ニュースの裏に込められた知られざる真実を伝えたい!雨宮塔子さんインタビュー

2016.09.23
インタビュー

Filmarks編集部

フィルマーくま

924日より公開のクリント・イーストウッド監督、トム・ハンクス主演の2009年ニューヨークのハドソン川で起こった奇跡と賞賛された航空機事故の驚愕の生還劇を描いた『ハドソン川の奇跡』。

乗員乗客155名の命を救ったパイロットが一夜にして容疑者へ...NYマンハッタン上空で実際に起きた未曾有の航空機事故とその知られざる真実を描いた本作は、99日に全米で公開され、週末興収ランキングで初登場No.1!週末3日間で36億円を突破の大ヒット中の話題作です。

今回「FILMAGA」では、フリーキャスター・雨宮塔子さんをお招きし、早くもアカデミー賞最有力の呼び声高い本作の、報道に携わるキャスターの目線や、女性ならではの視点から見た見所について教えていただきました。

雨宮さん

報道では伝えられなかった真実を掘り下げた傑作

映画の話の元になった航空機事故のニュースについて、2009年当時どう感じられましたか?また映画を観た後、事件に対する印象は変わりましたか?

雨宮塔子さん(以下雨宮さん):事件当時、私はフランスに暮らしていて、乗客の中に日本人がいたことなど具体的な事実は知りませんでした。この事件は、サリー機長の英雄談ということで世間には認知されて終わったと思うのですが、まさかそこにあのような知られざる真実があったということを知り驚きました。

sully06

サリー機長が直面した問題は、当時ニュースではなかなか伝えることができなかった点だと思います。ただ報道に携わる身として、私はそういったことも伝えていけたらと思っています。一見皆さんにとって興味のないことであり、その結果視聴率に結びつかなかったとしても、知っておくべき真実は掘り下げて伝えたいですね。

今回、クリント・イーストウッド監督が映画化したことによって、たくさんの方がそういったことに気付かされたと思います。報道側が当時報道できなかった真実を伝えているという点で興味深い作品だと思いました。

「ハドソン川の奇跡」は、9.11(アメリカ同時多発テロ)後に起きた航空機事故でした。機長の決断によって乗客全員を救ったというニュースが当時のアメリカの人々に与えた影響についてどう思いますか?

雨宮さん:事故が起きた2009年のアメリカは、中東に派兵していたり、1年前にあたる2008年は金融危機もあり、とても暗い時代だったように思います。人々が不安に思っている時期に、事故が起きたけれど全員が無事だったというこのような明るいニュースは、アメリカの国民には目の前が明るくなるような希望を与えたのではないかと思います。

ハドソン川3※事故直後の実際の写真

また今回、クリント・イーストウッド監督は映画を通じて、「目の前で救助を求めている人を助けたい」という良心は誰もがきっと持っているということを伝えたかったのだと思います。一人の英雄が155人の命を救ったという一面もありますが、そこに関わった様々な人々の想いから生まれる良心があったからこそ奇跡につながったのではないか。そんな深いメッセージ性が伝わってきます

本作で描かれている「ハドソン川の奇跡」がいかに人々に影響を与えた出来事だったかということを考えると、今後は報道のスポットライトが当たらない部分もきちんと伝えることができたらと思いました。

今まで報道に携わった中で、特に印象に残っている多くの人が勇気づけられるニュースはありましたか?

雨宮さん:東日本大震災の際、配給を待って静かに並ぶ日本人の姿は度々海外のニュースで取り上げられました。日本で生まれて暮らしているとそれは当たり前のことのように思われるかもしれませんが、暴動も起こらず、列を作ってちゃんと並んで待つということは他国では難しいことです。きっとその要因は、日本人の自我・感情を抑える力が優れている点にあるかと思います。極限の状況の中でも秩序を保てる日本人のすぐれた一面を切り取って、本国の方にも気付かせてあげたニュースは、震災後の日本の人々の心の支えになる明るいニュースだったと思いました。

ハドソン川4

事件だけを追って報道すると暗い一面が目立ってしまいますが、視点を変えればきっと人々を勇気づけるニュースはたくさんあると思いますし、それを自分の目で見て伝えられるような報道をしたいと思っています。

一瞬の決断に、これまで自分がどう生きてどう考えてきたかという経験が現れる

サリー機長の決断の結果、乗員乗客すべての命を救うことができましたが、雨宮さんが人生において「大きな決断」をされたことはありましたか?

