日本には、名画座と呼ばれる映画館があります。名画座とは、少し前に上映された準新作や往年の旧作などを低価格で2,3本立てで上映する映画館のことです。シネコンが台頭する今日、独自のスタイルを貫きながら人々から愛され続ける名画座の魅力を紹介しつつ、映画館とは?映画とは?という問いに迫ります。
今回ご紹介するのは、昨年で創業41年目を迎えた飯田橋ギンレイホール。支配人の久保田芳未さんにインタビューさせていただきました。
(※インタビューは昨年12月に実施しました)
飯田橋ギンレイホールとは
—ギンレイホールの創立について教えてください。
もともとこの場所に銀鈴座という映画館が戦前からあったようです。創業は分からないのですが、1958年(昭和33年)12月25日に火災にあって焼失してしまったんですね。その跡地に1960年(昭和35年)に建て直されたのが、この銀鈴会館というビルです。
その後、現在の館主の前任者が映画館を引き継いで、1974年(昭和49年)に名画座ギンレイホールとして再出発させました。お客様によっては、学生時代から通っていたからもっと長いはずだとおっしゃっている方もいらっしゃるんですが、この74年を起点にギンレイホール創立とさせていただいており、2015年で創立41年目になります。
―ギンレイホールに来館されるお客様は、どのような方ですか?
ギンレイ・シネマクラブという会員制を導入しているんですが、お客様の6割強くらいがこの会員の方です。年齢は40代から50代以上の方が多く、男女比は女性が6割くらいです。
―ギンレイ・シネマクラブ、いいですよね!好きな映画を何度も、しかも毎回映画館で見れるなんて贅沢すぎます。
1日に何回も来てくださるお客様もいらっしゃいますよ(笑) スタッフに必ず声をかけてくださったりお菓子を差し入れてくださったりと、会社が目指している、まさにマイ・シアターの感覚で来てくださっている方が多いように思います。
魅力的な企画がいっぱい!ギンレイホールの活動
―独自の企画を積極的に行っていらっしゃいますよね。現在取り組まれている活動について教えてください。
①午前0時のフィルム映写会
私が着任した頃から、ギンレイホールもデジタル映写機を設備しなければ作品の供給が難しいという迫られた状況で導入したんですね。そのためフィルム上映がなくなってきてしまったんですが、館主がフィルム映写機の保存活動をしていて、やっぱりフィルム作品の上映もし続けようという想いがありました。
そこで、昼間の興行はつぶせないのでオールナイトでやろうということになり、去年の5月から月に1回2夜オールナイトで「午前0時のフィルム映写会」と題してテーマを決めてフィルム作品を上映しています。
テーマを設定する中で、どうしてもフィルムが揃わないこともありDCPやブルーレイといったものが入ることもあるんですが、基本はなるべく35㎜でやろうと35㎜の作品を探して上映しています。
メディアは新しいものに変わっても、映画が始まって110年、120年とこれまでに作られてきたフィルムというのはまだ残っているわけですよね。それをそのままにしておくのはもったいないですし、まだ観ていない方に観ていただきたい映画は沢山あるので、こうした活動はやっていきたいですね。
②キャラバン隊
現在の館主は、もともと映画の仕事をしていたわけではなかったのですが映画が好きで、子どもの頃に学校の校庭に移動映画が来た時に親にやっとお小遣いをもらって観に行ったという体験があったそうです。それを再現したい、また映写機で映画を届けたいという夢や想いがあり、映写機を持って行って上映しようということを思いついたようです。
ーまさに夢を叶えられたということですね!
