TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社グループが主催する、映像クリエイターと作品企画の発掘プログラム「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM」(以下、TCP)。中江和仁監督『嘘を愛する女』を輩出したことでも知られる本プログラムで、2017年、全268の企画を勝ち抜き、準グランプリ・GREEN FUNDING賞を受賞した『ザ・ドールハウス・ファミリー(仮)』片岡翔さんにお話を伺いました。
――応募されたきっかけは何だったんでしょうか?
若手がこうした機会をもらえることはなかなかありません。でも、TCPは制作に直結していますから、作り手にとっては一番ありがたいチャンスだと思っていました。日本の場合は、マンガや小説に面白い作品が多いので、昨今オリジナルの企画が通らない風潮もあります。けれど、映画の多様性としては、「観たことのないものを観てほしい」という思いが強いので、オリジナルで作れる機会だと応募しました。
――『ザ・ドールハウス・ファミリー(仮)』の着想はどこから?
僕には人形がすごく身近なものとしてあるんです。父親が人形屋をやっていて、フランス人形、日本人形、現代作家のアート的な人形などを展示・販売しています。僕も、そこで働きながら自主映画を作っていました。僕自身もぬいぐるみがすごく好きで。一番最初、小説を書くときも、自分が本当に好きなものを書きたいと思って、ぬいぐるみと男の子の心が温まる話を書いたんです。ここ数年、仕事としても、心が温まる系の話をずっと書き続けていたので、オリジナルをやるのであれば、ここらで少し違う系統に挑戦したいと思ったんです。
――温かさとは真逆の、ややホラーテイストの話にも感じています。
おっしゃる通り、真逆なものをやってみようと思いました。ぬいぐるみや人形が喋るんだけれど、全く心が温まらない話にしたいと。実は、一般の方の9割以上は人形を見ると怖がるんです。僕自身は小さい頃から傍にいたからか、不気味さとかは感じていなくて。そこが面白いなあと思ったんです。顔があるものに心を感じてしまうというか、魂を感じてしまうというか。だからこそ恐怖を感じてしまうと思うんですけれど。そういう類の映画は今までいろいろあると思うんですけれど、もう少し自分なりに深く掘り下げたものができないかと思い、企画しました。
――片岡さんならではのオリジナリティを出すため、どういうところにこだわりました?
ただ怖い映画にしたくないことが、まずありました。不気味ですけれども可愛い一面もあったり、感情移入できたり、すごく可哀想に思えたりとか。単純に、ビジュアルとして、人形をホラーの対象として扱う作品とかも様々ありますが、人形を雑に扱っていることが往々にしてあると感じています。僕はもうちょっとこだわって、いわば俳優と同じような扱いで、人形やぬいぐるみを撮りたい思いもあります。
――ゆくゆく、「この作品がこうなったらいいな」という思いはありますか?
昔、僕が子供の頃に好きだったのが、TSUTAYAの棚の「スタッフレコメンド」なんです。そこには、大ヒットした作品ではなく、目立たない名作がたくさん並んでいました。レコメンドされた作品を観て育った環境もあったので、僕の作品も、そういうところにずっと、ひっそりいるような、残れるような映画にしたい。もちろんヒットできればという気持ちもありますけど、一過性ではなく、何年後かにも手に取ってもらえるような映画にしたいです。
――これまで作品をつくる中で、特に影響を受けた方はいらっしゃいますか?
影響かは分からないですけれど、宮崎駿さんが大好きで、もう心酔して育ってきたので、宮崎さんの作品全般です。実写映画ではウェス・アンダーソン監督が一番好きです。目指したいという思いとは少し違いますが、素敵な世界観に近づけたらいいなと思っています。
――最後になりますが、正直「グランプリじゃないのかよ!悔しい!」的な思いは1ミリくらいありますか?
(笑)。本当に自信がなかったんです。…けど、「準グランプリ」で名前を呼ばれたときに、実は、ちょっとだけ悔しかったんですよね。そういう悔しさが出てきたことは、自分の中では大きいことで、「ああ、いいことだな」と後からちょっと思えました。けどチャンスはチャンスなので、(グランプリの)針生さんに負けないくらい頑張りたいです。
(インタビュー・文:赤山恭子、写真:編集部)
■TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM 公式サイト
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