生田斗真が主演作『友罪』でみせた苦悩、映画として残す責任を語る「ずっとしんどかった」【インタビュー】

映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

友罪』。
主人公は、週刊誌ジャーナリストの夢を諦め、町工場で働き始めた益田(生田斗真)。寮に住まう益田は、ぶっきらぼうで、何を聞いても愛想笑いひとつしないような同僚の鈴木(瑛太)と、徐々に親しくなっていく。しかし、ある事件をきっかけに、鈴木が17年前の連続児童殺害事件の犯人だった「少年A」なのではないか、という疑惑を抑えられず、益田は彼を調べていく。

友罪_生田斗真

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もしも自分の友達が犯罪者だったら、さらには殺人を犯していたら……?

映画『友罪』では終始問いかけが投げ続けられ、「もしも」の疑惑にさいなまれる役の生田は、苦悩に満ちた表情を劇中で何度もさらした。「軽いシーンなんて、ないんじゃないかな」、「ずっとしんどかったですよ」と苦笑交じりに心中を吐露した生田だが、作品を世に送る意味を「映画として残すべきだという責任や使命感があった」という言葉で表現し、意志の強い眼差しを真っすぐに向けた。序盤から核となる話が続いた本インタビューには、映画を観る前にも、観た後にも、深くかみしめられる生田の言葉が広がる。

――元々原作をお読みになっていたそうですね。映画化、さらに主演のオファーを受けていかがでしたか?

生田斗真 原作は発表された当時に読んでいました。小説のほうは、神戸の事件が色濃く書かれているので、僕らの世代にとってはすごく衝撃的だったし、学校に行くのが怖かったとか、あのときのことを思い返しました。あの事件からリアルにいろいろな感情を受け取ったわけだから、目を背けられない問題だと思うんです。僕らはエンターテインメントの仕事に関わっている以上、映画として残すべきだという責任や使命感も、ひとつあるのかなと思いました。だから今回、お声がけいただいて参加させていただくことになりました。

友罪_生田斗真

――かなり覚悟を持って臨んだ作品だった、ということでしょうか?

生田 はい。僕ら俳優陣もそうですし、監督やプロデューサー、作り手側の皆さんもそうだと思います。どこか触れてはいけないような題材だと思うし、例えば……「加害者をかばっていることになるんじゃないか」とか、賛否両論、いろいろな意見が湧き起こると思うんです。ただ、誰の味方をするとか、誰を弾圧したいということではなく、起きてしまっている事実があり、加害者の人生は続いているわけです。それを描く覚悟みたいなものは、現場に蔓延していたような気がします。

あと、僕らが作っているのはドキュメンタリーでもないし、映画という名の元にやっているので、「こういうことがあって、こういうことがありました。こういうことは二度と起きないようにしましょう」ということではないと思うんですよ。人間には光、闇、といろいろな面があるけれど、「そんなにダメなところばかりではないよね」、「こうあってほしいよね」という僕らの願いが込められたような映画に仕上がっています。

――生田さんの演じた益田は受け身の役ともいえます。そのあたりの難しさはありましたか?

生田 「受け身って難しいんですよね?」とはよく言われるんですけど、発する相手がきちんと発してくれていれば、全然難しいことはありません。特に、今回瑛太と一緒にやらせてもらって、彼の言葉や一挙手一投足にきちんと目を向けていれば、自然に感情を呼び起こしてくれる相手だった。難しいとは、そんなに感じなかったです。瑛太はやっぱりすごいな、と思ったし。

友罪_生田斗真

――瑛太さんとは何度か共演をされていますが、生田さんにとって刺激的な存在ですか?

