『不死身ラヴァーズ』松居大悟監督×佐藤寛太、丸裸にされた松居組「自分の秘部まで引き出された」【ロングインタビュー 】

映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

映画『不死身ラヴァーズ』松居大悟監督&佐藤寛太対談!松居組へ念願の初参加となった佐藤寛太の驚くべき監督へのアプローチ方法とは?撮影秘話から映画フリークの二人が最近観た映画の話まで超盛りだくさんのロングインタビューをお届け。

映画『不死身ラヴァーズ』は、松居大悟監督が10年の歳月をかけ実写映画化した渾身作。主人公・長谷部りのは甲野じゅんという人物に出逢うたびに全力で恋をするが、想いが届くと彼は幻のように消えてしまう。そんな少しトリッキーなストーリーを、切なく鮮やかな恋愛ドラマとして松居監督がマジックをかけた。

キャスティングについて、りの役は見上愛、じゅん役は佐藤寛太が務める。いわゆる“松居組”常連ではないこの配役に、意表を突かれた映画ファンも多かったのではないだろうか。

しかしながら2019年、じゅん役の佐藤はアン・リー監督との対談の際(過去対談記事はこちら)、アン監督より「役者でいることは受動的なことだと思う。(略)私が言えることがあるなら、一生懸命に取り組んで、役を慎重に選ぶこと」と教えを乞うた。佐藤は、自ら松居監督にメッセージを送るという能動的姿勢で自分の俳優としてのキャリアと能力をアピールし、見事じゅん役を勝ち取ったのだ。

松居監督、佐藤の両者にとって忘れ難い作品になった映画『不死身ラヴァーズ』。その成り立ちから完成し公開を迎える今に至るまでの心境を、ロングインタビューで語ってもらった。また、映画フリークの二人が最近観たお勧め映画についても言及する。

佐藤さんが松居監督にDMを送ったことが『不死身ラヴァーズ』出演のきっかけだったそうですね。キャスティングにいたる経緯の詳細を教えていただけますか?

松居監督:『不死身ラヴァーズ』は高木ユーナさんの漫画が原作なんですが、もともと10年前から読んでいて映画化したいと思っていたんです。漫画では、じゅんがりのを追いかける設定なんですね。けど、なかなかぴったりの役者さんが思い当たらなかったのと、資金面で難しかったこともあって、1度企画が眠ってしまいました。それから10年くらい経って、メ~テレさんが「面白いね」と言ってくれて、もう1度企画が立ち上がりました。けど、結局そのときもまた同じで「誰が、りのとじゅんをやればいいんだろう?」と悩んだんです。

そこでオーディションをする流れになったんですね。

松居監督:はい。まずりの役のオーディションで、何人かのお芝居を見させてもらいました。その中で見上愛さんに出会って。見上さんがとっても生き生きとしていて、すごく興味深くて。そのとき、「りのが追いかける側のほうが面白いかもしれない」とひらめいたんです。一生懸命誰かを追いかける見上さんの姿を見ていると、応援したくなるかもしれない、と。なので見上さんに「じゅん側(消える運命の相手を追いかける側)でやっていただけますか?」とご相談して、話が進みました。で、また「じゃあじゅんは誰にしよう」と。そうしたら……。

佐藤:はい! 枕元の携帯が鳴ったんですよね!?

松居監督:(笑)。(オーディションを)やっているタイミングで、たまたま寛太からDMが届いたんです。僕の映画『手』を見た感想と、「いつかご一緒したいです」という内容が、独特な文章でつづられていました。そういったDMをもらうこと自体、あるにはあるんですよ。だけど……僕はこれまで劇場やシアターの人たちと一緒に作ってきたので、そもそも寛太みたいなタイプに出会わなかったんです。

松居監督から見て、佐藤さんはどんなタイプに見えたんですか?

松居監督:え~……SNSで承認の青いマークがついてるタイプ。

佐藤:そんな風に見てたんですか(笑)!?

