大人気歴史アクションマンガの実写化で、2019年に大ヒットを記録した『キングダム』の待望の続編が公開されました。今回はついに信が初陣に挑み、戦場を駆け抜けるほか、新キャラで最強の女剣士・羌瘣(きょうかい)も登場、さらに王宮でも様々な陰謀が動き出します。
本記事では、同作の見どころをネタバレありで解説! また気になる次回作についても徹底予想を行います。
『キングダム2 遥かなる大地へ』(2022)あらすじ
王弟反乱事件を鎮圧し、王位について中華統一を目指していた秦王・嬴政(えいせい)は、ある夜王宮内に侵入した刺客に命を狙われます。駆けつけた信や河了貂(かりょうてん)らのおかげで刺客を退け事なきを得たものの、嬴政の暗殺を企てた者が王宮内にいることは確かでした。まだ不安の残るなか、さらに隣接する敵国・魏が国境を越えて侵攻を開始したため、信はついに歩兵として初陣に挑むこととなります。
歩兵たちは「伍」という5人一組の隊を組み、信は同郷の尾平(びへい)と尾到(びとう)の兄弟、頼りなげながらこれまで誰も死なせていない経験豊富な伍長・澤圭(たくけい)、そして顔のほとんどを覆面で覆った謎の人物・羌瘣とともに戦場に参戦。
魏の敵将・呉慶(ごけい)は軍略に優れた天才で、魏が誇る強力な戦車隊も駆使して前線の秦の歩兵たちを蹂躙します。秦将の麃公(ひょうこう)は苦戦の報を受けても、不敵に笑うだけで待機を指示。圧倒的不利な状況のなか、信は磨いた剣技で孤軍奮闘し、同じ伍や周りの仲間たちもなんとか工夫凝らして生き残ります。
信たちの活躍を見た秦の千人将・縛虎申(ばくこしん)は、丘に駆けつけ、信たちとさらなる無謀な突撃作戦を決行。前日からの秦の圧倒的不利な状況から、第四軍の信たちがわずかな巻き返しを見せる中、麃公はその「火種」を見出し、ついに動き出します。
戦が大きく動き、大炎が巻き起こり始める中、さらに戦場に意外なあの人物も現れて……。
※以下、ネタバレを含みます。
『キングダム2 遥かなる大地へ』見どころ
原泰久先生も大きく関わった脚本の見事さ
1作目『キングダム』を見ていて一番感心したことは、原作の「王都奪還編」を映画化して2時間の映画の尺にまとめているのに、原作から削られた部分がそんなになくキレイに再現されていたことです。
実写スタッフの監督や脚本家の力量はもちろんですが、それ以上に原作『キングダム』の序盤が映画向きにきれいにまとまっていたことがよくわかる作品でした。実写版『キングダム』は2作ともに、原作者の原泰久先生が脚本に大きく関わっているのも重要です。
そもそも1作目が当たったら続編を作りたいと話していた佐藤信介監督やプロデューサーの松橋真三氏は、1作目の大ヒットを受けて続編決定後、原先生にすぐに「蛇甘平原の信の初陣を描きたい」と打診したそうです。
それを受けて、もう一人脚本を担当した黒岩勉さん(『LIAR GAME』や『ストロベリーナイト』『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』を手掛けたヒットメーカーです)は、「原作からなるべく変えないこと」を意識した一方、原先生は「蛇甘平原の戦いだけだとドラマパートが少ない」と、大胆な改変を加えました。
最大の改変ポイントは、まず、信にとっては1日だけであっという間に展開していった蛇甘平原の戦いを2日に分け、信と羌瘣を二人きりで会話させ、羌瘣の辛すぎる過去を信が直接聞いていることでしょう。羌瘣は伝説の暗殺一族「蚩尤」の出身であり、ひとりしか選ばれない「蚩尤」後継者を選ぶための殺し合いの儀式で最愛の姉・羌象(きょうしょう)を失い、自分は姉に眠らされて戦いの場にすらいれなかったという悲劇を体験していました。
原作では河了貂が羌瘣に話を聞き、貂が信に事情を話す(具体的なシーンなし)という流れでしたが、今回の夜の過去の告白シーンがあることで、信と羌瘣の絆の深まりや、その後の羌瘣の命がけの行動にも説得力が出ています。
原作では、羌瘣は蛇甘平原の戦い終了時点ではまだ覆面もほとんど取っておらず、剣の腕前こそ披露するもののまだまだ信や周りの兵士たちにも謎多き存在でした。
