2009年、『マイ・マザー』で映画脚本家、監督としてデビュー。弱冠19歳にしてカンヌ国際映画祭で上映、20カ国で買い付けされるという鮮烈なデビューから8年。
今やカンヌ、ベルリン、ヴェネチアの世界三大映画祭では常連となり、“若き天才”、“美しきカリスマ”と映画界の誉れをほしいままにするグザヴィエ・ドラン。
デビューから10年を待たずして、彼のこれまでの作品と彼自身を紐解くドキュメンタリー作品、『バウンド・トゥ・インポッシブル』が11月11日に公開されます。
これまでの彼の作品に出演したヴァンサン・カッセル、マリオン・コティヤール、ナタリー・バイなどの名俳優たちや、カンヌ国際映画祭の総代表、ティエリー・フレモーを含む業界人、そしてグザヴィエ・ドラン自身が作品への想いを語り、彼の魅力を余すことなく詰め込んだ至極のドキュメンタリーとなっています。
本記事では『バウンド・トゥ・インポッシブル』の公開にあわせ、彼の過去作品をこれから観ようと思っている方へ、観賞時におさえておくとグザヴィエ・ドランの作品をさらに楽しむきかっけになるポイントを、いくつかご紹介します!
ファッションや小物、背景、色の仕掛けを存分に楽しむ
グザヴィエ・ドラン作品に共通して楽しめる要素として、数えきれないほどの画面の中のこだわり抜かれた色使いや小物使いによる仕掛けがあります。
例えば2016年製作『たかが世界の終わり』では、現在のシーンはブルーやセピアが強くあまりカラフルな色彩を感じられないのに対し、過去の回想シーンは色とりどりで表現されており、その対比からも主人公の心の様子が伝わってきます。
初期の作品、『マイ・マザー』(2009年)や『胸騒ぎの恋人』(2010年)も色の効果が意図的に使われており、画面の中に印象的に配置されていたり、何度も登場したりする色に注目することで登場人物それぞれの性格や感情、台詞からは分からない心の変化に気がつくかもしれません。
『わたしはロランス』では、劇中で主人公・ロランスの指先につけられたクリップ、空から落ちてくるカラフルな洗濯物や部屋の中で滝のように流れ落ちる水のシーンなど、次々と映し出されるカラフルで幻想的なイメージのなかで使われる小道具やファッションからも、登場人物たちの心の声を感じられます。
独創的な画角の変化から伝わる登場人物の心の動きを楽しむ
2014年製作『Mommy/マミー』で話題となった、スクリーンの画面アスペクト比、縦:横が1:1。真四角の画角。
最近はインスタグラムによって、見慣れた比率となっていますが、映画作品のスタンダードサイズ1:1.33、ビスタサイズ1:1.85、スコープサイズ1:2.35などと比べても極端に画面自体が狭い印象です。
画面の中に映る情報の量が少なくなるので、人物たちに没入する感覚を味わえます。
『Mommy/マミー』や、『トム・アット・ザ・ファーム』ではストーリーの中で画角が変化することによって、主人公の心情やスクリーン内の世界の圧倒的な空気感の変化が表現されおり、観賞する私たちに大きな衝撃と作品への更なる没入感を与えます。
共通するテーマのなかで、年月と共に移り変わる監督の価値観や視点を楽しむ
グザヴィエ・ドランの映画に何度も描かれる共通のテーマとして、母と息子をメインとした家族の関係、トランスジェンダーの恋や友情などがあります。
そしてどの作品においても描かれてきた【愛するが故の心の葛藤や愛ゆえのすれ違い】。
【人間と人間が生み出す愛の形】はドランの作品には描かせないテーマとなっています。
過去作品のなかには原作ものもありますが、映画化にあたってはドラン自身の体験や価値観が色濃く反映されており、彼が日々感じる様々な想いが込められて生み出されています。
10代の若者が抱える様々な葛藤を描いた初期作品から、30代に近づいたドランの作品は、共通するテーマを扱いながらも、時間の流れの中で変化した彼の視点を感じたり、作品を通して彼自身の心境や価値観の変化を、追体験する気持ちで観賞しても面白いかもしれません。
今後の新作、そして更なる進化が楽しみな、“映画界の若き天才、グザヴィエ・ドラン”。
彼自身に迫るドキュメンタリー『バウンド・トゥ・インポッシブル』と併せて、是非上記以外にも、あなたならではの視点でドラン作品を楽しんでみてくださいね。
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