蘇える松田優作!不世出のカリスマ俳優を堪能できる映画10選

2016.11.05
女優・俳優

ヒットガールに蹴られたい

竹島ルイ

1989年の11月6日、一人のカリスマ俳優が40年の生涯を閉じました。その男の名は、松田優作。日本映画界のレジェンドとして今なお語り継がれる存在ですが、今や若い世代ではその遺伝子である松田龍平翔太のほうがポピュラーかもしれません。

手のひらを見つめては「なんじゃこりゃあー!」と絶叫したり((C)太陽にほえろ!)、ベスパを見かけるたびに「Bad City」が脳内再生したり((C)探偵物物語※ドラマ版)、松田優作をリアルタイムで追いかけていた筆者としては、これは極めて嘆かわしい事態であります。

という訳で今回は、一人でも多くの方に松田優作の偉大さに触れて頂きたいという想いから、この不世出のカリスマ俳優を堪能できる映画10本を独断と偏見で厳選しました。

1分で分かる松田優作の超簡単プロフィール

まずは簡単に、松田優作の超簡単プロフィールから。

・1949年、山口県下関市にて誕生。
・1967年、カリフォルニア州モントレーに渡米し、シーサイド高校入学。

松田優作は若い頃にアメリカ留学経験がありました。英語が喋れることは、後年『ブラック・レイン』に出演する伏線になります。

・1971年、劇団「新演劇人クラブ・マールイ」に入団。
・1972年、文学座付属演技研究所十二期生となる。
・1973年、刑事ドラマ『太陽にほえろ!』にジーパン刑事としてレギュラー出演。

松田優作の名前は、このジーパン役で一躍全国に知れ渡ることになります。

・1974年、『竜馬暗殺』で原田芳雄と共演。

原田芳雄は松田優作が私淑していた俳優で、自宅を原田宅の隣に建てるほどでした。それでも飽き足らず、松田優作が「家の垣根をとっぱらいませんか」と提案したら、原田芳雄にやんわり断られたというナイスなエピソードが残っています。

・1976年、暴力事件をおこして逮捕される。
・1978年、『最も危険な遊戯』、『殺人遊戯』などに出演。アクションスターとしての地位を確立。
・1981年、『陽炎座』、『ヨコハマBJブルース』といった文芸作品に出演し、演技派としての名声を高める。
・1986年、自ら監督・主演を務めた『ア・ホーマンス』を発表。
・1988年、『華の乱』で吉永小百合と共演。
・1989年、『ブラック・レイン』に出演。ハリウッドデビューを飾ったものの、膀胱癌のため11月6日に死去。

 

ではここから作品の紹介をしていきましょう!

暴力教室(1976年)

暴力教室

1973年に『太陽にほえろ!』のジーパン刑事として出演し、すでに若手俳優として知られる存在になっていた松田優作ですが、暴力事件をおこして謹慎処分を受ける事態に。本作は謹慎が明けた後に主演した作品ですが、暴力事件直後の映画が『暴力教室』というのは、「この時代、どんだけユルユルやねん!」とツッコミたくなります。

お話は、札付きの不良高校に赴任した教師が、学校を暴力で支配する暴走族と対峙するというもの。暴走族役を、本当の暴走族が演じているというのがすごい! しかもその暴走族はクールスという伝説のグループで、リーダーは舘ひろしだったのです(メンバーには岩城滉一もいました)。

松田優作と舘ひろしが男のプライドをかけて拳で語り合うシーンは、今ではお宝映像といえるでしょう。

人間の証明(1977年)

人間の証明

ジョー山中が、「ママー、ドゥユリメンバー〜」と切々と歌う主題歌があまりにも有名な作品。三船敏郎鶴田浩二ジョージ・ケネディという日米スターが大挙出演するなか、松田優作は心に深い闇を抱えるミステリアスな刑事を熱演しています。

注目していただきたいのは、「新春隠し芸大会」の銅像コントでもおなじみハナ肇。血気盛んな若手刑事・松田優作と、それを柔らかく包み込むベテラン刑事・ハナ肇とのコンビネーションがとにかく素晴らしいの一言!