生田 はい。やっぱりいつ会っても刺激を与えてくれる同志だなと思いますね。いろいろな現場をくぐり抜けてきている同年代の役者として、すごく魅力的に感じていますし。

僕が瑛太に初めて会ったのは、彼が初めて月9の主役を演じたドラマ「ヴォイス~命なき者の声~」のときで、20代前半でした。その前からもちろん瑛太という存在は知っていて……第一印象は、ギラギラしていて、いつも自分の現状に満足していないようなオーラが出ていて、「何だ、あいつは!?」という感じだったかな(笑)。今でも覚えているのが、初めて現場が一緒になったとき、瑛太が「主役でいないといけない」という責任のある立場に置かれている自分と、「表現者として自由にふるまいたい」という役者としての側面があって、その両方を行ったり来たりしていました。そんな瑛太を、ちょっとでも支えてあげたいと思いましたね。

――魅力は出会ったときのままですか?

友罪_瑛太

生田 出会ったときから変わっていないですね。大人になったり、社会的立場は変わってくると思うんだけど、根本の部分は変わっていなくて。そこが瑛太の魅力じゃないですかね。瑛太は、頭で考えることより先に、お芝居をポンとやれちゃう人なんですよね。ひとつのアングルの中で何かを表現しようとしがちなんですけど、画面からはみ出ちゃうというか、自由に表現するとでもいうのかな。かと言って、奇をてらったことをやりたいと思っているわけではなく、きちんと役に沿った形で表現していく人なんです。今回だと、公園のシーンとかは、特にそうだったかな? あまり見たことがないような表情をしていたし、見たことがないようなシーンになっていると思います。ちなみに、今まで3本共演してきましたけど、役について話すとかは1回もしていません。

――公園のシーンも、ほかでも、本作では生田さんの表情にも目を見張りました。これだけ苦悩する生田さんを観たことがないと言いますか。

友罪_生田斗真

生田 ははっ(笑)。

――特に感情の発露が大きかった場面では、どのように作り上げていかれたんでしょうか?

生田 考えてみたら、普通ではいられない状況じゃないですか? 自分が友達だと思っていた人間が、少年犯罪を犯していたかもしれない、と。瀬々監督は、「感情のリミット、常識みたいなことを超えていきましょう」というタイプの方だったので、それもすごく影響していると思います。見たことのないような表情や表現を求められていたのはありました。

――演じていて一番つらかったのは、どのあたりでしたか?

生田 いやー、もうずっとしんどかったですよ(苦笑)。軽いシーンなんて、カラオケのところくらいしかないんじゃないかな? あのときだけは気が晴れる感じがしましたけどね。結局そのカラオケも後々すごく……あれになってくるんですけどね(笑)。

友罪_生田斗真

――詳しくは書けないですが、はい(笑)。ほか、益田の理解を深めるために行ったこと、意識したことはありますか?

生田 やっぱり常に鈴木のことを思うというか、その一点に絞られると思います。益田というキャラクターの目線を通して、お客さんもこの映画に入っていってくれると思うんです。そういう意味では、自分が鈴木のことをどう見ているかがすごく重要だったと思うので。

――鈴木は「友達」という言葉を執拗に用います。生田さんは「友達」の概念についてどう思いますか?

生田 難しいですよね、契約書を結ぶわけでもないし(笑)。「友達」と聞いて自分の中で浮かぶ人はいるけど、果たして相手がそう思っているかどうかはわからないし。すごく硬いものでもあるし、儚いものでもあると思うんですよね。

――逆のキャストでも面白かったような気もしました。

生田 監督も「ふたりだったら逆でもいけたんじゃないか?」と、おっしゃっていました。すごく冥利に尽きるし、ありがたいです。でも……、鈴木というキャラクターは瑛太がやったほうが絶対にいいと思う。こっちのほうがよかったと思います(笑)。

――ほかに、瀬々監督から言われたことはありますか?

友罪_生田斗真

生田 本当に要点だけですね。鈴木というキャラクターを、益田の中学校の自殺してしまった同級生の姿に、どこか重ねてしまう、と。そこは割と何回も言われました。益田は、その同級生を自分が殺してしまった、と思っているわけですから。どこかで「次は助けたい」「君には死んでほしくない」という思いに行きつくわけですよね。

――お話を聞いていて、言葉で言えば「やり甲斐」などに変わるかもしれないですけど、人間・生田斗真さんとしては、本作の撮影はつらい時間でもありましたか?

