《高齢化問題》の解決の糸口になる傑作誕生!?『幸せなひとりぼっち』監督に迫る!

幸せなひとりぼっち

近年スウェーデン映画がにわかに注目を集めています。ロイ・アンダーソン監督の『さよなら、人類』や世界的に大ヒットとなった『100歳の華麗なる冒険』など、ブラックなユーモアと人間を暖かい眼差しで見つめた秀作が日本でも公開されるようになってきました。

12月17日から公開される『幸せなひとりぼっち』もまた、北欧特有のブラックユーモアに人情味あふれる人間ドラマが合わさったとても心地良い作品です。

スウェーデン本国では5週連続1位、国内歴代3位となる興行成績を叩き出した本作。監督のハンネス・ホルムさんにその魅力を語っていただきました。

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ベストセラー原作を映画化するプレッシャー

−すごく感動しました。普遍的なテーマである孤独を暖かい眼差しで描いていて、気持ちよく見られる作品でした。スウェーデンでは記録的な大ヒットとなりましたが、本作の何が人々の共感を呼んだと監督はお考えですか。

ハンネス・ホルム(以下ホルム):やはりベストセラーですから、どんな風に映画化されているのか気になって見に行った人も大勢いるでしょうね。原作ファンの方にも、またファンでない方にも驚きを与える映画にできたと思います。

ハンネス・ホルム2

一見頑固なおじさんの話なんですけど、ラブストーリーもありますしね。最近クラシカルなラブストーリーはあまりありませんから、そういうのがスクリーンで見られるのが、貴重な機会だったのではないかと思います。ハリウッドでは、ヒットはタイミングが全てなんて言われますけども、この映画もタイミングがよかったのだと思います。

幸せなひとりぼっち1

−大ヒット小説が原作だというお話が出ましたが、これだけ有名な小説を映画にすることにプレッシャーはなかったですか。

ホルム:映画監督として、ベストセラーの本を映画化する仕事を選ぶのは賢明ではないですね。(笑) 当然ファンの方はイメージが出来上がっているので、少しでも違うと厳しく批判されます。今回初めて原作ものに挑戦したのですが、原作を読んだとき、自分の両親のことを思い浮かべながら、自らのストーリーとして消化できたので、原作の映画化に挑戦しました。

実は、主人公のオーヴェを誰が演じるのか国内でも大きな議論になりました。ロルフ・ラスゴードに決まったとき、怒りの声も上がったんです。ロルフは元々演技派の実力派として知られていて、コメディタッチの原作に、なんでシリアスな実力派を起用するんだというような。でも、結果としてはすごく上手くいきました。ロルフもこの映画で多くの賞を貰いましたし、公開が始まってからは怒りの声もなくなりました。

−ロルフ・ラスゴードさんは、オーヴェの年齢の設定と同い年だけど、撮影時には老けメイクを施したそうですね。

ホルム:これは難しい判断でした。原作の中で59歳と書くのは簡単ですが、映像にするにはそう簡単にはいきません。オーヴェの歩んできた人生を考えると、どんな顔をした59歳なのかを考えなくてはなりません。人生の苦労が顔に刻まれているような、そういうルックスを自分は想像していたので、わざと実際の59歳よりも多少老けるようなメイクを施しました。

幸せなひとりぼっち2

高齢化社会問題の解決の糸口は、若い世代とシニア世代との交流にある?

−日本でも、高齢化社会により、老人の孤独は重要な社会問題なのですが、やはりスウェーデンも、オーヴェのような孤独な老人は増えているのですか。

ホルム:日本とスウェーデンは似ている点がいくつかあると思います。謙虚であるところや、効率性を重んじる点など。ただ効率性を重んじるのが必ずしも良いとは限りません。高齢化の問題でいうと、効率化を考えれば、「老人はみんな老人ホームに入れる」という極端なことも考えられます。でもシニア世代は人生経験がすごく豊富ですから、もっと若い世代と触れ合うべきだと思います

以前インドで撮影する機会があったのですが、インドは社会福祉が充実している社会ではありませんし、子供が強制労働を強いられている問題もあります。しかし、老人と触れ合っている子供たちをたくさん見かけたんです。

そうした環境で、逸話とかお伽話とかを老人たちが子供たちに伝えていくような文化が、きちんと息づいているところがあって、ある意味、これが高齢化社会の未来における解決策ではないかと思いました。