雨宮さん:多くの方の人生を左右したサリー機長の決断とは比べものになりませんが、今年「NEWS23」で報道の世界に復帰したということは、私にとって大きな決断の一つだったと思います。

トラブル発生から208秒でサリー機長はハドソン川への不時着水を決行します。その208秒間での決断は、40年という長年のキャリアから導き出された結果だと思います。決断はその瞬間だけで生まれるものではなく、自分がこれまでどう生きて、どう考えてきたかというその一つ一つが決断に現れると思います。

ハドソン川2

そういった意味では、私が報道の世界に再び挑戦したということは、フランスで17年間生きてきたことが関係しているかもしれませんし、少なくとも日本にずっといたらありえなかった決断だと思います。キャスターとしての仕事をお引き受けしたからには、全力で頑張りたいという想いです。

報道に携わるにあたって、今後心がけたいことはありますか?

雨宮さん:生放送という限られた短い時間の中で、今視聴者の皆さんに伝えるべきことは何なのか?と考えることをプロとして常に心がけなくてはならないと感じています。また先ほどもお伝えしたように、本作にあるような、知れ渡っているニュースの裏に込められた本当の事実や、視聴者の皆さんが知るべきことを伝えたいという使命感があります。

マスコミには、情報をコントロールする力があります。だからこそ、どう見せていくかということは常に慎重であるべきだと思います。不純なことは、事実としてきちんと報道すべきですが、受け止める側への影響というのも同時に考えていくことが大切なことだと思います

自分が今できる最大のことをやりきる大切さが分かる

今回の試写会が女性限定であり、本作は女性が見ても楽しめる作品になっていたかと思いますが、特におすすめの見所ポイントはどこでしょうか? 

雨宮さん:『ハドソン川の奇跡』は、派手なアクション映画というわけでは決してなく、まさにフランス映画のように生活の中での心の機微を描いた深い映画だと思います。事件が起きた後のサリー機長の奥さんローラ・リニーとの電話でのやりとりなども印象的なシーンのひとつだと思いました。

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​(サリー機長が)今手掛けている仕事はこれからどうなるのかなど、今後の生活面での心配が前面に出ているシーンです。日本人なら旦那さんの置かれている状況や気持ちを考え、感情をストレートには伝えないかもしれませんが、サリー機長の奥さんはハッキリ言います。それが欧米らしい所だなと思いますし、フランスでもよく目にするようなシーンでした。そういった、自分の想いを率直に伝えることによって、心に湧き上がる感情ひとつひとつをパートナーと共有する欧米のカップルの姿がよく出ていると思いました。

また、自分をヒーローとして扱われることを良しとは思わない、一般的なアメリカ映画とは一味ちがう映画だと思います。機長のサリーは自分の仕事を精一杯しただけで、その他周りの人々が自分ができることを考えて実行したからこそ大きな「奇跡」を生んだという、そんな大きなメッセージが込められた一作だと思います。

ハドソン川1

世界中で様々な重い現実を抱えている現代社会で、一人一人ができることとは何だろう...。自分がやるべきことをやりきることの大切さ、そしてそれが集まると“奇跡”を起こすほどの力になることを教えて頂きました。

もちろん女性でも、心に残るポイントがたくさんある温かい作品ですので、ぜひ今、この時代に多くの方にご覧いただきたいです。

普段、映画はどんなときに、どんな映画を観ますか?

雨宮さん:映画は大好きで、フランスで西洋美術史を学んでいた頃は、平日に授業の合間がある時など、いつも映画を観ていました。フランスでは土日のどちらかには、家族で映画を観る習慣がある家庭も多く、身近に劇場があるのはもちろん、学校でも映画のことを話す環境が整っているようで、映画が生活に根付いている国だと思います。長年住んでいたこともあり、フランス映画をよく観ますね。

トム・ハンクスが出演している映画ではどの作品が好きですか?

雨宮さん:『フォレスト・ガンプ/一期一会』や『ターミナルでしょうか。彼の憎めないような、可愛らしい所が好きですね。純粋な心を持つ主人公を演じたら右に出る人はいないと思います。今までのどこかコミカルな役のイメージではなく、本作のような人間的な葛藤を演じている役もぴったりはまっていて幅の広い役者さんだと思います。

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『ハドソン川の奇跡』をこれからご覧になられる方は、今までのイメージとは違うトム・ハンクスの熱演にも期待してほしいです

マスコミでは報道されなかった知られざる真実を描いた本作。クリント・イーストウッドがこの事件を通じて、何を世の中に伝えたいと思ったのか?そこに込められたメッセージをぜひ映画にてお確かめください。

『ハドソン川の奇跡』は、2016年9月24日(土)丸の内ピカデリー 新宿ピカデリー 他全国ロードショー。

原案本『機長、究極の決断 「ハドソン川」の奇跡』発売中 

C.サレンバーガー著 静山社刊

配給:ワーナー・ブラザース映画

公式サイト:http://www.hudson-kiseki.jp

C2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

 

