、プロの人たちが手間暇かけて作ってくれて、いい作品を残してくれている。最後に画面が暗くなって、出演した人、スタッフの人の名前と一緒に曲が流れるのは、音楽を作っている人からすれば、そんな喜びはないと思います。そんなうれしいことは、ないです。

いちごの唄

――感無量という感じなんですね。

峯田 うん。僕、好きな映画もいっぱいありますけど、好きな映画って、エンディングテーマとか、主題歌の曲とくっついてません? 例えば、『グーニーズ』だったらシンディ・ローパーとか、『タクシードライバー』だったらジャクソン・ブラウンとか。思い出すときって、音楽と映像って一緒になってません? やっぱり、音とか音楽って映像とすごい近い存在だと思うんです。どちらも相乗効果を生むから。音楽を聴いて、その映画を思い出すし、その映画のことを思って、その音楽が鳴ったりするし。だから、すごい良い機会を今回与えてもらったな、と思います。

いちごの唄

――兼ねてよりお付き合いがあるおふたりですが、古舘さんにとって、峯田さんはどういう存在と言いますか、どんな方でしょうか?

古舘 言葉で語らなくて、完全に背中で語る人なんだって、ずっと思っています。言葉とかじゃないんですよね。もちろん、言葉もいっぱいくれるんですけど。背中で答えを語ってくれるので、一番説得力があるというか。

峯田 ええっ(笑)。

古舘 僕もそんな人になりたいのに、僕はむしろ背中で語らないで、言葉でばっかりしゃべっちゃう奴なので、そこがもう自分の中で、でっかいですね。

いちごの唄

――峯田さんは、背中で語られるんですね。

峯田 いや、そんなことはないと思います(笑)。

古舘 でも、それは、僕が初めてお話をしたときからずっと思っていることです。

峯田 それはもう、僕が20代の頃に、20歳上の先輩たちがそうやってきたことだから、それを見てやっぱり、うん。だから、古舘くんの背中を見る若い人もこれから出てくると思うし、そういうことでいいんじゃないですかね、別に。僕もやっぱり、あのとき「すごいな」と思ったからさ。

いちごの唄

――反対に峯田さんにとって、古舘さんはどういった存在ですか? ミュージシャンとしても俳優としても、先輩、後輩関係にあたるかもしれないですが。

峯田 いや、あんまね、後輩っていう感じはしていなくて。……かわい? ?人ですよね。かわいげがあるっていうのとも、ちょっと違うんですけど。僕、女の子でかわいい人はいっぱい知っていますけど、男の人でかわいいのはね、なかなかね。

――あまり感じられないんですか?

峯田 あまりいないんじゃないですか。音楽ももちろん、いいものは作ると思うし、お芝居もいいものは持っているし。ちょっとだけ僕が先にそれを経験したから、わかんないことがあったら、「こうなんじゃない?」とか、自分が経験したこととかは、ちょっとは言えるだけで。でも、本当に、「こんな奴に言っても意味ねえな」と思う人だったら、たぶん言わないと思うし。言うことを聞いてくれるからかわいいとかではなくて、何かになろうとしてる、っていう。完成されていなくて、でも何かになろうとしてるっていうのがね、ずっとそのままの感じでいってほしいですよね。もうでき上がっている男の人にはなってほしくないな。何歳になっても悩んでいてほしいし、何歳になっても、しょうもないことでクヨクヨしていてほしいな。(取材・文=赤山恭子、撮影=映美)

映画『いちごの唄』は2019年7月5日(金)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー。

出演:古舘佑太郎石橋静河 ほか
監督:
菅原伸太郎
原作:峯田和伸、岡田惠和
公式サイト:http://ichigonouta.com/
(C)2019『いちごの唄』製作委員会

記事をシェア

公式アカウントをフォロー

  • RSS
  • もも
    -
    古舘佑太郎さんのファンです。 閃光ライオットで初めて見たときからずっと好きです。 演技とか内容ももちろん良いのですが顔が好きなのでもういいです。
  • HN
    3.6
    ぽあだむのタイミング良い
  • あるぱか2世
    3.7
    なにやらけっこう酷評されているので、おそるおそる鑑賞しましたが、いつもの岡田惠和作品らしい仕上がりになっていて安心した。 ただ、古舘佑太郎さん演じる主人公の行動がやや誇張しすぎで、繊細さを描くところが裏目に出ちゃった気がする。 そのあたりの描き方はドラマ「奇跡の人」のほうが巧みだった。 それと途中で(おそらく架空の)災害の場面をはさむことの意義みたいなものがあまりよく見えてこなかったのは少し残念だったかな…。 いまの時代だからこそ、災害を描くということの意義をちゃんとしないといけないような。
  • ほいほい
    2.6
    主人公コウタは軽度の発達障害。 周りから常に優しくされる存在であり、その心には悪意が欠片もない。 だからこそ、愚直に不器用に生きるしか術がない彼は、中学時代に憧れたヒロインあーちゃんにずーっとずーっと恋焦がれている。 2人は偶然東京で再会し…というのが冒頭。 コウタが発達障害だというのは察して下さい、というレベルの描写しかないのだけれど。その察しては至るところに散りばめられてある。 そして、その純粋な優しさに周囲の人間は絆されていく。 この手の映画って割とあるし、この手の人は割と身近にいる。純度100%と言いたくなるような純粋さを持っている人に触れると釣られるんですよね。その心に。 自分にないものだからかなぁ?とも思うけど。釣られるだと言い方がよくないな。影響される。 あの手のピュアさは色んな自分を思い出させてくれる。 見方は人それぞれ。 僕は、いつしか失われていったピュアさはいつまで持っていたのか?自問自答しました。 --- 作中に出て来るパンクロッカー役の岸井ゆきのが昔付き合ってたパンクなタイ人の女の子にそっくりで笑った。メイクした顔がまんまな感じでした。 まぁタイ人の女の子の方はタトゥーがびっちり入ってましたけど。笑🤣
  • サン
    3
    出演俳優さんが豪華。 心がじんわりと あたたまるような作品。 見終わったあと、 何とも言えない感覚になった。 幼い頃の出来事は 大人になってもずっと残る。 それを引きずって生きてしまう。 生きていくことに、疲れた時 ふと思い出してしまう。 楽しいことばかりじゃない。 生きていくのって 大変なこと。 しんどいし、辛いし、悲しい。 でも、生きているからこそ 嬉しさや楽しさを味わえる。 そう思っていたい。 誰かのためになれなくても 心のどこかに 覚えてくれている人になれたら。 それだけで 幸せなのかもしれない。 今の私には、 とてもしみる映画だった。
いちごの唄
のレビュー(2213件)