あなたの着ている服はどこから?映画『ザ・トゥルー・コスト』が映す安さの裏側

可愛いと映画とファッションがすき

kyon

肌寒い季節と同時に少しずつファッションモールなどでは、セールの準備が始まっていますね。

“セール” の言葉を聞くと胸が踊りませんか?

欲しかったお洋服が半額!!このときまで待っていて良かった、なんていうような経験、みなさんもしたことがあると思います。

そんな街中にたくさんあるお洋服の中でも、セール時期に負けず、安さとトレンドの反映の早さで人々の心を掴んでいるジャンルがあります。

ここ数年で随分私たちの周りで浸透している「ファストファッション」と呼ばれるジャンルです。

1度は耳にしたことがある「ファストファッション」。その名の通り、他のブランドのお洋服と比べて安いものが多く、若い学生さんたちのオシャレの救世主になるときもありますよね。

「トレンドは安く取り入れる」、なんて言葉も雑誌でよく見かけるほど、身近な安くて可愛いお洋服が揃うファストファッションブランド。

でもちょっと待って、この安さってどういう過程で製造されたらこの値段になるの?なんて考えたことはありませんか?

そんなファストファッションを含む「ファッション産業」の裏側に潜む問題をドキュメンタリーの形として映しているのが、『ザ・トゥルー・コスト〜ファストファッション 真の代償〜』(以下『ザ・トゥルー・コスト』)なんです。

普段ファッションはあまり…という方はもちろん、ファッションが好きな人こそ見て欲しい映画をご紹介致します。

『ザ・トゥルー・コスト〜真実の代償〜』(2015)

TCPoster

(C)TRUECOSTMOVIE

 

さて、まずは簡単な作品情報から参りましょう。

「これは衣服に関する物語で、私たちが着る服や衣服をつくる人々、そしてアパレル産業が世界に与える影響の物語だ。これは貪欲さと恐怖、そして権力と貧困の物語でもある。全世界へと広がっている複雑な問題だが、私たちが普段身に着けている服についてのシンプルな物語でもある。」

という思いを伝えているのが、本作の監督でもあるアンドリュー・モーガンです。

本作の注目する点は、アメリカ出身の監督が、アメリカを主とした、世界中のファッション界に共通する問題に着手している点で、非常に説得力があります。

この“衣服の物語”に登場するのは、安さの代償になっている人々だけでなく、その問題に取り組んでいる人々、またその安さに恩恵を受けている人々など、様々な視点からファッション産業の課題を切り取っています。

ではそんなファッション産業に起こっている問題は何なのでしょうか。

安さの代償

現在衣服の生産に従事しているのは、世界中で約4000万人、その85%が女性だと言われています。

そしてこの生産に関わる人々は、ほとんど先進国にはいません。

たくさんのアパレル企業がありますが、「大量生産・大量消費」のもと生まれたファストファッションは特に、その製造過程のコストを抑えようと動いています。

質より量とはまさにこのことです。

ですから、大手ファストファッション企業が、生産の注文をするのは、物価や賃金が安い国に偏ってしまうのです。

日本でも、made in Chinaはよく見かけますが、実はこれまで生産の中心地だった中国ですら、労働賃金が上がり、企業はもっと安い国へ、となっているのが現状だと言えます。

そこで人権や保護がきちんとなされていれば話は別ですが、そうもいきません。

ここで、モーガン監督が本作を着手する上で重要な位置づけとなったある事故が浮かび上がります。

2013年に起きた“史上最悪のビル崩壊事故”をご存知でしょうか。

バングラディッシュの首都ダッカの「ラナ・プラザ」というファッション生産ビルが、違法な建築基準で建てられたことにより、4月24日の通勤ラッシュの時間に突如崩壊した事故です。

この事故の犠牲者は約1100人が死亡、約2500人が負傷する最悪な事故として位置づけられました。

犠牲者のほとんどが、衣服を生産している途中で亡くなってしまったのです。

これは、従業員たちは、ビルが不安定な状態だとオーナーなどに申告したのにも関わらず、経営側が保護してくれなかったことで起きた悲しい事故でした。

本作では、そんな事故を経験した女性がインタビューを受けていますが、彼女の悲痛な言葉に、涙が止まりません。

安さや利益を追求した末に起きた事故として、ファッション業界では話題になりました。

他にも、ファッション生産の過程で発生する環境汚染の問題や、農薬や殺虫剤を使用しながら育てられたコットンが衣服の素材としてあること、今や3兆円の規模を誇るこのファッション産業の労働・賃金格差など、誰もが今まで触れることがなかった部分にフィーチャーしています。

では、ファッション業界の人々や関係者などは何もしていないのか、そういうわけでもないようです。

「エシカルファッション」の動き

エシカル(ethical)=「道徳、倫理上の」という意味を持つ、「エシカルファッション」は、ファッション業界の中でも徐々に動き始めているジャンルです。

これは、環境に対して配慮を持つこともそうですが、労働者や購入者含め、良識にかなった生産、流通を目指しているファッション産業の形態とも言われます。

なので、エシカルファッションの枠組みでお洋服を購入すると、きちんと生産者に対価が支払われ、ときには基金や募金になるという、購入者にとっても気軽に社会貢献できる形態だと言えます。

本作では、デザイナーとして有名なステラ・マッカートニーをはじめ、日本でも活動しているエシカル企業「ピープル・ツリー」の代表、サフィア・ミニーなどのインタビューも記録されています。

低賃金労働を強いられる女性たちの生の声と共に、どうにかしてそれを変えようと奮闘する人々の声を聞くと、私たちと従事者たちの距離感を実感させられるのです。

ファッションのこれから

ファッションはもちろん私たちの生活に欠かせない一部です。

「衣食住」という言葉もあるぐらいですから、無くなることはありません。

私もファッションに思い入れがある1人として、本作には胸が痛くなりました。

それは、ファストファッションが無くなれば済む問題でもなければ、ファストファッションが完全悪とも言えないのが事実だからです。

ですが、まずはそういった問題があると知ることからだと本作を通じて感じました。

ときに、このようなドキュメンタリーを見て、考えてみることもいいかもしれません。たくさんの人に見てもらって、たくさんの人に知って欲しい、そんな思いが込められた作品をどうぞお見逃しなく!!

