【追悼】名優・樹木希林を代表する映画20選<ありがとう、希林さん>

2018.09.18
映画

映画マニアと呼ばないで

夏りょうこ

9月15日樹木希林が亡くなった。享年75歳。

網膜剥離で左目を失明し、その後ガンでの闘病生活を公表してから5年。最近骨折で入院した影響で一時は危篤状態に陥ったが今はリハビリ中だ、というニュースを耳にしたばかりである。

ああ、それならしばらくしたら復活して、以前のようにテレビやスクリーンでまた元気な姿を見せてくれるはず。心のどこかでそう願っていた。

そんな矢先の訃報。不意打ちを食らったようなショックが、日本中を駆け巡った。

樹木希林のプロフィール

樹木希林は1943年、東京生まれ。1961年、文学座付属演劇研究所の第1期生となり、「悠木千帆」という芸名で女優活動のスタートを切った。

最初の夫は俳優の岸田森。その後ロック歌手の内田裕也と再婚した。娘はエッセイストの内田也哉子、娘婿は俳優・本木雅弘である。

1974年にTVドラマ『寺内貫太郎一家』で主人公の母親を演じた時、劇中で指ぬき手袋をしていたのは、まだ30代前半であった樹木希林の若い手を隠すためだったというエピソードは有名。その後、郷ひろみとのデュエット曲「お化けのロック」「林檎殺人事件」が大ヒットし、また、ピップエレキバンやフジカラーのCMなどにも出演して、女性CMタレント好感度ナンバーワンにも輝いた。

2008年、紫綬褒章を受章。そのほか、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞をはじめとする多くの演技賞を受賞し、今秋に『日日是好日』(18) 、来年には『エリカ38』(19)の公開を控えていた。

亡くなる直前まで次々と話題作に出演しては、唯一無二の存在感を放っていた樹木希林。まさに「日本映画界の宝」と言っても過言ではないその業績を振り返りながら、樹木希林の出演映画20本をご紹介しよう。

あばよダチ公』(1974)

赤いパンティがまぶしい

あばよダチ公

3年ぶりに刑務所から故郷に戻ってきた来た主人公が、再会した仲間たちとパッとしない生活を送っていたところへ女性が現れ、彼女の村がダム工事のために立ち退きを迫られていることを知る。

松田優作とまさかの共演。刑務所帰りのグレた弟を持つ姉という役で、最初の方でほとんど一瞬しか登場しないチョイ役だが、これがまあ強烈な印象を残すのである。

彼女はおそらく安キャバレーのホステス。行儀悪く足を立ててペディキュアを塗り、そしていきなりパンツ一丁になったかと思うと、そのまま素肌にワンピースを着る。今から出勤なのだろう。樹木希林の半ヌード……後ろ姿だけど。今のイメージからは想像もできない若い頃の姿が、甘酸っぱい。

転校生』(1982) 

女子化した息子を心配

転校生

学校の人気者である主人公と、同じクラスにやってきた女子転校生が、学校の帰り道ちょっとした弾みで一緒に石段を転げ落ちてしまい、2人の体と心が入れ替わってしまう。

映画史に残る青春映画の傑作。この作品で描かれる「入れ替わり」が後世に与えた影響は大きく、シチュエーション・コメディでありながらノスタルジックな作風が特徴である。監督の故郷・尾道を舞台にした「尾道3部作」の第1作であり、2007年同じ監督によってリメイクされた。

2人はまだ中学生だから、体と心の性別が一致しない生活になじめるわけがない。樹木希林は急に女の子みたいになった息子を不審に思い、様子がおかしいのはあの転校生のせいではないかと詰め寄る。雰囲気は今とあまり変わらないが、こういう夫に敬語を使う奥さん役はちょっと珍しいかも。

さびしんぼう』(1985)

突風のようにやってきて

さびしんぼう

カメラ好きの男子高校生は、隣の女子校で放課後になるとピアノを弾く少女に恋心を抱いていたが、ある日彼の前にピエロのような格好をした“さびしんぼう”が現れる。

監督による「尾道3部作」の完結作。全篇に流れるショパンの「別れの曲」に乗せて少年の恋を甘く切なく綴った青春ファンタジーで、監督自身の思い出が色濃く投影された物語だと言われている。人を愛することは淋しい。だから、さびしんぼう。それは監督の独特の感性から生まれた造語だ。