しかし、今回は羌瘣が自分の最愛の人を亡くす経験を一度真に話しているため、翌日の戦いの絶体絶命の局面でも、尾平を助け鼓舞する羌瘣が「だってお前はまだ生きてるじゃないか!」と叫ぶオリジナルの胸アツ展開も生まれています。この展開があるおかげで、羌瘣だけでなく尾平も原作よりも早めに成長することができ、本作内での活躍や、おそらく今後描かれるであろう続編での名場面にも説得力が生まれたのではないでしょうか。
また、今回は羌瘣が女であることが信たちに割とすぐばれていましたが、原作ほど長く羌瘣の正体を隠し続けるのも実写映画としては無理がありますし(正直原作を読んでいても「なんでみんな気づかないの?」と思っていました)、早めに明かしてしまうのもアリかと思います。
原先生もヤングジャンプ本誌に掲載されたインタビューで「今の自分だったら、映画の方のドラマを漫画でも描くんじゃないかな」と語るほど、本人にとっても10数年ぶりに再度物語に向き合って生まれた新しいドラマにグッと来た方も多いのではないでしょうか。
原作と実写どちらが優れているかはそれぞれ意見があるでしょうが、映画という時間に制限がある媒体に物語を落とし込むためのまとめ方としては見事です。
それでいて、信が「戦全体をコントロールする『将軍』とはどんな存在か」を学んでいく全体的な戦の流れや、縛虎申の最期、王騎将軍の解説などの名場面はしっかり再現されており、リスペクトを払いつつ映画として最適解の形に落とし込むことができている見事な脚本だったと思います。
壁の活躍が減らされている点や、原作の名場面である「麃公vs呉慶」の一騎討ちが端折られているのは残念ではありますが、致し方ない部分かもしれません。麃公vs呉慶は原作ほどの互いの信念とカリスマ性あふれる激闘には敵わないと判断したのかもしれませんが、それであればあのような形で手短かつスパッと終わらせるのも一種の手ではあると思います。
脇まで見事な再現度のキャスティング
『キングダム2 遥かなる大地へ』は、前作に続いて華々しい豪華キャストが集結し、見事な再現を見せています。
信役の山﨑賢人さんは、さらなるトレーニングを積んで戦いの動きに明らかに成長が見て取れ、それでいて今回のいくさでも先輩の武将たち(先輩俳優たち)からさまざまなことを学ぶ構図となっており、色々と役柄にシンクロしています。
また、かねてよりアクション女優としての実力を発揮していた清野菜名さんは、ワイヤーアクションも取り入れつつ、羌瘣のバケモノじみた強さと背景に背負う悲しみを見事表現しており、原作よりも早めにキャラ付けがされる難役を見事体現していたと思います。
その他、縛虎申役の渋川清彦さんは、これまで渋いバイプレイヤーとしてどちらかというとミニシアター系で活躍されていましたが、今回はシネコンの大スクリーンで大暴れする猛将として見事な存在感を発揮しており、散り際の熱演込みで今回のMVPと言ってもいいかもしれません。顔もどんどん似ているように見えてきました。
その他、原作よりも最初は頼り気ないのに、原作より成長する尾平役の岡山天音さん、弟ながら冷静で観察眼もある尾到役の三浦貴大さん、弱そうで苦労人感もありつつ確かな経験を感じさせる澤圭役の濱津隆之さん、敵の智将・宮元役の高橋努さんなど、脇の渋い面々が実力派ぞろいでしっかりと締まっていたからこそ、アクションや戦の展開にも説得力が生まれていたと思います。
また、いちばんイメージから遠くて正直不安だった麃公役の豊川悦司さんは、体躯や笑い方など予想以上に「麃公だ!」と思わせてくれる存在感があり、まさかのはまり役でした。原作とは違い、ちょっと色気ある雰囲気でしたが、これもまた魅力と言えるでしょう。
そんなキャストの熱演に合わせての、CGや実際に作られた魏の戦車でのアクションなども、大画面で見ても何の違和感もなくド派手に楽しめるクオリティです。前作の大ヒットがしっかり作品にフィードバックしてスケール感も細かいディティールのクオリティも上がっているのは、一ファンとして嬉しい限りでした。
『キングダム3』の続編はどうなる?李牧や龐煖のキャストを勝手に予想!