一匹狼、もしくは弟分がいるという設定が多い松田優作フィルモグラフィーのなかで、先輩格がいるという構図は非常に珍しいパターンといえるでしょう。

最も危険な遊戯(1978年)

最も危険な遊戯

殺し屋・鳴海昌平を主人公とする「遊戯」シリーズの記念すべき第1作。スタントはいっさいなし、オールロケで撮影期間は2週間という超過酷スケジュールでしたが、フタをあけてみると当時の日本映画で最も利益を出した大ヒット映画になりました。

この映画、改めて見返すと主人公の鬼畜っぷりが凄いです。

敵のアジトを聞き出すために、ボスの愛人をマンションから宙づりにするわ、ロシアンルーレットで脅すわ、挙げ句の果てにはレイプするわ、まさにゲスの極み! それでいて松田優作は、独特のユーモア・センスで場を和ませる演技もご披露する訳で、軽く人間不信に陥ります。

シリアス芝居とズッコケ芝居の両極端を、違和感なく演じ分けられる天賦の才。やがてこの演技スタイルは、TV版「探偵物語」に引き継がれることになります。

蘇える金狼(1979年)

蘇る金狼

普段は真面目なサラリーマンだが、その正体は会社乗っ取りを企む一匹狼! 昼と夜で別の顔を持つ男の「復讐と野望の物語」を、壮絶なバイオレンス・タッチで描いたのが『蘇る金狼』です。

原作は大藪春彦の同名小説。これまでに何度か映像化され、主人公・朝倉哲也役は真木蔵人や香取慎吾も演じています。しかし、本家本元・松田優作の自己陶酔感あふれる演技はなんぴとたりとも寄せ付けない壮絶さ。好き嫌いを通り越して、観る者をただただ圧倒します。

能面のような青ざめた表情を浮かべ、キャビン・アテンダントのお姉さんに「ジュピターには何時に着くの?」という意味不明なセリフを投げかける…。

『蘇える金狼』の白眉といえば、テレビで松田優作特集をやる際に必ずというほど引用される、この有名なラストシーンでしょう。このシーンを目撃するだけでも、本作をチェックする価値あり!と断言させていただきます。

野獣死すべし(1980年)

野獣死すべし

役になりきるために10キロ減量し、奥歯を4本抜き、自分の身長(185センチ)が高すぎるため「本気で両足を5センチ切り落とすことを考えた」という逸話を持つ作品がコレ。

単なるハードボイルド・アクションの範疇におさまらず、抽象的で白昼夢的な描写も多いマッド・ムービーです。

いっさい瞬きをせずに、室田日出男にリップヴァンウィンクルの話を語ってきかせるシーンは、怪演というよりも狂演の域。おそくらく松田優作は、『野獣死すべし』で“向こう側”の領域に辿り着いてしまったのではないでしょうか。この作品以降アクション映画と決別し、文芸路線にシフトチェンジすることになります。

陽炎座(1981年)

陽炎座

幽玄の美学をスクリーンに現出させる鬼才・鈴木清順とタッグを組んだ作品。生と死の間を彷徨う劇作家を演じる松田優作は、虚無的なニヒリズムをたたえ、「清順世界」の住人として圧倒的な存在感をみせています。

鈴木清順が半径1センチの円を描いて、「この円からはみ出さないように芝居してください」と松田優作に演技指導した、という逸話はあまりにも有名。“アクションスター”松田優作が“演技派俳優”松田優作に変貌した、ターニングポイントといえる映画です。

家族ゲーム(1983年)

家族ゲーム

家族というコミュニティをシニカルな視座でとらえ、キネマ旬報ベストワン(日本映画部門)に輝くなど、数々の映画賞を席巻した傑作。アクションスターとしてキャリアをスタートさせた松田優作が、コメディーという未知の分野でも異質の才能を発揮した代表作のひとつです。

松田優作が演じるのは、いつも植物図鑑を持ち歩いているような一風変わった家庭教師。飄々としてとらえどころのない雰囲気を漂わせつつ、生徒役の宮川一朗太に暴力をふるうバイオレンス系。凡百の役者ではつとまらない、トンデモな役柄といっていいでしょう。

その後『それから』でもタッグを組んだ森田芳光監督との邂逅によって、松田優作は役者としての引き出しをさらに増やしたのです。

探偵物語(1983年)

探偵物語

同じ松田優作主演で『探偵物語』というタイトルなので、ついついテレビ版と混同されますが、中身はまったく別物です。

赤川次郎の同名小説を原作とした、青春ミステリー。当時ティーンに絶大なる人気を誇っていた薬師丸ひろ子が、身長差30センチ以上ともいわれた松田優作とのキスシーンに挑んだことで大きな話題を呼びました。