樹木希林は彼の母親の元同級生で、正月に娘を連れて久しぶりに訪ねてきたかと思ったら、ボソボソとぶしつけな言動をしては迷惑がられるお騒がせキャラ。そういえば、当時の樹木希林はこういうイメージであった。娘役の小林聡美とおそろいの髪型をしているのが、笑いを誘う。

リターナー』(2002) 

裏社会に精通

リターナー

2084年、宇宙人によって絶滅の危機に陥る人類を救うため、2002年に最初に進入してきた宇宙人を抹殺しようと少女が時を超えてやってくる。

闇取引の現場に潜入し、ブラックマネーを奪還して依頼者に送り戻すプロの仕事人リターナー。そんな彼が、未来からやってきた少女のミッションに巻き込まれ、手を貸さなければならなくなる。宇宙人との激しい攻防戦が繰り広げられるSFアクションムービー。

こんな作品にも出演していた樹木希林。キッタナイ格好をしたつかみどころのないおばあちゃんに見えて、実は凄腕リターナーを育てあげた中国人の情報屋というカッコよさ。人の心を見透かし、転んでもタダでは起きないしぶとさよ。指ぬき手袋が相変わらず似合う。

』(2002) 

娘との溝が埋まらない

命

妻子のある男の子供を身籠もり、産むべきかどうか悩んでいた主人公は、かつての恋人に助けを求めるが、彼の体はすでに末期ガンに冒されていた。

原作者自身の体験が描かれる半自伝的映画。憎みあって別れたという過去を乗り越え、2人は支え合いながら一緒に暮らすようになる。生まれてくる命と死にゆく命。2つの命の重みが交差し、対極にある2つの人生を見つめるヒロインの姿が心を打つ。

そんな葛藤に苦しむ彼女の母親を演じたのが、樹木希林だ。夫婦仲が悪く、2人の娘ともうまくいっていない自由奔放な母親。やさぐれた雰囲気のある辛らつな彼女は、娘から突然妊娠を告げられると皮肉な高笑いをしてしまう。出番が短いだけに画面がピリッと締まって、さすがである。

半落ち』(2003) 

謎のキーパーソン

半落ち

元刑事で警察学校教官の男が妻殺しを告白して自首をしてきたが、担当刑事が取調べをしていくうちに、殺害後2日間の行動について沈黙を守る彼の様子に不審感を抱くようになる。

ベストセラー推理小説の映画化。若年性アルツハイマー症になってしまった妻を看病するために、わざわざ辞職までした彼が、本当に殺人を犯したのだろうか。本人は頑なに口を閉ざすばかり。そこで周りにいる弁護士や新聞記者たちが協力し合い、事件の謎を明らかにしていく。

複雑な背景が浮かび上がるにつれて、真実がどこにあるのかますますわからなくなる中で、被害者の姉である樹木希林の存在がクローズアップ。彼女が意味深なセリフを口にするたびに、その重みとやるせなさがズシンとくる。裁判シーンでの演技は圧巻。

下妻物語』(2004) 

ヤンチャだったばあば

下妻物語

下妻市の田舎道を全身ロリータファッションで歩くヒロインは、生きがいは洋服だけという人生を送っていたが、ふとしたことでヤンキー少女に出会う。

別世界で生きていた2人が、刺繍をきっかけに強い友情で結ばれるといういい話。ロリータファッションに身を包んだ深田恭子が、周りからどんな目で見られようとも我が道をゆく孤高の高校生を演じ、その格好で暴走族に戦いを挑む姿が話題になった。

樹木希林は彼女の祖母。変わり者の孫にとっては唯一の理解者で、どうやら若い頃はかなりのヤンキーだったらしく、黒い眼帯を付けている姿は女盗賊のよう。でも手芸の腕はピカイチという頼もしさだ。薄暗い部屋で2人がゴニョゴニョと話をしているシーンが、悪だくみをしているみたいで印象的。

