映画『夏目アラタの結婚』柳楽優弥×中川大志、演技者たちが語る稀代のヒットメーカー・堤幸彦監督“ならでは”現場の醍醐味【インタビュー 】

映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

映画『夏目アラタの結婚』柳楽優弥&中川大志ロングインタビュー!

稀代のヒットメーカー・堤幸彦監督が、柳楽優弥を主演に、黒島結菜と中川大志を共演に迎え、累計260万部超えの人気漫画の同名映画『夏目アラタの結婚』を撮り上げた。

本作は、品川ピエロの異名を持つ連続殺人事件の死刑囚・品川真珠(黒島)から消えた遺体の場所を聞き出すため、児童相談員の夏目アラタ(柳楽)が結婚を迫り駆け引きを行うという、奇想天外なストーリー。「誰も殺していない」と猟奇的に微笑む真珠の一挙手一投足に、アラタは振り回される。近づいても近づいても底の知れない真珠を黒島が怪演、そんな彼女に躍起になり、いつの間にかハマってしまうアラタを柳楽が達者な演技で追いかけた。そして、真珠の無罪を信じ弁護を引き受けるのが、中川演じる宮前光一。アラタと宮前はバディのような関係性に発展するわけだが、どっしりとした中川の存在感が光る。

1シーン、1シーン進むにつれ目が離せない、物語の着地がまったく予想できない新感覚のサスペンス・ムービー。柳楽&中川ペアに撮影の裏話から、堤監督の現場ならではの醍醐味まで、たっぷりとインタビューした。

『夏目アラタの結婚』は獄中サスペンスという、類を見ない作品となりました。台本を読んでの感想と、柳楽さんはアラタを演じる上で、中川さんは宮前を演じる上で、役作りのために本作ならではで深めていった点などから伺いたいです。

柳楽:原作の漫画を読んで、脚本を読んで「この作品、面白いなあ」としみじみと思ったのが最初の感想でした。特に好きだったのは、アラタが発する心の声のところ。アラタは死刑囚の品川真珠(黒島)に対してプロポーズするけど、当然そこには駆け引きがあるわけなんです。物語が進んでいって、都度、アラタの心の声も明かされていく。もともと人って普段から本音を言っているわけではなく、演じているところがやっぱりあるじゃないですか。そうした本音というところをモノローグで表現されていたこと、できたことは面白いなと思っていました。

アラタの気持ちについて、柳楽さんがシンクロするようなところはあったんですか?

柳楽:いや、ほぼなかったです。共感できた点は、児童相談所の子供に対して、アラタが背中を少し押してあげられる存在になりたいと行動するようなところ。だけど、真珠との物語が進む中では共感というよりも、「どうやってやったらいいんだろう!?」と思うところが多くて、堤監督に聞いたり話し合ったりして探っていましたね。新たに引き出しを作っていったような感覚でやっていました。

現場で正解が出てくるような感じだったんですね。

柳楽:正解……かもわからないですけど(苦笑)。堤監督とご一緒するのは2回目で、16歳のとき以来です。

中川:16歳のときなんですね!

柳楽:そうそう。堤さんとは、そういうつながりもあったのでとても信頼を置いてやらせてもらいました。現場では、黒島さんも大志くんも以前共演させてもらったので、居心地がよかったです。その中で探り合えるのがいい時間になりました。

中川さんは、いかがでしたか?

中川:突然現れた面識もない男と死刑囚が結婚するという、もう、かなりぶっ飛んだ設定ですよね(笑)。僕の演じた宮前は弁護士で、真珠が連続殺人事件の犯人じゃないと信じて弁護するという役どころでした。この物語の中で、その設定に説得力や生々しさみたいなものを宮前がしっかり地続きにする役にできたらいいなと思って演じていました。それがあることによって、アラタと真珠の異質な関係性がより浮き彫りになるんじゃないかと思っていたので、全部が全部ファンタジックにならないように意識していました。リアルという側面と、堤監督の作るエンターテインメントとしての世界観を繋げるにはどうすればいいのか、常に考えていたような気がします。

先ほどお話にありましたが、柳楽さん、堤監督とは『包帯クラブ』以来なんですよね。

柳楽:そうです、もう17年前くらいですかね。

再会して現場で感じたことなど、どんなことがありましたか?