雨宮塔子(あめみや とうこ)さん プロフィール

フリーアナウンサー/エッセイスト。1993年成城大学文芸学部卒業後、株式会社東京放送(TBS)に入社。『どうぶつ奇想天外!』『チューボーですよ!』等の人気番組を担当する。その他、報道番組やスポーツ番組、ラジオ番組などでも活躍。1999年、6年間のアナウンサー生活を経て、単身パリに遊学、フランス語、西洋美術史を学ぶ。20167月「NEWS23(TBS)キャスターに抜擢。拠点を日本に移す。

雑誌「ロフィシャル ジャパン」でもエッセイを連載中。著書に『金曜日のパリ』『雨上がりのパリ』(ともに小学館)、『それからのパリ』(祥伝社)、『パリ アート散歩』(朝日新聞出版)、『パリごはん』『パリのmatureな女たち』(幻冬舎)、『パリ、この愛しい人たち』(講談社)等。

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  • りさこ
    3.5
    経験がもの言う世界やな٩( 'ω' )و 観てよかった映画ではあるけど、好きな系統の映画ではなかったな。 実話ってところが、震える。
  • 松尾果歩
    -
    一連の救出劇後、サリーと医師の「平常時の脈は55(フィフティーファイブ)」「今は110(ワン・テン)だがこんなことが起きた後では大したもの」というやりとりをぼーっと見ていたら直後に「生存者数は155(ワン・フィフティーファイブ)!!」と来てこの映画に無駄な台詞はほんとにひとつもないんだと気が遠くなった。 そういう綿密に張り巡らされた無数のガイドに身を任せていればあっという間にすごい高みに連れて行ってくれる。 例を挙げたらキリがないけど管制官が真っ直ぐこちら(カメラ)を見つめてサリーに指示を送るカットによって観客は管制官の指示が的確であるように錯覚するがクライマックスではその同じ指示がやはり直前のガイドによってまったく異なる印象に変わる。 そして録音を聴き終わった後のアーロン・エッカートのあの顔…やばすぎでしょ。どうしたらあんな表情できる? 妻からの「あなたも生き残った155人のうちの一人だと気付いた」という感動的な電話をクライマックス直前に堂々とぶちこむあたり(しかもピアノの伴奏付き!)うまいなぁ。これから始まるクライマックスをどんな感情で観たらいいか完璧にガイドしている。 よく言われる「映画は時間を自由に伸縮させる」というのをまさに体現している映画だった。
  • 3.0
    いい話。だけどただただいい話だった。しか感想が出ない映画だった。 エンドロール見てて実際事故に遭った人か映画出てたこと知ってびっくりしたし感動した
  • さいとうなり
    4.0
    目黒シネマにて 偶然にも1月15日に見れた事に胸が苦しくなった。 こんなに広く、そして細かな視点を着いた映画は素晴らしいですね。ちゃんとスクリーンで観なきゃ見落としてしまうような眼のやりように圧巻です。
  • びりごー
    4.0
    目黒シネマのクリントイーストウッド二本立てで鑑賞。 お仕事ものとしてサレンバーガー機長に誠実さを、ジェフ副機長にユーモアを学びました。 もう一つ付け加えると、1月15日のでき事の作品をこの期間にしっかり特集している目黒シネマは信頼できます。
  • totomyk
    3.3
    わかりやすくて最後まで退屈しない。トムハンクスが思ったよりトムハンクス感出てなくて良かった。 検証会?は、そんなこと誰でも最初からわかるでしょ…と思ってしまった。あと奥さんが自分勝手だなぁと。
  • まんず
    4.6
    12月くらいに映画館で観ました。 とにかくこの映画の構成にやられた印象。 90分をこんな使い方出来るのか!と。 賛否両論あるみたいですけど、かなり面白かった! ただこれも邦題に疑問。邦題とのギャップが凄い。作品は文句無し。
  • tmm
    3.9
    時系列が入れ替わって事故当時のことをやるし、実話が元ってことで結末はわかっているんだけどドキドキした。機械ではわからないこともあるし、ブレない機長かっこよかった。副操縦士の最後の一言、アメリカンで素敵◎ バードストライクって避けられない?し怖い… そしてこういう役がトムハンクスはほんとに合う。
  • くろ
    4.5
    今年1本目。救助のシーンになんだかすごく胸を打たれて、自分でもよくわからない感動を味わった。 切迫した演技はただただ素晴らしい。高品質な映画、スクリーンで観られて良かった。
  • 3.9
    これ、トムハンクスだったんだ。 イーストウッド監督さすがの作品。 最後の副機長の一言と、 エンディングの本人達のシーンは感動。
  • miho
    4.0
    秀逸
  • yuno0508
    4.4