東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』(2007)

これがオカンというもの

東京タワー

女手ひとつで育ててくれたオカンへの感謝の気持ちと罪悪感を感じながらも、自堕落な生活を送っていた主人公は、ようやく仕事が軌道に乗り始めた頃にオカンの病気を知る。

原作は、イラストレータ/俳優であるリリー・フランキーの大ベストセラー小説。亡き母親への想いを綴った自伝小説で、脚本を松尾スズキと一緒に手がけた。昭和から平成へと時代が移り変わる中で、母と息子の不器用で深い愛情が描かれる。

リリー・フランキーの役がオダギリジョーという違和感はともかく、樹木希林の若かりし頃を娘の内田也哉子が演じているのは、実の親子だけにしっくりしすぎて文句のつけようなし。オカンの何でもない手料理には、いつもと変わらぬ愛情がいっぱいだ。息子と手をつなぐ姿が、恥ずかしそうでカワイイ。

歩いても 歩いても』(2007)

手ごわい姑

歩いても

15年前に事故死をした兄の命日、妻子を連れて実家に帰省した主人公は、実は失業中であることを両親に話していないため、気の重い時間を過ごすのであった。

自分の実家なのに、この居心地の悪さときたら。それは、彼が死んだ兄と比較されて育ってきたことも大きく関係しているようだ。家族の何気ない会話から伝わってくる絶妙な間合い。それを深刻にではなくユーモアと悲哀を込めて阿部寛が演じて、なかなかの味わいあり。

命日に線香をあげにくる息子を死なせた男性。子供を連れて息子と再婚した嫁。彼らに対して表向きは歓迎しているが、しかし言うべきことはチクリと口にする樹木希林があまりにも辛らつ。しかし、それが人間というものだと納得させられる。キレイごとだけで済まさない監督の演出が光る。

悪人』(2010)

孫の罪を受け止めて

悪人

土木作業員として働く主人公が出会い系サイトで女性と知り合い、2人は次第に惹かれ合うようになるが、彼はある女性殺人事件と深く関わっていることが明らかになっていく。

主人公が住んでいるのは長崎で、彼女は佐賀。事件があったのは福岡。とまあ九州を舞台に繰り広げられるドラマなのだが、みんながちゃんと方言をしゃべっているのがよい。いわば愛の逃避行という息苦しくも情熱的なラブストーリー。岡田将生は当たり役だ。

容疑者の祖母という難役を見事に演じ切り、高い評価を得た樹木希林。マスコミ攻撃の矢面に立たされてとまどいながら、それでも自分は愛する孫を信じたいという気持ちに揺れ動く姿が、かわいそうで見ちゃおれん。作品に深みを与えるその演技力に脱帽。

わが母の記』(2011) 

本当のことを教えて

わが母の記

小説家である主人公は、母親に育てられなかったという過去が忘れられず、大人になってからも親子関係に距離をとっていたが、父の死をきっかけに母親と向き合うことになる。

文学史にその名を残す井上靖の自伝的小説を映画化。老いた母親との断絶を埋めようとする物語だが、軽井沢に別荘を持ち、ゴルフやビリヤードに興じたり豪華客船に乗ったりする昭和30年代の裕福な暮らしぶりも楽しめる。

少しずつ認知症が進んでいき、子供の顔もわからなくなってしまった母親。その母親に「なぜ自分を捨てたのか」と聞いてみたかった息子。家族を困らせながらもどこか可愛げがあり、結局最後には愛情だけが残っているという昭和の母を樹木希林が演じ、役所広司との演技合戦がみどころ。

ツナグ』(2012)

孫の人生を見守る

ツナグ

一見すると普通の男子高校生である主人公は、祖母から「ツナグ」を引き継ぐ者として、何らかの理由で死者との再会を望む人たちと出会っていく。

生者が死者に会いたいと願い、それを死者が受け入れれば、たった1度だけ会うことができる。その「ツナグ」は家業みたいなもので、彼はまだ見習い。しかし、彼らを会わせてしまうことは本当に救いになるのかと疑問を抱く。橋本愛のエピソードが深すぎて、ずっとモヤモヤ。