過去のフィルモグラフィーで超人的な身体能力を発揮してきた松田優作ですが、この映画では打って変わってサエない中年探偵を好演。いい意味でアクの抜けた自然な佇まいが、いい感じ! 普通の役を普通に演じるという、実は役者にとって最も困難な芝居をサラリと表現しています。

嵐が丘(1988年)

嵐が丘

松竹ヌーヴェルヴァーグの旗手として前衛的な映画を発表してきた吉田喜重監督が、エミリー・ブロンテの『嵐が丘』を日本の鎌倉時代に翻案して作り替えたのが本作。松田優作は、怨念だけで生き永らえてきたかのような怪物・鬼丸を演じています。

歌舞伎のような見栄の張り方、仰々しいオーバー・アクト。巨躯を活かした松田優作の芝居は、他のどの作品よりもダイナミックで、それでいて一抹の哀しさをも表現しています。粗暴さと繊細さが同居する、これぞまさに松田優作の真骨頂。カッと目を見開いた表情が脳裏に焼きつきます。

ブラック・レイン(1989年)

ブラックレイン

リドリー・スコット監督、マイケル・ダグラス高倉健主演のハリウッド大作。松田優作はすでに癌に侵されていたものの、それを周囲にひた隠しにして撮影に臨み、悪役のヤクザ・佐藤を演じ切りました。

佐藤役をめぐっては、小林薫、根津甚八、萩原健一など錚々たるメンバーがオーディションに臨んでいますが、松田優作はマイケル・ダグラスを本気でビビらせるほどの芝居を披露し、その座を勝ち取りました(その様子はDVDの特典映像などで確認することができます)。

鬼気迫る演技はハリウッドを震撼させ、かのロバート・デ・ニーロから「ぜひユーサク・マツダと共演したい」というオファーが舞い込んだと伝えられています。松田優作の強烈な個性がワールドワイドに認知された瞬間といえるでしょう。しかし夢の共演が叶うことはなく、彼は映画公開直後にその生涯を終えました。

松田優作は今なお、現役のスターであり続けている

かつてアルフレッド・ヒッチコックは、「役者は家畜と同じだ」と発言しました。映画とはあくまで映画監督のものであり、俳優はそれに従属する存在でしかないという趣旨なのでしょう。しかし100年以上に及ぶ映画の歴史のなかには、そんなヒエラルキーを飛び越えて俳優自身がその映画を飲み込み、支配してしまうカリスマもいます。我々はそのような俳優をスターと呼ぶのです。

間違いなく松田優作は、日本を代表するスターでした。いや、今でもスターであり続けているといっていいかもしれません。彼の死後もTVコマーシャルや「鬼武者」というアクションゲームに登場し、我々の心をときめかせてくれています。

松田優作は若くして夭折したこともあり、生涯で20本程度しか映画に出演していません。今回ご紹介した作品だけで、フィルモグラフィーのほぼ半分を網羅していることになります。そう! 優作初心者のアナタも、すぐに優作上級者になれるのです。'70年代末から'80年代までを猛スピードで駆け抜けた男の生き様を、ぜひチェックしてみてください。

