「デル・トロがギークの王様なら、僕は王子さま」新鋭監督が描く『パシフィック・リム:アップライジング』とは【インタビュー】

世界のディズニーを翔る元映画サイト編集長

鴇田崇

前作のギレルモ・デル・トロからメガホンを引き継いだ『パシフィック・リム:アップライジング』のスティーヴン・S・デナイト監督は、ドラマシリーズの「デアデビル」や「スパルタカス」などで実力を証明後、今回が初の長編映画作品となった。とはいえ、ロボット愛や怪獣愛いっぱいの本シリーズに最適な人物としてデル・トロ自身が選抜、あの<デル・トロが認める超オタク監督!>として世界中が期待しているイツザイなのだ。

パシフィック・リム:アップライジング

そこで来日したスティーヴン・S・デナイト監督を直撃! 本作のKAIJUデザインについてもラフ画に手書きで非常に細かな修正を入れるなど、さまざまな面で苦心をしたそうだが、そもそもどういう経緯で続編監督へのオファーがあったのか、偉大なる前作との違いやあえて意識したこと、長編初監督の苦労エピソード、自分のカラーがどのように出ているかなど、期待高まる『パシフィック・リム:アップライジング』について根掘り葉掘り聞いた。

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――今回の続編でシリーズをデル・トロ監督より<受け継いだ>わけですが、そもそもどういう経緯でオファーがあったのですか?

もともとはレジェンダリー・ピクチャーズのトップ、メアリー・ペアレントから連絡をもらって始まったよ。随分前のことだね。彼女は僕の「スパルタカス」の大ファンで、ぜひ会いたいと言ってくれた。会って長編映画のアイディアが何かないかと聞かれたので、ひとつ屋根の下で繰り広げる登場人物3人のスリラーを考えていると言ったら、その脚本を書いたら自分にぜひ見せてほしいと。それを僕の映画監督デビュー作にしようと言ってくれてね。

――なんと、最初はまったく関係がなかったんですね(笑)。

パシフィック・リム:アップライジング

実は、僕の長編デビュー作のキャスティングが難航してしまってね。すると今度はいきなり『パシフィック・リム』の続編の話になって、やると返事をしたよ(笑)。それでレジェンダリーの役員たちと会った後に、最後にギレルモ・デル・トロ監督と会うことになった。その時が初対面だったけれど、僕は彼の大ファンだったから、彼に会ったこと自体が僕のキャリアのハイライトだった(笑)。彼がぜひと言ってくれた時は、本当にうれしかったよ。

――大ファンということは、デル・トロ監督と同系統のギークなのでしょうか(笑)。

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そのとおりだよ! 彼がギークの王様なら、僕はギークの王子さま、といったところかな(笑)。間違いなく、同じものを愛しながら大人になった。特に日本発の怪獣モノ、メカモノ、ロボモノが、ふたりとも大好きだからね。僕自身はウルトラマン、マグマ大使、ジャイアントロボ、ゴジラ、ガメラを観て、育っているけれど、キングも似ていると思うよ(笑)。

――まさしく受け継ぐ者ですね(笑)。

ギレルモとの共通点は、モンスターだよね。ユニバーサルのモンスターから怪獣まで、全部が好きだったということは、もしかするとふたりとも、世の中のハミダシ者だったからかもしれない。モンスターに感情移入するって、世の中のハミダシ者に違いないと思う(笑)。

――その中で、今回の続編ではあなたの個性は、どのように炸裂していますか?

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僕はテレビ業界で15年ほど仕事をしてきて、何よりも物語を作る上で愛していることは、キャラクターとアクションだ。この両要素を今回の作品でも掘り下げたいと思ったし、以前のままを、そのまま作るのではなくて、少しヒネリも加えたかった。言ってみれば前作を飛び込み台にして、新しい要素も足したかったわけだね。実際、上手くいったと思うよ。

――具体的には?

そのうちのひとつが白昼でバトルが行なわれるということで、前作では海中などで、今回はなるべく新しい視覚体験を意識している。それは予告編でもわかっていたことだけれど。

――イェーガー自身も、前作までは重量感がありましたが、今回は派手で明るい。そういう点でも苦労が多そうですが。

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その通りで、重量感とアクションのバランスはすごく難しい。重量感を演出するためにゆっくり動かすとわくわく感が減ってしまうし、早く動かしすぎると浮遊しているように見えてしまう。リアル感が薄れてしまうわけ。だからVFXチームとはこの点をよく相談したよ。

――長編映画は初めてだったと思いますが、その点の苦労はありましたか?

時間だね、時間が立ちはだかったことが一番の挑戦で、たとえば「スパルタカス」や「デアデビル」は1話12日~14日間の撮影で、今回の作品は91日間だ。完全に短距離とマラソンの違いだよ。ここまでのスケールだと、クリエイティヴなコントロールは、テレビほどは持てない。グループでコントロールや選択をしていくことになる。テレビは全部、自分で選択できたけれど、それはどっちがいいというわけではないよ。ただ、アプローチの問題だけでね。超大作の場合、関わっている人数もお金も大きくなってくるので、みんなで同意しなければ前に進めないということはあったかな。それが苦心した点だったと思う。(取材・文:鴇田崇)

映画『パシフィック・リム:アップライジング』は4月13日(金)より、全国ロードショー。

パシフィック・リム:アップライジング
(C)Legendary Pictures/Universal Pictures.

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