秋も深まり、過ごしやすい季節になってきましたね。日本では「食欲の秋」「読書の秋」「芸術の秋」などと呼ばれ、新しいことに挑戦する良い季節。皆さんも映画に音楽に……と趣味にいそしんでいるのではないでしょうか?
“映画も良いけど何か新しい発見がないかなあ”
“スポーツも読書も飽きちゃった!”
そう思っているみなさんにオススメしたいのが今回紹介するのが高校演劇! この時期は地元の公民館などで高校演劇の大会が行われていることが多いのです。
そもそも高校演劇って?
高校演劇という言葉を聞いて思い浮かべることは何でしょうか?
高校生が文化祭などでお芝居をするということを高校演劇と呼ぶのではありません! 高校所属の演劇部が公的な大会や発表会、学外でお芝居をすることを高校演劇と呼びます。
公的な大会とは、大まかに説明すると地区大会、県大会、全国を9つに分けたブロック大会、そして高校演劇の最優秀賞を決める全国大会の4つです。野球でいうと甲子園とそこまでの道のりに近いかもしれません。
さまざまな制約があるものの、高校生たちの青春がぎゅっと詰まった高校演劇。実はプロの俳優だって高校演劇出身だったり、憧れを抱いていたりするんです!
もっと詳しく知りたい! そう思ったみなさんに観ていただきたい作品がこちら! ももクロちゃんこと、ももいろクローバーZのメンバー主演の映画『幕が上がる』です。
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】
これを見れば高校演劇がどういうものか一目瞭然! というわけで、映画『幕が上がる』を通して高校演劇の魅力をお伝えします!
『幕が上がる』あらすじと見どころ
あらすじ
地区予選敗退。
最後の大会を終えた先輩たちに代わり、部長として富士ヶ丘高校の演劇部をまとめることになった高橋さおり(百田夏菜子)は「もっと上を目指したい!」と部員の前で意気込みますが、どうすれば自分たちの芝居が良くなるのか悩む日々が続きます。
そんな時、学校に新任の吉岡先生(黒木華)がやってきます。たまたま見た練習風景をきっかけに演劇部のさおりたちに芝居のアドバイスをします。なんでも学生時代、演劇をしていたみたい。
自分たちでも知らなかった演技のおもしろさ。作品をつくることのやりがい。吉岡先生のおかげでどんどん演劇にのめり込むさおりたち。
そんな時、吉岡先生はさおりたちに言いました。
「私は行きたいです。君たちと、全国に。行こうよ、全国!」
気迫に充ちたその一言で、彼女たちは全国大会を目指すことに。演目は「銀河鉄道の夜」、演出は部長のさおり。演じるのは、看板女優でお姫様キャラの“ユッコ”(玉井詩織)、黙っていれば可愛い“がるる”(高城れに)、一年後輩でしっかり者の“明美ちゃん”(佐々木彩夏)、そして演劇強豪校からのスーパー転校生“中西さん”(有安杏果)らの部員たち。
吉岡先生と、頼りない顧問の溝口(ムロツヨシ)と共に、富士ヶ丘高校演劇部は果たして全国大会まで進めるのでしょうか?!
見どころ
どんな芸術にも通ずることですが、ひとつの作品が出来上がるまでにたくさんの時間を費やします。
『幕が上がる』は演劇部のさおりたちが、どれだけ悩んで苦労して舞台を作り上げていくかを丁寧に描いた作品です。そのため、演劇をやったことがある人はもちろん、やったことがない人でも彼女たちの思いが手に取るようにわかるように作られています。
さらに高校演劇あるあるが随所に散りばめられているので、高校演劇経験者または高校演劇ファンはニヤリとすること間違いなし!
『幕が上がる』原作者の青年団主宰平田オリザ氏の演劇ワークショップを受けたももクロちゃんたちの体当たりの演技も必見です!
制限時間は1時間、脚本は生徒創作か既成の作品が基本
プロの舞台や映画を見ていると大体90分〜2時間くらい、長いもので3時間ほど上演時間がありますよね。結構自由な感じのする上演時間。しかし高校演劇では1時間以内と決まっています。1秒でも過ぎると失格になるというシビアな面も!
