俳優や監督に興味がなくても設定や題材だけで「なんだそれ!?面白そう!」と思わせる、あまり映画では取り上げられないテーマを扱う映画は1年の内に少なからず存在します。
2015年公開作品でもドラマーをテーマにした『セッション』、パパラッチをテーマにした『ナイトクローラー』、囲碁×アクションの『神の一手』、世界一のステーキ屋を決めるドキュメンタリー『ステーキ・レボリューション』等いろいろ。
そんな中、チェスを題材にした『完全なるチェックメイト』が日本公開となりました!映画で取り上げられる事が少ない世界的盤上ゲームである「チェス」。それに人生を捧げた狂気の天才を本作は描いております。
(C)2014 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved. Photo Credit: Tony Rivetti Jr.
チェスのルールを知らなくても問題ナシ!これは一人の偉人(変人)の物語だ!
筆者は「チェスの映画ってなんだ!?面白くないはずがない!」と意気込んで本作を観賞しましたが実はチェスの知識はほとんどありません(洋物の将棋というニュアンスぐらい)。
結論としては、チェスの知識全くナシでも問題ございません!チェスで戦い相手をなぎ倒していく様はさながら異色のスポーツ映画。むしろボクシングや格闘技モノに近いかもしれません。
ただスポーツ映画的なノリなのかと言われればそうでもなく、本作は伝説のチェスプレイヤー、ボビー・フィッシャーの伝記映画としての要素がメイン。
このボビー・フィッシャーが個性的過ぎてチェスの試合よりも彼の人間性の方がインパクト大。チェスに全てを捧げたせいか協調性皆無。超ワガママかつ超理不尽。そして奇行の嵐。筆者が当事者なら間違いなくタコ殴り!
しかしチェスの腕前は超一級品なので誰も文句が言えない。大成功した後に調子に乗って傍若無人に振舞うアーティストとは違い、めちゃくちゃ超神経質な根っからの変人という意味でモーツァルトに揶揄されます。
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】呼吸も瞬きも許されない!?ド緊張感溢れるラストのチェスバトルは必見!
本作最大の見所はソ連代表のボリス・スパスキーとの世紀の一戦に他なりません。最強の敵スパスキーとの戦いはアメリカとソ連の威信を賭けた戦いとして1970年当時実際にメディアでも関心が高い一戦だったようです。
チェスのプロの試合はボクシングのように何ラウンドも戦う方式で(しかも何日もかけて)その試合方式に驚き。圧倒的な実力を見せるスパスキーにボビーはどのようにして対抗するのか注目です。
超神経質なボビーは試合中の観客やカメラの雑音までもが気が散ると主張し出します。実際に観賞しているとその試合会場に居合わせているかのようなド緊張感が凄い!
ここで面白いのは常識人だと思われていたソ連のスパスキーも常人では考えられない行動を取り始めます。驚異的な集中力と思考能力が必要とされるチェス。常人でない領域に踏み込んだ者たちは狂気の世界へと足を踏み入れるのか…
チェスって恐ろしい!!
ボビー・フィッシャーの強烈なキャラクターをトビー・マグワイアが怪演!
主演は大ヒットしたサム・ライミ監督の『スパイダーマン』や『ビッグフィッシュ』でお馴染みのトビー・マグワイア。超奇天烈なボビー・フィッシャーを熱演。プロデューサーも兼任しておりその意気込みが伝わります。
トビーのギョロっとした瞬き少なめな目つきが変人役に合っており実に自然体で違和感なく演じきっています。良い意味であまり特徴のない俳優さんでしたがどうしても憎めないそのキャラはハリウッドでも貴重。
まだまだ若いと思いきやもう彼も40歳!童顔過ぎて全然見えないですが、本作を観ると実にイイ俳優に成長したなーと関心(元々良い俳優さんですが)。本作での演技がキャリア最高のモノと言っても過言ではないと断言します!
エドワード・ズウィックの確かな手腕、特に音の演出が光る意欲作
「チェスが題材」というのも観たい理由でしたがもうひとつの観たい理由は本作の監督がエドワード・ズウィックという点でした。
『グローリー』『ラスト・サムライ』『ブラッド・ダイアモンド』と比較的地味ながらも地に足をついたハリウッド映画を撮れる監督で筆者としては絶対的に信頼の置ける監督です。
格調高くも重苦し過ぎない映像、確かな演出とプロットで今回も間違いありません。作風的にはシリアスドラマや伝記モノが得意なズウィック監督ですが『ラブ&ドラッグ』みたいなラブコメも撮れるんだから好感が持てます。
特に本作では、盤上で戦うチェス戦士たちの異常な世界を演出するための要素として“音”の表現が凄い。この緊張感は映画館で味わわないと勿体無いので是非とも映画館での観賞をオススメします!
本作でボビー・フィッシャーに興味を持った方は、今回の『完全なるチェックメイト』公開を機にパッケージが日本発売になった『ボビー・フィッシャー 世界と闘った男(2011年制作)』もチェック!
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今回のボビー・フィッシャー、トビー・マグワイアも実に良かったですが、ティム・ロスがやってもハマるかもしれません。神経質な変人役はうまいし、何より見た目が似ていると思いますので(笑)
※2021年10月29日時点のVOD配信情報です。