人気アニメ「天元突破グレンラガン」(07)、「キルラキル」(13)の最強コンビ、監督・今石洋之と脚本・中島かずきによる最新作『プロメア』は、構想6年を経て実現した渾身の一作。声優陣にも松山ケンイチ、早乙女太一の豪華ダブル主演をはじめ、堺雅人、古田新太など、中島かずきが座付き作家を務める劇団☆新感線の出演経験を誇る演技派俳優陣が集結した。その最強コンビに本作の制作秘話などをはじめ、ロケハンのエピソードなどを直撃。試行錯誤を繰り返した男たちが本作に込めた想いとは!?
ーー全世界の半分が焼失した世界など、全体のアイデアが面白いですね。
中島 テレビシリーズの「キルラキル」終了後に次回作の話になり、今度は劇場でという前提の元に企画を練りはじめ、それがスタートでしたが、そこでさまざまな試行錯誤があり、最終形に至っています。
ーー最初に中島さんがアイデアを出すのですか?
今石 いえ同時です。二人で作ります。
中島 僕のほうからは劇場でやるのであれば、『ヒックとドラゴン』みたいなジュブナイルものをやりたいと言いました。しばらくは、それで進めていました。
今石 もっと少年主人公ものでしたよね? 最初は順当でした(笑)。
中島 少年の成長譚でしたね。
今石 それが早く内容に触れたいというか、主人公が主体的に状況に対応していく話にしたかったので、最初からレスキュー隊員ということに重きを置くことになりました。
中島 何でもない少年が何者かになっていく話をやりたくて稿も重ねていったのですが、今石さんのほうから「何か違う。もっとスピード感がほしい」ということで変更を。ある種少年の成長譚って、物語の中心に飛び込むまでのセッティングが必要じゃないですか。何者でもない子どもが成長し、やがて物語の中心となりクライマックスを迎える、そのセッティングがまどろっこしかったんですね。
だとしたら、最初からレスキュー隊員で、ある程度成長した人間でなければいけないよねと。僕が考えている少年成長譚だと、映画が1時間半たったところで主人公が見得を切るというか、ある種の名乗りを上げる。そこで何者かになるわけです。でも今石さんが冒頭三分で見得を切りたいと言われたので、最初の1時間30分を切るしかないですねと(笑)。
今石 ジュブナイルやったら、たぶん3時間くらいほしくなる(笑)。
中島 結局ジュブナイルはテレビシリーズのアイデアだったのかもしれませんね。ゆっくりとやっていく時間が必要だった。
ーーいきなり見得を切りたいのは、映画だからですか?
今石 そうですね。2時間、一発で全部見せることを考えると。
ーー炎を操る人種<バーニッシュ>のアイデアは?
中島 僕ですね。テッド・チャンの『あなたの人生の物語』を読んでいてふと、燃やすのがコミュニケーションのツールになっている生命体がいたら迷惑だよなっていうのを思いつきまして。あの短編のコミュニケーション方法が違うとなかなか理解し合えないよねっていうところに触発されたんですね。映画『メッセージ』の原作ですが。そこから炎生命体、そしてバーニッシュとアイデアを転がしていきました。
ーー実際の炎とは違いますが、何を意図していたのでしょうか?
今石 あまりリアルすぎないようにはしました。炎ではあるけれども、現実のものとは違う特殊な炎として描いている。リアルにしすぎると、それはそれでアニメとしてもいばらの道で。たぶん実写であれば本物の消防車を出したりできるけれど、アニメで本物の消防車を出すと描き込まないといけない。細かく描かなければいけないので、手間が増えますよね。ちょっと誇張した世界は、アニメのほうが描きやすい。それは意識しましたが、ニューヨークの消防署にロケハンに行ったりはしました。
ーーロケハンではインタビューを?
中島 装備を見せてもらったんでしょう(笑)?
今石 そうですね(笑)。見学させてもらって、実際に放水をさせてもらったり。
中島 向こうは破壊消防とでも言うのか、救出のための破壊などの重機がたくさんあるんですよね。その点はアクティブで映画的なところがある。
今石 すごくわくわくする部分でもありますよね。何でもブッ壊せるみたいな機械が大量にあって、ひしゃげた車をこじ開けるための万力の逆みたいな機械もあった。木が一瞬で潰れるものとか。
中島 あちらは昔から石造りでしょうから、救助も大変でしょうね。
今石 現地の消防署の人は全員マッチョなんですよね。当たり前なんですけど、確かになあと。
ーー最後に作品を楽しみにしている方々へメッセージをお願いします。
今石 テレビアニメが長かったので、そういう意味では純正のオリジナルの単発長編映画をやったことは初めてです。映画の世界に対しては、そこはけっこう意識して作っていたので、いままで僕たちの作品を意識していた人たちもそうじゃない人たちも楽しめるように作っているつもりです。アニメなどと深く考えずに、アクション映画を観に行くつもりで観てもらえるといいかなと思います。
中島 いわゆるハリウッドのエンタメ的なわかりやすいものを目指してはいたので、2時間ノンストップのアニメならではのアクションを満喫してほしいです。今までよりスタイリッシュな画面構成ですが、クライマックスの熱量はほんとに半端ないので。そこは期待は裏切りませんから。
映画『プロメア』は、現在公開中。
出演:松山ケンイチ、早乙女太一 ほか
監督:今石洋之
脚本:中島かずき
公式サイト:https://promare-movie.com/
(C)TRIGGER・中島かずき/XFLAG
※2022年1月30日時点のVOD配信情報です。