メインの信役の山﨑賢人さん、嬴政役の吉沢亮さんが現在28歳でその他のキャストも原作よりもそこそこ年上のため、実写版シリーズは原作よりも早めに終わらせる可能性は高いでしょう。その場合、どこで話を終わらせるかのがきれいかと考えると、やはり信と嬴政のふたりが将軍と王として自立し成長し、「これから本格的に中華統一に乗り出すぞ!」となる所謂「俺たちの戦いはこれからだ」エンドが理想的ではないでしょうか。
そもそも嬴政が中華統一を成し遂げ、始皇帝と呼ばれること自体は史実として超有名でわかっていることなので、原作はともかく実写で最後まで描く必要はないと思います。
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そして、もし4作目まで描くとしたら信の永遠の師匠ともいうべき存在、王騎将軍の死で矛を受け継ぎ、大将軍への夢をより本格的に目指すようになるまでの物語と、嬴政が秦の大王となる「加冠の儀」までに最大の敵、丞相・呂不韋の陣営を退け、王として一本立ちするまでの物語を混ぜて描くのではないでしょうか。『キングダム2 遥かなる大地へ』のラストで、呂不韋役・佐藤浩市さん、昌平君役・玉木宏さん、蒙武役・平山祐介さんという豪華布陣で呂陣営が描かれ、さらにエンドロール後に『キングダム3』の予告が流れて信たちが原作11~16巻で戦う趙国三大天のふたり、李牧(りぼく)と龐煖(ほうけん)らしき姿も見えたので、おそらくこの予想はほぼ確実だと思います。
ここからはあり得そうなラインで、のちに登場するであろう重要キャストを予想(&願望と妄想)をしておきます。
まず、戦場で信や王騎たちと対峙する趙国の面々ですが、まず趙国側の主役と言ってもいい頭脳派の強敵・李牧は、作中屈指のイケメンでもあるので、知的なイケメンキャストが配役されるでしょう。だいたい30代くらいの見た目なので、実写化作品での実績も多い佐藤健さん、小栗旬さん、松坂桃李さんあたりの俳優がハマると思います。またネットでは、『鋼の錬金術師』のマスタング大佐役も記憶に新しいディーンフジオカさんを推す声も多数ありました。
個人的には時代劇と長髪がハマることがすでに証明されていて、謎解きゲームも得意で頭脳派のイメージもばっちりある、佐藤健さんの李牧が見たいところです。
そして、いちばん実写化が難しそうな武神・龐煖(武神、もしくはバケモノとしか言いようがない存在なので、ぜひ原作を読んでください)を誰が演じるのかが肝心です。一度引退してた王騎が戦場に舞い戻る理由となる因縁の相手で、彼の禍々しさと圧倒的強さを再現できないと、原作屈指の盛り上がりを見せる「馬陽の戦い」自体が成り立ちません。
ちなみに2016年の「キングダム10周年記念特別実写動画」では、アメリカ出身の巨漢のイケメン俳優・五城健児さん(現在32歳)が龐煖を演じていましたが、王騎役が大沢たかおさん(現在54歳)と考えると、もう少し年齢が近い人がキャスティングされるのではないでしょうか。
ネームバリューと肉体、アクションの説得力を考えると、ネットでも多くの人が支持しているのが、これまでに驚異の肉体改造役作りで観客の度肝を抜いてきた鈴木亮平さんです。『孤狼の血 LEVEL2』の強烈な悪役も記憶に新しい鈴木さんが、鋭い眼光と186センチの体躯で龐煖を演じてくれれば、対峙した時のあの絶望感も再現できるのではないでしょうか。
