日本テレビ系ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』1話から7話までのあらすじを踏まえながら考察。
芦田愛菜が7年ぶりに民放ドラマでレギュラーキャストに名を連ね、主人公は松岡茉優と注目を集めてきた『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(日本テレビ)。第2章と銘打たれた7話は「学園ドラマ」の域を超え、「大人」に語りかける内容となった。この物語が訴えているものは何なのだろうか。
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*以下、ネタバレを含みます。
『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』1話〜7話あらすじ

鳳来高校3年D組の担任教師・九条里奈(松岡茉優)は、卒業式を迎えた教え子たちをテラスから眺めていた。その時、背中に大きな衝撃が走り落下してしまう。犯人と思われる人物の手元には「D組おめでとう」という腕章があり、生徒に殺されたのだと認識した。次の瞬間、目を覚ますとそこは3年D組の教壇の前、4月の始業式。ここから九条の2度目の1年間が始まった。自分の死の未来を変えるため、文字通り“何でも”して生徒と向き合っていくことに。
鵜久森(芦田愛菜)のいじめ問題の解決をはじめ、悩みを抱える生徒に関わり徐々に心をほぐしていく。6話では、鵜久森も2周目の人生を送っていることが明らかになったが、何者かに突き落とされ、死を迎えた。
7話では鵜久森の死をきっかけに、これまでのクラスでの出来事を職員に打ち明け、九条はクラス、そして大人たちへ問いかける。
タイトルから「拝啓」が消えた意味。問いかけられるSNS時代の私たち
第2章を迎え、ドラマは大きく姿を変えた。これまでは九条を突き落とした犯人を探しながら生徒の問題を解決していく、いわゆる学園ドラマだった。多くの視聴者は「今週はどの生徒が改心するんだろう」と楽しみに待っていただろう。しかし鵜久森の死を迎えてから物語は教室を飛び出し、「大人」へのメッセージを強くした。
その「大人」とは何を指すのか。表面的に見れば鳳来高校の教師たちだろう。だが、九条や生徒、そして教師たちのセリフを聞けば本当に変わるべきものが見えてくる。
「ここにいる皆さんは一度、彼女を傷つけることに参加したことのある一人です。」
今回はとにかくメッセージ性の強いセリフばかりだった。九条が発する言葉は鵜久森のクラスメイトや教師だけではなく、教育者へ、マスコミへ、そしてSNS時代の全ての人へのメッセージのように響いた。まずはじめに3年D組が変わるんです、と九条はクラスを通じて「大人」、つまり社会全体を変えようとしているのだと思う。
1章ではタイトルの全てに「拝啓」とつき、各回でフィーチャーされた生徒への手紙のような題になっていた。だが、2章からは「拝啓」が消えている。前半では九条から生徒へのメッセージだったのに対し、2章が問いかけているのは、「私たち」だからではないだろうか。
このドラマの本質は、犯人探しではない
「誰か」に突き落とされたことから始まったこのドラマ。SNSやあらゆるメディアの記事でも、犯人は一体誰なのかという考察で溢れている。まるでそんな私たちを制するように「最も避けるべきなのは彼女を憶測で語ること」と九条は生徒たちに告げる。そしてそれは、死者への冒涜だとも。これは物語上の話だけではなく、ありとあらゆる事件や不祥事に対する、憶測で溢れるSNSへの提言のようにも受け取れた。起こってしまった出来事に目を伏せたり、都合の良い結論に逃げるのではなく、きちんと向き合い、「考える」のだと九条は静かに伝えていた。
それでも犯人を探させようとする星崎は一体何者か
星崎は特に問題を解決するでもなく鵜久森らに近寄き、何を考えているのかわからない人物として描かれてきた。九条の映画を撮りたいと九条を盗撮しては、生徒たちに九条はタイムリーパーではと触れ回る。今話でも物語の最後には、学校の生徒ではない浜岡が制服を着用して校舎に侵入していたことを嬉しそうに東風谷に伝える。鵜久森に向き合うという覚悟を決めた生徒たちに、だが憶測で犯人探しをするべきではない、と九条がまとめたにもかかわらず、彼は「犯人探し」を焚き付けているのだ。
彼は物事を歪曲させて伝えるマスコミや、SNSなどで面白おかしく炎上や拡散させるような人々を映し出したキャラクターなのではないか。次回、彼に焚き付けられ、クラスはさらに混沌へ巻き込まれるのかもしれない。ここまで語りながら、「火のないところに煙をたたせようとする星崎が犯人なのではないか」とつい疑ってしまうのも、彼に踊らされているのかもしれない……。
「こうして重大なことが起きた時、明らかに何かを捻じ曲げて世間に声を出している人を見て思うんです。誰かの尊厳に砂をかけてまで何を守ろうとしているんだろうと。」
一つの教室、一つの学校だけを良くするお話ではもはやない。学園モノだと思っていた物語が、いつの間にか社会派ドラマへと姿を変えていたのだ。
*2023年9月5日時点の情報です
