甘い、甘いプロポーズの台詞ではなく、高杉真宙、加藤諒、渡辺大知が映画『ギャングース』出演にあたって、入江悠監督から命じられた言葉だという。裏社会を生き抜く元犯罪者たちを演じる彼らが、息を合わせるためというより、危険な立場に身を置く命を預け合うモノ同士となるため、「家族になる」ことは作品のスタート地点であり、必然だった。
舞台公演の本番が長らく続いている高杉は、本作のプロモーションではなかなか加藤、渡辺の両者に会う時間がなかったと言い、公開直前のタイミングでインタビュー取材となったこの日、「ようやく」の再会を果たす。その瞬間の彼らは、ちょっとした感動のやり取りを見せた。高杉がふたりの姿を確認すると、大きな瞳をさらに大きく見開き「会いたかった、会いたかった、会いたかった……!」と何度も何度も訴えかけ、加藤が「僕もだよ~~、マッピー!!」とぐいと顔を近づけ、その様子を眺める渡辺が破顔する。“ビジネス家族”では存在し得ない、信頼と絆、同じ釜の飯を食らった空気気が満ちており、劇中のサイケ、カズキ、タケオに重なり、ぐっとくる。
これまで交わることのなかった3人が、自然と呼吸を合わせ、ぎゅっと身を寄せ合った日々は、「キラキラ映画」の“キラキラ感”を超えるような青春だったのではないか。インタビューで聞いた。
――お三方そろってのインタビューは初だそうですね?
渡辺 ついに!
高杉 やっとそろった!
加藤 本当に!ずっとそろわなくて、今日初!
高杉 撮影、終わって以来……あ、1回会いましたよね?
加藤 1回、お茶したんだよねえ。
高杉 うん。正式にはレコーディング(※主題歌「CRYBABY」の)が最後でしたか?
渡辺 そうだ!
加藤 東京国際映画祭もね、実際はいなかったけど、僕たちはマッピー(高杉さん)はそこにいると思って立っていたから!
渡辺 そうそう、いるものと思って。
――その心地いい連帯感はどこから生まれたんですか?
高杉 撮影中、僕はタメ語で話させてもらっていたんですけ……
加藤 いいんだよ!? 今も。いいじゃん!
高杉 久々にみんなに会うから、緊張しちゃって(笑)。本っ当に会いたかったっす。
加藤 なんかちょっと学生の夏休み明け、みたいな感じだよね。「お前、そういうキャラだっけ?」みたいなね(笑)。
渡辺 (笑)。
――『ギャングース』劇中でのサイケ、カズキ、タケオという関係性がそうさせたんですか?
渡辺 そんな、業務的な(笑)。
加藤 ビジネスじゃないですよ(笑)。仲良くなるのは、本当に自然だったよね? その前に、監督には「家族になってほしい」と言われて。
高杉 うん。
渡辺 「なってほしい」と言いますけど、撮影で毎日のように一緒だったから、意識しなくても勝手に兄弟みたいな気持ちになっていきましたね。
加藤 ずっと一緒だったもんね。
高杉 ずーっと一緒でしたね。
――過去のインタビューで、入江監督の現場は「ギリギリ」「ハード」というお話も聞きましたが、今回は?
高杉 皆さんに言われますが……。
加藤 「大変」と言われますけど、入江監督の作るものを「みんなで良くしよう」という気持ちが全員にあったので、苦とか嫌な大変さではなかったです。すごくいいチームでした。
渡辺 うん。スタッフさんも総出でみんなで雪かきしたり……。
高杉 しましたね。
渡辺 全体がひとつの塊となって動いている感じがあって。例えば、ちょっと無茶な要望だとしても「入江監督のためだったら、全力で頑張ってやろう!」とみんながこの映画に向かっていっている感じがありました。パワーのある現場でした。
高杉 本当に……監督がちゃんと柱でいてくださって、みんながみんな、キャスト、スタッフさんも皆さん、熱い人たちばかりだったんですよ。監督が言うからこそ、みんな真っすぐ信じてついていける感じがありました。自分も楽しくやらせてもらいましたし、このカンパニーだからこそ、いい作品ができるんだろうな、と思える現場でした。
――お三方のシーンで、特に印象に残っているのは?
高杉 タタキ(※窃盗、強盗の隠語)のシーン。すごく絆が強まっていく感じがありました。
渡辺 うん。実際に200キロくらいある金庫を三人で運んでいるので、演技とかじゃなくて、本当に大変で(笑)。「せーの」と言っているだけじゃなくて、本当に三人で息を揃えないと動かないっていう。動かすこと? ?命をかけていると、「いい表情をしてやろう」とかは必要なくなっていきますよ。演技を超えた、三人で呼吸を合わせることを日々やっていっていましたね。
加藤 結構リアルを求められているところが多かったですね。僕たちがハンマーで殴ったりするシーンも、本当に当てないといけなくて、怖かったけど……。
高杉 そうですね。工具で切ったりとかもしていましたよね?
加藤 そう! あれが最初なかなかうまくいかなくて、でも最終的に1回で切れたりして「あ、自分、成長した」って思った(笑)。
渡辺 「タタケ」るって(笑)。
――改めて、ご一緒した感想など一言ずついただけますか?
加藤 僕、マッピーとは2回目なんですけど、1回目のときはあまり対面する機会がなくて。今回は人見知りっていうのもなくて……でも、不思議ちゃんだね。
高杉 え? 僕、不思議ですか(笑)?
