【ネタバレ】映画『ミッドナイトスワン』結末どうなる?友人の飛び降りの原因は?本当のエンディングとは?徹底考察

わざわざ聖地で結婚式を挙げた映画ドラマオタク

りょこ

草彅剛主演の映画『ミッドナイトスワン』をネタバレ解説!世界の片隅で孤独を抱えて生きてきた二人が出会うことで、運命が動き出す切なくも美しいラブストーリー。細かな心情描写とラストカットを徹底考察!

2020年に公開され、第44回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した『ミッドナイトスワン』。公開当時から話題を集め、「何度もミッドナイトスワンを見に行く」という意味の「追いスワン」という言葉も生まれたほど。

2023年5月からNetflixにて見放題配信が開始され、改めてご覧になる方も多いのではないでしょうか? この記事では、心情描写に着目しながら、ネタバレありで考察します。

ミッドナイトスワン』(2020)のあらすじ

ミッドナイトスワン

故郷の広島を離れ、性別適合手術を受けることを夢見て、新宿のショーパブのステージに立つトランスジェンダーの凪沙(草彅剛)。重い前髪のロングヘアと、ベージュのトレンチコートに赤いハイヒールで、自分を武装している。ある日、育児放棄にあっていた少女・一果(服部樹咲)を預かることに。世間の片隅に追いやられ、生きづらさを抱える凪沙と、自分らしさをひた隠し、孤独の中で生きてきた少女が出会う。

はじめは反発しあう二人だったが、お互いの人生が共鳴したことをきっかけに、凪沙の中にある感情が芽生えていく。

※以下、ネタバレを含みます。

凪沙に芽生えていく母性

養育費を目当てに一果を預かった凪沙。最低限の手続きを済ませて、一果に時間とお金をかけるつもりはなかった。一方一果は、道で聞こえてきたバレエ音楽に導かれるように、バレエ教室への門を叩く。バレエを習いたくても、凪沙に言うことはできない。一果はバレエの月謝を工面するため、バレエ教室で知り合った桑田りん(上野鈴華)に誘われ、怪しい撮影バイトに参加するように。撮影バイトの現場で警察沙汰になり、凪沙にも、りんの母親・真祐美(佐藤江梨子)にも、ばれてしまう。誰にも本心をいうことなく生きてきた一果。バレエが習いたくても、叶わないことを目の当たりにさせられ、自暴自棄になる一果に、凪沙は自分と同じ孤独を感じる。

一果のバレエの才能を実感した凪沙は、一果にバレエを続けさせるために、行動し始める。バレエの月謝を工面するために、一般職の面接に行ったり、一果に料理を振る舞ったり。得意料理のハニージンジャーソテーは、一果のほうが多く取り分けてある。野菜も食べなさいと諭す表情は、一果への愛情にあふれていた。

凪沙の中には、一果への母性が芽生えていた。バレエの先生・実花(真飛聖)から、「お母さん」と呼ばれたら、破顔してしまうほど嬉しいのだ。心を許し合って、軽口を叩きながら、バレエの練習をする二人には、母娘のような関係がうかがえる。お互いへの愛情が感じられる夜空の下のバレエの練習シーンは、作中でも屈指の名シーンだろう。

一果のために、男性として力仕事を始める凪沙。ヘルメットに書く名前は、男性であったときのもの。女性として生きたい自分を曲げてでも、一果の夢を支えたい。凪沙の痛いほどの愛情が伝わってくる。一果は凪沙の想いを受け止めて、バレエの練習に励んでいく姿が印象的である。

一果の友人・りんが飛び降りた理由とは?

作中で最も母性を持って、娘と接していたのは凪沙だろう。一方で、一果の友人であるりんの母親は、自分の夢を娘に押し付け、娘自身には興味がないように見える。怪我をしてバレエを続けられなくなったりんに対して言い放つ「バレエを取ったら何も残らない」という言葉が、りんには重くのしかかる。凪沙と一果が徐々に築いていく愛情深い母娘関係と対比するように、りんの母親からは娘への愛情が感じられない。

物語の中盤でりんは“「アルレキナーダ」よりコロンビーヌのヴァリエーション”を踊りながらビルから飛び立つように身を投げてしまう。飛び降りる瞬間は、一果がコンクールで凪沙らに見守られながら踊るシーンと重ねて描かれる。りんも踊り始めは両親や周囲から注目されるが、パーティーの主役が登場したことにより、周囲からは人が居なくなり、誰も飛び降りる瞬間を目撃していない。りんの飛び降りのシーンからはバレエが踊れなくなったことではっきりと母親からの愛情の欠如を感じ取り、無価値である自分に絶望した様子が描かれていると考察できる。

