【2018年私のNo.1映画】俳優・村上虹郎×芸人・村上純、2018年もっとも心に残った映画は…

映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

2018年も残すところあとわずか。年の瀬が迫ったいま、今年の映画を振り返る時期になりました。2018年も1,000本以上の映画が、日本国内で公開されました。皆さんは、そのうち何作品をご覧になったでしょうか。

FILMAGAでは昨年、各界の著名人や有識者による「2017年私のNo.1映画」を発表。たくさんの方々に、その年もっとも心に刺さった映画を紹介していただき、大きな反響を呼びました。

そこで2018年の今年も、FILMAGAが注目する各界のみなさまに、「2018年私のNo.1映画」を教えていただきました! あの人やこの人の心に残った作品は何だったのか……じっくりご紹介してまいります。

w村上

記念すべき1本目は特別バージョン「W村上編」と称し、俳優の村上虹郎さん&芸人の村上純さん(しずる)にご登場いただきました! 本年、ひょんなことから出会ったという二人は、職業や年齢の壁をものともせず、あれよあれよという間に一気に仲を深めたそう。共通項の多い虹郎さんと純さん、そのうちのひとつは「映画好き」という点。興味深いそれぞれの「2018年私のNo.1映画」を深い考察を絡めて語り合っていただきました。

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村上虹郎さん

(俳優)

■プロフィール

1997年生まれ、東京都出身。カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品『2つ目の窓』(14)で主演を務め、俳優デビュー。17年公開『武曲 MUKOKU』で、第41回日本アカデミー賞優秀助演男優賞受賞。近年の出演作に、『犬ヶ島』(18・声の出演)、『ハナレイ・ベイ』(18)、『銃』(18)などがある。

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村上純さん

(芸人・しずる)

■プロフィール

1981年生まれ、東京都出身。NSC東京校9期生。2003年、池田一真とお笑いコンビ「しずる」を結成。

――本題に入る前に、まず、おふたりの出会いからお伺いさせてください。虹郎さんのほうから純さんにアプローチされたという話は本当ですか?

村上虹郎(以降、虹郎) そうですね! 仕事で吉本さんの本社にお邪魔したとき、「芸人さん、どこかしらにいるんじゃないか!?」って、好奇心でキョロキョロしていたんです。そうしたら純さんがいたので、「大物、いたあ!!」と思って。

村上純(以降、純) いやいや、大物じゃないでしょ(笑)

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虹郎 僕、しずるさんのコントが元々すごく好きだったんです。家でテレビを観る習慣はそんなにないんですけど、アンテナを張って、本当に気になった人たちだけ、動画サイトでワーッと一気に観るんです。しずるさんのコントはすごく観ていたし、単独ライブにも行きました。

 すごいですよねぇ。うれしかったです、そう言ってくれて。一番最初、挨拶をさせてもらったとき、第一声で虹郎くんが「好きです」と言ってくれたから、我が耳を疑ったんですよ。

虹郎 (笑)。

 「嘘でしょ?」と思って。まず僕のことを知ってくれていることにびっくりだし。さらに、「好きです」だと、2ステージぐらい上の話になっているから。虹郎くんは、嘘をつくような目をしていなかったので、都合よく本当だと思って、「ありがとうございます」って言いました。

――そんな出会いからスタートされて、今やサシで飲みに行くほどの仲の良さなんですよね。何がそんなにふたりを近づけたんでしょうか?

 とにかく、共通項が多すぎるんですよ。まず、名前。虹郎くんのお父さん(※村上淳さん)と僕が同じ“ジュン”でしょう。

虹郎 しかも、うちの親父と住んでいるとこも一緒。

 そう、そう。

虹郎 もう怖いでしょう(笑)?

w村上

 まだあるよ。虹郎くんの誕生日が3月17日。これ、僕の母親の誕生日と一緒なんですよ。

虹郎 そうしたことが積もれば、大きなコンボになります(笑)。あとは、又吉(直樹)さんの存在も大きいですよね。

 確かに。もともと僕が一番お世話になっている先輩が又吉さんなんですけど、虹郎くんもお仕事されたって聞いて。

虹郎 寺山修司さん原作の「書を捨てよ町へ出よう」という舞台に出演した際に、映像で又吉さんが出演しているんです。それと、来年から始める連載の第1回の言葉を、又吉さんに書いていただいたんです。本当にいろいろな縁があるなあって。