師匠でもある樹木希林は彼の悩みにアドバイスを与え、また、彼の両親が心中をした理由についてもいつか話さなくてはならないと思っていて、孫の人生に対して責任を背負っている感じ。しかし、超越した能力をフツーに使いこなす姿が、しっくりくるようなこないような。

そして父になる』(2013)

本音をズバリ

そして父になる

理想的な人生を自分の力で築き上げてきたという自負のあるエリートが、6年間大切に育ててきた息子が取り違えた他人の子どもだったことがわかり、苦悩する。

親子の絆で大切なのは、果たして血縁なのか時間なのか。家族とは一体何なのか。もちろんこの問いに正しい答えはなく、私たちはこの作品に登場する2組の家族を通して、そのテーマについて考え続ける。好対照な父親を福山雅治とリリー・フランキーが演じ、見事なキャスティングだ。

ハイソな家庭の方の祖母を演じた樹木希林。出番は短いものの、これまた世間の一般常識を代表するようなひと言をサラリと口にするので、ヒヤッとしてギクッとなる。さすが監督、使い方がうまい。子役のアドリブのような演技がリアルで、もし自分だったら……と思わずにはいられない。

神宮希林 わたしの神様』(2014)

素顔にハラハラ

神宮

70歳になった樹木希林が初めて伊勢神宮へ参詣し、そのほかの祭事に参加したり、鳥羽市の海女さんたちを守る石神様を訪ねたりする姿を映し出したドキュメンタリー。

2013年7月に行われた20年に1度の式年遷宮。それに向けて進められている神様のお引っ越し準備をからめて、樹木希林が生まれて初めて伊勢神宮に足を踏み入れるという貴重な記録映画であり、その新鮮な驚きと発見が伝わってくる。

そして何よりも樹木希林の自宅を拝見できるというミーハーな好奇心も満たされ、また、行く先々で出会う人たちとの会話において、ポンポン飛び出す率直な物言いに改めて感心。カメラ回ってますよ~。でもそこが樹木希林。彼女のこの潔さをぜひ見習いたいものである。

駆込み女と駆出し男』(2015)

私に任せなさい

駆け込み女

江戸時代の鎌倉にある東慶寺を舞台に、駆け込んでくる女性たちの聞き取り調査を行う御用宿にいる主人公が、さまざまなトラブルを乗り越えて彼女たちの再出発を手助けしていく。

そこは幕府公認の縁切寺=尼寺という環境に男が居候しているのだから、場合によっては彼自身が揉め事の原因になったりするわけである。彼は戯作者に憧れる見習い医者というちょっとめんどくさいキャラだが、演じているのが大泉洋なので、振り回される姿を安心して観ていられる。

その聞き取り調査をする宿の主人が、三代目柏屋源兵衛。男のような名前だが、これが樹木希林だ。落ち着いていて懐が深く、何か問題が起きても最良の道を見つける賢い女主人。甥という設定の大泉洋との掛け合いが面白い。

あん』(2015) 

差別はもう慣れっこ

あん

刑務所から出所後、どら焼き屋の雇われ店長となった主人公のもとに、年老いた女性がやってきて自分を雇って欲しいと懇願する。

彼女が「賃金はいらないから働かせてほしい」とあまりにしつこいので、ダメ元で粒あんを作ってもらったところ、これがもう絶品。その味のお陰で店はたちまち大繁盛になるが、あるウワサが原因となって、彼女は店を去ってしまう。

桜の季節にふらりと店にやってきて、彼に美味しいあんの作り方を教え、世間の心無い偏見によって居場所を奪われてしまうおばあちゃん。諦めと哀しみに打ちのめされ、それでも誇りを忘れず。そんな人物を樹木希林以外に誰が演じられるだろう。孫の内田伽羅との共演も話題に。

海街diary』(2015)

