玉森裕太×染谷将太『パラレルワールド・ラブストーリー』極限まで追い込まれた現場は「気持ちよかった」【ロングインタビュー】

映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

玉森裕太は雄弁というよりも、自分の感情にそぐう言葉をきちんと選び取り、ゆっくりとした口調で質問にひとつ、ひとつ丁寧に答えた。そんな玉森の呼吸に気を遣って合わせるでもなく、無視するでもなく、絶妙なタイミングで、染谷将太が感想や状況説明を付け加える。ふたりはときに微笑み、ときに真面目な面持ちになりながら、穏やかな時間を過ごした。

パラレルワールド・ラブストーリー

玉森と染谷が初共演した『パラレルワールド・ラブストーリー』は、東野圭吾の同名原作によるミステリー。敦賀崇史(玉森)は、外資系企業の付属研究所で、幼なじみの三輪智彦(染谷)と働いている。崇史には想いを寄せている津野麻由子(吉岡里帆)がいるのだが、ある世界では崇史が麻由子の恋人で、もうひとつの世界では智彦が麻由子の恋人だった。一体どちらがリアルな世界なのかーー翻弄される崇史は、驚愕の真実と向き合うことになる。

一筋縄ではいかない複雑な物語は、『宇宙兄弟』『聖の青春』などで知られる森義隆監督が手掛け、エンターテインメント性に富んだみごたえのある一作となった。妥協のない姿勢から、ギリギリまで追い込まれたという玉森、容赦ない演出を受けたという染谷。しかし、彼らは「気持ちいい」くらいだったと、題して「森メソッド」を振り返る。充実の表情がはしばしに浮かんだ、ふたりのインタビューをお送りしたい。

――本作に臨むにあたって、原作と脚本を読んだ感想から教えていただけますか?

玉森 本当に惑わされるというか、「どっちが今起きている世界なんだろう」と読んでいました。崇史と一緒に迷って、ゴールを見つけている感じで、スッと入り込みました。なんか……モヤモヤしたり、「でも、こういうこと起きるかもしれないな」とか、「こういうこと、あったら嫌だな」とかを想像しながら、自分に置き換えてみたりもして。いろいろなことを思いながら、原作を読みました。

パラレルワールド・ラブストーリー

染谷 玉森さんと同じく、惑わされました。謎解きといっても誰かが死ぬとか、殺人事件が起きるわけではなくて、人間の感情と恋愛で行われる謎解きなんですよね。ただパズルがはまるだけではなくて、そこに感情が伴うじゃないですか。それにハラハラドキドキしました。

――ご自分たちが演じる役柄に対しては、どのようなイメージを持ちましたか?

玉森 崇史は嫌なやつ……みたいな印象を受けたんですけど(笑)、演じていくうちに「本当にピュアな人間なんだな」と思うようになりました。常に麻由子への気持ちがあって、僕自身はなかなか真似はできないですけど、「こういう人もいるんだろうな」と感じましたね。

染谷:智彦を演じるにあたっては……というか、智彦以前に、この映画に参加するにあたって、謎解きは説得力がないとお客さんが置いて行かれちゃうと思っていて。

パラレルワールド・ラブストーリー

玉森 うん、うん。

染谷 お客さんがノれないと全然面白くないじゃないですか。その説得力を持たせる責任を、一番感じました。

――森監督の演出はかなりハードだったと伺いました。現場の雰囲気はいかがでしたか?

玉森 話が話なだけに、もちろん賑やかな現場ではなかったです。基本、緊張感がある現場でした。ハードかどうかは……僕より染谷くんのほうが絶対いろいろなものを経験していると思うのですが、僕にとっては初めてな監督でした。自分に妥協もしないですし、ときには追い込んでくれますし。僕は追い込まれて「わ、嫌だ」というより、「こういう現場いいな、好きかも」と思いながらやっていましたね。「気持ちいい」くらいまで思っていたかもしれないですね。

染谷 偉そうに聞こえたらあれなんですけど……、森監督は、本当に演出力が高い方なんです。監督にずっと緊張感があるので、現場全体も役者陣もそうなりますし、全然(演技が)足りていなかったら、素直に「全然足りていない」とおっしゃいますし。僕は割と説明台詞も多かったんですけど、「今のじゃ全然見えてこない。全然説得力がない。もっと自分で話していることを頭の中で見ながら、ちゃんと伝えて」と言われたりしました。それを勝手に「森メソッド」と呼んでいるんですけど、本当に1カ月半、学校に通ってきたような気分で(笑)、いい経験でした。

パラレルワールド・ラブストーリー

――役作りに関しては、助言もあったんですか?

