加藤諒で、魔夜自ら「生きたパタリロ」と命名を受けるほどのお墨付き、劇中では文字通り大暴れしている。
劇場版『パタリロ!』は常春の国マリネラ王国の皇太子パタリロ・ド・マリネール8世(加藤)が主人公の物語。側近のタマネギ部隊を引き連れて大英帝国にやってきたパタリロは、何者かに命を狙われることに。ボディガードのMI6諜報員ジャック・バンコラン少佐(青木玄徳)や、美少年記者マライヒ(佐奈宏紀)との関わりで、事態はさらに複雑化していく。
FILMAGAのインタビューに応じた加藤は、パタリロの扮装で登場、スチール撮影ではとっさに「クックロビン音頭」のポーズを取るなどで盛り上げ、世界観を共有してくれた。禁断の『パタリロ!』の入り口さえ開けば、きっと誰もが虜になってしまうだろう。魅力を聞いた。
――いよいよ公開です。今の心境はいかがですか?
加藤 もう公開! キャー!! ドキドキです。先日オールナイト上映イベントをしまして、お客さまたちと一緒に観て、すごく温かい反応を直で見ることはできたのでうれしかったんです。けど、あのイベントに足を運んでくれる方は『パタリロ!』が元々好きな人だったと思うので、もしパタリロ!を知らない方々が映画を観たら、どんな反応が返ってくるのか……すごく楽しみであり、「どうなのかな!?」というドキドキもあります。
――加藤さんがパタリロ役を務めていることは広く知られているかと思いますが、それこそ、周りの方々の反応はいかがですか?
加藤 今回、劇場版のチラシ制作に際して、「コメントを出してくれる方、いませんか?」と自分の周りに尋ねたところ、(サバンナ・高橋)茂雄さん、山下穂尊(いきものがかり)さん、小関裕太くんとかがくださって! チラシには載っていないんですけど、ゆりやん(レトリィバァ)ちゃんもコメントを寄せてくださったんです。この間の「アメリカズ・ゴット・タレント」も、すごかったですよね!
――はい! それこそ『翔んで埼玉』も各国の映画祭でうけたと聞きました。『パタリロ!』も、となりませんか?
加藤 まさに、ミーちゃん先生(原作・魔夜峰央)は舞台の初演を観たときに「これはブロードウェイで上演したい。加藤くん、英語を勉強しておいてくれ!」と言っていたんです。今、2.5次元の舞台はニューヨークで上演されたりもしていて、「美少女戦士セーラームーン」の舞台(「“Pretty Guardian Sailor Moon”The Super Live」)は満席だったりするので……遠い未来ではないかも、とちょっと思ったりしました。
――「ミーちゃん先生」と呼んでいらっしゃる魔夜先生は、加藤さんにとってどんな方となりましたか?
加藤 もう神です。『パタリロ!』の世界の創造者なので、ずっと神だと思っています。段々親しみやすい神になってきてくれて、本当に家族のように思っています。ミーちゃん先生からも「魔夜ファミリー」と呼んでいただいているので、うれしいです。ありがたいです。
――本作に関しては、台本のままに演じられていますか?
加藤 ほぼ台本のままです。アドリブっぽく見えると言われたりもしますが。
――劇場版のために追加で準備したこと、あえて変更したことなどはありますか?
加藤 今回、映画芝居は意識せずに、やらせていただきました。『翔んで埼玉』のときは結構シリアスなシーンを任されている部分もあったので、劇的なお芝居とは違う、映像的なというか、繊細な、気持ちを込めてやるお芝居を意識していたんです。けど、『パタリロ!』に関しては、コメディ・ギャグもあるし、舞台で築き上げてきたものを出しました。もう、感情論じゃないんですよ(笑)。精神がはちきれた役柄なので、「ここ、気持ちつながらないんですよ」とかいう問題じゃなく、精神をはちきるように演じさせてもらいました。
――大変さも、たぶんにあった?