水を差す親戚のおばさん

海街

鎌倉で暮らす3人姉妹のもとに、幼い頃家を出て行った父親の訃報が届き、しかたなく次女と三女が葬式に出席したところ、そこで中学生の異母妹と初めて出会う。

人気コミックの実写化。「親の因果が子に報い」ということわざがよい方向へ転がったのだろう。その異母妹を四女として温かく迎えた姉妹たちは、支えあいながら共同生活を送るうちに、複雑な家庭事情に負けない強い絆を結んでいく。鎌倉の美しい四季のうつろいもみどころ。

孤独だった異母妹の人生がお姉ちゃんたちに引き取られたことで少しずつ輝き始めた頃、樹木希林演じる大叔母が登場。3姉妹が心にしまい込んでいた気持ちをグサリと言い放つ。それはわかってるよ……樹木希林は“重し”みたいな存在。それが自然すぎてじわじわくる。

海よりもまだ深く』(2016)

しかたがないこともある

海よりもまだ深く

小説家になる夢を諦め切れないまま興信所で働く主人公が、台風の夜、団地で暮らす母親のもとにたまたま集まった別れた妻と息子と一夜を過ごすことになる。

15年前に1度文学賞を受賞したというのが、中途半端な栄光で困ってしまうわけである。夢にも元妻にも未練タラタラで、しかしプライドは高いままというメンドクサイ中年男。でも彼のことを笑えはしない。こんなはずじゃなかった。年を重ねれば誰もが1度はそう思ったことがあるはず。 

狭い昭和的団地で倹約な1人暮らし。ダメな息子にちょろっと嫌味を言ったり、さりげなく人生について語ったり。孫の叶わぬ夢を聞いて悲しそうに相槌を打つ。それが樹木希林。こんなおばあちゃん、いる。自分の母親みたい。懐かしくて優しくて、涙が出そう。台風一過で浄化され、みんなが新しい一歩を踏み出せたらいい。

モリのいる場所』(2018)

なんやかんやでいい夫婦

モリのいる場所

30年間ほとんど家の外へ出ることがなく、庭の生命をひたすら見つめ描き続けたという伝説の画家熊谷守一とその妻のある1日を描く。

草木が生い茂った庭にたくさんの虫や猫が住み着き、それらの動きを何時間もじっと眺め続けるのが30年間の日課だったというのは有名なエピソードらしいが、この映画はフィクションとのこと。描くことは観察すること。庭という小宇宙にいる多くの生命は、彼にとって大切な絵のモデルなのである。

山崎努と樹木希林が夫婦役というだけで、もう面白いに決まっている。浮世から離れて我が道を行く孤高の画家の妻は、飄々とした柳のような女性。家に押しかけてくる変わった人たちを適当にあしらい、あくまでもマイペースで夫を支える。これは樹木希林そのものじゃないだろうか。

万引き家族』(2018) 

作品のためならば

万引き家族

古い平屋で肩を寄せ合うようにして暮らし、生活費を万引きで稼いでいる一家が、近所で虐待されている女の子を見かねて連れ帰ってしまう。

東京の高層マンションの谷間に取り残されたように立っている小さな家。そこに住む彼らも世間から取り残され、社会の底辺で生きているような人間だ。それでも笑いが絶えず、冬にはみんなで鍋を囲み、夏にはみんなで海に行く。

“老い”を強調するために入れ歯をはずした樹木希林は、ヌードになるより恥ずかしかったという。ニコニコ笑いながら定期的にお金をせびりに行く姿が、可笑しいやら空恐ろしいやら。実は家族の要だったおばあちゃん。樹木希林のあっぱれな女優魂に舌を巻く。

いかがでしたか?

この人が出演するのなら、ぜひ観てみたい。そう思わせる数少ない女優であった樹木希林。

多くの監督たちからラブコールを受け、作品に独特の味わいをもたらしたリアルな演技力は最期まで衰えることはなかった。亡くなる数日前、心配して見守る家族に向かって「みんなのエネルギーがうるさい。帰って」と言い放ったというエピソードが忘れられない。

ロックな生き方をしたのは、夫ではなく実は彼女の方ではなかったのか。

死後にも新作が公開され、それを観ることができるという幸せをありがとう。遺された作品がある限り、日本映画界が、そして日本中の人々があなたを忘れることはありません。でも、しばらくは寂しいです。

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