マジでドープな奴らに捧げるN.W.A.自伝映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』

映画が好きなただのBar主人

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2014年の『ジャージー・ボーイズ』の波に続き、2015年は『セッション』『ピッチ・パーフェクト2』『エール!』等、音楽映画が相次いで公開されました。

そしてソウルの帝王を描く『ジェームズ・ブラウン』、ブライアン・ウィルソンを描く『ラブ&マーシー』、スライ・ストーンを追ったドキュメンタリー『スライ・ストーン』といった“今だからこそ”描く事が出来る偉大なアーティストの自伝映画も実に傑作揃いでした。

そんな音楽映画超当たり年の2015年。最大の大物が遂に日本公開!伝説的ギャングスタヒップホップグループ「N.W.A.」の知られざる真実を曝け出した『ストレイト・アウタ・コンプトン』の熱さをレビューします!

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(C)2015 UNIVERSAL STUDIOS

ヒップホップを知らなくてもエンターテイメントとして楽しめる作品

こういったアーティストを追った自伝・伝記映画というのは下記の2パターンに分かれると個人的に考えております。

①出来るだけ史実を忠実に再現し淡々と描くドキュメンタリーに近い作品(『envil』はそういう意味で最高のドキュメンタリー作品でした)

②史実は織り交ぜるものの、映画の盛り上がり的に大分脚色してエンターテイメント性を重視した作品

①に寄り過ぎるとアーティストを知らないと楽しめない傾向にありますが、本作は丁度①と②の中間に位置しており、「N.W.A.」のドラマ性の高いストーリーも相俟ってヒップホップを知らなくても楽しめる作品に仕上がっております。

簡単に「N.W.A.」を説明すると、カリフォルニアはコンプトンで1986年に結成されたギャングスタヒップホップグループ。N.W.A.は「Niggaz Wit Attitudes」の略称。

テレビではまず放映出来ない超過激な歌詞と破天荒な振る舞いで全米の話題をかっさらい、社会現象にまで発展。日本では知名度が薄いが(故に日本公開も遅れ公開館数もまだ少ない)アメリカでは伝説的なグループです。

本作はそんな「N.W.A.」が底辺から這い上がり結成に至るまで、からの成功。メンバーの音楽性や人間性、金銭問題からの確執~離散。そして和解からのそれぞれの道までを描いております。

多少の美化はあるものの、誠実な演出と画面作りで音楽や成功にかける若者たちを描いた青春モノとしても非常にクオリティの高い作品。ヒップホップに馴染みのない方はその歴史の1ページを学ぶこともできるでしょう。

圧巻のライブシーン、そしてどんなパンクバンドよりもN.W.A.は“パンク”だ!

音楽を題材にした映画なので、勿論見所はライブシーン。本作でも熱いライブシーンが見所ですが、バンドモノでなくヒップホップのライブなので、その凄さや臨場感もまた一味も二味も違います。

最高の予告編!!

特に警察をディスりまくった「Fuck The Police」を警察が厳戒態勢で待機している中でライブするシーンは超圧巻!ここまでシビれるMCとライブはそうそうない。間違いなく2015年ベストライブシーン!

黒人ということで虐げられてきたN.W.Aが社会への不満を音楽で爆発させる精神はどんなアーティストよりも“パンク”だ。

本作を観てしまうとパンクバンドやロックバンドが社会に不満をぶちまけたり暴れたりするのが“ただ暴れたいだけ”のように思えてきます。それを実感させてくる圧倒的な説得力がここにあります!

曲を作っていくシーンやラップを乗せるシーンも心踊りますし、純粋に音楽を愛するアーティストとしての側面も垣間見れ思わずニヤリとしてしまいます。ファッションもカッコいい!

『ラブ&マーシー』に続いてまたお前かポール・ジアマッティ!

ポール・ジアマッティがN.W.A.をマネジメントするジェリー役で出演。ポール・ジアマッティと言えば今年公開されたビーチ・ボーイズのリーダーであるブライアン・ウィルソンの自伝映画『ラブ&マーシー』も記憶に新しい。

ブライアン・ウィルソンを監視して金づるにする悪徳医者役を怪演、これがまた憎ったらしいのなんの!『ストレイト・アウタ・コンプトン』でも似たような立ち位置で登場し『ラブ&マーシー』を観た方はテンション上がったのでは?

始めはN.W.A.のために警察にも身体を張ったりして「おお!ポール良い奴じゃん!」とか期待させてくれますがやっぱり金にがめつい悪徳マネージャーでした(笑)。

『ラブ&マーシー』よりは小物感満載でしたが今後更にポール・ジアマッティはこんな役どころがたくさん回ってきそう。ある意味で個人的に2015年のベスト助演賞はポール・ジアマッティに決定!

映画を観ない人でもヒップホップが好きなら絶対映画館で観て欲しい!マジでドープだ!

実在のグループの自伝映画なので登場する俳優も皆似ております(若干イケメン気味)。特に映画ファンにも馴染みがあるアイス・キューブ役の人は「似ているな~」と思ってたらなんとアイス・キューブの息子!