記事をシェア

公式アカウントをフォロー

  • RSS

  • めいろろ
    3.5
    このレビューに手をつけるのに時間がかかりすぎて他の投稿が2ヶ月も滞ることに笑 今やファストファッションは環境汚染の一つである。 この映像は2015年の出来事であり、現在も変わっていないと思います。 低賃金で雇う企業を大きく裁けないのは働いている人々の失業や収入減少などへのリスクが高く、彼らの職を奪ってまでして勝手な行動はできないから。流行りものは特に安さ勝負なため、賃金低下が進む傾向にあるのだと。 低賃金なだけでなく、その洋服を作る建物すら安全ではない。彼らは今にも崩れそうで危険なコンクリートの中、長時間に渡って洋服を作ることを強いられます。 一日の半分以上働く彼らの日給は約2ドル。時給ではなく、日給が2ドル。 国内発注は3%、その他97%は発展途上国で制作されているのだそうです。 公正価格で雇った場合の価格が本来の価格・価値です。 ファストファッションを身に付ける人々はその真実を知らないから購入する。 このようなドキュメンタリーやネットニュースに取り上げられても消費者への影響は殆どない。 最近の日本だとユニクロやGU、SHEINのような安くて豊富な種類を扱っている大きなブランド。企業は莫大に大儲けしてるのにも拘わらずに雇われている労働者も農家も最低限の生活を出来る収入を得てないのはおかしいだろう。 バングラデシュではもっと酷い仕事があるからここで働いてる人も多いらしく、企業は完全に弱みを握っている。 世界の6人に1人はファッション業界に勤めてるのだそう。 4000万人が衣類工場でバングラデシュで働いており、子供を連れた赤い服を着ていた女性の初任給は月10ドル。 捨てた服は分解せず、200年以上も埋立地に残る。プラスチックが半永久なのと同じ。 大量生産を要求することで、大量の肥料を与える羽目になる。その非オーガニックシャツを買うことは着用する人自身の体に悪影響は無いが、農家やその周辺の人々の体にはその地域で広がる薬の成分が混ざった空気を体内に吸い込むことになるため癌などの病気を発症する原因となっている。 また、インダス川は水が革産業に汚染されており、毒性の水が流れ込んでいるため唯一の飲水が汚染されている。 もちろん国産の野菜もこの水で作られているため、野菜からも発疹などを発症してしまう。街のほとんどの人が貧困なのに病気になってしまうそうです。 服を買えることが豊かなのではなく、豊かになるのはファストファッション企業の収益だけであるんだと。 実はブラックフライデーやクリスマス期間に行われるセールイベントは無駄な浪費ばかりで環境に悪い。 安さに救われている人もいるので好き勝手言えませんが、安いから品質を考えないまま”壊れたら捨てればよい”、”安いから仕方がない”というような商品に満足せずに購入する場合が生まれると思います。
  • hiroshi
    4.2
    とりあえず
  • odyss
    3.2
    【ドキュメンタリーには事実の証明が欠かせない】 先進国ではファッションショーが華やかに開催され、アパレル産業を通して人々は大量の衣服を購入している。 しかし現在、衣服類の製造自体は途上国で行われる場合が大半であり、給料を初めとする労働条件が先進国と比べて劣悪である場合が多い。 この映画はそうした問題を取り上げたドキュメンタリー。 途上国の衣服製造工場で公害が発生したり、既婚女性が雇用されたのはいいが幼い子供が放置されたり、といった問題が発生していることを訴えている。 工場の建物にヒビが入っているのに放置され、やがて建物が崩壊して多数の死傷者が出た事件が目を惹く。先進国のアパレル業界は、途上国の労働条件管理に無頓着なのだ。 さらに、途上国の労働者が得ている賃金と、先進国で売られる衣服の価格を比較した場合、はたして適正な賃金になっているか、企業が暴利をむさぼっているのではないか、という問題的もなされている。 悪くない映画ではある。 しかし、企業の暴利については、具体的な数値を挙げることによりその内実に迫るなどの工夫も必要だろう。 制作側の主張に都合のいい映像だけ見せているのでは、という疑問を起こさせないような、事実と数値による証明がないと、真に説得力を持つドキュメンタリーにはならない。 制作側は、そのことを肝に銘じて欲しい。
  • kounosuke
    3.8
    これを作った製作者はかなりリスクをおかしてこのドキュメンタリーを作ったのだろうなと想像できるし、この映画が与えたインパクトにはとても尊敬を覚える。 服作りの裏側を探りながら、日本でも種子法の際に話題になったが、種や農薬の問題、資本主義全体の話にまで及んでいる。 ただ他のこういった「社会正義」を訴える映画と同じく、具体的な提案は無く、視聴者でそれぞれ考えてアクションを、という手法はもう無いのでは、とはちょっと感じる。
  • Yoori
    4.7
    昔、まだFOREVER21が流行っていた頃に観た、これを観て衝撃を受けてからファストファッションブランドの製品を極力買うのをやめた。
ザ・トゥルー・コスト ファストファッション 真の代償
のレビュー(2185件)