たまには耳にすべてをまかせて…ラジオが聴きたくなる映画18本

映画マニアと呼ばないで

夏りょうこ

ラジオはもう古い?

いえいえ、今でもラジオ愛聴者はたくさん。最近はスマホやパソコンでもラジオを聴けるようになったので、若い世代の間でもオシャレな趣味として人気が再熱しているとか。

そこで今回は、ラジオ局が舞台になっていたり、ラジオが重要な小道具になっている映画18本をご紹介しよう。

僕はラジオ』(2003)

名前はラジオ

僕はラジオ

こんな夢のような結末は映画だからでしょと思っていたら、有名なスポーツ専門誌に掲載された実話を基にしているというので驚いた。

ひょんなことから知的障がいのある青年と知り合った教師が、学校や地域の人たちとぶつかり合いながら彼の居場所を作っていくストーリー。

彼はなぜそこまで?

その思いが明らかになったとき、人は後悔があるからこそ正しいことをしようとするのだと知る。エド・ハリスが青年を守ろうとする教師を演じていて、ステキ(歳を取ってもセクシー)。

ラジオが大好きな青年は、まるで自分と外界をつなぐ宝物であるかのように小型ラジオを手放さない。で、ラジオから歌が聴こえてくれば一緒に歌い、陽気に踊る。本当に幸せそう。そしてついたあだ名が「ラジオ」。

純真で屈託のないラジオは人気者になるが、その一方で邪魔者扱いもされる。そういう現実もきちんと描いていて、ウソ臭くないのがよい。主人公はラジオではなく、彼を取り巻く人たちだ。

こんな夢のような結末が本当にあるのなら、この世界もまだ捨てたもんじゃないだろう。そう思わせてくれる作品。

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ラジオ・デイズ』(1987)

暮らしのなかのラジオ

ラジオデイズ

何なの? 戦時中だというのにこの余裕は。ラジオが醸し出すのんびりした空気感。娯楽に対する憧れ。ラジオのザラリとした音色が牧歌的なせいもあるが、時間の流れがゆったりしていて羨ましい。

第二次世界大戦直後のニューヨークを舞台に、ユダヤ系移民一家の暮らしを通してラジオにまつわるエピソードを描いた映画。

この作品に登場する少年は、おそらく監督自身なのだろう。家族みんなでラジオを囲み、グレン・ミラーの曲やラジオ番組を聴いた日々。当時の記憶を懐かしく振り返り、ラジオから流れてきた多くの音楽や声を忘れられない思い出として語られる。

ラジオにかかわる面白いエピソードが次々と紹介されていくのだが、なかでも冒頭のクイズ番組のものがインパクトあり。ほかにも、ラジオ局が火星人来襲のドラマを臨時ニュースとして実況中継したところ、現実の出来事だと勘違いした視聴者がパニックを引き起こした有名な実話も登場する。

そういったラジオが巻き起こす悲喜こもごもにクスっと笑いながら、ノスタルジックでちょっと寂しい気分になってしまう。暮らしがラジオと共にあった時代の宝物がぎゅっと詰まったような映画。

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引き出しの中のラブレター』(2009)

みんなでラジオを聴こう

引き出しの中の

ありがとう。ごめんなさい。好きです。これ、自分の口から直接言いにくい言葉ベスト3だと思う。特に最初の2つは、恥ずかしくて親に言えないが、親にこそ言わなきゃいけない言葉だ。わかっちゃいるんだけどね。

そんな想いをラジオが届けてくれるとしたら?

そもそもラジオに手紙を出すという行為が、アナログである。その手間に差出人の切実な気持ちが込められているのだから、その一通一通を丁寧に受け止めるラジオDJの役割。実は彼女自身も絶縁状態だった父を亡くしたばかり。彼女は生前に書かれた父親からの手紙を、まだ引き出しの中にしまっていた。

きっかけは、北海道の高校生から届いた手紙だった。笑わない祖父を笑わせたい。そんなプライベートな相談をされるなんて、リスナーから信頼されている証拠だね。さて、その祖父は笑うことができたのか?

