日本歯科医師会の全面協力のもと製作、歯科医療をテーマとした映画『笑顔の向こうに』が、全国のイオンシネマにて公開中だ。本作は“歯科医療”という日本映画史上稀なテーマではあるものの、第16回モナコ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品され、エンジェルピースアワード(最優秀作品賞)と、共演の丹古母鬼馬二が助演男優賞を受賞するというダブル受賞の快挙を果たしており、国内外で注目を集めている一作。
その公開を記念して主演の高杉真宙と、ヒロインの安田聖愛にインタビュー。若い主人公が悩み葛藤する姿を同世代の観客に届けたいという作品に込めた思いをはじめ、俳優として活躍中の高杉、安田が影響を受けたという映画の話まで、さまざまなテーマについて赤裸々トークを展開した。
ーー歯科技工士と歯科衛生士の物語という、職業ドラマとしてもめずらしい設定だと思いますが、最初はどういう印象を?
高杉真宙 まず最初は、歯科技工士ってどういう仕事なんだろうと思いました。自分の役柄なので特に。脚本を読み進めていても何をする職業か詳しいところまではわからず、用語もひとつずつ調べながら読みました。でも、歯にまつわることだけでなく、家族のこと、恋愛のことなどテーマが豊富にあって、世代を問わずに楽しめる映画になるなと思いました。
安田聖愛 わたしは姉が歯科衛生士なので遠い職業ではなく、職業自体は知っていました。歯科技工士は知らなかったので、そういう職業もあるなと思いながら脚本を読み始めました。姉の職業を演じるというわくわく感があったので、こういう感じで働ているんだって、読みながら思いました。あと、ご年配の方々が共感できるシーンも多いのかなと思って、完成した映画を観て自分でもほっこりしつつ、共感する映画だなと思いました。
ーーお姉さんのアドバイスはありましたか?
安田 アドバイスというよりは、新人の時の失敗や、うれしかったことなどを聞いて、新人の真夏とすり合わせて演じました。
ーー彼らのように一人前として認められたいという思いというところで共感する要素はありましたか?
高杉 僕は、そもそも自分のことを一人前になったと思うこともないような気がしていて、特にこの役者という職業はライセンスが要るとかそういうわけではないので、何が一人前なのか正解がわからないままやっているところがあって。認められる人も現場レベルではあるかもしれないですけれど、結局は観る人たちが評価することで、観る人たちによって、その感性の違いによって変わってくると思うので、最終的には自分がどう満足するかによるかなと思います。
安田 自分が出た作品を観ると毎回、半人前だなと思います。でもそこで納得すると終わってしまうと思うので、いつまでも粗探しではないですが、探し続けたいなとは思います。
ーー本作は人の心にいつまでも残る映画となりましたが、いまの仕事につながるような影響を受けた映画はありますか?
安田 わたしあります!
高杉 すごい!
安田 『下妻物語』です(笑)。
高杉 そうなんだ(笑)。
安田 深田恭子さんが基本的にずっとかわいらしいのですが、劇中でふりふりのかわいい衣装を着て、最初はかわいいって感じで登場するのに、最後にはヤンキー衣装にもなるんです。当時いくつだったか覚えていないですが、あの対照的な感じにすごく衝撃を受けて、いまでもずっと残っていて覚えているほど。いつかわたしも、ああいう役柄を自在に操れるようになりたいと思っています。
ーーその当時、もう女優を目指そうと思っていたかもしれない?
安田 どうでしょう(笑)。自分ではぜんぜん覚えていないです。
高杉 僕は『DEATH NOTE デスノート』です。藤原竜也さんと松山ケンイチさんの。シンプルに、僕は松山さんが演じるLが大好きだったんですよ。あのLが大好きで、漫画やアニメを知る前に、映画を観てすごく衝撃を受けました。松山さんを知ってからは、松山さんのほかの映画も観るようになって、ぜんぜん違う表情をするなと思いました。いろいろと舞台も観させていただいたのですが、あの『DEATH NOTE』のLが別の役柄を演じているって、普通に観ていたら気づかないなと思いました。あと、『DEATH NOTE』は、僕が猫背になったきっかけでもあります。
ーーえ!?
高杉 私生活で、ですね(笑)。僕は影響されまくりで、いまだに直そうと努力しているのですが、あれで影響されてずっと猫背のまま。小学生くらいからずっと猫背ですね。
ーーそうとうな影響ですね。
高杉 人生レベルですね(笑)。
ーーすると、おふたりが考えるいい俳優とは、いろいろなキャラクターを演じ切ることになりますか?
高杉 どうでしょうか。いい俳優とは、人それぞれの価値観かなとも思います。僕自身は、自分がどうなりたいか、がいい俳優像かなと思っていて、60、70歳になっても俳優をやり続けていることが、いい俳優だと思っています。
ーー第一線でい続けるということ?
高杉 そうですね。どの仕事にしても、それはすごいことだと僕は思うので、それは仕事がすごいだけじゃなく、人間性もあると思います。そういう人になりたいとは思いますね。だから20代、30代、40代、50代、60代、それぞれの道を考えて生きていきたいと思っています。
安田 作品は一番に監督のものだと思っていて、原作ものなどはまた違ってはくるとは思いますが、その時の監督さんの100点満点をもらえる俳優が、いい俳優かなって思っています。「そこ違うな」と思われる演者ではなく、すべてをちゃんと納得させる、監督のOKをちゃんともらえる俳優がいい俳優かなって。
ーーFILMAGAは映画好きなユーザーがたくさん読んでいるので、そういう熱量がある映画ファンに、この作品をどうアピールしますか?
安田 映像が本当にきれいなんです。それが苦手な方もいるかもしれませんが、映画が好きな方であれば注目して観てほしいですね。最初にわたしもびっくりしたのですが、豪華なキャストなので、そこも注目ポイントだと思います。ストーリーはもちろん、キャストや映像については映画ファンの方々は楽しめると思うので、観てほしいですね。
ーー個人的には、佐藤藍子さんが母親役でびっくりしました。
高杉 若いですよね。若すぎです。お母さんではなく、恋しちゃうくらいの!
安田 違うストーリーになるから!
高杉 今回、監督が長編映画が初めてで、そこに僕たち若い世代が――青いと言うのかな(笑)、やらせていただいているので、映画好きな方たちが観たら、これからに期待してほしい俳優たちの姿と、僕たちのそばで演技をしてくださって心強かったベテランのみなさんの安定感も見逃せない作品になっていると思うので、長い目で見守ってほしい作品なのかなって思いますね。
ーー同世代の人にも観てほしいですよね。
高杉 そうですね。基本的には歯と仕事の話でもあるので、第一に伝えたいことは、簡単に言うと歯を大切にですが、そこから「仕事とは?」となって家族や恋愛にも話が展開します。なので仕事に悩める人たちは、やっぱり若い世代をはじめ、観てほしいなと思いますね。(取材・文・写真=鴇田崇、スタイリスト=石橋修一、ヘアメイク=勇見勝彦/THYMON Inc.<高杉真宙>、スタイリスト=fukami、ヘアメイク=宮川朋子/エスト・アン<安田聖愛>)
映画『笑顔の向こうに』は全国のイオンシネマにて公開中。
監督:榎本二郎
配給:テンダープロ、プレシディオ
公式サイト:https://egao-mukou.jp/
(C)公益社団法人日本歯科医師会
※2022年9月29日時点のVOD配信情報です。