松居監督:「公式マークから連絡がきた」みたいな(笑)。だけど、『手』について感想を言ってきてくれたこと、僕の以前の作品も彼が観てくれていたこともあって、「あれ、珍しい」と思ったので返事をしたんです。

佐藤:そうなんです、すごくきちんとしたお返事をいただきました。松居さんにDMを送ってからずっと「返事くるかな?くるかな?」と俺はソワソワしていたんですよ。既読になったのを見て、待っていたら返事が届いたので「キター!!!」と興奮しました。

松居監督:そのとき、僕はまだ“佐藤寛太”という役者の芝居を観たことがなかったので「いつか観たいです」という内容を送ったんです。それで終わりかな、と思ったら寛太が「自分の出演作だったらこれ、これ、これ、サブスクだったら今これ、これが配信されています」とずらーっと出演作が羅列された返事がきたから……。

ものすごい本気度が伺えますよね。松居監督にどうしても「観てくれ」と。

佐藤:はい、離しません!!

松居監督:4本くらいきて、多いなと(笑)。「どれから観たらいいか、よくわからないですね」とか言ってたら、「『軍艦少年』が主演作です」とお勧めされたので観たんです。実際、『軍艦少年』は作りもすごくよく、寛太もよかったので、そういった感想を送りました。

佐藤:やり取りのあった2日後くらいに観てくださったんです、すごく早いですよね!? うれしかったです。

松居監督:寛太のInstagramのタイムラインを見ると、“ただかっこいいやつ”という印象で。作品を観る前は「かっこいいやつがミニシアター系に手を伸ばしてきたか」なんて思っていたけど、お芝居がとてもよかったから、「ああ、いいな」と彼に興味が湧いたんです。ときを同じくして、『不死身ラヴァーズ』のじゅん役について、プロデューサーから「佐藤寛太くんはどうですか?」と名前が挙がってきて。だから「僕もちょうど考えてました」と、選択肢として同意しました。

タイミングが合致したんですね。そのままオーディションなしで佐藤さんに、という流れになった。

松居監督:そうです。時間も迫っていましたし、決め打ちでしたね。

佐藤:僕が最初にDMを送ってから3~4か月後くらいに、正式に事務所に『不死身ラヴァーズ』の出演依頼がきました。マネージャーさんからお話を聞いたとき「えぇー!!松居監督ですよね、マジで!?」と大騒ぎ、あの興奮はいまだに覚えています。

実際に撮影に入り、松居監督とご一緒していかがでしたか?

佐藤:松居さんの作品が好きで観ていたのももちろんあるんですけど、自分が好きな役者さんが監督の作品にたくさん出ていたんです。好きな人たちを撮っている監督と仕事できることもうれしいじゃないですか。だからすごくワクワクしていました。

いざ現場に入ると、一発でOKテイクはほぼ出なくて「もう1回」と言われました。しかもなぜ「もう1回」かの理由を知らされずに「もう1回」と言われていたので、「じゃあ次は違う感じでやってみよう」とトライしていきました。やっていく中で、俺の知っている(撮影現場の)常識よりも、松居監督の現場はレベルが高いんだなと思って……。だって、これまで松居さんの作品に出ている役者さんたちは、この「もう1回」に普通に応えてきているわけだから。「ああ、すげえ」と思って、そこも含めて楽しんでやっていました。

松居監督:僕は誰に対しても何も言わずに「もう1回」と言っているわけではないんです。役者によってタイプがあるから、もう1回やる理由を明確にして直してもらう人もいれば、あえてちょっとだけ伝えて考えさせてやってもらう人もいたりするんです。寛太の場合は、かなり台本を読み込んで準備をしてきていたんですね。本人も「このシーンはこう演じるべきだ」みたいなものがあったので、それはちょっと余計だなと。しっかり作り込んできたものがちょっと剥がれてきたくらいの、寛太本人の感じが出るのが、じゅんという役にはベストだと思ったんですよね。

僕が普段ご一緒している役者さんは静かだったり、落ち着いていたりするタイプが多いんですけど、(佐藤は)真逆。ずっと喋っていて明るい、落ち着きのない感じが人として魅力があるところだし、その感じを役で出してほしいと思っていたんです。だけど格好つけて「この役はこうだ」みたいな感じがきたから(笑)、「剥がれろ、剥がれろ」と思って、もう1回やってもらって、ちょっと剥がれたからもう1回やってもらったら、もうちょっと剥がれた、という意図の演出でした。

なるほど。「剥がしたい」ことを説明するのではなく、「もう1回」とだけ言ったほうが自然と剥がれていくと。

松居監督:そうです、そうです。言ったら、本人は意識して剥がそうとしますからね。

佐藤:はい、そうなります……!

