【和田竜が語る】本年度アカデミー賞3部門受賞!『1917 命をかけた伝令』

希望に寄り添った人間の描き方がとても現代的で新しい。
挑戦的な映像手法によって、かつてない衝撃を体験するだろう。

全編ワンカット映像という画期的な撮影方法で、若き2人の兵士が困難なミッションに立ち向かう姿を臨場感たっぷりに描いた映画『1917 命をかけた伝令』。すでに世界各国の映画賞を続々と受賞し、アカデミー賞3部門を受賞した本作が2月14日(金)から日本でも公開となる。作家の和田 竜さんに本作の見どころを聞いた。

1917

あたかも戦場にいるような感覚に陥る

ずっと緊張しっぱなし。観る前はワンカット映像に興味があったので一体どうやって撮影しているのかなと技術的なことが気になっていたのですが、映画が始まった途端、そんなことはすっかり忘れて『1917 命をかけた伝令』の世界へ没入。想像をはるかに超える面白さでした。

1917

舞台は第1次世界大戦。最前線で戦う仲間に重要なメッセージを届けるため、戦場を駆け抜ける若き2人の兵士の一日を描いています。このストーリーを際立たせているのが何と言っても全編を通してワンカットに見える映像。全編途切れることなく、ひとつながりの映像として見せてくれるこのダイナミックな撮影方法によって、私たちは冒頭から2人の背中にくっついて一緒に戦場を走っているような錯覚に陥ります。観ている間ずっと緊迫感があって片時も目が離せません。

だから、彼らが新たなものを発見したり、劇的な局面を迎えたりするたびに、観ている私たちも今までに体験したことのない深い衝撃を受ける。アプローチが濃厚だったからこそ、オチとなる劇的なシーンがありきたりで終わらない。その感覚は全く予想外のもので実に新鮮でした。

1917

また、兵士たちのプロフィールやバックボーンをほとんど語っていないし、セリフも少なめで余計なことは登場人物に言わせていません。にもかかわらず、彼らが大変な目に遭うと、えも言えぬ悲しみが襲ってきます。彼らの背中を追いかけていくだけで、ここまで登場人物に肩入れしてしまうものかと驚きました。

それに悲しいシーンも、決して情感たっぷりに描いてはいません。むしろカラッとしているので余計に状況の過酷さが観ている者の胸に突き刺さる。これもワンカット映像の効果だと感じました。全編ワンカット映像で撮ることで、戦争映画というジャンルをはるかに超え、類をみない感動のヒューマンドラマに昇華させることができるのだと私たちに知らしめてくれるのです。

主人公が成長するのではなく、
観る側の心が変化していく

決死のミッションを成し遂げるため、命がけで戦場を走り続ける兵士たちが主人公なので、本作を彼らの成長譚という捉え方もできるかもしれません。しかし私はそうではなく、彼らは時間と共にただただ体力を消耗し、へとへとになっていくだけではないか、もし変化や成長があるとしたら、観ている私たちの方なのではないかと思いました。なぜならこの映画はいろいろなことを考えさせてくれるからです。

1917

例えば私は「人の死ってあっけないよな」とか、後ろ髪を引かれながらもその場を立ち去ってしまう姿を見て「こういうことってあるよなあ」などとしみじみ思いました。特にずっと伴走している感覚の中にいるので、彼らの一挙一動から逐一小さな気づきを得ることができるんですよね。その積み重ねを通して、観る側が少し成長した感じになる。そう思うと、本作で起きていることはすべて私たちが日常で経験していること。そんな発見もありました。

題材の選び方が新しい
ラストシーンも必見

1917

本作はサム・メンデス監督が子どもの頃、祖父から聞いた話を元に挑戦的な映像手法で作り上げています。その手腕と情熱も素晴らしいと思うのですが、私は何より題材の選び方がとても現代的で新しいと感じました。世界が血なまぐさい昨今、味方の命を救いに行くという題材だけで戦争を描いている点が、今の時代にマッチしていると思いました。どちらかが負けるまで戦闘を繰り広げる「ザ・戦争映画」として絶望に寄り添って描く作品もいいですが、本作の描き方には希望があるのです。

冒頭から集中して見入っていたせいか、上映はあっという間。観終えた瞬間、疲労感と共にホッと安堵もしました。そして温かい何かが自分の中に残りました。ラストシーンがそういう気持ちにさせてくれます。純粋にエンターテインメントとして楽しめるので、ぜひいろいろな方に観てほしいです。(談)

作家 和田 竜さん

わだ・りょう/1969年大阪府生まれ、広島県育ち。早稲田大学政治経済学部卒業。2003年映画脚本『忍ぶの城』で城戸賞を受賞。07年同作を小説化した『のぼうの城』でデビュー。同作は直木賞候補となり、映画化されて12年に公開。14年『村上海賊の娘』で吉川英治文学新人賞および本屋大賞を受賞。他の著作に『忍びの国』『小太郎の左腕』などがある。

◆映画『1917 命をかけた伝令』imformation

1917

■STORY■ 第1次世界大戦真っただ中の1917年のある朝、若きイギリス人兵士のスコフィールドとブレイクは、一触即発の最前線にいる1600人の仲間に、作戦中止の命令を明朝までに届けるという重要な任務を命じられる。1600人の中にはブレイクの兄もいた。この伝令が間に合わなければ、兄を含めた仲間たちは全員命を落とし、イギリスは戦いに敗北することになってしまう。刻々とタイムリミットが迫る中、2人の危険かつ困難なミッションが始まる……。

1917 命をかけた伝令
2月14日(金)全国公開

監督:サム・メンデス
出演:リチャード・マッデン ベネディクト・カンバーバッチ マーク・ストロング 他
配給:東宝東和
公式サイト:https://1917-movie.jp/
(C)2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.

記事をシェア

公式アカウントをフォロー

  • RSS
  • ニム
    4
    劇場で観たかった。さぞ迫力があっただろう。 臨場感があるのに、一人称視点の酔うようなガタガタした感じもないし観やすい映像。平野の中で180度視点がぐるっと回るシーンや塹壕の中を人を掻き分けて進む長回しのシーン等、本当にどうやって撮ったんだろうという所だらけ。最後の方の塹壕から出てダッシュするシーンなどは特に、大画面で見たかった。 それにしても自分がスコとブレイクのように下っ端として戦争に行ったら、ロクにお使いもできないだろう。怖い、行きたくない、教えられた最初の鉄条網の抜け方も覚えられない。
  • いち
    3.8
    記録
  • -
    記録 面白い
  • ホアスゥア
    4.1
    没入感が凄いのなんのって。 スクリーンで観ておくべきだった。 ワンカット演出を成功させた 製作スタッフに スタンディングオベーション!
  • 唐揚げヤクザ
    4.3
    1カットで場面転換がシームレスなおかげで、戦場の常に気を抜けない感じが出てたと思う。 普通の映画では会話シーンは肩越しショットの(聞き手目線の)1人称視点が多いんだけど、この映画は正面から撮った3人称視点が多くてそうなるかーという感じ。 画面が退屈にならないようとにかくカメラを動かして情報量を保ってる。普通の映画は横の情報の変化が多い中、この映画は前後の奥行きで情報が変わっていくのは新鮮。この辺の情報の動きは映画というより3Dゲームに近い。 目玉シーンの、兵士たちの流れに垂直に走るショットは圧巻。 前後の情報変化ばっかだった映画に、垂直な横移動が入りいっきにフィナーレに相応しい躍動感が出てる。
1917 命をかけた伝令
のレビュー(39791件)