12月23日に公開された『クリード チャンプを継ぐ男』。
シルベスター・スタローンの代表作『ロッキー』の新章として、脇にまわった彼の円熟味が増した演技が大きな話題となっています。
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スタローンというと、『ロッキー』に『ランボー』、近年だと『エクスペンダブルズ』シリーズが代表作とされており、他にも『コブラ』や『クリフハンガー』などの大ヒット作品が多数あります。
しかしここではそれ以外の――大ヒットとまではいかなかったけど、埋もれさすには惜しいかな、と思える作品群を中心にご紹介します。
お正月休みなどの連休時のDVD鑑賞における、作品選びの参考となれば幸いです。
悪役スタローンが痛車に乗って大暴れ!
デス・レース2000年(1975)
2000年の荒廃したアメリカで人気の、人間をひき殺して得点を競う大陸横断レース“デス・レース”に出場するレーサーの争いを描いた、荒唐無稽なB級映画として現在ではカルト・ムービーの一本と評されています。
スタローンはマシンガン・ジョーという名の悪漢レーサー役で出演、巨大ナイフにトミーガンを装備した殺人カーに乗って大暴れしています。他のレーサーの車もヘンな物ばかりで、文字通りの“痛車”ぶりを発揮しています。
後にこの作品はジェイソン・ステイサム主演で硬派なカーアクションとしてリメイク(『デス・レース』)されていますが、彼とスタローンが『エクスペンダブルズ』で共演する事になるとは、何とも奇縁を感じます。
『デス・レース2000年』予告編
初監督のみならず初主題曲を担当、プロレス版『ロッキー』
『パラダイス・アレイ』(1978)
第二次大戦直後のニューヨークのスラム街を舞台に、イタリア系3兄弟が力の強い三男をレスラーに育て、賭博レスリングで一儲けしようとします。
スタローンが脚本のみならず初監督を務めた、珍しいプロレスをテーマにした作品で、ロッキーの時とは打って変わってお調子者の次男を演じています。しかもなんと、主題曲をスタローン自身が歌っているなど、珍しづくめな作品です。
悪漢レスラー役で、日本でも人気だったテリー・ファンクが出演。スタローンとは長らく親交があり、『オーバー・ザ・トップ』でチョイ役で出演したり、『ロッキー5/最後のドラマ』ではアクション指導を担当しています。
脚本は『ロッキー』以前からスタローンが書き溜めていた物で、映画化に向け売り込むもスタローンが無名という事でどこも取り合ってくれませんでした。それが『ロッキー』の大ヒットにより一転、映画化にゴーサインが出たといういきさつがあります。
元は名作刑事映画の続編として企画
『ナイトホークス』(1981)
おとり捜査を得意とするスタローン扮するニューヨーク市警刑事と、国際テロリストとの闘いを描きます。
スタローンが刑事役を演じるのはこの作品が初めてで、ヒゲ面でなんと女装姿まで披露。冷酷なテロリスト役のルトガー・ハウアーは、この後の『ブレードランナー』のレプリカント役で大ブレイクします。
実はこの作品、元々はジーン・ハックマン主演の『フレンチ・コネクション』の第3作目として企画されましたが、当のハックマンが三度同じ役を演じる事に難色を示し、映画化が頓挫していたものでした。
だからというわけではありませんが、地下鉄内での緊迫した追跡シーンなどから、『フレンチ・コネクション』のテイストが感じられなくもありません。
残念な評価を受けたコメディ初挑戦作
『オスカー』(1991)
1930年代のシカゴで、顔役でならしたギャングの親分(スタローン)が父親の遺言によって足を洗おうするも、娘の結婚問題などのトラブルに振り回されて悪戦苦闘する様を描きます。
80年代からアクション俳優の第一人者として先頭を走ってきたスタローンでしたが、90年代に入りアーノルド・シュワルツェネッガーやブルース・ウィリスといったライバルが台頭してきた事もあってか、徐々にキャリアが下降気味になります。
そんな中でスタローンがイメージチェンジを図るべく、コメディ作品を多数手がけたジョン・ランディスを監督に据えて作られました。
一説には、シュワルツェネッガーが『ツインズ』などのコメディで評価を得た事への対抗心で作ったとも云われていますが、興行的には惨敗。スタローンの低迷期が続く事になります。