松居監督:それは必要なかったんですよね。

演出されてみて、撮り終わった今だから思う「佐藤寛太にしてよかった」というポイントなど、松居監督の視点で教えていただきたいです。

松居監督:りのがじゅんを「運命の人だ」と思って、その後両想いになったらじゅんが消えてしまう……というのが繰り返し続くストーリーなんです。あるタイミングで、りのが「もう恋なんてしない」と決めて、その後にまたじゅんが出てくる。けど、そのじゅんの性格的に「こいつは好きにならないわ」というマイナスのスタートから始まるシーンがあって。じゅんのうざい一面を見せた後に、ちょっと切なさが垣間見えるところも出したりしてほしくて、要はそのメリハリがすごく大事だなと思っていたんです。現場で、寛太本人の魅力が出たらいいなと思っていました。たぶん静かめな役者がやっていると無理している感が出ると思うから、これは特にお願いしてよかったなと思いました。

佐藤:『不死身ラヴァーズ』の初号試写で自分のお芝居を観たとき、とても恥ずかしかったんです。それって、あまり自分が演じられていないからだったんですよね。最初は「じゅんを演じよう」といろいろ準備していたんですけど、途中からはじゅんという役をマルチバースで捉えていきました。いろいろなパターンのじゅんが出てくるので、自分が選んでいたかもしれない可能性を、そのまま佐藤寛太に当てはめてやっていったんです。

先ほどのお話ですよね。準備していたものを監督によって少しずつ剥がされていったという。

佐藤:そうです。だから、スクリーンに出ている自分が自分すぎて……「うぇーい!」とはしゃいでいるのも俺だし、どうしようもなくなって親に甘えているのも俺だし……いろいろな意味ですごく恥ずかしくて。面白いことをやっているつもりだけど全然面白くないし、絶望するくらいアドリブつまんねぇ、こいつ、みたいなところもあるし(笑)。

だから今松居さんの話を聞いて、自分の秘部というか、そういうのを引き出されていたんだなと思いました。松居さんの中で正解が初日からずっとあったから、もしかしたらキャスティングの段階でおおかた決まっていたのかな、とも思いましたし。

裸一貫、佐藤さん自身をさらけ出した作品ということですね。

佐藤:出しまくっています。もう恥ずかしくて仕方ないです、ダサいんだもん。

しかしそれこそがこの作品の正解であり、魅力だということですよね。

松居監督:もしかしたら、僕が佐藤寛太の芝居よりも先に、人間性から入っていることも関係しているのかもしれないですね。人間性に興味が湧いて、作品を観たから。もちろんお芝居も観ますけど、この人間性がほかの日本映画にはあまりいないから、それを引き出したいなとも思ったんです。この『不死身ラヴァーズ』では、自分が寛太をすごく必要としたんだと思います。

いまの時代「恋愛をしない」、「恋愛から距離を置きがち」、「推しがいればいい」という人たちも多くいます。『不死身ラヴァーズ』で描かれた、りのとじゅんの生身のやり取りは、そんな人たちをも突き動かす衝動を秘めた作品にも感じました。新たな恋愛映画のジャンルを切り拓いたような、そのあたり、作り手のお二方はどう感じていますか?

松居監督:いやあ、うれしいですね……!

佐藤:今おっしゃったこと、俺はめちゃくちゃわかります。この作品を観たら、自分が好きなものに対して本当に走り出したくなりますよね!? フィジカル的に「お腹が空いたから何かをかっくらいたい!」みたいな感じで、誰かに会いに行くとき「会いたいから走って会いに行く!」みたいな気持ちにさせてくれる映画だと思っています。

初号試写のとき、原作者の高木先生が「この作品を作ってくださって、じゅんを演じてくださって、ありがとうございます!」と、その場で号泣しながら言ってくださったんです。映画からすごい力を受け取ってくださった、と。

松居監督:そうそう。僕がもともと原作を読んだときにも、何か力があるとすごく感じていて。学生時代に適当に映画を観たときにも、ジャンルにとらわれていなくて何かエネルギーに満ち満ちているものに対して、すごく憧れがあったんですよね。この映画は、いわゆるキラキラした恋愛映画でも、日常系ささやき恋愛映画でもなく、そうしたジャンルにとらわれたくない作品にしたくて。プラス、スマホに慣れていたり、劇場で映画体験をすることがちょっと遠い人たちが、この作品を観て「なんかよくわからないけど、すごいものを観たな」と、なんか元気に、何年後とかにも支えになってくれたりすると、つくる冥利に尽きるとすごく思います。