人間の悩みの大半は人間関係だという。ラジオが人の心と心をつなぐ温かなツールとなればよいが、その前提として相手もラジオを聴いていないとね。

ハガキや手紙がメールやLINEに変わっただけで、いつの世も誰かに届けたい想いがあるはず。だからがんばれ。ラジオ。

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好きにならずにいられない』(2015)

新しい愛の形

好きになれずにいられない

つらいよぅ。予定調和を裏切るまさかの展開に、ハリウッド映画にはない新しい愛の形を見た。

43歳独身。極端な内気。めっちゃ太っていて髪が薄く、趣味は戦場のジオラマ作り。あちゃー。そんな絵に描いたようなオタク息子を見かねた母親が、誕生日にダンス教室のクーポン券を渡したところから物語が始まる。

最初の一歩は勇気の一歩。そして彼は新しい扉を開き、気になる女性と出会うには出会うのだが、女性経験のない男性にありがちな勘違いでもって悲惨な傷つき方をしてしまう。

ま、彼女の方も深刻な問題を抱えているので、相手がよくなかったのかもしれない。とにもかくにも彼は彼女のことを想い、不器用に尽くし続ける。それは好きな人のため。そして自分のため。

孤独な彼は1人でカーラジオを聴き、好きな音楽番組のDJにしょっちゅう電話をかけている。彼女と初デートした夜も電話をかけ、歌をリクエストした。

嬉しいことがあっても全然笑わないなぁと思っていた彼が、ほんの一瞬だけ笑顔を見せるシーンがある。それは笑ったか笑ってないのかわからないくらいの静かな笑顔。ああ、それで私たちは救われたような気持ちになり、この映画を観てよかったと思う。

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ガレキとラジオ』(2012)

ラジオが大活躍

ガレキとラジオ

被災地で求められているのは支援情報。そして、同じ経験をした人たちが何を考え、どのようにして悲劇を乗り越えようとしているのか。哀しみや怒りを吐き出し、それをお互いに共有して慰めあい、支えあう。ちなみに映画の冒頭で避難を呼びかける防災無線の声は、自らの命と引き換えに町民の命を救ったあの南三陸町の女性職員だという。

東日本大震災で被災した宮城県南三陸町。その避難所で地元民9人の男女が立ち上げたラジオ局「FMみなさん」を通して、被災した人々の生活を1年間追いかけたドキュメンタリーである。スペシャルサポーターとして役所広司がナレーターを務め、仙台市在住の人気バンドが主題歌を担当した。

ラジオ局といっても場所は避難所である体育館の廊下奥だし、メンバーは元サラリーマン、元塾講師、元ダンプカー運転手など経験者ゼロ。家族から「向いていない」と言われ、慣れない仕事に落ち込みながらの悪戦苦闘ぶりもみどころだ。

どんな時でも娯楽は必要なんだと改めて思わされる。たとえ目の前が真っ暗でも、それが耳から入ってくる音楽や言葉なら自然に体に染み込んでくるから。ラジオ局員たちの原動力は、ありきたりだけど「みんなを笑顔にしたい」という気持ち。ただそれだけ。想いはシンプルな方がいい。

ラヂオの時間』(1997)

ラジオの向こう側

ラヂオの時間

生放送だからこうなってしまい、ラジオだから乗り切れた。

一般公募でラジオドラマ化されることになった脚本が、主演女優のワガママがきっかけとなって生放送中に書き直されていく様子を描いたコメディ。

制作側の都合で本番中に設定を変えてしまい、そのせいで話の辻褄が合わなくなってきたので行き当たりばったりに対応。そして気がつけば、ヤル気のなかったスタッフまでもが熱くなり、みんなでワイワイと力を合わせて作品を完成させていく。

これ、三谷幸喜のお得意パターンだ。ちなみにこれは監督の実体験が基になっているそうで、それを肥やしにしてこの初監督作品をヒットさせることができたんだから、元は取れたはず?