元がフランスの舞台劇をベースにした、いわゆるシチュエーションコメディだけに、セリフの掛け合いや勘違いの連鎖から来る笑いは一概に悪くはありません。それゆえにあまりの低評価が惜しまれます。
『オスカー』予告編
演技派俳優としての一面を見せた意欲作
『コップランド』(1997)
警察官ばかりが暮らす小さな町で起こった事件に隠された真実を知った保安官(スタローン)の孤独な戦いを描いた、社会派犯罪ドラマ。
冴えない中年保安官を演じるために、体重を約20キロも増やして臨んだスタローンが話題となりましたが、他作品のような派手なアクションシーンが皆無なのと、スタローン自身が長らく低迷期だったという事もあってかヒットには至りませんでした。
しかし、事件と向き合ううちに、失いかけていた職務への情熱を取り戻していく彼の演技は大きな見どころの一つで、決してアクション一辺倒だけの俳優ではない事が分かります。
スタローンとロバート・デ・ニーロという、1970年代にスターとなった両者が初共演した事も注目ですが、彼らは後述する『リベンジ・マッチ』で、あっと驚くような再共演を果たします。
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】スタローンとシュワルツェネッガーの本格“競演”
『大脱出』(2013)
『エクスペンダブルズ』でスクリーン初共演を果たしたスタローンとシュワルツェネッガー。
2人が共演する企画はこれまでにも何度かありましたが、いずれも実現に至らず(その中には『デッドフォール』や『フェイス/オフ』もありました)、『エクスペ』を経て満の持しての本格“競演”を果たしたのが、この『大脱出』です。
何者かの罠によって、一度入ったら絶対に出られない「墓場」と呼ばれる監獄に入れられてしまったセキュリティ・コンサルタントのブレスリン(スタローン)と、彼の前に現れた謎の男、ロットマイヤー(シュワルツェネッガー)の活躍を描きます。
実質的な主役はスタローンですが、もちろんシュワルツェネッガーにも、これぞ!という見せ場が用意されているのでお楽しみに。
※注意!
この作品をまだ観ていない方は、作品の日本版公式サイト及びポスターアートといったソースには目を通さない方が良いでしょう。
というのもそれらには「墓場」に関するネタバレが記されているため、作品の面白さを半減させる恐れがあるからです。
『大脱出』海外版予告編。日本版予告編では壮大なネタバレをしているので、見ない方が賢明
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】ロッキー・バルボア VS ジェイク・ラモッタ
『リベンジ・マッチ』(2013)
(C)2014 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.
『ロッキー』のスタローンと『レイジング・ブル』のロバート・デ・ニーロ。共に名作ボクシング映画に主演した両者が、因縁のライバルボクサー役としてボクシングマッチを行うという、映画ファンなら夢のような作品です。
『ロッキー』のセルフパロディを演じるスタローン(撮影時67歳)と、お調子者のダメダメ親父役のデ・ニーロ(70歳)が、お互いに体を絞り上げて試合に臨む様はさすがの一言。エンドクレジットのオマケも必見です。
古希にしてなお盛ん、スタローン
2016年には遂に70代に突入するスタローンですが、まだまだ衰えを知らない様子。
なんと、『ランボー』シリーズの新作『Rambo: Last Blood』の制作を予定しているとの事で、第1作目の原題が『ファースト・ブラッド(First Blood)』だった事から、シリーズの完全な最終作となるようです。
「あれ?確か『ランボー 最後の戦場』で終わったのでは?」と思った人が大半でしょうが、『ロッキー・ザ・ファイナル』で終わったはずの『ロッキー』シリーズが、今回の『クリード』で復活したのと同じ事と思えばいいのです。
つくづくスタローンは、邦題に「最後の~」「ラスト~」「ファイナル」と付けたがる日本の配給会社泣かせな人物だと思いますが、その飽くなき創作意欲をいつまでも持ち続けていてほしいものです。
※2021年6月24日時点のVOD配信情報です。