最初に言っておくと、映画『マリーゴールド・ホテル』シリーズは、観れば観るほど味わい深くなっていく不思議な作品です。そのユニークなストーリーと個性的な登場人物たちに多くの観客が魅了され、第1作『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』は、たちまち世界中でヒットしました。
そんな『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』から 3 年…ついに続編『マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章』が3月4日から公開スタートとなりました。
様々な番組で紹介されていたので、気になっていた方も多いと思いますが、ほとんどの方は「前作のことを全然知らないから…」と躊躇してしまっているのではないでしょうか?
今回はそんな方でも本作を楽しめるように、第1作『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』(以下、第1章と表記)のポイントをおさらいしつつ、最新作『マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章』(以下、第2章と表記)の見所をたっぷりご紹介したいと思います!
『マリーゴールド・ホテル』は隠れた名作?
第1章をご紹介する前に、まず、『マリーゴールド・ホテル』シリーズを全く知らないという方のために、本作のもつ魅力に迫りたいと思います。注目される理由や、隠れた名作と言われる理由が分かるかもしれません。
色彩豊かなインド
本作の魅力の1つは、スクリーンに映し出される色彩豊かなインドの情景です。インドは人の感覚を絶え間なく刺激する国として、旅行好きなら一度は憧れる場所だと言えます。あふれる音と色彩、暑さと喧騒、すさまじい数の人々…その一つ一つが、私たちを虜にするのです。
『マリーゴールド・ホテル』シリーズでは、そうしたインドの色彩豊かな情景を、何気ないシーンから感じ取ることが出来ます。それもこれも、主人公たちがインドに関する知識がほぼ皆無だったからです。これまで仕事や家庭のことで一杯一杯だった主人公たちは、様々な事情でインドへ行くことを決意します…しかし、インドについて知っている知識はほぼなかったのです。
そのため、第1章は、主人公たちが「インドってどんなところ?」「これなに?」「それは汚いから食べちゃダメ」「トゥクトゥクってなに?」と言うところから始まります。この知識のなさが、実際にインドへ足を運んだことのない多くの観客たちに異国の地・インドの魅力を伝える重要な視点となっているのです。
人生に必要なものはスパイス
インド料理と言えばスパイシーな料理です。第1章では、ホテルのオーナーが宿泊客にインドの良さを知ってもらおうと、現地の代表料理をバンバン出して、宿泊客が全員お腹をくだす…という笑えるシーンがあります。しかし、本作でもっと重要なスパイスは“人生におけるスパイス”です。
このシリーズは簡単に言ってしまえば、様々な事情を抱えたシニア世代がインドで第二の人生を歩む物語です。時に厳しい現実に直面し、もがき苦しみながらも、ゆっくりと前へ歩んでいく姿が、私たちに「何歳になってもチャレンジすることが出来る」という大切なメッセージを届けてくれるのです。
人生は甘い蜜だけでは面白くありません…何事にも刺激を求め、自らの人生をより豊かなものにしていこうという貪欲さがそこには必要なのです。
人生のヒントが詰まった名作
シリーズを通して欠かすことのできないものは、主人公たちの名言の数々でしょう。例えば、第1章で最も印象的かつ物語でも重要となるのが「何事も最後は大団円」というインドのことわざです。この言葉には「何事も終わりにはよくなる、よくならなければ、それはまだおわりではない」という意味があります。
どの場面で登場するかは言えませんが、この言葉があったからこそ、主人公たちは自らの力で第二の人生を選択していくことが出来たのかもしれません。第2章でもこうした名言は数多く存在しますので、注目です!