この限られた時間の中で何を表現するかが鍵になってきます。脚本は高校生の考えたオリジナルストーリーや、「はりこのトラの穴」など、あらかじめ出来上がった既成の作品を上演するのがほとんどです。
高校生の視点で作られる劇は若々しくその高校独自のカラーが出ます。高校生だから表現できる眩しさ、まっすぐな思いが伝わってくるのではないでしょうか?
『幕が上がる』では「銀河鉄道の夜」という戯曲をもとに作品を作っていきます。
等身大の高校生が登場しない「銀河鉄道の夜」。部長のさおりを始め、部員たちは作品と向き合っていくことで、自分たちは何を表現したいと考えているのか探っていきます。実は、それが高校演劇の醍醐味のひとつなんです!
大道具や衣装、全てが手作り!スタッフも高校生だけでやっている
舞台といえば大掛かりなセットやきらびやかな照明、音響が特徴です。では一体誰が用意をしているのか? はい、高校生たち自身です。
劇場のプロのスタッフのアドバイスも受けたりしますが、基本的には高校生たちが自分たちで考えて作っています。これがきっかけで将来プロの音響家、照明家の道に進む子も!
高校演劇の本番までに最も苦戦するのが、大会前日までに行う仕込みのリハーサル。大会は自分たちの高校だけが上演するわけではありません。なので各校の上演が終わり次第、撤収、準備を行います。仕込みというのは舞台が始まる前の限られた時間の中で舞台装置をセットし、照明、音響のきっかけを合わせて本番までの調整を行うものです。ここでつまずいてしまうと本番までにうまく修正ができなかったりして本番に響きます。
実際に『幕が上がる』では、全国大会で高校生たちが仕込んでいるシーンがあります。ぜひその緊張感を味わってみましょう!
顧問が全国大会への鍵
さて、ここまで高校生たちが頑張っている姿について書きましたが、全国大会へ進む鍵は残念ながら高校生たちの力だけではありません。そう、顧問の先生の力も必須です。
高校演劇の特殊性を挙げるとしたら、勝ち負けがあるということ。高校生たちは嫌でも作品の評価によって次の大会に進めたり、予選を敗退してしまいます。そんな時、彼女たちに的確なアドバイスをしてあげられる身近な存在が顧問の先生です。
実際に全国大会へ進んでいる高校では高校演劇出身の先生や昔演劇をやっていた先生がいます。どれだけ顧問の先生が生徒とコミュニケーションをとって、助けてあげられるかが勝敗の重要なポイントになってきます。
『幕が上がる』では顧問役を女優・黒木華さんが演じています。黒木さん自身、高校演劇出身かつ大学でも演劇を学んでいたので、セリフを超えて高校生たちの気持ちをよくわかっているのではないでしょうか。新卒の演劇部顧問という役どころにぴったりとはまっています。
涙あり笑いあり喧嘩ありな部活生活には、今しかできないものが詰まっている
高校演劇は教育の一環でもあります。どんなに自分たちがボロボロであっても本番を迎えなければなりません。映画と違って一瞬一瞬が生ものでその時のリアルです。そして大人の評価を必ず受けます。
お芝居は決して楽しいものだけではないです。「なんで私じゃなくてあいつが…」や「もうやりたくない」こんな感情だって渦巻きます。それを笑ったり悩んだり、さまざまな感情を通して乗り越えていく様子が、高校演劇をしている高校生たちを魅力的に映すのです。
作品中、部長のさおりがいじめや家庭の悩みを題材にした他校の作品を観て、「私たちの悩みが、本当にここにあるとは感じられない」「等身大のふりをして高校生の問題をわざと深刻に描くような芝居が嫌いみたいだ」というようなセリフを吐くシーンがあります。
高校演劇に限らず、トラウマや社会的問題を取り扱ってオチをつけようとする作品が多い中で、これだけはっきりと自分の意見を言えるのはすごいことです。大人になってしまうと、なんでも理由をつけて問題を解決させようとしてしまいがち。こうやってまっすぐ自分の意見を吐けるのは高校生だからこそではないでしょうか。
大人になってしまった今、あの頃を思い出してみませんか?
『幕が上がる』は高校時代のきらめきや青春がぎゅっと詰まった、あの時(今しか)できなかった宝物を思い出すような作品です。
ぜひ、今年の秋は映画『幕が上がる』を見て高校演劇を応援してみてはいかがでしょうか?
(C)2015 O.H・K/F・T・R・D・K・P
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】
※2022年9月22日時点のVOD配信情報です。