    事実を基に作った作品の中でも一番だったのではと思う! トムハンクスの演技がいいなぁと思ったし、結末を知っているからかなのか、迫ってくるような緊張感があるようなハプニングのあるスリリングな映画ではなくて、機長の気持ちを辿るような落ち着いた映画だったなぁ…
  • キムヒロ
    -
    日本の川幅は広くないので、あのような奇跡は起こらないでしょうが、エンドロールに実在のパイロットや乗客達が登場したのは、とても感動しました!
  • アヤコ
    -
    あんまり覚えてないので評価はあとで。 とりあえず記録。
  • sssssssssss
    3.2
    嫁はなんであんなにオロオロうろたえてんの? でもほんと誇り高い人たちだった。 フェリーの人とか、救助を確認しbながらもう勝手にそっちに向かってる。その勝手さがアメリカ人のいいところ。 イーストウッド監督の映画は話がサクサク進んで気持ちがいいね。 ちなみにwikiによると、 2009年10月1日、サレンバーガー機長は事故を起こした1549便と同じ路線で操縦士として復帰した。機長の復帰フライトでは事故当日と同じスカイルズが副操縦士を務め、事故機の乗客のうち4名が搭乗した。サレンバーガー機長が機内アナウンスで自己紹介を行うと、客室内では拍手と歓声がわき起こった。 とのこと。
  • 塩野キャベツ
    3.7
    淡々と
  • ゆっけ
    4.5
    すごく良い作品。 静かなおもしろさ。 映画の終わりの副機長の最後のひとことがよかった。
  • 3.6
    記録
  • Kei
    -
    アメリカンスナイパーなどと比べて不穏な要素は少なかったので、後味のよい映画だった。
  • MioFujimoto
    4.0
    感動するね
  • 蒼い韋駄天
    4.0
    結末は分かっているのにハラハラさせられるのはさすがイーストウッドという他ないのでは。
  • エイブ
    4.0
    たまたま観ていた本作で副機長役だったアーロン・エッカート主演の『サンキュースモーキング』の公聴会のラストと『ハドソン川の奇跡』公聴会のラストの演出があまりにも似ていて驚いた。 緊張感の溢れる公聴会から部屋を出て相棒と二人きりで心を通わす場面の緩急に、二人の心情と同様に緊張が解ける感覚になった。
  • KoheiOchiai
    -
    クリントイーストウッド監督、トムハンクス主演。 あまり感情を出さない演技が、サリーの誠実さや信頼感を生み出していたように思った。
  • 115
    4.0
    イーストウッドの映画の中では一番好きな映画 知っている事実だから、どこまで面白くできるかな?と思っていたけど、さすがイーストウッドだ。
  • KazumasaKanda
    4.5
    経験と職務を果たす責任感、そのものだね。
  • きなこ
    4.6
    ここ何日かで観た他の映画が吹っ飛ぶくらいよかった。トムハンクス好き。 短い時間の中に実話の凄味が凝縮されていた。リアルで、独特の迫力があって。 救助されたのは155人と機長が聞かされるシーンで涙が。キャプテンラスト、終始冷静であるよう努め、最後まで残って機内を確認し、救助された人数を気にしていた機長の姿と入り混ぜて描かれるその後の日々の葛藤は、胸に迫るものがあった。 空想でビルに突っ込む飛行機、一歩間違えたら大惨事だった怖さ。ゲームでなく生死の問題。乗務員や管制塔の方たちのプライドある姿勢。乗客、家族や仲間の描写。回想があらかた済んだ後に改めて聞く音声記録と、聞き終えた後のふたりの表情。 機長と副操縦士の関係性も素敵で、誇らしい、の一言はほんと泣けた。 副操縦士の公聴会を閉める一言、はらはらしながら観ていたのが、初めてほっとできるシーンだったと思います。 チームワークとかマンパワーのすごさを感じる一作だった。
  • yk
    4.5
    イーストウッドは何でこんなにも実話に強いんだろう。。 超かっこいい トムハンクスは説得力がすごくあるし、結構涙出そうなシーンはたくさんあった 飛行機のシーンとかリアルすぎてしばらく飛行機乗りたくないって思った 笑
  • 大作
    4.0
    登場人物みんなプロ。
  • mame
    3.9
    まぁまぁ面白い。視点がイメージと違った。判断が正しかったのかどうかを問われる。気持ちいい映画。俺も判断は間違わないようにしないといけない。
  • こやまです
    4.4
    2016.10.20 横浜ブルク13 Sc.7 IMAX Digital 迫力があり緊張感溢れる飛行機内のシーンが、駆け引きや人の暖かさにフォーカスしているドラマシーンを引き立てている。 サリーと副機長、サリーと妻、それぞれの会話シーン一つ一つが印象に残っている。 クリント・イーストウッドには、フルサイズIMAXで人間ドラマを描いてほしい。
「ハドソン川の奇跡」
のレビュー(11858件)