『ジャック・リーチャー』シリーズは、なぜ反時代的な映画として作られたのか?

ポップカルチャー系ライター

竹島ルイ

ハリウッド・スターとして、30年以上映画界を牽引し続けているトム・クルーズ。そのネームバリューはテン年代に入っても衰えを知らず、毎年1本のペースでメガヒット作品を世に送り続けています。

そんなキング・オブ・ハリウッドの最新主演作『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』が、2016年11月11日より絶讃公開中!

ジャック・リーチャー

(C)2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

リー・チャイルドの人気小説『ジャック・リーチャー』シリーズの9作目を元に製作された『アウトロー』(2013年)に続き、本作は同シリーズの18作目を映画化。しかし、フィルマークスに投稿された皆さんのレビューを読んでみると、とくにかく目立つのが「地味」という辛辣なお言葉。

トム・クルーズ主演のハリウッド大作に対して、あまりにそぐわないキーワードではありませんか!

しかし『ジャック・リーチャー』は、あえて地味=反時代的な映画として作られた野心的なシリーズなのです。本稿ではその意図を解き明かしていきましょう。

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クリストファー・マッカリーとトム・クルーズの出会いから企画が始動

シリーズ第1作『アウトロー』を監督したのは、クリストファー・マッカリー。彼は脚本家出身で、『ユージュアル・サスペクツ』でアカデミー賞脚本賞を受賞し、新進気鋭のシナリオライターとして一躍注目を浴びました。

ユージュアル・サスペクツ

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しかしその後はヒット作に恵まれず、脚本のリライト作業(しかもノンクレジット!)をして食いつなぐ不遇の日々を過ごします。

転機となったのが、ヒトラー暗殺計画を題材にした『ワルキューレ』。

ワルキューレ

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クリストファー・マッカリーは、脚本兼製作としてこの作品に関わりましたが、残念ながら映画そのものの評価や興行成績は、決して芳しいものではありませんでした。

重要なのは、『ワルキューレ』をきっかけにしてトム・クルーズと出会ったということ。

天下のキング・オブ・ハリウッドに見初められたマッカリーは、その後ノンクレジットで『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』のシナリオ改訂に参加するなど、トム・クルーズ作品のクリエイティブ・ワークを後方支援するようになります。

クリストファー・マッカリーが企画を立ち上げた『アウトロー』にトム・クルーズに参加したのは、自然な成り行きだったのです。

アウトロー

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目指したのは’70年代のクライム・アクション映画

クリストファー・マッカリーが好きな映画監督として挙げているのが、アラン・J・パクラシドニー・ルメットピーター・ボグダノヴィッチの3人。

アラン・J・パクラは『大統領の陰謀』、シドニー・ルメットは『セルピコ』、ピーター・ボクタノヴィッチは『殺人者はライフルを持っている!』という代表作があることでも明らかなように、’70年代のクライム・アクション映画に大きく影響を受けていることが垣間見えます。

大統領の陰謀

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そのエッセンスは、『アウトロー』にも縦横無尽に張り巡らされています。

冒頭の無差別銃撃シーンは『ダーティハリー』を思い起こさせますし、『ワイルド・スピード』系のド派手カーチェイスに背を向けたノロノロ追跡シーンは『ブリット』を彷彿とさせます。黒人刑事がシドニー・ポワチエにそっくりなのは、『夜の大捜査線』へのオマージュでしょう。

夜の大捜査線

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『アウトロー』は’70年代クライム・アクションへのトリビュート映画であり、テン年代の最先端アクション映画へのカウンターとしてつくられているのです。現在のチャカチャカ演出に目が慣れた若い観客に、「地味な映画」として片付けられてしまうのは、トーゼンといえばトーゼンのこと。

懐かしい匂いに狂喜乱舞した一部のオールド・ファンはいたものの、その反時代性はあまりにも蛮勇だったのです。

ジャック・リーチャー、そして父になる

時代錯誤な映画となってしまった前作の反省を活かし、続編『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』は、少しばかり方向性の微調整をはかっています。