柳楽:まずは今回、監督から声をかけていただけてすごくうれしかったです。もともと『包帯クラブ』という作品は、僕が「どうやったら演技がうまくなるんだろう」と考えていた時期のもので、何となくいい感触が得られた作品だったんです。「これが自分の中でやっていく方向なのかな」と、ちょっと達成感があったというか。その堤監督とまたご一緒できることがとにかくうれしかったです。10代のときにやっていた方とまたご一緒できることって、すごく不思議だし、特別なんですよね。そういう人とお仕事をしたらどうなるんだろう、すごく幸せだなと思いました。

緊張感のあるシーンが多かったですが、現場の雰囲気はいかがでしたか?

柳楽:堤さんは、毎回同じスタッフさんと製作されているんです。今回はカメラマンさんが変わっていて、大志くんと大河ドラマを撮っていた方なんだよね?

中川:そうなんです。『鎌倉殿の13人』でチーフで入っていた方(神田創)でした!

柳楽:それぞれ信頼できる関係性の人がいる感じがあったので、すごく集中しやすい環境でした。

中川:現場は全然ピリピリしている感じではなかったですよね。

柳楽:うん! あ、あと監督がお弁当を入れてくれました、焼肉弁当~(にこにこ)。

主演の柳楽さんのやわらかい空気感も、現場の雰囲気の大きな要素かもしれないですよね。堤監督ならではという演出はありましたか?

柳楽:(中川に)堤さん、一発OK多くないですか?

中川:そうでしたよね!

柳楽:撮るペースがとにかく速いんです。「本番、もう1回あるよね」とどこかで思っていたらダメで、きちんと考えて本番に臨まないと撮り終わってしまうというか、どんどんOKになっていく。何回か撮って、それなりに保険があるほうが……って僕、わがままですよね(笑)?

何回も撮り直すのは大変なはずなので、一発OKのほうがうれしいのだが……というジレンマとでもいいますか。

柳楽:そうですね、1回のほうが早く終わるけど、でも全部1回だと……。

中川:そうですよね、わかります。「え、もういいんですか?もう1回やらなくていいですか?」ってなりますよね。

柳楽:「もう1回お願いします!!」みたいな!

中川:意外と……一発OKは、それはそれで不安になるものですよね。

柳楽さんと中川さん、本格的な映画共演は初めてだったかと思います。ご一緒してみて、いかがでしたか?

中川:本当にうれしかったです! CMのシリーズで何年かご一緒していたんですけど、当時からずっと作品でご一緒したいという思いがありました。今回は少しずつバディのような関係性になっていく役どころだったので、すごく楽しみでした。

柳楽さんのすごいところは……自分がイメージしているところとまったく違う、自分だったらできないような表現ができるところです。原作の漫画と実写という現実とのバランス感覚が、アラタという役はすごく難しいところだと思うので。ちょっとぶっ飛んだシーンもあるからこそ、それを「こういうバランス感覚でやるんだ」という発見が多くて、現場で見ていてすごく刺激を受けましたし、自分の気合いが入りました。

柳楽:えー! ありがとう~。大志くんはね、まず双子座なんですよ。

中川:はい(笑)。

柳楽:僕は双子座の人が好きなんです。最初から、びびっときていました。CMのときから好きだったから、一緒にやれてうれしかった。演技や役に対しても真面目に向き合う人ですし、かっこいいしねえ。

ベタ褒めですね! 共演の中でも特に印象的なシーンはありましたか?