SOUL RED 松田優作

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  • お茶犬
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    松田優作の怪演。随所に散りばめられたクラシック。緊迫するシーンの連続。 まさに映像と音楽の蜜月。面白かったです。
  • Dan
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    記録
  • 若月勇人
    4.0
    #松田優作#狂気#鬼気迫る#演技#圧巻#かっこよすぎる#名作
  • 春21号
    4.5
    壮絶な青春の終わりをみた。 松田優作さんの鬼気迫る演技が観れる一本です。 独特の少し飄々とした演技が特徴の俳優さんですが、本作はそんな氏の演技の振り幅が物凄い事になっている一本です。 警官の銃を奪いヤクザを殺して金を盗む冒頭から殆ど主人公の素性が分かりません。 銀行から金を盗もうとしている事だけが分かり、後は何を考えているのかさっぱりわかりません。 だから得体が知れなくて気持ちが悪いのですがこういう場合は殆ど後半に正体見たり!な展開が待っていて拍子抜けさせられます。 しかし、本作はそこからまたとんでもないことになるのです。 彼の本性が見えた瞬間、あまりの衝撃的な展開で更に訳が分からなくなってしまいました。どうなっちゃってんだよ…て ここでの松田優作さんの演技は映画史に残る名演技だと思います。はい、 凄まじく陰湿でパワフルな一作でした。 結局あれは彼の妄想だったのか? 29歳という青春の終わりに訪れたいっときの夢だったのか?最後の銃弾で彼の血に塗られた青春は清算されたのか? それともそもそもがリップヴァンウィンクルのように全て夢物語だったのか? 様々な謎が残ります。 とにかくとてつもなく奇妙で他に類をみない映画になっていると思います。 松田優作さんの演技を含めきている服や部屋の内装や仕草など主人公のこだわり抜かれたキャラ造形がバッチリはまっていました。主人公の魅力一発で僕はやられてしまいましたね 後は絵作りの格好良さや あの時代の少しうらびれた東京の街並みなんかも本作の魅力の1つだと思います。 個人的には太陽を盗んだ男と並ぶ東京がカッコいい!映画だと思います。 少々の難解さは否めませんがカルト的な魅力を秘めた一作だと思います。是非
  • KR
    4.3
    主人公・伊達は、警官を刺殺し銃を奪う。 そして違法カジノ店を襲い、 おびえながらも、数人を確実に撃ち殺して 大金を手にして逃げた。 この男は一体何者なのか、 徐々にその素性が明かされていく……。 伊達はその後、非常に静かな生活を送る。 とは言え昔から無口。 東大出身で、 ショパンはじめクラシック音楽好きで、 オーディオマニア。 よく本を読み、外出にも数冊携帯する。 通信社の海外支局を退職し、 フリーランスで翻訳家をしている。 現在29歳ぐらい。 いつもうつろな眼で、 女性と話すときも、旧友と話すときも、 その能面のような表情を一切崩さない。 一度だけ、自宅のスピーカの前で恍惚とした表情を見せる。 信じられるのは文字と音楽だけ。 松田優作は、役作りのために1か月で10kg以上痩せ、 奥歯を4本抜いたという。 原作に、主人公・伊達がガリガリであるという設定はなく、 松田の勝手な判断でしたことらしい。 制作陣からは叱られたようだが、 その決断は成功したように思う。 松田はそのままでは若い美男子だが、 それ以上に病的なオーラが全身から溢れている。 いるだけで不気味で、 どんな時も様子が一定、声も表情も1ミリも動かさないので、 こんな人がいたら逆に目立つだろう、とは思う。 そういうわけで前半は静かな場面が多いが、 その分、後半は一転、鬼気迫る激情を吐露する。 「リップ・ヴァン・ウィンクル」について話すあたりから 一気に表情に変化が現れるのは圧巻で、 心をがっちり掴まれ釘付けになる。 最後には伊達の錯乱じみた本性がむき出しになる。 長回しのシーンは、生の舞台で芝居を観ているような 緊迫感と、リアリティがある。 このラストだけでは、 あの誰もいないコンサートホールの意味や、 あのぼやけた男は本当に柏木だったのか、 そもそもこれは現実なのか、伊達の想像なのか、 など、曖昧なまま。 また、 伊達が本当はどんな経緯でこのような人間になったのかなど、 詳細は観客がそれぞれ推測することになる。 客に考える余地をあたえる映画は面白い。 そのヒントの一つは、二度朗読される詩にもある。 (萩原朔太郎「漂流者の歌」。) その詩に自分を投影し、共感しているのだろう。 また、キャッチコピーである「青春は屍をこえて」とは、 勉学に打ち込んで育った繊細な伊達が、 突如、凄惨な環境に送られたために 激しいショックと絶望が育まれてしまったことを 示すのかとも思う。 伊達がなぜ「最後の晩餐」の絵を部屋に飾っていたのか わけがあるのか気になる。 悪魔が悪魔が、とセリフに出るので、 神を憎き敵として壁に掛けたのだろうか。 それからリップ・ヴァン・ウィンクルのモチーフは なぜ作品に出てくるのか。 急に語り出したり、 おそらくラストのコンサートホールも それを意識している。 海外から戻ってくると、伊達は浦島太郎状態だったのだろうか。 相棒役の鹿賀丈史と、 伊達をつけまわす刑事・室田日出男の演技も流石。 この三人の演技が凄いので あとの色々がどうにかなっている、という感もある。 松田優作の、ほかの作品しか観たことのない方は ぜひ観るべき。 松田への見方が変わることだろう。
「野獣死すべし」
のレビュー(1921件)