キャラバン隊で上映に使っている映写機は、移動用の簡易映写機ではなく、もともとギンレイホールで活躍していた古い映写機です。
重いし年代ものなので、メンテナンスやセッティングも大変ですが、映画の映写機はこういうものなんですということをお伝えしたり、「カタカタカタ…」という音も含めてフィルムがまわっているということを直に体験していただきたくて、映写機を見ていただくのもショーのひとつと捉えて、あえて旧式の映写機を持って行っています。
ー映写機なんて今はめったに見られないですし、貴重な体験ですね。
実際、映画を観に来るだけではなくて、こうした映写機を見に会場へいらしてくださる方も多いです。今年もある高校に呼んでいただいて上映を行ったのですが、大変興味を持っていただけたようで、終わってから30分くらい学生さんたちが映写機から離れませんでしたね(笑)。
③神楽坂映画祭
もともと館主に、「神楽坂にある映画館として、いつか神楽坂という冠をつけた映画祭をギンレイホールでやろう」という想いがあり、昨年初めて神楽坂映画祭というタイトルでイベントをやらせていただきました。せっかく開催したので、その名前を継承する意味でも今年も継続しようということで今年第2回目を開催しました。
昨年は、名画座が全盛期だった1970年代にテーマをあてて「名画座主義で行こう」という企画で実施しましたが、今年は神楽坂で毎年行われている「まち飛びフェスタ」の参加企画として神楽坂にちなんだものをやろうということで、神楽坂にお住まいの女優・加賀まりこさんとうちに勤めていらした森田芳光監督をテーマに取り上げました。
相次ぐ名画座の閉館…名画座の現状
-今、都内の名画座が次々と閉館している状況について、どう思われますか?
地方は別ですが都心に関していうと、閉鎖してしまった映画館のほとんどは来てくださるお客様がいらっしゃるにも拘わらず、建物の耐震性や賃貸契約などの問題で閉館せざるを得なかった館ばかりなんですね。シネコンと違って各館の特徴で作品を選んでやっているので、それぞれの館に固定のファンがいてくださるんですね。
都内の名画座に関していうと、それぞれが創意工夫をしていろいろな企画上映をやったりゲストを呼んだり、それはもう死に物狂いで番組を選んで企画してという編成をやっているので、そこはやっぱりお客様に認めていただいている部分ではないかと思います。
若者も是非映画館で映画を!
ー今、伝えたいことはどんなことですか?
若い人にも映画館でもっと映画を観てほしいですね。今、映画には人が入らないとは言われていますが、うちに来てくださるお客様を見ている限り、映画は嫌いではないし映画館で観ることにこだわりをもたれる方も多くいらっしゃると思います。たぶん、1回観に来ていただくと「いいな」と思っていただけると思うので、若い人にも是非映画館で映画を観てほしいというが今一番ありますね。
インタビューを終えて
今回お話をうかがって感じたのは、ギンレイホールを通じて人と映画のいい関係が生まれているということ。映画や人、そして映写機との出会いも、ギンレイホールがなければ生まれなかった出会いが確かにここにあると感じました。
インタビューが終わると、真っ先にお客様を迎えに向かわれた久保田支配人。上映作品や他の活動にせよ、その先に”人”を感じることができる距離にあることも名画座の魅力のひとつかもしれません。皆さんも是非、名画座でその魅力に触れてみてください。
ここにも注目!~ギンレイホールの魅力~
①年間1万円で映画が見放題!ギンレイ・シネマクラブ
入会すると、1年間何度でも映画を観ることができるシネパスポートが発行されます。年間1万円(税別)※でギンレイホールの上映映画が見放題というリーズナブルな点だけではなく、チケットを買う手間がはぶけること、そしてお金のことを気にせずに映画を観ることに集中できるなどといった所が好評とおっしゃっていた久保田支配人。お客様それぞれが便利に活用できる、お得なサービスです。
※カードは3種類あります。詳しくは、公式サイトをご覧ください。
②来館をあたたかく迎えてくれる、手書きの看板
入口を飾る上映作品のタイトル看板は、なんと専門の職人さんによる手書き!手書き看板自体が珍しくなっている昨今、なんとも貴重でぬくもりのある逸品です。
③厳選された映画たち
昼間の上映に関しては、基本的に久保田支配人が作品を決めていらっしゃるとのこと。上映作品も名画座のオリジナリティが大いに発揮される重要ポイントです。
現在(2016年1月2日~1月15日)上映中の作品はこちら!
『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』
(C)2015 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
(C)2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】■飯田橋ギンレイホール
〒162-0825 東京都新宿区神楽坂2-19 http://www.ginreihall.com/
※2021年9月8日時点のVOD配信情報です。