そりゃあ似ているわけです。本作が俳優デビュー作となり、まだ若いながらも父親譲りのカリスマ性を感じさせてくれており、今後の活躍が楽しみです。

筆者はヒップホップが好きなのでこの『ストレイト・アウタ・コンプトン』を観て強烈にシビれたわけですが、

映画好きよりも、ヒップホップが好きな人にこの映画を観て欲しいし、是非とも語りたい!

勿論、ヒップホップを知らなくてもこの映画は最高なのですが、ヒップホップ好きなら知っているあのシーンやあのアーティストの登場、そしてエンディングに涙すること間違いナシ。 その感動は知らない人の100倍増し!

映画ファンは勿論、ヒップホップファンの魂を鷲掴みする本作が公開館数が少ないのは非常に悲しい。全世界で2億ドルを超える大ヒットとなった本作、まだまだ全国で劇場公開中です!

公開中の『スターウォーズ/フォースの覚醒』を観た後の「○○が××でやばい~」みたいに、本作を観たヒップホップ好きの皆様と「○○とか△△が出ていたあのシーンやべえ」みたいなドープな話をしたいので何卒!!

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  • にゃす
    3.5
     ゆいさんがおすすめしてくれた作品🤩!『8 mile』のレビューでも言いましたが僕はHIPHOPはまったく通っておらず😂そんなHIPHOPジャンルの伝説的なグループN.W.Aの伝記映画ということで正直めっちゃ期待してたわけでもないんですが、見事に予想に反して2時間半があっという間のおもしろさでした🤩  犯罪が多発してるコンプトンという町で生まれ育ち、後にN.W.Aのメンバーになる青年たち。理屈もへったくれもない警察に強引に抑圧され、彼らが生きづらく不満を抱えながら過ごしてるってのが冒頭からありありと伝わってきます。  「不満をLyricに書いてブチまける」  このカッコよさがとても伝わりました🥺✨『8 mile』ではフリースタイルラップ対決で対戦相手をディスるために用いられ納得いってなかったんですが、生まれ育った自分の境遇を素直に歌詞にして音楽にのせて吐き出すのがHIPHOPというジャンルなんですね🥺ただ早口で捲し立ててるだけじゃなかったんだ🥺✨やってることも聴いてる観客が大盛り上がりするとこも『8 mile』と同じだし、なんならエミネムは即興のラップだからその場でLyricを紡ぐ凄さがあるんですけど、カッコよさは断然僕はN.W.Aの方が感じましたね〜🙌  HIPHOPのカッコよさを知りたいならぜひこの作品おすすめです🤩Netflixで9月30日までの配信なので急いで💨(9月30日といえば…)  ゆいさーん!おすすめありがとーございにゃした😸🐾音楽で相手を貶めるカッコよさ、たしかに分かりました🤩✨
  • コジコジ
    3.4
    知識がないから よくわからなかった
  • おらん
    4.5
    今年89本目 NWAの栄光と解散を描いた物語 もっと曲知りたい
  • うさぎの森大臣
    4
    最高‼️私は日本のラッパーしか聞かないのでN.W.A.を知らなかったけど、2PACとスヌープが出てきてあがった! しかもキューブってボーイズンザフッドのダウボーイか!!キューブを演じたのは実の息子!そしてボーイズンザフッドはN.W.A.の曲名からだったのね!!そしてアフターマスはエミネムが所属?! アツすぎる😭😭😭😭最高最高最高、アドレナリンどぱどぱ出た。 そしてここでもエイズ。エイズはゲイの病気ではない。
  • ななし
    4
    ギャングスタ・ラップの伝説的グループ「N.W.A」の伝記映画。その中でも中心メンバーであるイージー・E、ドクター・ドレ、アイス・キューブの人間関係が映画を貫く軸となる。メンバーはもちろん、周辺の関係者も全員そこそこ似てて笑ってしまう。 途中、デトロイトのライブで代表曲「ファック・ザ・ポリス」を披露したら警察が踏み込んできて不当逮捕されるという衝撃エピソードが出てくるが、これはマジなんだろうか……。やっぱ本場のギャングスタは格が違いすぎると驚嘆。 N.W.Aは1stアルバム発売後、メンバー間の待遇格差が原因で早々に空中分解することになるが、ドレがぶっちゃけ映画内でぶっちぎりでヤバい存在であるシュグ・ナイト(2015年に殺人罪で逮捕)とデス・ロウレコードを設立してしまうのは、現実の歴史の流れ通りではあるものの、「おいおいやめとけ……」と心配になってしまう。 そしてシュグ・ナイトは期待どおり(?)、映画内でも大暴れする。N.W.Aのメンバーは多かれ少なかれリリックの過激さには若干の"吹かし"があるようだが、こいつだけはガチのギャングスタ過ぎる。 ラストで2PAC、エミネム、50セント、ケンドリック・ラマーのインタビュー音声を流すことで、N.W.Aが現在までのヒップホップシーンの礎となっていることを示すようで感慨深い。
ストレイト・アウタ・コンプトン
のレビュー(21015件)