佐藤:僕もすごくそう思います。りのは、超絶無敵な主人公じゃなくて、いつも揺らいでいるじゃないですか。恋を生身でくらっている自分は、すごいみじめで情けなくて。でもそんな一面があるから、りのが笑っているのが際立ってよく見えて、ぐっとくるじゃないですか。自分が本当に苦しんだり悩んだりして揺らいでいるからこそ、その子が笑っているときとか、前向きに走って風が吹いているときに、なんか泣きそうになるくらい感動すると思うんです。そういうものを伝えるパワーがこの作品にはあって、新しい王道だと僕は思います。もちろん松居さんだからトリッキーに撮っていますけど、人が揺らいでいるという絶対に外せない人間の本質を映していて、映画を観る意味みたいなものを感じられるのは、そういったものを映し出しているからなのかと思います。

佐藤さんは松居監督作品をよくご覧になっているんですよね。映画ファンとして、魅力はどこに感じていますか?

佐藤:それはもう、自分ですら認めたくないし、ましてや他人になんか絶対に見せたくないところが出てくるところです。絶対に出したくないし、見られたくないし、隠しておきたい、で、自分がそんな気持ちがあること自体、日頃は蓋をしておきたいようなことが映し出されるんです。それがあるからストーリーにすごい共感しますし、パワーをもらったり涙したりするんだろうな、と思います。そんなところに(スポットを)あてないでくれ! みたいなところまであててくる感じが、「うわぁああ、きつい……これ」と見せつけられるんですよ。けど、そこも認めた上で明るくしてくれるじゃないですか。「こんな人間もいました、ゴミ捨て場に捨てて、ぽい」で終わり、じゃないじゃないですか。

松居監督:うんうんうん。

佐藤:別にそれもありだと思うんです。「日頃、みんなが見ていない路傍の人間がこういうふうに生きています」みたいな映画があってもいいと思うんです。けど、松居さんの作品はそうじゃない。自分すらも認めたくない感情が劇場でさらされた後に、最後何かしらの救いがあるんです。「だせぇけど、必死こいて生きていこう」みたいな。いつもそんな気持ちになります。

松居監督:うれしい、お恥ずかしい。

松居監督が映像作品を手掛けるとき、ぶらさずに大事にしている指針はどのようなことですか?

松居監督:今の話の流れでいくと、確かにつけ入る隙というか、自分がいるかどうかみたいなところは結構大事にしています。例えば『不死身ラヴァーズ』で言えば、りのがじゅんを好きで最初は片思いしているけど、両想いになったとたんにじゅんが消えてしまう。それはすごくファンタジー的要素なんですよね。それでもりのが何度もじゅんに出逢い、好きになることも、すごーくファンタジーなんです。けれど、そういうことをりのが「やめようかな」と一瞬逡巡したりする。そうした、ちょっと「わかるかも」と思える隙を入れることを、いつも意識しています。劇中の「こんなことで悩んでいてバカみたい、でもこんなことしか悩めないのよ、私は」とりのが言うのは、僕が入れたセリフなんです。それは「こんなことで悩んでいてバカみたい」と思われるかなと思ったので、そういうセリフを入れて付け入る隙を作りました。どんな作品でも、そうやって自分事にしたいという思いはありますね。

たくさんお話いただきありがとうございました! 最後に、FILMAGAユーザーに向けて最近観た映画で印象に残っているお勧め作品など、教えてください。

松居監督:めっちゃある!ええと……(ケリー・)ライカートの『ショーイング・アップ』と『ファースト・カウ』がめちゃくちゃよかったです。ライカートは『リバー・オブ・グラス』や『ウェンディ&ルーシー』とかは観ていたんです。新作も『ショーイング・アップ』も何も起きない引き算だけれども、日常を見つめる系で、そういったものがたぶん自分の中で今すごく好きなんです。

あとはバス・ドゥヴォスの『Here』と『ゴースト・トロピック』がル・シネマでやっていたので、観に行きました。移民のおばあちゃんが主人公で、おばあちゃんが仕事の後、終電に乗ったら疲れて寝ちゃって、そうしたら降りる駅を寝過ごしちゃって、終点まで行っちゃって、そこから歩いて家に帰る。ただそれだけなんです。その一晩おばあちゃんが歩いて帰るだけだけれども、そこに人生があってめちゃくちゃよかったです。何だかこういう映画を作りたいって、そう思っちゃったんです。

佐藤:へええー!!