また、佐藤信介監督と『図書館戦争』シリーズでタッグを組んでいた岡田准一さんも、『ザ・ファブル』での圧巻のスタントや、『散り椿』『燃えよ剣』などでの剣戟も見せており、体格はともかく龐煖を演じるだけの身体能力と「圧」のある俳優だと思います。ここで敢えて「悪役」に岡田さんというのも面白いかもしれません。
個人的には1作目『キングダム』で、ラスボスに当たる元将軍・左慈(さじ)を演じていた、ウェイブマスターこと日本のトップアクション俳優のひとり・坂口拓さんが、ビジュアル含め龐煖にピッタリ(長髪も似合います)だと思うのですが、同じ俳優を同一シリーズ内で使い回すというのは、最近だと『ザ・レイド』シリーズのヤヤン・ルヒアンや、『銀魂』シリーズの佐藤二朗さんくらいしか記憶にないので難しいですかね。
また、かつて龐煖に殺された王騎将軍の「大切な人」である摎(きょう・秦の最強の六大将軍のひとりで、実は女性)も、おそらく回想で登場すると思われます。こちらも美しく可憐で、なおかつ強さに説得力が必要な役なので、難しい配役となるでしょう。
美人かつ強そうな顔となると北川景子さんや、またアクションができることも周知されている土屋太鳳さんや山本舞香さん、もしくは広瀬すずさんなどもありうるかもしれません。
その他、秦国への復讐に燃える怖すぎる趙将・万極(まんごく)は滝藤賢一さん、カットされる可能性もありますが、かつての嬴政を救った商人の美女・紫夏(しか)は有村架純さん、昌平君と蒙武以外の呂不韋の四柱(腹心)の蔡沢(さいたく)と李斯(りし)は柄本明さんと長谷川博己さん、嬴政の生みの親にして超毒母の趙姫(ちょうき)は木村佳乃さん、嬴政に恋をする宮女・向(こう)は松本穂香さん……などなど、いろんなキャスト予想&妄想が湧き出てくるのですが、これくらいにしておきます。
ネットやSNSでいろんなキャスト予想がされていますが、正直これまでも王騎を大沢たかおさん、麃公を豊川悦司さんなど、ほとんどの人が予想していなかったキャスティングをしつつ見事に成功させているので、これからも斜め上のセンスと役者さんの見事な役作りで、予想外の配役が出てくるかもしれません。今から楽しみです。
今後の「キングダム」シリーズへの期待
ここまで『キングダム2 遥かなる大地へ』の見どころや、次回の予想を書いてきました。同作エンドロールの後に、『キングダム3』の公開は2023年と記されていたので、来年公開でほぼ間違いないでしょう。
『キングダム2 遥かなる大地へ』は初日から祝日を含む4日間の成績では、動員93万4000人、興収13億7900万円と前作をさらに上回る大ヒットとなっており、もはや日本映画界全体で挑む超大作シリーズと言えます。今後どんな豪華キャストが登場しても、どんな特大スペクタクルが繰り広げられても、不思議ではありません。
また、原作通りなら前作でドハマりだった本郷奏多三演じる味方としての成蟜のかっこいいカムバックや、ベールに包まれている要潤さん演じる王騎の副官・謄(とう)の恐るべき実力を発揮する場面、そしてみんな大好き長澤まさみさん演じる美しすぎる山の王・楊端和の再登場なども描かれるはずです。
原先生もおそらく今後も脚本に加わってくださると思うので、今から全力で期待値を上げて待ちたいと思います。
※2022年7月23日時点の情報です。