――聞けば聞くほど、ディープにつながっていきますね。

虹郎 本当に、そうですね。純さんは、すぐ「運命だ」って言うんです(笑)。

 今お話したくらい、いろいろな話がたまってくれば、ぎりぎり「運命」と言っていいか、いけないかぐらいのラインですけど、僕1~2個目ぐらいの共通点で、すぐ「運命だ」って言っちゃうから(笑)。

虹郎 軽い男みたいですね!(笑)

 だって、UAさん(虹郎さんの母)もさ、「甘い運命」という名曲を歌っていますから!

w村上

――重なり合った運命の中、こうして対談と至ったわけです。そして、純さんの「2018年私のNo.1映画」が、虹郎さん主演の『』なんですね。

銃

 とにかく、とにかくよかったです。

虹郎 うれしいです。何でか、聞きたいです。だって(パンフレット用の)コメント、「わからない」って書いて濁してますよね(笑)?

 違う! 濁してるって言うの、やめて(笑)! 説明させてください!

すごく真面目に感想を言いますけど……、コメントに準じて言うと、主人公のトオル(※虹郎さん演じる)が銃を持つことによって、「何で銃を撃っちゃいけないの」、「何で人を殺しちゃいけないの」という根本的な疑問に向き合うんです。それはすごく極端な例ですけど、似たようなことは身の周りでたくさんあるなって。これまでは、何となく法律とか、道徳とか、マナーとかで、良い・悪いで便宜的に答えを出していただけだと。『』を観たときに、「殺人罪だから駄目」ということにあぐらをかいていただけなんだと思ったんです。わからないことって世の中にたくさんあるのに、「わからない」と言うのが、年を取れば取るほどどんどん恥ずかしくなってくるし、言いづらくなってくる。でも、「わからない」ことを理解することも大事なんじゃないかな、と気づかせてもらったので、コメントには「わからない」と書いたんです。

w村上

虹郎 なるほど……!

 そう気づかされましたし、この映画があってくれたことがよかったって。あとは、モノクロ映像にもしびれました。どんどん没頭していく感じ……画の力がすごく強くて、「うわ、うわ、うわ、うわ!」と進んでいくから、ちゃんと最後まで「やばく」て。これを興行の映画でやっていること自体がとんでもないことだ、と感じました。全部観終わった後の爽快感と不快感みたいな……両方あったのが、たまんなかったですね。

――すごい熱量の『』に対する感想でしたが、もろに受けて虹郎さん、いかがですか?

虹郎 いや、もう壮大すぎて……!

 いやいや、違う。やめてよ、やめてよ。

虹郎 ふふ。でも、やっぱり聞いていて楽しいです。映画は、その瞬間、時代、そのときに集まった人たちの想いが刻まれていると思うんですけど、そこに投影される、観ている人たちの人生のほうが面白かったりもする。映し出されやすい映画であることが、この『』の面白さかなって思うんです。それは「反射」という言葉にもできると思っていて、知り合いの演出家の方も言ってくださったのですが、これは銃とトオルの反射の物語であって、銃というリフレクションによって、周りの人間たちと彼の距離感が映し出される、と。僕は、銃という存在は愛人というか、恋人のように扱っている意識でしたけど。

――そんな虹郎さんの「2018年私のNo.1映画」は『太陽の塔』ということですが。

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虹郎 まず2018年に公開された映画は、邦画では『』もですが、『万引き家族』、『カメラを止めるな!』、『寝ても覚めても』とあって、オスカー系は『スリー・ビルボード』、『シェイプ・オブ・ウォーター』、『ウィンストン・チャーチル(/ヒトラーから世界を救った男)』というラインナップ。こうして見ても、バランスがいいなと思うんです。どのジャンルを観ても、すごく洗練されているし、アイコニックなものが、今年はすごくあったんじゃないかな、と。すべてがかぶらないなあ、と感じていたんです。