直後に描かれる出番を終えた一果の髪の毛を愛おしそうに梳かす凪沙の姿からはその母性がより際立つ。一果とりんの母親との関係性に着目すると血の繋がりやジェンダーを超えた“母娘の関係”を強く感じとることができるだろう。

結末はどうなる? 凪沙が一果に残したもの

バレエのコンクールで、一果はこれまでにないプレッシャーを感じ、自傷行為をしてしまうほど追い詰められていた。緊張で立ちすくみ、涙を流しながら「お母さん」とつぶやく。そんな一果を見て、客席から一果の母親・早織が現れ、壇上で一果を抱きしめる。その姿を見た凪沙は、いまの自分では一果の母親にはなれないと、その場を去り、タイで性別適合手術を受ける。

早織と共に広島へ帰った一果は、前と変わらない生活を送っていた。腕の自傷痕はくっきりと残り、大きなストレスを抱えながら生活をしていることがうかがえる。

女性の身体になった凪沙は絶対に帰りたくなかったであろう故郷の広島へ、一果を迎えにいく。

「こんなところにいちゃダメ。踊るのよ。」

一果のバレエの才能に気付き、自分を曲げ、身を粉にして働いていた凪沙だから言える言葉だ。早織から罵倒されるものの、このことがきっかけで一果はもう一度、バレエに向き合い始める。

外国のバレエ学校への入学証を手に入れ、中学を卒業した一果。早織も改心しているようで、よい母娘関係が築かれていることがわかる。卒業式のあと、一果は新宿の凪沙の家を訪ねる。そこには、術後の管理が悪くて出血が止まらず、オムツが手放せなくなって寝込む凪沙がいた。

一果がバレエで結果を残していることに安心した凪沙は、最後に白鳥の湖を踊る一果を眺めながら、生涯を閉じる。凪沙は最後に海で、幻覚を見る。それは、過去に叶えられなかったスクール水着を着る自分の姿。女性として生きたかった自分が、一果の母親として役目を遂げられた。凪沙が、心から安心したことが見せた幻覚だろう。

数年後、長い髪にベージュのコート、赤いハイヒールで外国の街を歩く一果。外国のコンクールで「見てて。」と呟き、凪沙との生活を思い出しながら、「白鳥の湖」を踊る。

凪沙は、一果の未来に対して大きな影響を与えた。バレエが続けられるように、凪沙自身が犠牲になっていたことも、一果は知っている。広島に連れ戻されたあとも、凪沙からの言葉がなければ、一果はバレエを続けることを諦めていただろう。早織の改心も、凪沙の登場があったから、叶ったのかもしれない。どんなときも凪沙は、一果のバレエへの道を切り開き続けていたのだ。

少し心細くなってしまう外国の街で、あの頃の凪沙と同じ格好で、胸を張って歩く一果。一果にとっては、強く、たくましく、美しい女性の象徴はあの頃の凪沙なのだ。

エンドロール後のラストカット

白鳥の湖を踊る二人に、おじいさんが話しかけるシーンがある。

「朝がくれば、白鳥に戻ってしまう。」

二人が共に暮らした数ヶ月は、自分らしく生きられない虚しさを抱えていた二人が、真の姿に戻れる時間だった。凪沙は女性として、母としての人生を、一果は自分らしさとバレエを取り戻す。早織の登場によって、白鳥に戻されてしまう二人。それでも凪沙は自分を犠牲にして、一果を真の姿へと導いた。

この作品は、エンドロール後に数秒間のラストカットがある。

凪沙が過ごしていた夜の世界で、美しいバレエ衣装を着て、寄り添うように踊る一果の姿。一果をうっとりとした幸せそうな表情で見つめる凪沙。本編のラストは辛く悲しいものだったように感じるが、この美しいラストカットは凪沙と一果の関係を象徴するものだろう。

凪沙の愛情があったから、一果は世界に羽ばたく白鳥へと成長した。今も二人の間には、精神的な母娘関係が結ばれている。

筆舌しがたいほど美しいラストカット。ぜひエンドロールで止めずに、最後まで見てほしい。

(C)2020「MIDNIGHT SWAN」FILM PARTNERS

※2023年5月31日時点の情報です。

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