人生経験豊富な彼女たちだからこそ、その言葉一つ一つに命が宿り、説得力のあるものになる…そして、それらの言葉は、新しい一歩を踏み出そうとする全ての人の背中をそっと押してくれることでしょう。
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』のあらすじ
人生の豊かな円熟期に英国式の洗練されたインドの邸宅での暮らしを―。
様々な事情を抱えた英国暮らしの男女7人は、インターネットで見つけたインドの“マリーゴールド・ホテル”に一瞬で心を奪われる。インターネットで見る限りは、高級かつリゾート感が溢れる素晴らしいホテルだったが、実際に到着したのは廃墟同然の寂れた埃まみれのホテル…。
彼女たちはなぜインドへ来たのか。そして、新たな一歩を踏み出すことが出来るのか…これは、英国のシニア世代7人が第二の人生を歩むまでの物語。
『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』の登場人物
『マリーゴールド・ホテル』では、登場人物たちの物語が複雑に絡み合っていくことで、様々な化学反応を引き起こしていきます。そのため、登場人物たちの背景をしっかりと押さえておく必要があります。ちなみに、第2章では第1章の登場人物がそのまま登場しているので、この記事を読んだ人は少なくとも、読んでいない人よりも最新作を十倍楽しむことが出来ます。
インド暮らしに前向きなイヴリンとダグラス
第1章で主人公として登場するのが、「007」シリーズでお馴染みのジュディ・デンチが演じるイヴリンです。イヴリンは夫を心臓発作で亡くしたばかり…さらに、夫の残した借金がきっかけで思い出の家を売ることになります。息子に「一緒に暮らそう」と提案されますが、息子に世話をかけたくないイヴリンはインドへ渡ることを決意するのです。
そんなイヴリンは、インドでの生活に誰よりも積極的で、生まれて初めて仕事に就き、働くことになります。そんな何事にも積極的なイヴリンの姿を見て、最初に刺激を受けたのが、ダグラスでした。
ダグラスを演じるのは、『ラブ・アクチュアリー』や『アバウトタイム』で印象的な演技をしていたビル・ナイ。ダグラスは妻・ジーンとイギリスで老後の家を買おうとしていましたが、娘の起業のために退職金を全て投資してしまい、安価なインドへ行くことを決意します。ジーンは夫であるダグラスに冷たくあたりますが、ダグラスはその持ち前の優しさで日々を耐え忍んで過ごしています。
第1章のキーパーソン“グレアム”
そんなダグラスの妻・ジーンが気になっていたのが、グレアムでした。彼は、長年つとめてきた高等法院の判事の仕事を突然辞め、インドへ旅立ちます。「遠い昔にインドに住んでいた」と語る彼には、これまで誰にも語ったことのないほろ苦い過去がありました。
インドに訪れた7人の中で、唯一明確な目的を持って訪れていたグレアムでした。彼はインドに来るとすぐに人探しを始めます。それはずっと昔の記憶…自分自身を牢に閉じ込めてきた思い出に決着をつけるためでした。
ある日、グレアムがインドに訪れた理由を知ったジーンはいてもたってもいられず、グレアムを追いかけ、一緒にランチをするチャンスを得ます。しかし、グレアムがインドを訪れた理由が信じられない彼女は、グレアムに冷たく「こんな国に魅力が?」と疑問をぶつけてしまうのです。けれど、グレアムはジーンに対して、優しく「光、色彩、笑顔、命がここにはある」と諭します。
誰よりもインドが嫌いなドネリー
「ハリー・ポッター」シリーズのマクゴナガル先生でお馴染みのマギー・スミスが演じるのは、とにかく頑固なドネリーです。彼女は怪我の手術を行うために嫌々インドへ行くことになります。冒頭の病院のシーンでは黒人・インド人を差別しているため、偏見の塊であることが一瞬でわかります…誰よりもインドが嫌いな人物、そう覚えておくと面白いはずです。
そんな彼女にも転機が訪れます…ドネリーはある日、自身の食事係をしているアノーキという女性が掃除している姿を見て「それじゃ、いつまで経ってもおわらないわ」と声をかけます。実は、ドネリーも長年メイドとして人生のほとんどを捧げてきていたのです…だからこそ、アノーキの掃除の仕方を放っておくことができなかったのです。
しかし、アノーキはインドでは“不可触民”と呼ばれ影さえ嫌われる階級にありました…そのため、アノーキは「初めて自分を見てくれる人に出会った」とドネリーに、彼女自身の最高をおもてなしをして感謝の気持ちを伝えます。これがきっかけとなり、ドネリーもほんの少し心を開くようになりました。ちなみに、第1章ではドネリーのメイドの経験がホテルを危機を救います。
似た者同士が起こす笑い
マッジは、結婚と離婚を繰りかえしてきた恋多き女性です。娘から当たり前のように孫の世話を頼まれる日々に嫌気がさし、新たな出逢いを求めてインドへ渡ります。一方でノーマンはとにかく女たらし…最後のロマンスを求めてインドへ旅立つのです。
そんな似た者同士のマッジとノーマンは、2人そろって余生を共に過ごすパートナー探しに必死です。そんな中でばったりと2人は同じ場所で遭遇します…「一夜限りでいいから恋をしたい」と語るノーマンのために、マッジは近くにいたキャロルにノーマンを紹介…本音を打ち明けたところ、ノーマンとキャロルは見事に意気投合…第2章でも、ノーマン、マッジ、キャロルの3人に注目です!