そんなこんなでみんなでよってたかってグチャグチャにされ、なんと結末まで変わってしまった脚本だが、オリジナルもまあまあ突飛な設定ではなかったかと。主婦と猟師って……。

当時はメジャーでなかった戸田恵子や鈴木京香が初々しい。

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トーク・レディオ』(1988)

DJも命がけ

トーク・レイディオ

今じゃありえない過激なトーク。あらゆる人種や階層の人たちから電話で悩み相談を聞く生放送だなんて、緊張感がありすぎる。

超個人的なことから人種差別、政治や税金の話まで相談内容は幅広く、どれも不満だらけ。なかには放送禁止レベルのアブナイ発言もあり、それらを瞬時に受け止め、きわどい毒舌ユーモアで投げ返すDJがこの映画の主人公だ。

リスナーと直接電話で話すにしても、これはあまりにも攻撃的で危険な匂い。でも、この番組が人気を集めていたというのだから、当時のアメリカが抱えていた深刻な矛盾と歪みがうかがい知れるというものである。

よけいな敵を作りそうだとハラハラしていたら、やはりというべきか、このDJの身に悲劇が起きる。彼がユダヤ系だというのも事件に巻き込まれた大きな要因だと思われ、やり切れない気持ちでいっぱいに。実話に基づく舞台劇の映画化。シナリオがうまく、最後まで一気に引き込まれる。

パイレーツ・ロック』(2009)

ラジオはロックだ!

パイレーツ・ロック

北海に浮かぶ大きな船で共同生活を送るDJたち。イギリスに民放ラジオがなく、ポピュラー音楽の放映が1日45分と制限されていた1960年代、海の上からロックを24時間ガンガン流し続けていた海賊ラジオ局があった。

“海賊船”が浮かぶ場所は、法律が及ばない領海外。自由な世界。しかし彼らは、音楽だけでなくドラッグやセックスで風紀を乱す反社会的な存在なので、政府はいろいろな手を使って存在を潰そうと試みるのだが、その攻防戦もみどころだ。

DJたちはみんな半端ないロック魂の持ち主。何しろイギリスで初めて「F×××」という単語を電波に乗せたのだそうで、国としてはそりゃ困ったことであろう。でも、弾圧されればされるほど燃えるのがロックだから。

救世主となるカリスマDJの登場シーンは、さすが口笛を吹きたくなるようなカッコよさで、いかがわしくてセクシー。ハラハラさせられるラストには、思わず拍手喝采! イギリスの国民性を垣間見るような作品である。

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フィッシャー・キング』(1991)

そのひと言に注意

フィッシャー・キング

不用意な発言で身を滅ぼすとは、ありそうでコワイ話である。

自分の言葉を挑発ととらえたリスナーが、無差別射殺事件を起こしてしまい、順調な人生から一気に転落してしまった人気DJ。自信満々な過激トークが、確かにちょっと調子に乗りすぎていたかもね。

その後さすがに罪の意識にさいなまされた彼は、あっという間に酒浸り生活へ。あるとき彼は情けなくもオヤジ狩りに遭ってしまい、たまたま近くにいた路上生活者に助けられる。不思議なことにその路上生活者は元大学教授で、2人の間には共通点が……ああ、恐ろしくてこれ以上はとても言えない。

その元大学教授を演じたのがロビン・ウィリアムズ。人懐っこい笑顔の裏に隠された悲痛な哀しみを感じさせ、この役にピッタリだ。この彼との出会いが人生を取り戻すきっかけになるだなんて、主人公にとって皮肉なことだろう。

ちなみにこの映画のテーマである聖杯伝説は、他作品にもちょくちょく登場させているほど監督のお気に入りのようである。トム・ウェイツが傷痍軍人役でノー・クレジット出演しているので、チェックしてみては?