松居監督の作品は、何もないようでいてすごく何かあるじゃないですか。

松居監督:そうそうそう。『ゴースト・トロピック』も、何もないようですごくあるんですよ、そう。だからいいなーって、すごく思いますね。

佐藤さんはいかがですか?

佐藤:最近だったら、ひとりで『PERFECT DAYS』を観た後に、家族ともう1回観に行きました。そうしたら、気づかなくてよかったな、と思うところも気づいちゃったりとか。でもあらためて役所さんはすごいな、素敵だな、とか思って発見がすごくありました。

『PERFECT DAYS』と言えば、松居監督もご出演されていましたよね。とてもびっくりしました!

松居監督:そうそうそう。言ってないですから。

ヴィム・ヴェンダース監督の現場はいかがでしたか?

松居監督:ヴェンダース監督は最前線にいて、すごいです。現場で芝居をつけるのも誰よりも前で、すごい楽しそうで。子供みたいに芝居をつけるから、本当に映画が好きなんだなと思いました。芝居をうれしそうに見るし、「オッケー!!」と言ってくれるし……。役者が気持ちよくいられる、すごくいい現場でしたね。呼んでいただけてありがたかったですし、自分もちゃんと糧にしたいなと、すごく勉強になりました。

ありがとうございます。話が逸れて失礼しました、佐藤さんまだまだ作品名が出てきそうですね。

松居監督:寛太、去年めっちゃ観てたじゃん。

佐藤:うん、観てました。『枯れ葉』も良かったです。あと『aftersun/アフターサン』はやばかったですね。孤独の描き方がとんでもなかったです。カメラワークも雑に見えるんですけど、絶対緻密に考えているだろうな、という。

松居監督:それはそう、そう。背中のけを感じるような撮り方とかね。

佐藤:あの映画ひとつでいろいろなパターンの孤独があって、表現がそもそも全部違ったんですよね。爆音で鳴っている暗闇のクラブのシーンで、娘と父が同じ歳で相対するんだけど、お互いが言っていることが何もわかんない、という。あの表現の仕方はファンタジーじゃないですか。あれを断片的に作品に入れてきているのもすごかった……。『aftersun/アフターサン』は去年のベストかもしれないです。

もしかして、お二人でけっこう情報交換をされたりもしているんですか?

佐藤:「これとこれが面白かったです」とか結構言っていますよね!?

松居監督:そうそう。寛太って、もっとブロックバスター系の作品を観ているのかなと思ったけど。

佐藤:(笑)。

松居監督:割とメンタリティがこっち寄りで。「じゃあ俺も好きな映画をちゃんと伝えよう」と思ったんです(笑)。

佐藤さんは本当によくご覧になっていますよね。このサブスク全盛期でも、レンタルショップでジャケを見て借りるというスタイルもお好きなんですよね?

佐藤:そうです、そうです。だって俺、地元のレンタル屋だったらア~ワ行まで、どこに何があるか全部知っていましたから! やばいっすよね(笑)。B級映画も、めっちゃ観ていました。

松居監督:なんかこうさ、パブリックイメージとちょっと違うよねえ。

佐藤:けど、これまでずっと監督がつながっていなかったから、最近つなげていきたいなと思っているんです。例えば、(クリストファー・)ノーランに気づいたのもすごく遅かったですし。あれもあれも好きだったけど「あ、どっちもノーランだったんだ!」みたいな。この監督がこういう系の作品を撮っていて、誰にインスパイアを受けて……とかも知らないんです。話していると知識としてめっちゃ面白いので、つなげたいなと思っています。

松居監督:Filmarksではそれができるからね!

なんと、つなげてくださってありがとうございます!

松居監督:うん。作品、監督ですぐ引けますよ、って。

佐藤:パッケージからじゃなくてもいけますね! ぜひ読者の方々も『不死身ラヴァーズ』からも引いて、いろいろな作品にたどり着いてほしいです。

(取材、文:赤山恭子、写真:iwa)

映画『不死身ラヴァーズ』は、2024年5月10日(金)より全国ロードショー。

出演:見上愛、佐藤寛太ほか
監督:松居大悟
脚本:大野敏哉、松居大悟
原作:高木ユーナ『不死身ラヴァーズ』(講談社「別冊少年マガジン」所載)
公式サイト:https://undead-lovers.com
配給:ポニーキャニオン

(C)2024「不死身ラヴァーズ」製作委員会 (C)高木ユーナ/講談社

※2023年5月6日時点の情報です。

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