漫画「医龍-Team Medical Dragon-」などの乃木坂太郎が、2019年からビッグコミックスペリオールで連載していた同名コミックを原作とした映画『夏目アラタの結婚』。
連続殺人犯の死刑囚にプロポーズするところから始まる前代未聞の獄中サスペンスだ。『十二人の死にたい子どもたち』、『イニシエーション・ラブ』や「SPEC」シリーズなどを手掛けてきた堤幸彦が監督を務めたことで、スタイリッシュかつスリリングな映像に仕上がっている。
児童相談所職員の夏目アラタ(柳楽優弥)は、訪問先の子供からの奇妙な依頼に応じるために服役中の死刑囚・品川真珠にプロポーズをし、結婚することに。アラタは、事件を調べるなかで、事件の真相だけでなく真珠の過去や抱える想いを知ることになる。
『夏目アラタの結婚』(2024)あらすじ
“品川ピエロ”の異名で知られる3つの連続バラバラ殺人事件の犯人であり、死刑囚として服役中の品川真珠(黒島結菜)。児童相談所職員の夏目アラタは、真珠が起こした事件の遺族・山下卓斗に頼まれて、真珠への面会に訪れる。目的は、まだ発見されていない被害者である卓斗の父親の首を探すためだった。真珠と無事対面を果たすも、アラタの態度を見て出ていこうとしてしまう。アラタは、なんとか真珠を引き止めようととっさに結婚を申し込む。毎日20分の面会のなかでなんとか事件の真相を探ろうとするも、アラタは真珠の言動に翻弄される。
※以下、本作のネタバレを含みますのでご注意ください。
アラタと真珠の攻防

主人公・夏目アラタは、真珠が起こした事件の遺族の子供・山下卓斗が真珠と文通していたことをきっかけに真珠に会いに行くことに。会いにいったものの思っていた人と違うと言われてしまい、真珠はアラタを拒絶。焦ったアラタは結婚しようと咄嗟に発言してしまう。
アラタは、隠された被害者の首を探すという目的がバレないように、結婚したいという気持ちを装って真珠とコミュニケーションをとりはじめる。結婚すると言い出したアラタの元に、真珠の担当弁護士である宮前光一(中川太志)が訪れる。宮前は、真珠の無罪を信じて弁護をしていた。

真珠はアラタが結婚をする気がないことを見抜き、さまざまな言動でアラタを翻弄。ある日自分は殺人を犯していないと告白する。そんな真珠の発言を、もちろん信用できないアラタ。翻弄され続けたアラタは、これ以上、近づいても意味がないと判断し、結婚を断ろうとする。そんなアラタの態度に気づいた真珠は、過去の事件の遺体の隠し場所を語り始める。
事件の真相は?

真珠が証言した場所から、1つ目の事件の被害者の遺体の一部が発見された。真珠は死体損壊のみで殺人はおこなっていない、ストーカーされており、そいつが殺したのではないかと言い始める。
アラタは真珠からストーカーの話などを聞くうちに、真珠の過去になにがあったのか、なぜ卓斗からの手紙に惹かれたのかが気になり始める。真珠から話を聞き出そうとするも、うまくいかない。アラタは、このままではダメだと実際に婚姻届を提出することを決断する。
アラタは調べるうちに、真珠が父親・三島正吾に付きまとわれていたことを知る。真珠は、母親が幼児期になくなった娘の存在を隠すために作った二人目の娘だったのだ。いわば、本当の真珠の代わりに作られた娘だった。
真珠はそのことで父親に絡まれていた。アラタは真珠のヒントを元に、隠されていた本当の真珠の骨を見つけ出す。8歳のときに行なわれた真珠のIQ検査と大人になってからのIQ検査の結果がm大きく異なっていたのはこのためだった。もし殺人を犯したときの年齢が18歳以下であった場合、死刑判決は無効。控訴されるまでは、真珠に逮捕状が出ていない状況になる。

その抜け目を狙って、アラタは真珠を迎えに来る。二人はバイクで逃げ出し、ホテルで一夜を明かす。アラタが目を覚ますと真珠の姿はすでになく、卓斗の父の首の在処を示したと思われるメモが残っていた。実際に探してみるとそこにあったのは、三島正吾の首だった。
真珠は裁判で事件の真相を語り出す。三島正吾を殺したこと、他の殺人事件の被害者も皆死にたがっており、真珠が殺したのだった。真珠は本当はいたはずの姉の代わりとして、自分という存在を感じられずに生きてきた。同じように死にたがっている人を殺す形で救済を施していたのだ。
真珠の想い

真珠は自身の生い立ちから、自分を一人のかけがえのない人間として扱ってくれる人を待っていた。卓斗からの手紙に惹かれたのも、過去においてきてしまった自分の幼い心に寄り添う内容だったからだ。
姉の代わりとして育てられ、虐待されながら育った真珠は、“かわいそうな女の子”として扱われてきた。支援の手を差し伸べようとする人も皆、真珠という人間を見ずに、“かわいそうな女の子”という記号をつけていただけだった。
そんな真珠に初めて、純粋な優しさから手を差し伸べてくれたのは、学生時代のアラタだった。アラタにもらったハンカチを大切にしてきた真珠は、アラタからの手紙や差し入れから同じ匂いを嗅ぎとり、あの時のアラタが迎えにきてくれたと感じていたのだ。

アラタは改めて真珠に向き合うことを決心し、獄中にいる夏目を夫として待つことを決める。最後には、二人の想像上の神前式が描かれた。
緊迫感のある映像と緻密な構成で、事件の真相が描写されることで、獄中や裁判所という限られたシチュエーションが舞台になっているとは思えないスリリングな作品に仕上がっている。同時に、複雑な生い立ちを持つ真珠の繊細な感情とアラタの感情の変化が丁寧に描かれていることで、ロマンス映画としても見応えがあるのが特徴だ。
(C)乃木坂太郎/小学館 (C)2024映画「夏目アラタの結婚」製作委員会
※2024年9月8日時点の情報です。