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ラジオ・コバニ』(2016)

おはようコバニ

ラジオ・コバニ

これはすごい映画だ。イスラム過激派組織ISとの戦闘で瓦礫と化したシリアの街・コバニで、女子大学生が友人と立ち上げたラジオ局の活動を追ったドキュメンタリー。戦闘中の2014年からの3年間、地雷や戦車を乗り越えての戦地撮影だったようで、クルド人監督の執念と熱意と使命感がひしひしと伝わってくる。

ラジオ局といっても、瓦礫と死体が散乱する廃墟に、マイクとパソコンを置いただけ。彼女は人々にマイクを向ける。お金が欲しくて入隊したというIS兵士の捕虜。家族を迎えに戻ってきた男性。難民キャンプの母と子。

解放日にはさぞかし喜びに湧き上がるのだろうという予想を裏切り、男たちが瓦礫に混じった死体を黙々と掘り起こしている様子が……現実を思い知らされてガツンとくる。

この作品では、彼女自身のモノローグがナレーションとして語られるのが特徴だ。未来の子どもに託した詩や惨殺された親友への想い。また街の様子を自分の言葉で伝え続ける。

何もかも破壊されて絶望し、悪夢は正夢になった。それでも人々は、復興に向けて少しずつ歩き出す。鍛冶屋は炎で鉄を打ち、女は色鮮やかな洗濯物を干す。ほのかな希望の光がまぶしい。

今日もラジオから彼女の声が聴こえているのだろうか。おはようコバニ。

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めぐり逢えたら』(1993)

キューピットはラジオ

めぐり逢えたら

しっかりしてるな~この小さい息子。いや、ませているというべきか。お母さんを亡くしたお父さんの落ち込みぶりを心配し、新しい奥さんが必要だとラジオ番組に相談。父親も妻の思い出を切々と語ったりして……う~ん。これはラジオだから出来るワザだよなあ。

そのラジオをたまたま聴いていた1人の女性。会ったこともない彼の話に心をひどく揺さぶられた彼女は、彼の居場所をこっそり突き止め、手紙を送るのだった。

でもね。彼女にはフィアンセがいるんですよ。なのに、この行動はなに?

その出会いが運命かどうか。どうやら彼女はそれにこだわっているようで、映画『めぐり逢い』(57)の影響を受けて、2月14日にエンパイアステートビルで会おうと言ったりする。まあそれが運命かどうかを決めるのは本人だから、激しい思い込みも恋愛の醍醐味だということで。

思えば、ラジオから流れてきた音楽を聴いて人生が変わったという話もあるので、ラジオの力よ。恐るべし。

結局彼の方も、そうとは知らずに偶然彼女とすれ違って一目ぼれというロマンティックな展開。「そんなことあるかいっ!」なんて思わず、男と女の相性について考えてみてはいかがだろう。

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ワンダフル・ラジオ』(2012)

リスナーを巻き込んで

ワンダフルラジオ

落ち目になってもプライドは高いまま。そんな元アイドルのイタイ言動から始めるこの映画。視聴率低迷で打ち切り寸前のラジオ番組しか仕事がないのに、勝手にリクエストを変えたり暴言を吐いたり。そういったDJとしてわかりやすいダメさ加減がキュートに描かれ、やがてストーリーはロマンティック・コメディへ。

番組建て直しのためにやってきた敏腕プロデューサーは彼女を無視し、新しいプロジェクトを立ち上げようとする。それに反発した彼女は、リスナー参加型の思い切った企画を提案。それは、ラジオを通してメッセージと歌を伝えるという新しいコーナーだった。そこらへんの業界舞台裏もみどころの1つかも。

韓国の芸能界って熾烈だよなあ。コンビニにいる彼女が、高校生らしき集団から「こんなとこにいるよ。あの落ちぶれたアイドル」みたいな陰口を叩かれるシーンが、容赦なくて妙にリアルでねえ。彼女がラジオに活路を見出せたのは、プロデューサーへの対抗心があればこそ。これがプライドの正しい使い方。

グッドモーニング, ベトナム』(1987)

戦場にも笑いとロックを

グッドモーニング、ベトナム

ハイテンションなマシンガントークが、まさにロビン・ウィリアムズの真骨頂という感じ。

ベトナム戦争中のサイゴンにやって来たアメリカ軍放送の人気DJが、破天荒なトークと激しいロックで兵士たちを楽しませる。笑いと音楽のセンスがとってもアメリカン。そんな彼が清楚なベトナム人女性に恋心を抱いたり、英会話教室で「生きた英語(スラング)」を教えたり。

あれ? これって戦争映画じゃなかったっけ?

