逃げ場のない空間の中で、危機的な状況に立たされた登場人物たちの姿を描いたソリッドシチュエーションスリラー。その代名詞ともいえる作品となった「ソウ」シリーズの最新作『ソウX』。
ジェームズ・ワンとリー・ワネルが製作総指揮を手掛け、ジグソウ役のトビン・ベルと、アマンダ役のショウニー・スミスが再び登場することでも話題となっている。
映画『ソウX』(2023)あらすじ
末期がんで余命わずかと宣告されたジョン・クレイマーは、藁にもすがる思いで、危険な実験医療処置を受けるためメキシコに向かう。しかし、この手術は弱い立場の人々から金を騙し取る詐欺であることが判明する。ジョンは復讐のため、自分を騙した詐欺師たちに死のゲームを仕掛けていく。
※以下、『ソウX』ネタバレを含みます。
初めて描かれる“ジョン・クレイマー”の物語

本作は、これまで1作目から通底してきた殺人鬼ジグソウ=“ジョン・クレイマー”像とは少し違ったアプローチで描かれた物語である。ジグソウは「生を尊重しないものは生きるに値しない」と称し、被験者と呼ばれるターゲットに命をかけたさまざまな“ゲーム”を仕掛けてきた。これまでもその端々でジョン・クレイマーがどのような人間であるかということは描かれてきている。しかし、本作がこれまでと違うのはジョン・クレイマーが死に恐怖し、生を必死に求める姿を観客が初めて目にすることである。
癌で余命わずかであることを知ったジョンは癌患者の集会で出会ったヘンリーという男と偶然再会する。その男から画期的な先進医療を提案されメキシコへ向かったジョンは、セシリア・ピーダーセンと医療チームによって処置を受けることになる。手術は成功し生の喜びを噛み締めるジョン。すでに“ゲーム”による殺人儀式を始めていたジョンだったが、新たな殺戮機械を構想するスケッチを破り捨てる描写からも彼の喜び、これから始まる新たな人生への希望は伝わる。しかし、それはセシリアらによって仕掛けられた大型の詐欺であることが判明する。
壮絶な復讐劇の行方は

自分が騙されていることを知ったジョンはセシリアらを拉致し、復讐の“ゲーム”を開始する。ゲームにはこれまで同様、被験者が生き残る術を用意しているが、その内容はこれまで以上に残虐非道であり、偽の医療チームが受けるにふさわしいものとなっている。そこにジョンの相棒として登場するのがジグソウの信奉者でもあるアマンダ・ヤングである。『ソウ3』以降久々の本編登場であり、シリーズファンなら興奮することだろう。
被験者が次々と命を落としていく中、セシリアは同じく癌患者だと思われていたパーカー・シアーズと共謀して逆にジョンを罠に嵌めることに成功する。自身の仕掛けたゲームによって苦しめられるジョン。観客は初めてジグソウ自身がピンチに陥る姿を目にすることになる。しかし、そこからの展開はさすが「ソウ」シリーズとも言えるものとなっており、セシリアとパーカーが共謀していることは最初からジョンに見抜かれていたことだった。結局セシリアとパーカーはジョンの罠に嵌ってしまい絶望の中物語は終幕していく。
もう一人の協力者

ミッドクレジットに登場する縛られている男・ヘンリーはジョンをこの大掛かりな詐欺へと誘った張本人である。彼もまた詐欺に加担していた一人だった。名誉の負傷だと言っていた腹の傷は偽りであり、彼もまたジョンの仕掛けるゲームの被験者となってしまう。
そこにジョンと共に登場するのが『ソウ4』から『ソウ ザ・ファイナル 3D』までのメインキャラクターとなるマーク・ホフマン刑事だ。彼もまた“ジグソウ”の協力者であり、“ジグソウ”の跡を継ぐ存在として描かれてきた。彼の登場はシリーズを追ってきた観客からすると心躍るものとなっている。つまり本作では新旧“ジグソウ”が久しぶりに共闘する驚くべき展開ともなっている。
ナンバリングタイトル『ソウX』時系列は?

本作はシリーズの時系列で言うと『ソウ』と『ソウ2』の間の物語にあたる。『ソウ』から『ソウ ザ・ファイナル 3D』まではジョン・クレイマーの死後も連綿と続く“ジグソウ”の話であり、特に『ソウ4』以降は“ジグソウ”の後を継ぐのは誰かというミステリー的な色合いも濃くなっていった。そういった意味でも本作はシリーズの原点回帰とも言えるソリッドシチュエーションスリラーが全面的に展開されることも大きな魅力となっているだろう。

加えて本作は「ソウ」シリーズ10作目にあたる記念碑的な作品である。8作目の『ジグソウ:ソウ・レガシー』と9作目『スパイラル:ソウ オールリセット』は実質的にはスピンオフのような形であったため、『ソウX』は「ソウ」シリーズとしては久しぶりのナンバリングタイトルとなっている。過去を描くことで久々に、ジョン・クレイマーとアマンダ・ヤング、マーク・ホフマンによる“ゲーム”が見れるだけでもシリーズファンには嬉しいが、“ジグソウ”の過去を描くことでこれまでのシリーズ作品により深みを持たせることに成功している。
それでいてこれまで以上に残虐非道な描写のつるべ打ちであり、しかもジグソウを騙しにかかるという、より質の悪い悪党が制裁を受けることで、一種の爽快感すら感じさせる作品となっている。ファンにはもちろんのことこれまでシリーズを観たことのない観客にとっても“ジグソウ”の始まりの物語として大いに楽しめることだろう。
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※2024年10月14日時点の情報です。
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