【左からマッジ、ノーマン、キャロル】
唯一の若い力~ソニーとスナイナ~
本作はシニア7人と、マリーゴールド・ホテルの若きオーナー・ソニーがいたことからこそ化学反応が起きたと言えます。ソニーは亡き父から相続したホテルを再び輝かせるために、そして恋人のスナイナとの関係を家族に認めてもらうために奮闘します。しかし、母から猛反対され、ホテル存続の危機へと陥ることになるのです…。
宿泊者たちは若い2人の姿を見て、様々なチャレンジをするようになっていきます。ホテルの危機をどうやって回避したかと言うと…あ、やっぱり、直接『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』を観てたしかめてください!ちなみに、第2章はソニーとスナイナの結婚が目前に迫っているというところからはじまります。
今が人生最高のとき。物語はついに第 2 章へ―。
3月4日から公開がはじまっている『マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章』ですが、この第2章では前作の魅力はそのまま受け継いでいるだけでなく、新たに“インドらしさ”を加えてパワーアップしています。今回は、あらすじと見所をお教え致します!
あらすじ
マリーゴールド・ホテルは連日満室で、経営も順調。ソニーの次なる目標は新館オープン―。
オーナーのソニーは共同マネージャーのミュリエルと共に、アメリカの投資会社の社長バーリーに融資を持ち掛ける。しかし、何とか話を聞いてもらえたものの、最終決定は、身分を伏せた鑑定人による評価に委ねられることに…。
そして、訪れる謎の宿泊客…マリーゴールド・ホテルは一体どうなってしまうのかー?
キーワードは過去・今・未来―。
第 1 章では、様々な事情を抱えた主人公たちがインドへ来ることになった経緯、そして第二の人生を選び取るまでの物語が丁寧に描かれていました。それに対し、最新作の第 2 章では、インドで暮らすことを選んだ宿泊者たちのその後が描かれていきます。
仮に、第1章を「今」を手に入れるために「過去」を振り返る物語とするならば、第2章は「未来」を手に入れるために「今」を生きる物語と言えます。第2章が「今」に軸を置いていることは、予告編で使用されているAndy Grammerの楽曲「Back Home」からも感じ取ることが出来ます。
Andy Grammer と言えば「Honey, I’m Good」が有名ですが、この「Back Home」も彼の代表曲です。予告編では序盤に少し、しかも歌詞なしでこの楽曲が登場しますが、歌詞を見ると第 2 章の物語にぴったりな内容となっています。
I’m gonna need you to raise your glass
I don’t care what you put in it
Here’s to nights that you can’t take back
We live hard but we love to laugh
和訳はあえて載せませんが、インドで暮らすことを決意した宿泊者たちが、第2章でどのようにステップ・アップをしていくのか、わくわくさせてくれます。
最後まで目が離せない衝撃の第2章―。
最新作でも第 1 章と同じく人生のヒントとなる名言が数多く登場します。個人的に、印象的だったのがダグラスのスピーチ…ここでは、アルフレッド・テニスンという英国の詩人の詩が引用されています。残念ながらどの詩が引用されているかは分かりませんが、心に響く素晴らしい詩です。
そしてもう一つ心に響いたのが「今が人生最高のとき」という言葉です。誰の言葉か言ってしまうと面白さがなくなってしまうので、是非劇場へ足を運んで自身の目で、耳でたしかめてみてください!
最新作『マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章』は、3月4日から絶賛公開中です!上映劇場は公式サイトでご確認ください。
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