はい。手足が吹っ飛ぶような戦闘シーンがなくても、これはりっぱな戦争(反戦)映画。ベトナム人への人種差別。軍による情報操作。アメリカ的価値観の押しつけ。頻発する爆弾テロ。そんな戦争の冷酷さに振り回される主人公を通して、戦争の虚しさを描き、その新しい視点が従来の戦争映画と一線を画すところだ。

ちなみに主人公は実在するそうなので、メチャクチャに思えることにもリアリティあり。

戦場が舞台ではなく、レストランで主人公とベトナム人が笑いながら食事をしていたりするので、一見すると普通のドラマのよう。でも彼らは闘っていた。観終わった後、戦争の恐ろしさがじわっと伝わってくる。

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今宵、フィッツジェラルド劇場で』(2006)

最後の収録を描いた遺作

今宵、フィッツジェラルド劇場で

始まったものは、いつか終わる。やるせない。でも、ちょっと打ち上げ気分。

劇場が取り壊されるため、30年以上続いたラジオの音楽番組が打ち切りになるという。今日はその最後の夜。しかしその音楽ショーは公開生放送だから、何か大きなハプニングが起きそうな予感が……。

案の定、舞台裏で出演者や関係者たちが入り乱れてガヤガヤしているところへ、謎の白いコートの女が現れる。

歌手たちは、劇場がなくなってしまうことの寂しさに加えて、行き場のない怒りも感じている様子。もう最後だとばかりに、自殺の歌だの卑猥な歌だの。元恋人同士が一緒にホームセンターのCMソングを歌ったりして、みんなどうかしている。ちなみにこの番組は実在するそうで、実際に司会を務めてきた本人が出演して、舞台を盛り上げている。

そうこうしているうちに白いコートの女の正体が明らかになり、複雑な人間模様がからみ合いながら、最高のハーモニーで有終の美を飾るラストシーンには涙。彼らが劇場で過ごす最後の夜が流れるようなカメラワークで映し出され、それはこの上もなく愛おしく美しく、笑顔と歌声の余韻がいつまでも続く。

聖なる嘘つき/その名はジェイコブ』(1999)

嘘も方便

聖なる嘘つき

ラジオは偶然耳に入ってくるものだから、どうしようもない。それが戦況を伝えるニュースだとしたら、なおさら……。第二次大戦中ナチス占領下のポーランド。そのユダヤ人居住区・ゲットーに住む主人公がついた哀しい嘘が、この物語だ。

彼は呼び出されたドイツ兵の部屋で、たまたまラジオニュースを耳にする。それはなんと、ソ連軍有利の情報だった。どうやらドイツが負けそうになっている。ということは、もうしばらく耐え忍んでいれば生き延びられるかもしれない。しかし彼は、それを嘘だと言うしかない状況に追い込まれてしまう。

ラジオには隠し持つことができるというメリットがあるが、それがここでは裏目に出てしまい、彼は自分の嘘にがんじがらめ。生死がかかっているので、みんなも必死なのである。そして彼は、みんなにとって最良の選択を決意する。

その主人公をロビン・ウィリアムズが演じ、これはもういい人に決まってるじゃんという。彼の寂しげな目尻のシワに胸がきゅうっとなり、でもこれでよかったんだと思えるラストが心に残る。

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好きと言えなくて』(1996)