染谷 役作りの段階から資料を用意していただきました。「これを観に行ってほしい」、「この人と会ってほしい」と、監督が全部セッティングしてくださいました。

――「観に行ってほしい」、「会ってほしい」対象はおふたり共通の?

玉森 たぶん一緒ではないんじゃないですかね?

染谷 たぶん違う……別々でしたよね?

パラレルワールド・ラブストーリー

玉森 うん。僕は実際、研究所に行って、自分の役と同じ仕事を生で見させてもらいました。教授のところにも行って、今どこまで技術が発展しているとか、リアルなお話を聞かせてもらったりもしました。研究者の作るものはすごいなと本当に思いましたし、考えていることが、僕では思いつかないようなことで……!「そこ、攻めてみるの!?」とか思うような、研究者ならでは? ??考え方は実際に触れて感じ取らせてもらいました。

染谷 僕も、智彦が働いているであろう、モデルとなっているような職場を拝見させていただき、研究者にも会わせていただきました。森監督は、ただ「会ってこい」というのではなく、そこで「こういうことを感じてきてほしい」というのも、ちゃんと添えてくださったんです。人となりもそうですし、研究を進めていく上でメンタルがどうなっていくか、とかも。具体的に質問をいくつか用意してもらったり、現象を理解してからじゃないと台詞に説得力がないので、自分が発する台詞にともなってくるような本も渡してくださいました。

――本作において、お互いがお互いの演技を支え合い、高めていくような印象さえ受けました。初共演の感想を聞かせていただけますか?

玉森:僕と染谷くんの初めてのふたりでの撮影は、喧嘩のようなシーンからだったんです。親友との関係について、一番大事じゃないかと思えるようなシーンからのスタートで。すごくいい緊張感で、特にコミュニケーションもたくさん取っていたわけでもないまま、始まりました。僕は……なんか……ゾワゾワしながらやっていました(笑)。特に本番前ですけど、「染谷くんがいる~~!」と思いながら(笑)。

染谷 (笑)。玉森さんは本当にずっと役に没入されていて、途切れる瞬間がなかったです。現場で一度も途切れたと感じたことがなくて。唯一、「今日のお弁当は何かな?」と言うときくらいですかね(笑)。

玉森 (笑)。

染谷 本当に、崇史としてずうっと一直線で現場にいらして。そうしてもらえたおかげで、僕もカメラ前に立つとき、本当に心地よくお芝居させてもらいました。すごく感謝しています。

玉森 こちらこそ、ありがとうございます。

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――共演前のイメージから変化はありましたか?

玉森 僕は染谷くんのいち視聴者、観客だったので、まさか一緒にお芝居ができるとは思っていなかったんです。うれしい反面、「あ……すごいプレッシャーだ、頑張らなきゃ」と思っていました。

――プレッシャーとは、染谷さんがオーラを発していたような感じだったんですか?

染谷 (笑)。

玉森 オーラ……というか、「染谷将太」という存在に「おおお」と思って(笑)。「頑張るぞ~、俺」と思いながら(笑)。

染谷 僕は玉森さんにとてもクールな印象があったんですけど……とてもクールでした。

玉森 (笑)。

――変わらず(笑)。

染谷 でも、何でも受け入れてくださって、人に安心感を与える方だなとすごく思いました。現場に緊張感はありましたけど、玉森さんがいるから安心感がある上で皆さんで一緒にやれていたような気がしました。

――実際、お芝居で対峙していかがでしたか?

玉森 最初に台本を読むときに、相手の台詞を「こういう言い方かな? こうくるのかな?」といろいろ考えるんです。実際、現場に入って染谷くんの台詞を聞くと、「なるほどね! さすが……!」と思うような演技をしていたので、本当に毎回学ばせていただきました。

染谷 ……玉森さんは、本当にどんどんやつれていって……。

玉森 (笑)。

染谷 もちろんご多忙なのはありますけど、僕は崇史として没入していっているようにしか見えませんでした。しびれましたね。

パラレルワールド・ラブストーリー

――崇史と智彦の親友という関係性について、おふたりはどう思われますか?