生田 つらかったですね。終わってからも達成感とかやり甲斐とかは、全然感じなくて(苦笑)。題材が題材というのはあったんですけど、オン・オフのスイッチがあったとしたら、この現場は常にスイッチの半押し状態が続いているというか……。キャストもスタッフも皆がそうだったと思うんですけど、撮影が終わったから「終わり」ではなく、ずーっと半押し状態。だから……なんか、いろいろな感情が渦巻いて。その中には「この映画、本当に作ってよかったのかな? 参加してよかったのかな?」という空気もあって、スタッフさんとも「よかったのかな?」と話した記憶があります。あまりにもリアルだと思うし、当時の記憶とかも、僕らの頭の中にこびりついて離れないことだったりするから。本当に、すごく悩みながら、自問自答しながらの撮影だった記憶があります。覚悟はしていたんですけどね。そういう意味では、いつもの作品とは違う使命感があったと思います。

友罪_生田斗真

――完成作をご覧になっても、その気持ちは続いていますか?

生田 そうですね、はい。いろいろなインタビューやコメントで「座席から立てなくなるような映画、作ります」とか言っていたんだけど、観たとき、まさに自分がそうなってしまって(笑)。

――ある種、有言実行ですが(笑)。

生田 自分がそうなるとは思っていなかったんですけど、それくらい(の出来)。もちろん台本も読んで、撮影に参加しているわけだから、自分は全部わかっているんだけど、それでもずんとくるものがありました。

――そこには、被害者、加害者と分断されるもののみならず、いろいろな関係性について考えさせられる要素があるからとも思っています。そのあたり、生田さんは何か感じたことはありますか?

生田 映画なのでもちろんフィクションなんですが、こういったことは日本だけではなく、世界のいろいろなところで起きていると思います。「こういう事件が起きました」と僕らはニュースで知ることはできるけど、その後のことはわからないし、どういう思いで暮らしているのか、生きているのか、どうなのか、ということも、なかなかリアルに感じることができない。これは、ただ単に映画の中の話だけではなく、自分だったらどうするんだろうな、自分にもそういう局面が出てくる可能性があるかもしれない、と思いましたね。

――エンターテインメントとして成立している一方、いろいろな思いを巡らせてしまう映画の作りにもなっているんですね。

友罪_生田斗真

生田 そうやって、いろいろなことを考えたりするきっかけになってほしいです。この映画の中で起きることって、目を背けたいことばかりなんです。血がいっぱい出るとか、人がいっぱ い死ぬとかの視覚的なことではなく、「じゃあお前はどうするんだ?」「フェイクだけどリアルだからね」と常に問いかけられている感じというか。けど、それこそが僕ら、映画、エンターテインメントの役割だと思うんです。もちろん楽しくて、ハッピーな作品も僕は好きだし、そういう役を演じてもいますけど、『友罪』のような作品を送り出すのも僕らの役割なんじゃないかなと。観た人の頭に残り続けるような、忘れられないような作品になったと思います。(インタビュー・文=赤山恭子)

映画『友罪』は2018年5月25日(金)より、全国ロードショー。

友罪
(C)薬丸 岳/集英社(C)2018映画「友罪」製作委員会

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  • tsuya
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    記録
  • うら
    3.4
    心ぐしゃぐしゃになりながら見た
  • Keiichi
    2
    ー感想ー 様々な視点から、 1つの悲惨な事件を取り上げた映画である。 過去を知ってしまったら、実は。 というザワザワ感、不気味感がある。 少年法なんか認めたくない。 死ぬまで一生苛まれろ。と思ってしまう。 法の解決は、本当の解決ではないとしみじみ思ってしまう。 だが、それでいいルールがないと結局ループするのだから。
  • れもん
    -
    ✍️
  • celica
    3
    罪を犯したら幸せになってはいけないのか? 「そんな事はない」 とは思えない自分がいる もちろん罪にもよるだろうけど 厄介なのは「少年A」よりも生田斗真演じる益田や、佐藤浩市演じる山内の息子の罪の方。 誰にでも起こりうる話だから
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