声に恋して

好きと言えなくて

ラジオでペット相談室。しかも生放送。そのユニークな設定にワクワクする。

動物の悩みなら何でも受け止めてくれる人気DJ。しかし彼女には、小柄でぽっちゃりという外見コンプレックスがあるのか、自分に会いにきたリスナーの男性がモデルの友人を彼女だと勘違いしてしまっても、あえて訂正しない。

声だけで勝手に理想を描いてしまうのも無理はないが、困ったもんだ。

問題は、間違われた友人は美人だけど教養に乏しく、カメラマンの彼とあまり話が合わないこと。見た目が好みでもこれではちょっと……と思いきや、意外と彼の心は変わらないので、ズルズルと偽りの交際が続いてしまう。

一方、本物の彼女(?)と彼は友だちになるのだが、これがまた趣味が合うので話が尽きず、一緒にいて楽しそう。そりゃそうだろうよ。う~ん。君たちどうするの?

声にいきなり惚れるってあるのかな~。というか、直接しゃべってみてわからない? 2人のキューピットになる大型犬がなかなかの芸達者で、この子がしゃべれたらいいのにと誰もが思う。ラジオ局にいきなり会いに行くというシチュエーションが非現実的であるものの、ちょっといい話という感じ。

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リスナー』(2015)

そこにラジオがあるから

リスナー

ラジオをテーマに製作されたオムニバス映画だなんて、ちょっと珍しい。しかも監督たちが、東京藝術大学の大学院生と韓国国立映画アカデミーの卒業生だというのだから、一種の日韓“競作”ともいえよう。

ラジオという小道具をストーリーにどうからめていくのか。その趣向がみどころなのだが、そこに国民性の違いを感じるかどうかはあなた次第。とにかくどの味つけと盛りつけも一筋縄ではいかず。予想がつかない展開にドキドキである。

どれもヘンテコなショートストーリーで、特に銀歯でラジオの電波を受信している男の話があまりにもバカバカしく、そして切ない。ほかにも震災で雑居ビルに閉じ込められてしまった風俗嬢が、ラジオの音を頼りに脱出しようとする話も、妙にリアルで心に残る。

ラジオはどこでも聴けるし、自然に耳に入ってくるだけに、いろんな設定が可能。なので、ふいに日常に入り込んできて想像と妄想を掻き立てる。それがラジオ。

これがTVやスマホだったら、こんなに突飛で面白いドラマは生まれそうにないだろう。ラジオって料理しがいのあるテーマなのね。

青春デンデケデケデケ』(1992)

ラジオからカミナリ

青春デンデケデケデケ

同世代の元ギター少年には、たまらない映画だろう。これを青春と言わずしてなんと言おう。

時は1965年。たまたまラジオから流れてきた「ベンチャーズ」の有名なトレモロ・グリッサンド奏法「デンデケデケデケ」に衝撃を受けた(カミナリに撃たれた)男子高校生。バイトをしてエレキギターを買い、バンドを組んで憧れの曲を弾く日々に明け暮れる。

女の子に興味がないわけじゃないけど、それよりも音楽がやりたい。あの曲を自分の手で弾いてみたい。その情熱一色で染まった高校生活。いいねえ。同じ経験がなくても、後先を考えず何かに夢中になっていた頃を思い出すねえ。

舞台が都会ではなく四国の田舎町というのもいい。夢と憧れの強さだけで突き進む若者たち。牧歌的な風景とのんびりした方言に激しいロックという組み合わせも、地方出身の元ギター少年にはたまらないだろう。

原作の文章を生かしたナレーションや、言葉遊びをいきなりポンと映像化して見せる手法が独特。そういったこの監督らしい場面転換が今でも新しい。若かしり頃の浅野忠信と石田ゆり子を鑑賞する楽しみもあり。

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いかがでしたか?

日常生活のなかで、ふと耳に入ってくるラジオ。そういうラジオならではの楽しみと魅力に引き寄せられる人は、時代が変わってもたくさんいるようで。

ラジオを通して描かれるドラマは、今でも尽きず。そんな映画を観て久しぶりにラジオを聴いてみたくなったら、ぜひチューナーを合せてみては?

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