玉森 それこそ「親友とはどういうものか?」というのは、監督含め、三人でたくさん話し合いました。そんなに多くを語らなくても「親友」という存在がいるだけで、お互いを支え合えているというか、昨日、今日の関係ではない昔からの仲なので、いて自然というか、普通というか、当たり前に近いんですかね。うん。そんな感覚で僕はずっと智彦を見ていました。

染谷 今回、親友という概念が核になってくるので、しっかり把握して、共有しておかないと、と思って大事にしました。玉森さんがおっしゃったみたいに、多くを語らなくても、いるだけで成立して、お互いがお互いを補い合う関係というか。具体的に「だから何だ」というわけではないんですが、感覚として、核を持ってやろうと思いました。

――崇史は親友・智彦と、想いを寄せる麻由子の間で揺れますよね。バスケットボールをするシーンなんかでは剥き出しの感情をみせることもありましたが、エピソードはありますか?

玉森 そのときには、崇史は親友よりも好きな人に気持ちがいっていて……親友との関係が崩れてもいいくらいの状況だったんですよね。そのときの智彦を見る目は、憎しみのほうですかね。変わってしまっていました。

染谷 そのシーンは、ふたりとも暴力的だな、と思いました。憎しみを持って見る崇史も暴力的だし、しっかりちゃんと物事を伝えてはっきりさせない智彦も暴力的だし、違った暴力がぶつかり合って、この話はどんどん走り出していくんだな、と感じましたね。

パラレルワールド・ラブストーリー

――麻由子に対しての愛情表現において、それぞれ意識していたことはありますか?

玉森 崇史? ??シンプルに、ストレートに、終始伝えていたと思います。それで周りが見えなくなってしまっているのもありますけど。やっぱり、一番にどちらの世界でも麻由子が好き、というのが大きくあったので、ちゃんと伝えようという気持ちでやっていました。

染谷 僕は……難しかったですね。麻由子が好きなんですけど、麻由子だけが好きで麻由子に向かっていったら、崇史と智彦がただ喧嘩すればいい話になってきてしまうので。智彦の場合は、麻由子は好きだけど、なんせ一番は崇史だ、という。どちらかというと、麻由子よりも崇史への愛情をどう出そうかというところに、苦心しました。

――崇史のような気持ちは共感できるものですか?

玉森 自分だったら、すぐ引きます。なるべく平和でいたいので(笑)。

染谷 そうですね、面倒はなるべく避けたいです(笑)。

玉森 そりゃ、そうですよ(笑)。実際に考えたら……親友の彼女を奪うってすごい勇気だなと思うし、それ以上に愛があったからかもしれないですけど、僕はそこまで気持ちを女の子に持っていけないと思います。崇史は麻由子にそれだけ本気だし、純粋だなとは思いますね。

染谷 そうですよね。親友が好きな人を好きにならないですね。好きになったらしょうがない、という好きになっちゃった人の話ですからね……好きに……ならなきゃいいんじゃないですか(笑)?

玉森 うん、好きにならないのが平和ですね(笑)。(取材・文=赤山恭子)

映画『パラレルワールド・ラブストーリー』は、2019年5月31日(金)より全国ロードショー。

パラレルワールド・ラブストーリー

出演:玉森裕太吉岡里帆染谷将太 ほか
監督:
森義隆
原作:東野圭吾
公式サイト:http://www.parallelworld-lovestory.jp/
(C)2019「パラレルワールド・ラブストーリー」製作委員会 (C)東野圭吾/講談社

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※2022年2月27日時点のVOD配信情報です。

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    2.2
    小説の良さがでてない
  • ジョーカー
    -
    つまらなかった
  • ベベチ
    3
    うーん。世にも奇妙な物語的な話で新しさが無かった。 108分に詰め込み過ぎたのが勿体ない。 視点がコロコロ変わりすぎ&伏線がわかりやす過ぎるのはいいけど...展開が読めてしまい何か勿体ないなぁ。
  • プリオ
    2
    絶妙に面白くない。 アイデアはいいはずなんだけどな。 吉岡里帆が可愛いことは、よく分かりました。
  • A
    -
    記録用
パラレルワールド・ラブストーリー
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