加藤 だよー! だって僕のマネージャーさんの車で一緒に帰ったとき、りゅうちぇるくんの物まねをするとか言いはじめて、「マッピーだよ~」って急に言ったじゃん!
高杉 え、え、え!?
渡辺 それ、言ってた!!
加藤 それで「あ、高杉くんってマッピーなんだ……」と思って。それからマッピーって呼んでいるんです。
高杉 待ってください、僕、そんなこと言ってました(笑)!? めちゃくちゃ恥ずかしいです……。
渡辺 疲れを通り越してハイになってたんじゃない(笑)? そんな面があるのも意外ですけど、高杉くんは人一倍真面目な努力家、という印象がありますね。……って言っておかないと、本当に不思議ちゃんになっちゃうから。
全員 (笑)。
――お二方だからこそ知ることができた、高杉さんの新しい一面だったと思います。
加藤 あと、マッピーはストイックでごはんを食べていなかったよね。
渡辺 だから「真面目だ」とは思わないけど、確かに印象的だったのは、毎日のように金庫を動かしたり人を殴って、体力的に消耗する現場だったんですよ。俺らは必死で晩ご飯に食らいついている中、高杉くんは「今日、俺、食わんわ」と言っていて。次の日に牛丼を食うシーンがあったからなんだけど。
高杉 そうなんですよ……。
渡辺 「今食っちゃったら、(気持ちが)出てこない気がする」と。……そのとき、俺も箸を置きそうになりましたよ(笑)。
加藤 「ああ……」ってね。
渡辺 けど……「俺は食うけど……」って(笑)。でも牛丼のシーンが終わったら、がんがん食ってたね(笑)。
加藤 いつもコートの内ポケットにお菓子が入っていたしね。
――いろいろエピソードを披露された高杉さんは、お二方と共演していかがでしたか?
高杉 今回がっつりの共演は初めてだったので、しっかりとお二人のことを知ることができました。諒くんは現場のムードメーカーで、僕らを引っ張ってくれました。どんなに大変なときでも、明るく務めてくれて。大変な撮影ではあったので、諒くんに救われた部分はたくさんあったんじゃないかな、と思ったんです。
渡辺 うん。加藤くんが本当にムードメーカーであり、一番気を遣ってくれて。
高杉 そうです。めちゃくちゃ気を遣ってくださる。
加藤 やめてよ~~!
渡辺 僕らは加藤くんに甘えていたところも大きいんですよ。「自分だけのことを考えたいな」と思うときも、あったりするじゃないですか。そういうとき、加藤くんがその空気を察して、スッとやってくれるんです。ずっとグイグイくるタイプの明るい方もいるけど、加藤くんは違って、「ありがたいな……」と甘えさせてもらいました。
加藤 え~~? え~~!
――いいお話がどんどん出てきますね。
高杉 大知くんに関しては、僕らがそうやってワチャワチャしているのをまとめてくれる存在でした。本当に大人で、僕は大知くんの話を聞くのが、すごく好きで。
加藤 ね! 面白いんだよね。
高杉 本当に、面白い話をいっぱい教えてくれて。
渡辺 いやいやいやいや……。
加藤 大ちゃんは映画の知識がすごくあって。『ギャングース』の台本を読んだときに、いろいろな映画のオマージュを感じるシーンがあったりして、大ちゃんが「○○の映画っぽい感じだね」とか教えてくれてね。
渡辺 それは……ちょっと恥ずかしい(笑)。
高杉 お勧め映画をいっぱい教えてもらったりもしましたよね。
――最後に、『ギャングース』が皆さんにとってどのような位置づけの作品になったか、お聞かせください。
高杉 ここまで言っていいかはわからないですけど……こんなにキャストとスタッフの皆さんで一致団結して作った映画は、ないんじゃないかなって。そう思うくらい苦楽を共にしたからこそ、『ギャングース』の世界観とマッチして、より良い作品になっていったんじゃないかな、と思っています。作品を観てもらったりすることも、この三人で取材をしてもらったり、舞台挨拶に立ったりすることも全部、僕はずっと楽しみにしていました。今日は本当にうれしいです、よかったな、と思っています。
加藤 僕にとっては、映画でトリプル主演を初めてやらせていただいた作品。これまでポップでテンションが高くて、という役が多かったので、全然違うカズキという人物は、お芝居としてもすごい挑戦でした。役者としてのターニングポイントになるような作品になれたんじゃないかな、と思います。得るものがいっぱいあったので、『ギャングース』の後に出演する作品では、この現場で学んだことを思い出しながらやったりしているんです。僕の役者人生において、本当に大きな作品になりました。
渡辺 『ギャングース』は、普段なかなか描かれない人物が主人公になっていて、僕自身、原作や脚本を読むまで、日本にこういう人たちが生きている事実を知らなかったから、こんなに明るくエンターテインメントとして映画に残してくれていることが大きいことだな、と思っています。いち観客としても、こうした映画が残されているのはすごくうれしいことですし、自分が関わらせてもらえて「本当によかった」という気持ちです。今回、主題歌も担当させてもらっていて、ふたりにもコーラスで参加してもらって。そんな映画の撮影の後も、モノづくりの一端を担わせていただけた体験が、自分としてはすごく光栄に思っています。(インタビュー・文=赤山恭子、撮影=岩間辰徳)
映画『ギャングース』は2018年11月23日(祝・金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー。
(C)2018「ギャングース」FILM PARTNERS(C)肥谷圭介・鈴木大介/講談社
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応募締切 2018年12月6日(木)23:59までのご応募分有効
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