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虹郎 『太陽の塔』を選出したのは、もともと僕、岡本太郎さんが好きなんです。太郎さんって「芸術は爆発だ」という言葉のインパクトも手伝って、「情熱的な人」のイメージがあるじゃないですか。けど、ご自身は実はすごくインテリで、めちゃくちゃ頭がいい方で、すごく左脳的に、どのタイミングでどの言葉を発するべきかを考えられていたんです。……ということを知った上で『太陽の塔』を観ると、やっぱり素晴らしかったです!

 そうなんだね!? 気になるな。

虹郎 本当に面白いですよ! とにかくいろいろな偉い大人たちや学者たちが、みんな少年のような顔をして、なぜ「大阪万博」というものがあって、ほかのものは全部撤去されてしまったのに、太陽の塔だけ残っているのかって、みんなが解明しようと頑張っているんです。あの存在の理由がわからない、でも、どうにか言語化しようとしている。素晴らしいドキュメンタリー映画です。

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――せっかくなので、おふたりのベスト2、3をそのまま聞きましょうか。一言ずつ理由も添えてください。

 おお、僕は松岡茉優さん主演の『勝手にふるえてろ』。公開が2017年の年末で20 17年ベストに入れられなかったから、2018年に持ち越しさせてください! 大九(明子)監督と松岡さんの親和性が高すぎました。大九さんがやらせているだろう演出と、松岡さんのナチュラルな演技の、どこまでがト書き、台詞で、どれぐらいの計算でやってんの、みたいな。そのくせ、映画の枠組みとしての構成や遊び心のバランスがめちゃくちゃよくて、もうニヤニヤニヤニヤして、ずっと観ていました。おこがましい話ですけど、コントをやる人間としては、すごい嫉妬しまくった作品でもありました。いい意味で作為的じゃないから、どこを切り取っても「この映画って同じような顔をしてるんだろうな」みたいな感じがよくて。

虹郎 面白かったですよね。

 うん。だから、たとえ変なことが起きても、主人公の行動が理解できてなくても、観られる。それこそ、本当に『』と一緒で「こういう世界観だから」と、ずっと観ていられるんです。全部が自然だから。本当に最高でした。

w村上

――めちゃめちゃ素敵な感想および解説なんですが、すみません、お時間の関係で……一言でお願いします。

虹郎 一言ずつで表現するって難しいですよね(笑)?

 難しいよ! もう全然一言にならなかったし(笑)。ベスト3の『万引き家族』は……外せないです。本当に、1シーンだけを挙げるなら、樹木希林さんの無言の海岸の表情。あれを観られただけで、もう……です!

虹郎 僕は『寝ても覚めても』と『犬ヶ島』をベスト2、3に選びました。濱口竜介監督が大好きで、いつか絶対作品に呼んでもらいたいと思っています! 『寝ても覚めても』はめちゃくちゃ良い作品なんですけど、“好き”な感じではないんです。だけど、観た後に残る後味の悪さが本当に素晴らしい。もしかしたら誰かにとっての『』もそうかもしれないっていう感覚でいうと、余韻が残る映画としては今年のNo.1ですね。

w村上

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虹郎 ウェス・アンダーソンの『犬ヶ島』は僕、ちょっと声優で出演させていただいているのですが、これは世界の人が観て「面白い、いい日本像」になっていると思います。日本人としてはフィクションというものを前提に観るといいかもしれないです。完成度が高すぎますし、一流しか揃っていない人たちの感覚って、やっぱり素晴らしいですから。(インタビュー・文=赤山恭子、撮影=林孝典)

村上虹郎さんの最新情報

映画『チワワちゃん』(二宮健監督)が1月18日(金)より公開。5月には舞台「ハムレット」にフォーティンブラス役で出演予定。

チワワちゃん

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(C)2018 映画『太陽の塔』製作委員会,(C)吉本興業,(C)2019「チワワちゃん」製作委員会

※2020年12月18日時点のVOD配信情報です。

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