加藤 そうですね。僕は気持ちがつながっていたりするほうが台詞も覚えやすいですし、お芝居もやりやすいので。『パタリロ!』は説明しながらボケるとかが多かったので、結構大変でした。怒ったと思ったら、次にはボケはじめたりとか、その切り替えが難しかったです。ただ、顕作さんは役者もやられているので、自ら「こんな感じで」と見せてくださって、僕はそこを感じ取り「やりましょう」みたいな流れでした。
――本作、ボーイズラブの世界も一種みどころですが、バンコランとマライヒのやり取りは、どう楽しまれましたか?
加藤 パタリロ自身はふたりの純愛に関しては傍観者なので、現場でもじっくり見させていただきました。「どんどん激しくなっていくな」という感じでした。舞台初演時、稽古のときは、最初はキスしている“ふり”をしていたんです。僕はふたりのシーンをずっと見ながら、「この作品だったら本当にキスしないとダメでしょ!」と思っていたんですね。なので、僕からと思って、「本当にキスしているのを見せるから」という感じで、(佐藤)銀平さんと僕のチューは率先してやりました。それをきっかけにというか、そうしたら、ふたりはど? ?どん燃え上がるような愛になっていったんです。すごくよかったなと思います。
――加藤さんは、口で「こうしようよ」と提案するより、ご自身の行動で導くというか、普段からそうしたタイプなんでしょうか?
加藤 相談するのも大事なんですけど、言葉だと伝わらないものもあるじゃないですか。だから、とりあえずやってみせて、うまくいけば採用だし、「面白くなかったね」となったらやめればいいと思っている、という感じです。話し合うと空気がピリッとするときもあったりするから……そういう空気もときには大事ですけど、僕自身、あまり得意じゃないんですよ。楽しいシーンなのにそういうことがあると嫌なので、「とりあえずみんなでやってみようよ」と。せっかくやるなら、楽しくやりたい。この作品が終わったらほとんど会わないので、「だったら喧嘩するくらいやればいいじゃん」という方もいると思うんですけど、「そんな寂しいこと言わないで、また会うかもしれないじゃん」みたいな気持ちです(笑)。
――最後になりましたが、FILAMGA企画「2018年私のNo.1映画」へのご寄稿、ありがとうございました!
加藤 いえ、こちらこそ! うれしかったあ! 『タクシー運転手』と迷ったんですけど、『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』を選びました。ちょうど、その頃に『ギャングース』をやっていたので、貧困問題を考えていたりした時期だったんです。『フロリダ・プロジェクト』は子供たちのお芝居、お母さんのお芝居が「ドキュメンタリーを観ているんじゃないか」という錯覚に陥るくらい、すごく生き生きとしていましたよね。カラフルでポップ、ファンタジックな世界なのに、リアルで生々しい現実が描かれているところに、すごく驚きを覚えて、忘れられなくて。脳に焼き付けさせられた感じです。
――シネフィルの加藤さんですが、最近観た中で心に残った作品はありますか?
加藤 『7月の物語』というフランスの作品が面白かったです! オムニバスで、ギョーム・ブラック監督が、高校生の子たちと授業の一環という感じで撮った短編2本と、ギョーム監督が撮ったドキュメンタリー1本の全3本から成っていて。派手な演出はないんですけど、役者さんが生き生きとしていて、「こういうこと、あるんだろうな」と思わせるような、大きな世界の中のごく一部でしかない空間を切り取った作品で、そこでのドラマが自然と入ってきて素敵でした。(取材・文=赤山恭子、撮影=林孝典)
劇場版『パタリロ!』は2019年6月28日(金)より、TOHOシネマズ 新宿ほか全国順次ロードショー。
出演:加藤諒、青木玄徳、佐奈宏紀 ほか
監督:小林顕作
脚本:池田テツヒロ
原作:魔夜峰央「パタリロ!」(白泉社刊)
公式サイト:https://patalliro-themovie.jp/
(C)魔夜峰央・白泉社/劇場版「パタリロ!」製作委員会2019
※2022年1月21日時点のVOD配信情報です。