怖いだけじゃない!優しい幽霊が登場する切ないゴースト映画おすすめ5選

「映画」を主軸に活動中のフリーライター

春錵かつら

切ないゴースト映画おすすめ5作品を紹介。『ゴースト/ニューヨークの幻』『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』『母と暮せば』など。

幽霊が登場する映画……と聞けばホラー映画を連想するけれど、怖かったりグロかったりするばかりが幽霊映画じゃない!

というわけで、今回は怖さより切なさの方が余韻として残るゴースト映画をピックアップしてご紹介。怖いのが苦手な人も大丈夫……なはず。

『ゴースト/ニューヨークの幻』

銀行員のサムは、恋人のモリーにプロポーズした晩に暴漢に襲われ、一緒にいた彼女を守ろうとして撃ち殺されてしまう。幽霊となったサムは天国へは行かずにモリーを見守ることを選ぶが、彼女はサムの存在には気づかない。ある日、サムは自分を殺した男を知るが、モリーに知らせる手段もなく途方に暮れる中、一人の女霊媒師と出会う。

1990年に公開し大ヒットを記録した『ゴースト/ニューヨークの幻』。劇中歌として使用されたライチャス・ブラザーズによる1960年代のヒット曲「アンチェインド・メロディ(Unchained Melody)」は本作でリバイバルヒット。

二人で陶芸をするシーンや幽霊となったサムがコインを動かすシーンは、その後幾度となくパロディで使われ、ご存知の方も多いハズ。パロディのせいで見くびられがちかもしれないが、脚本も秀逸でこの年のアカデミー脚本賞を受賞している。

恋人を守ろうとする幽霊・男性銀行員を演じたのは今は亡きパトリック・スウェイジ。恋人のモリーを演じたデミ・ムーアが抜群に可愛い。女霊媒師を演じたのはウーピー・ゴールドバーグ。哀しくなりがちなストーリーの中で笑いをもたらす彼女のバランス感は素晴らしく、脚本賞に加えこの年のアカデミー助演女優賞を受賞した。

近くにいるのに触れられない、語り合えない。死んだ後も恋人を守るために奔走するサムは、格好悪くて格好いい。生きていたときに言えなかった「愛してる」が、物語に重要な意味を添えます。切なくて、それはそれはロマンチックな極上のラブファンタジー。未見の方は騙されたと思って一度観て欲しい一作。

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『母と暮せば』

1948年8月9日。長崎で助産婦をして暮らす福原伸子の前に、3年前に原爆で死んだはずの息子・浩二がひょっこり現れる。その日から浩二は度々現れては伸子と様々な話をするようになる。

二人の気がかりは残された浩二の恋人・町子のこと。彼女の幸せを気にかけながらも、その幸せな母と息子の時間は永遠に続くと思われたが……。

小説家・劇作家の井上ひさしが晩年に構想していた、「ヒロシマ」「ナガサキ」「沖縄」をテーマにした「戦後命の三部作」の遺志を山田洋次監督が引き継いで制作された本作。「ヒロシマ」が舞台である井上ひさしの戯曲「父と暮せば」と対の形となっていて、第39回日本アカデミー賞で11部門を受賞した。

母と暮せば

本作で登場する幽霊は長崎の原爆で死んだ医学生であり、主人公・伸子の息子である浩二。本作で“山田組”初参加となる二宮和也が演じ、学生服も違和感なく着こなしている。母親の伸子を演じたのは吉永小百合、浩二の恋人・町子を黒木華が演じた。

3年かかって息子の死を諦めた頃に現れる息子。逝く者と逝かれる者、そのどちらも苦しく辛い。ましてや奪われた命ならなおさらだ。日本にしか描けない戦争の非情さ、そして母と息子の愛情が描かれたドラマとなっている。

『永遠のこどもたち』

孤児院で育った経験を持つ女性ラウラは夫のカルロスと息子のシモンとともに、長らく閉鎖されていた孤児院を買い取って、障害を持つ子どもたちのホームとして再建しようと移り住む。忙しくする中、息子シモンは空想上の友だちを作って遊ぶようになる。そして入園希望者を集めたパーティーの日、シモンは忽然と姿を消してしまう。