端的にいってこの映画は、ズバリ「ジャック・リーチャー、そして父になる」。クライム・アクションの醍醐味は残しつつ、一匹狼のリーチャーが元同僚のターナー少佐(コビー・スマルダーズ)、15歳の少女サマンサと、疑似家族を形成していく人間ドラマが根幹に据えられています。ある意味では家族のロードームービーといっていいかもしれません。

クリストファー・マッカリーに代わって本作の監督を手がけているのは、エドワード・ズウィック。トム・クルーズとは、2003年に『ラスト サムライ』でタッグを組んでいる盟友です。

ラスト サムライ

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ソリッドでクールなクライム・アクションがクリストファー・マッカリーのお家芸とするなら、エドワード・ズウィックは叙情性溢れる人間ドラマが持ち味。本作がどのような映画を志向しているのか、監督の人選からも伺えます。

とはいえ、トム・クルーズの華麗なフィルモグラフィーを見渡したときに、本作も地味すぎる作品であることには変わりありません。『ボーン・アイデンティティー』シリーズのようなスケールの大きい国際的謀略も、『007』シリーズのような絶世の美女とのラブ・ロマンスも、『ミッション:インポッシブル』のようなハイテク機器もナシ。ラストは敵のボスと拳でただただ殴りあうというオールド・ファッションぶりです。

前作『アウトロー』で、ウィリアム・ワイラー監督の『大いなる西部』がチラッと流れるシーンがありましたが、まさに「殴り合い」とは西部劇時代から受け継がれてきた伝統。’70年代クライム・アクションが西部劇から端を発していることを考えれば、クライマックスの地味さもまた必然的帰結なのです。

大いなる西部

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トム・クルーズ主演のアンチ・トム・クルーズ映画

そもそもなぜ、常に時代をリードしてきたトム・クルーズが、こんな時代錯誤なシリーズに主演することを決めたのでしょうか?

憶測ですが、『ミッション・インポッシブル』と対極を成すような、もうひとつの代表作シリーズをつくりたかったからではないでしょうか。最先端のガジェットを武器にチームプレイでミッションを完遂する『ミッション・インポッシブル』シリーズと、己の拳のみで敵をバッタバッタを倒すアウトローを描いた『ジャック・リーチャー』シリーズは極めて好対照であり、陰陽のような位置を占めています。

ミッション:インポッシブル

『ジャック・リーチャー』シリーズはアンチ『ミッション・インポッシブル』であり、トム・クルーズが自らたちあげたアンチ・トム・クルーズ映画といえるでしょう。

時代の寵児であるトム・クルーズの反時代的精神を確認するためだけでも、『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』を映画館でチェックする価値があると断言させていただきます!

 

※2021年7月19日時点のVOD配信情報です。

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  • うどん
    3.4
    前作よりストーリーに捻りがなく物足りなさを感じた。スケール感が小さいというか。 ターナーがカッコいいのはいいけど、代わりにリーチャーの見せ場が減ってるように感じた サマンサの母がリーチャーに養育費の支払い請求できたのは何で?結局知り合いですらない。物語の根本的な部分が雑なのが気になる
  • SEIJISAN
    3.5
    シリーズ第2作目。前作よりもアクション多め。今度は「もしかしたら自分の娘かもしれない少女」も絡んできて更に事態は複雑に...。個人的には前作よりも圧倒的に好み。今回リーチャーが助ける女性将官の方が、格好良くて美しい。傍から見ると「家族」に見える。そこで起こる「お父さんあるある」で笑った。どこのお父さん(本作の場合は父親か未確定ですが)も家族の中での扱いって同じなんだな。続く気満々の終わり方なのに、原作者の意向で恐らく「トム・クルーズ=ジャック・リーチャー」はあもう不可能なんだろな。残念!
  • sgr
    3.5
    元軍人のジャックリーチャーが主人公の話。ターナー大佐を尋ねていくと逮捕されており、陰謀に巻き込まれて行く話。
  • reki
    3.9
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  • お昼寝遠征隊
    3.4
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ジャック・リーチャー NEVER GO BACK
のレビュー(30629件)