【ネタバレ】映画『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』謎の“手”が持つ意味とは?結末はどうなる?衝撃のホラー作を徹底解説

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omonthy

“最高にブッ飛べる”憑依体験ホラー『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』をネタバレありで徹底解説。

2023年のサンダンス映画祭で話題を呼び、アリ・アスター、ジョーダン・ピール、サム・ライミらが絶賛した『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』。

監督を務めるのはダニー・フィリッポウとマイケル・フィリッポウ兄弟。登録者数679万人を誇るYouTubeチャンネル「RackaRacka」で知られる二人の長編映画デビュー作としても話題となっている。

映画『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』(2022)あらすじ

母を亡くした高校生のミアは、気晴らしに仲間とSNSで話題の「#90秒憑依チャレンジ」に参加してみる。ルールは簡単。呪物の「手」を握り、「トーク・トゥ・ミー」と唱えると、霊が憑依する……ただし、必ず90秒以内に「手」を離すこと。 ミアたちはそのスリルと快感にのめり込み、憑依チャレンジを繰り返してハイになっていくが、仲間の1人にミアの母の霊が憑依し……。

※以下、『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』ネタバレを含みます。

本作が挑戦する新たなホラー表現

本作は、ホラー映画では馴染みの深い“降霊術”が扱われている。ウィジャ盤を題材にした『呪い襲い殺す』(2014)、日本でも馴染みの深いコックリさんを扱った『KOKKURI こっくりさん』(1997)など、古今東西で“降霊術”を扱った映画は数多く存在する。そうした霊を招き入れる儀式はいつの時代にも若者を熱狂させ、魅了してきた。しかしそこには当然、霊を招き入れる危険性を孕んでおり、向こう見ずな若者だからこそ、そういった危ういものにハマってしまうということが言える。

これまでの作品で扱われてきた“降霊術”と本作には大きな違いがある。元来それらの“降霊術”は仲間内でひっそりと行われることが多かった。しかし、本作では、夜な夜な行われるパーティの余興として盛大に行われている。パーティに集まった若者は酒やタバコ、もしくはドラッグと同じように、“ハイになる”ことを目的として“降霊術”を行っている。その光景は異様だ。彼らは被験者をベルトで縛りつけ、スマホを構えながら、その場に霊が招かれるのを期待と興奮の表情で見つめている。すると、被験者の瞳孔が異様に広がり、身体が痙攣を始める。その様子をゲラゲラと笑いながら観察し、写真を撮ってSNSへアップするのだ。

本作の“降霊術”は要するにドラッグの延長線となっている。監督のダニー・フィリッポウは近所の子供がドラッグでさまざまな実験をしている様子を収めたビデオを見て、本作のアイデアを思いついたという。そうしたSNS時代に歯止めの効かなくなっていく若者の危険な心理を“降霊術”を用いたホラーという形に落とし込むことで、これまでとは全く違った味わいのホラー映画にすることに成功している。

謎の“手“が表すものとは?

本作で印象的なモチーフとなるのが、降霊術で使われる謎の“手”だ。独特の形をした“手”には、呪詛のような文字がびっしりと書かれている。一目でヤバいとわかるその見た目は、不気味で禍々しい存在感を放っている。劇中の説明によると、これはある超能力者の腕を切り落とし、エンバーミング(衛生管理)した呪物であるという。

友好的に握手を求めているような、もしくは死者が地獄の淵から這いあがろうともがいているかのようにも見える独特の形をした“手”。物語を追っていくと、実はこれはどちらも意味していることがわかる。霊は友好的なふりをして近づくが、隙あらば死の世界に誘おうとしてくる。霊は死の淵から常に我々を引っ張り込もうとしているのだ。

主人公・ミアは母親を数年前に亡くしてしまっている。父親とは反りが合わず、親友ジェイドにはかつての恋人・ダニエルをとられてしまい、どこか満たされない孤独を感じている。そんなミアにとって、誰かの手を握ること=人と繋がりたいという欲を満たせる手段として“手”の存在があったのかもしれない。

母・イーラは嘘をついていたのか?

ミアは母親の事故死に疑問を感じており、その真相は、本作を観てもはっきりとした答えはわからない。それは母・イーラの遺書と彼女の霊が証言することに食い違いが生じているからである。生前のイーラが残した言葉と死の世界に取り込まれたイーラのどちらの言葉を信じるのか? 重要なのは事実がどちらかということではない。そもそもイーラの霊が間違いなく彼女であるかどうかもはっきりしないからだ。イーラの霊は、ミアの弱った心が見せていた幻影の可能性も十分にある。生前の母に引っ張られる形でミアが勝手に動いていた可能性も否定できない。

はっきりと言えるのは、幽霊は現世の理屈が全く通じない理解不能な存在であるということ。霊は孤独で辛く悲しい存在であり、その孤独を埋めるためなら嘘も厭わない。イーラは死んでしまった時から、こちら側とは意思疎通のできない存在になってしまったのだ。

ミアの結末と次回作への期待

ミアはライリーを助けるため、イーラの言葉には従わず、結局は自分が命を落とすことになる。ミアがたどり着いたのはイーラと同じ死の世界。そこは何も聞こえず、何も存在しない暗闇が広がっている。面白半分で呼び出した霊たちが感じていた孤独を、初めてミア自身が理解することになる。それは、現世でミアが感じていた孤独とは、比較にならないほど虚無に満ちたものだった。そして、暗闇の中を彷徨うミアに一条の光が現れる。光に向かって手を伸ばすと、そこにはかつて自分が行っていた儀式に興じる若者たちがいた。招かれる側となった彼女は改めて大きな絶望を感じながら、物語は残酷に幕を下ろす。

本作でミアの物語は完全に終わってしまった。しかし、すでに監督続投による続編『Talk 2 Me(原題)』の制作が決定している。ラストシーンからもわかるように“手”は今も若者たちの間でまわされ、遊ばれ続けている。“手”がドラッグのメタファーと考えるならば、本作は薬物中毒に陥った若者が死へと向かった、救いのない物語とも言えるだろう。元凶である“手”について、本作ではその出自がわからないままになっているので、次作ではその謎が明らかになるのかもしれない。そして、道を誤った若者に、今度こそ更生の道が用意されているような、救いのあるラストになることも期待したい。

(C) 2022 Talk To Me Holdings Pty Ltd, Adelaide Film Festival, Screen Australia

※2023年12月21日時点の情報です。

※最新の配信状況は、各動画配信事業者の公式サイトにてご確認ください。

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