ギレルモ・デル・トロがプロデューサーを務め、2007年に製作された本作『永遠のこどもたち』は、いまや『ジュラシック・ワールド 炎の王国』ですっかりメジャー監督の仲間入りを果たしたフアン・アントニオ・バヨナ監督初の長編作品だ。

永遠のこどもたち

スペインの海辺に立つ広大な屋敷を舞台に、行方不明になった息子を探すうち、ラウラは彼女自身の過去と向き合うことになる。彼女が出会うのは、大人になりたくてなれなかったかつての仲間たち。彼らが本作に登場する幽霊だ。

彼らは永遠にこどものまま、「だるまさんが転んだ」などをしたりして無邪気な時を過ごしている、愛しく切ない幽霊たち。

霊媒師の「死の近くにいる者は、そのメッセージを受け取りやすい」という言葉の意味を知るときに走る衝撃。母親の深い愛をサスペンスフルに描いた、鎮魂と救済の物語だ。

『ラブリーボーン』

1973年、アメリカ・ペンシルバニア。14歳のスージー・サーモンは、トウモロコシ畑で何者に襲われ殺されてしまう。警察の捜査で見つかったのは大量の血液反応が出た手編みの帽子。そこで家族はスージーの死を悟る。

一方、自分の死を理解したスージーは天国への誘いを断り、犯人探しに明け暮れる父と愛娘を守れなかった罪悪感に苦しむ母の姿、やがて崩壊していく家族を目の当たりにする。

本作で登場する幽霊は14歳で殺されてしまった少女・スージー。スージを演じるのは、『ブルックリン』『レディ・バード』と、いまやイギリスを代表する女優としてめざましい活躍を見せるシアーシャ・ローナン。父親役をマーク・ウォールバーグ、母親役をレイチェル・ワイズが務めた。

ラブリーボーン

原作は全世界30か国以上で1,000万部以上を売り上げたアリス・シーボルドの同名小説で、スティーヴン・スピルバーグが製作総指揮、『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソンが監督を務めている。

興味深いのは死んだ少女の成長が描かれていること。残された家族にとっては救いのないドラマであったとしても、彼女の成長が一筋の光になる。「憎しみ」や「悲しみ」は生きる者だけが持つ特権なのかもしれないと考えさせられる物語。

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『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』

田舎町の小さな一軒家に住む若い夫婦のCとM。幸せな日々を送っていたが、妻のMはこの家から引っ越したい気持ちがあり、一方夫のCはこの家になんとなく執着があり、二人はなんとなくぎくしゃくしていく。ある日、夫のCは自宅前で交通事故に遭い死んでしまう。妻のMは病院でCの亡き骸と対面して病院を去るが、その直後、死んだはずのCはシーツを被った姿で起き上がる。

2018年11月17日に公開された本作で登場する幽霊は、レトロな雰囲気を感じるシーツ姿のゴースト。この古風で懐かしい雰囲気を引き出すために、本作は全編を通して古典的な1.33:1というスタンダードサイズのアスペクト比で撮られている。加えて画面の四隅は湾曲に欠けたフレームを採用し、シッチェス・カタロニア国際映画祭では撮影賞を受賞した。観客は本作を観るうちに古いスライド写真を観ているような気持ちになる違いない。

ゴースト

幽霊となるCを演じたのは、ケイシー・アフレック。Mをルーニー・マーラが演じた。幽霊となったCの存在に、妻はまったく気づかない。そんな中、Cはただ妻を待ち、妻の姿を見守り、佇む。たとえ妻が自分を失った悲しみを乗り越えて、前を向いて生きて行こうと旅立った後でさえも。生きている人間からすればその姿は優しく、そして哀しい。愛する人との近くて遠い距離を描く異色のゴースト映画だ。

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最後に

怖いばかりが幽霊ではない!  “幽霊”と聞いただけで敬遠してしまう人にも楽しんでもらえる切ないゴースト映画5本をご紹介した。この他にもまだまだある面白いゴースト映画は、またの機会にご紹介したい。

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