柳楽:法廷のシーンは、割と長丁場だったよね。

中川:長かったですね!1日がかりでした。

柳楽:みんなで乗り越えていった感じが強いシーンだったよね。エキストラさんたちも、終わったら拍手してくれたりして。そんな現場は初めてだった。謎の一体感が生まれてたよね。

中川:舞台というか、劇場みたいな感じもありましたよね。

柳楽:確かに!

中川:弁護人と検察官がしゃべっているシーンは、本当に舞台を見ている感じに近かったのかなと思います。エキストラさんたちは設定を聞いていても、細かい台本を渡されているわけではないと思うので。だから、まるでお客さんがいたかのような、そんな拍手だったんですかね!

柳楽:ね、面白かったなあ。

アラタも宮前も真珠に翻弄されてしまうわけですが、真珠の魅力はどこにあったと感じましたか?

柳楽:真珠は……もう、自分の想像にない感覚じゃないですか。わからないです! ただ思うのは、真珠の考えていることや明かさない部分とか、同性の人が見たらどう思うんだろうって。共感できるところがあったりするのかなあ?

ほかの人の意見が知りたい、という感じですか?

柳楽:そうです。真珠の感じていることがどこまで共感できるのか、コネクトできる人っているのか、どうなんだろうって。僕はわからないので、そういうレビューとかを見られたらうれしいですね。

中川:アラタの台詞でありましたけど、「会うたびに、どれが本当の顔なんだ」と。いつも別人のような彼女がいて、本当にブラックホールみたいな得体の知れない人ですよね。そこに何があるのか、見えないからこそ気になっちゃう、みたいなところかなと思います。しかも、完全に見えないわけではなくて、見え隠れしているから覗きたくなるのかも。それは彼女の傷なのか、トラウマなのか、弱さなのか、何かはわからないけど、そこに惹かれてしまうのかなと思いました。

最後に、FILMAGAユーザーに向けて最近観た作品で印象に残っているお勧め作品など、ぜひ教えてください。

柳楽:最近観てよかったのが3作あります。1作品目が、今ディズニープラスさんで配信されている「一流シェフのファミリーレストラン(原題The Bear)」というドラマです。エミー賞(第75回プライムタイム・エミー賞)でコメディ作品賞を受賞したり、主演のジェレミー(・アレン・ホワイト)も確かゴールデングローブ賞(テレビ部門)で主演男優賞を受賞しています。ジェレミーは年齢的にも僕の1個上で、同世代なんです。お子さんが二人いるらしくて、同世代ですごいなとすごく刺激を受けました。あと2作は『レインマン』と、『ギルバート・グレイプ』です。

クラシックな映画のチョイスですね! なぜこの作品を?

柳楽:実はこれまで僕、みんなが「いいよ」という作品をあまり観ていなかったんです。きっかけがあって観たら、やっぱりすごくよかった。今でこそ(レオナルド・)ディカプリオとかジョニー・デップはメジャー系のイメージが強いですけど、映画カルチャーのDNAがもともとすごくあったんだなと作品を観て再確認しました。

中川:最近、戦時中の役をやることもあって、第二次世界大戦のことをいろいろ調べています。当時の資料なども読むほかに、この間、映画『ミッドウェイ』を観ました。豊川悦司さんや、浅野忠信さんも出演されていらっしゃるアメリカの映画です。知識として知っていたはずのことでも、作品で観ると訴えかけてくる感情がやはり違うので、自分のお芝居のエネルギーにもなりました。作品からもらうものは、やっぱり大きいなといつも感じています。

(取材、文:赤山恭子、写真:映美)

 

映画『夏目アラタの結婚』は、2024年9月6日(金)より全国ロードショー。

出演:柳楽優弥、黒島結菜、中川大志ほか。
監督:堤幸彦
原作:乃木坂太郎「夏目アラタの結婚」(小学館ビッグコミックスペリオール刊)
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/natsume-arata/
配給:ワーナー・ブラザース映画

 

(C)乃木坂太郎/小学館 (C)2024 映画「夏目アラタの結婚」製作委員会

※2024年8月19日時点の情報です。

公式アカウントをフォロー

  • RSS