ハンネス・ホルム1

そうやって触れ合うことで老人は子供たちから元気をもらえます。もし僕がスウェーデンの首相になったら、老人ホームと幼稚園を一緒にして触れ合う機会を増やそうと思いますね。人間の寿命はどんどん延びていきます。高齢化社会についてはもっとたくさんの議論が必要だと思います。

ラブストーリーと社会問題がうまくマッチした作品に

−オーヴェと仲良くなる女性、パルヴァネはイランからの移民という設定ですね。スウェーデン社会で《移民》はとても大きな存在だと思いますが、頑固で古臭い老人と、イスラムからの移民の女性の交流という点に、監督の意図はありますか。

ホルム:若い頃はよくテレビで仕事をしていて、政治的なものも扱っていました。ときにアメリカの政治家の風刺芸なども。でも年をとっていくにつれて、人間関係の方に興味を持ち始め、自分の作品にもそうした要素が増えていきました。

幸せなひとりぼっち3

何か社会に訴えるために一番効果的なのは、納得できるストーリー展開にそれらを落とし込むことですね。頑固で意地の悪いおじさんがいろいろ学んで変わっていく物語は、今までにもたくさんありました。「スクルージ・マクダック」や『アバウト・シュミット』、『グラン・トリノ』もそういう要素がありますね。

そういう意味ではすごくありふれた作品なのですが、ラブストーリーがそこに上手く重なりあい、なおかつ、社会的な問題も見え隠れするというのがとても効果的だったのではと思います。

トトロのような世代の架け橋となれる映画を

−監督は影響を受けた映画監督はいらっしゃいますか。

ホルム:最近は実はあまり映画を見ていないんです。元々シネフィルといえるほど本数は見ていないのですが。人を観察するのが好きで、よく妻にも怒られるのですが、じっと人を見る癖があるんです。日本の映画で影響を受けたのは若い時に観た黒澤明監督の作品ですね。彼の作品は、ユーモアと悲劇がうまいことバランスが取れている点が素晴らしいです。

最近は『となりのトトロ』を子供と一緒に観ています。子供と一緒に楽しめる、あのような作品は希少価値があり素晴らしいと思います。私の作品も、ああいう世代の橋渡しになるような映画にできればと思っています。

−最後にこれからこの映画をご覧になる日本の観客にメッセージをお願いします。

ホルム:外国映画を普段観ない人にも是非ご覧になってほしいと思います。きっとすごく居心地の良い映画になっているはずです。

本作『幸せなひとりぼっち』は、12月17日(土)より新宿シネマカリテ&ヒューマントラストシネマ渋谷他 順次公開です。

(C)Tre Vänner Produktion AB. All rights reserved.

(取材・文:杉本穂高、撮影:柏木雄介)

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  • あんちゃんどらちゃん
    3
    悪態つきまくりの嫌味なお爺さん。けど、いざとなったら人助けするほんとは優しい人間。彼の住む団地(中流部落?)は良くも悪くも互いに関わりを持つある意味良いところ。 映画の題名が悪いから、あまり観る気がしなく、少し退屈したが、まあまあというところかな。
  • シグ
    3.8
    記録用
  • sumicco
    3.8
    そっちに行く前に、なのか。 それとも こっちに来る前に、なのか。 愛妻ソーニャを亡くし 後を追う決断をした偏屈じいさん。 それなのに邪魔ばかり入り… 最初から亡くなっているのに ずっと愛妻の存在を感じさせる 不思議な映画でした。 病院に勤めていると こういうおじいさん会いますけども(笑) とにかくひねくれていて これでもか!ってくらい 嫌われる術に長けたお方です。 ただ どんな人であっても 心を開いたら "人" なんだなあ。 オーヴェには 愛された記憶も愛した記憶もあって それがあったからこそ 固く閉ざした心にも パルヴァネの目には 素敵な隙が見えたのかも。 後半だけでなく 涙腺がちょいちょい刺激される物語でした。 ティッシュ2枚は 確実にヒタヒタ(笑)
  • rinrin
    4
    いつになっても人間は1人で生きているのではなく必ず誰かに支えられながら生きているというのを教えてくれます。主人公は日本でいうめんどくさいおじさんクレーマーという感じの性格です。接客業をしているひとなら最初少し嫌な気分になりますが、彼のような人が心変わっていく様子がとても見応えがあります。そして周りの人達の暖かさに心温まることでしょう。
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幸せなひとりぼっち
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